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金は米利下げ期待も利食い売りで調整局面
2023/12/11
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米CPIや欧米の金融政策の見通しを確認
12月4日の週のニューヨーク金市場は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて急伸し、一代高値2,152.3ドルを付けた。イスラエルがイスラム組織ハマスとの戦闘を再開したことも支援要因になった。ただ買われ過ぎとの見方や中東の紛争拡大抑制を受けて利食い売りが出ると、調整局面を迎えた。その後は11月の全米雇用報告が予想以下となったことが下支えになったが、米雇用統計で労働市場の堅調が示されると、2,010.6ドルまで下落した。中長期の節目となる200日移動平均線(8日2,006.3ドル)や2,000ドルの節目が目先の支持線であり、ここを維持できるかどうかがテクニカル面での焦点である。
11月の全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は10万3,000人増と、事前予想の13万人増を下回った。製造業で減少し、労働市場の減速が示された。米新規失業保険申請件数も1,000件増の22万件となり、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ期待が高まった。ただ11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比19万9,000人増と、事前予想の18万人増を上回った。12月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は69.4と前月の61.3から5カ月ぶりに上昇し、8月以来の高水準となった。CMEのフェドウォッチで、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ予想は3月から5月に後退し、5月の利下げ確率は49.3%(前週41.5%)となった。今週は11月の米消費者物価指数(CPI)の発表と米FOMCがある。事前予想は米CPIが前年比3.1%上昇(前月3.2%上昇)と小幅鈍化、米FOMCは金利据え置きが見込まれている。
欧州中央銀行(ECB)理事会も今週の焦点である。シュナーベル理事は「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」と述べた。11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は前年比2.4%上昇と前月の2.9%から低下し、事前予想の2.7%を大幅に下回った。またビルロワドガロー仏中銀総裁は、ECBは現時点で利下げを検討する用意はないが、2024年のある時点でその問題を検証することになるだろうと述べた。金融大手ゴールドマン・サックスのエコノミストが4月の利下げ開始を予想しており、ECBの利下げ期待も高まっている。為替市場でユーロの買い玉が積み上がっており、ユーロの手じまい売り主導でドル高に振れる可能性がある。
JPX金先限は上場来高値1万0,028円を付けたのち、現物相場が調整局面を迎えたことや円急伸を受けて売り優勢となり、10月18日以来の安値9,279円を付けた。植田日銀総裁は参議院財政金融委員会で、マイナス金利解除で政策金利をゼロ%にするかプラス圏の金利にするか、どの程度のスピードで利上げしていくかは「その時の経済・金融情勢次第」と述べた。日銀が早期に金融政策を修正するという観測を受けて円相場は8月7日以来の水準となる1ドル=141.54円まで円高に振れた。ただ11月の米雇用統計で労働市場の堅調が示されると、145円前後に戻した。来年の春闘が金融政策正常化の焦点であり、今後の関係者の発言と円相場の動向を確認したい。
12月8日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比1.73トン増の880.55トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が高まったことを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月5日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは20万3,544枚となり、前週の20万0,084枚から拡大した。今回は手じまい売りが1,005枚、買い戻しが4,465枚入り、3,460枚買い越し幅を拡大した。
プラチナはレンジ上限で上げ一服も押し目は買われる
ニューヨーク・プラチナ1月限は欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測によるユーロ安を受けて売り優勢となり、11月15日以来の安値890.0ドルを付けた。ただ米新規失業保険申請件数の増加を受けて米国債の利回りが低下したことが下支えになると、米経済のソフトランデイング(軟着陸)の見方を受けて値を戻した。また中国乗用車協会(CPCA)によると、11月の中国の乗用車販売は、前年同月比25.5%増の210万台と4カ月連続で増加した。中国経済の先行き懸念が出ているが、好調な乗用車販売はプラチナの下支え要因である。ただ新エネルギー車(NEV)の販売台数が乗用車販売の40.1%を占めている。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、7日のロンドンで11.85トン(前週末11.78トン)、8日のニューヨークで31.04トン(同30.91トン)、7日の南アで11.98トン(同11.98トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月5日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは5,133枚となり、前週の1万0,034枚から縮小した。
ニューヨーク金は利食い売りで調整局面
ニューヨーク金2月限は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて急伸し、一代高値2,152.3ドルを付けた。イスラエルがイスラム組織ハマスとの戦闘を再開したことも支援要因になった。RSIが買われ過ぎの水準に入り、利食い売り主導の調整局面を迎えた。一方、11月の全米雇用報告が予想以下となったことが下支えになったが、米雇用統計で労働市場の堅調が示されると、戻りを売られて一段安となった。中長期の節目となる200日移動平均線(8日2,006.3ドル)が視野に入っており、ここを割り込むと、テクニカル面で弱気に転じる。今週は11月の米消費者物価指数(CPI)の発表や米連邦公開市場委員会(FOMC)がある。
12月11日からの週の注目ポイント
11日 | 英住宅価格指数(12月) | ☆ |
12日 | 企業物価指数(11月) | ☆☆ |
英雇用統計(11月) | ☆☆ | |
独ZEW景況感指数(12月) | ☆☆ | |
米消費者物価指数(11月) | ☆☆☆ | |
米財政収支(11月) | ☆☆ | |
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目 | ☆☆ | |
13日 | 日銀短観(12月調査) | ☆☆☆ |
英貿易収支(10月) | ☆☆ | |
英鉱工業生産指数(10月) | ☆☆ | |
ユーロ圏鉱工業生産(10月) | ☆☆ | |
米生産者物価指数(11月) | ☆☆ | |
米FOMC声明文発表 | ☆☆☆ | |
14日 | 機械受注(10月) | ☆☆ |
欧州中央銀行(ECB)理事会 | ☆☆☆ | |
英中銀政策金利発表 | ☆☆☆ | |
米小売売上高(11月) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
米輸出入物価指数(11月) | ☆☆ | |
米企業在庫(10月) | ☆ | |
15日 | 中国住宅価格指数(11月) | ☆☆ |
中国小売売上高(11月) | ☆☆ | |
中国鉱工業生産(11月) | ☆☆ | |
ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(12月速報) | ☆☆ | |
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(12月速報) | ☆☆ | |
ユーロ圏貿易収支(10月) | ☆☆ | |
米ニューヨーク連銀製造業景況指数(12月) | ☆☆ | |
米鉱工業生産・設備稼働率(11月) | ☆☆ | |
対米証券投資(10月) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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