３月13日の週のニューヨーク金市場は、米シリコンバレー銀行（ＳＶＢ）の破綻をきっかけとした金融システム不安を受けて急伸した。中心限月となる４月限は昨年４月以来の高値1,993.7ドルを付けた。ＳＶＢは米連邦準備理事会（ＦＲＢ）の利上げによる預金流出を受けて資金がショートし、閉鎖された。ニューヨークのシグネチャー銀行も破綻し、金融システム不安が広がった。米金融当局が預金の全額保護措置を発表し、不安感が一服したが、欧州に飛び火し、スイスの金融大手クレディスイスの信用不安が強まると、リスク回避の動きとなった。スイス中銀が支援し、欧州中央銀行（ＥＣＢ）が0.50％ポイントの大幅利上げを決定すると、今週の米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）で0.25％ポイント利上げの見方が強まった。一方、複数の大手銀行が米ファースト・リパブリック銀行を支援することで合意したが、同行の株安が止まらず、金融システム不安は残っている。週末にはスイスの金融大手ＵＢＳがクレディスイスを買収することが発表された。ＳＶＢは買い手が見つからず、解体して売却するという。金融システムに対する見方と今週の米ＦＯＭＣを確認したい。ＣＭＥのフェドウォッチでは、今週の米ＦＯＭＣでフェデラルファンド（ＦＦ）金利の誘導目標水準は4.75〜5.00％と0.25％ポイント利上げの確率が62.0％となっている。利上げ停止の確率は38.0％。
　２月の米消費者物価指数（ＣＰＩ）は前年比6.0％上昇と前月の6.4％から減速し、2021年９月以来の穏やかな伸びになった。事前予想と一致した。米生産者物価指数（ＰＰＩ）は前月比0.1％低下し、事前予想の0.3％上昇から予想外に低下した。米小売売上高は前月比0.4％減少した。自動車などの販売が減少した。ただ減少は１月の大幅増の反動とされ、基調は引き続き堅調とみられている。２月の米鉱工業生産指数は、製造業生産指数が前月比0.1％上昇し、事前予想の0.2％低下から予想外に上昇した。米経済指標がまちまちの内容となるなか、インフレの伸びが鈍化したが、目標となる２％まで引き下げるには時間がかかる。
　３月17日のニューヨークの金ＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は前週末比19.66トン増の921.08トンとなった。金融システム不安を受けて逃避買いが入った。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、３月７日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは９万8,474枚となり、前週の10万8,593枚から縮小した。今回は新規買いが7,155枚、新規売りが１万7,274枚出て１万0,119枚買い越し幅を縮小した。

　ニューヨーク・プラチナ４月限は、金急伸につれ高となり、２月３日以来の高値1,012.0ドルを付けたのち、リスク回避の動きに上値を抑えられた。米国の金融システム不安が欧州に飛び火し、リスク回避の動きとなった。中国経済の回復期待が下支え要因だが、米ファースト・リパブリック銀行に対する懸念も残っており、金融システムに対する見方を確認したい。
　プラチナＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は、16日のロンドンで13.81トン（前週末14.07トン）、17日のニューヨークで30.89トン（同31.32トン）、16日の南アで12.22トン（同11.89トン）となった。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、３月７日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは5,145枚となり、前週の5,297枚から縮小した。新規売りが新規買いを上回った。

　ニューヨーク金４月限は金融システム不安を受けて昨年4月以来の高値1,993.7ドルを付けた。米シリコンバレー銀行（ＳＶＢ）の破綻をきっかけに金融システム不安が広がった。金ＥＴＦ（上場投信）に逃避買いが入っており、2,000ドルの節目を突破すると、一代高値2,088.0ドルを目指すとみられる。ＳＶＢ全体では買い手が見つからず、解体して売却するという。一方、欧州ではスイスの金融大手ＵＢＳがクレディスイスを買収することになった。今週は米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）がある。