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金は米FRBのテーパリング見通しが圧迫
2021/8/10
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米CPIでタカ派意見が強まると一段安の可能性も
8月2日の週のニューヨーク金市場は、予想以上に強い米雇用統計をきっかけに急落した。中心限月となる12月限は9日に昨年4月以来の安値1,677.9ドルを付けた。7月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比94万3,000人増加し、事前予想の87万人増を上回った。前月の93万8,000人に続く伸びとなり、サービス業の労働需要が高まった。失業率は5.4%と前月の5.9%から低下した。また6月の米雇用動態調査(JOLTS)は求人件数が前月比59万件増加し、1,007万3,000件と、過去最高を更新した。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁はあと1、2カ月間、雇用の力強い伸びが続けば、米連邦準備理事会(FRB)は10〜12月中に量的緩和の縮小(テーパリング)を開始できるという見方を示した。今週は11日に7月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。事前予想は前月比0.5%上昇、前年同月比5.3%上昇。インフレ懸念から米金融当局者のタカ派意見が強まると、金の圧迫要因になるとみられる。26〜28日にジャクソンホールで開かれる年次経済シンポジウムでパウエル米FRB議長の講演も当面の焦点である。同議長は講演でテーパリングの実施を示唆するとみられている。
一方、米国で新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大で先行き懸念が残っている。ルイジアナ、フロリダ、アーカンソー州などワクチン接種率の低い地域で猛威を振るい、9日に感染者数は3日連続で平均10万人と過去1週間で35%増加した。入院者数も40%、死者も18%増加した。ワクチン接種や屋内でのマスク着用を義務付ける動きが出ており、今後の感染拡大の行方を確認したい。ニューヨーク自動車ショーの主催者は先週、デルタ変異株の感染拡大を受け、8月19日から10日間の日程で計画されていた今年のショーを中止すると発表した。一部の失業者が労働市場への復帰をためらう可能性があるとの見方もあり、今後の雇用関連の経済指標を確認したい。ただ失業給付の上乗せが大半の州で前倒しで打ち切られており、雇用不足を解消させる要因になっている。
東南アジアで7月の企業活動が急速に落ち込んだ。東南アジアの製造業セクターは、強い感染力を持つ新型コロナウイルスのデルタ株の広がりで身動きが取れなくなっている。地域人口6億人に対するワクチン接種が遅れ、各国政府はロックダウン(都市封鎖)を実施している。タイではトヨタ自動車が7月に入って部品不足を理由に、現地工場3カ所の操業を停止した。東南アジアの製造業の混乱は他の地域にも影響を与えており、今後の世界経済の行方を確認したい。
8月6日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比6.17トン減の1,025.29トンとなった。米金融当局者のタカ派発言や予想以上の米雇用統計を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月3日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは19万6,335枚となり、前週の19万9,388枚から縮小した。今回は手じまい売りが545枚、新規売りが2,508枚出て3,053枚買い越し幅を縮小した。
プラチナはドル高や金急落が圧迫
ニューヨーク・プラチナ10月限は米金融当局者のタカ派発言によるドル高や金急落を受けて軟調となり、昨年11月以来の安値954.0ドルを付けた。レンジ下放れでテクニカル要因の売り圧力も強まった。ただ上海プラチナの出来高増加とニューヨークの指定倉庫在庫の減少で実需筋が買い手に回った。ニューヨーク市場で大口投機家の新規売りが目立っており、売られ過ぎ感から買い戻しが入ると、下支えになるとみられる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、5日のロンドンで19.64トン(前週末19.51トン)、ニューヨークで39.45トン(同39.47トン)、南アで15.95トン(同15.95トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月3日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは8,804枚買い越しとなり、前週の1万1,795枚買い越しから縮小した。新規売りが目立ち、2019年7月以来の低水準となった。
ニューヨーク金は昨年4月以来の安値
ニューヨーク金12月限は、予想以上に強い米雇用統計による米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)見通しを受けて急落し、昨年4月以来の安値1,677.9ドルを付けた。長い下ヒゲが現れ、下げ一服となったが、今週は7月の米消費者物価指数(CPI)の発表があり、インフレ懸念が高まると、売り圧力が強まるとみられる。一方、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大で先行き懸念が残ることは下支え要因である。テクニカル面ではRSIが売られ過ぎの水準に入っており、1,700ドル前後で値固めできるかどうかを確認したい。
8月9日からの週の注目ポイント
9日 | 振替休日 10日国際収支・経常収支(6月) | ☆☆ |
独ZEW景況感指数(8月) | ☆☆ | |
11日 | 独消費者物価指数(7月確報) | ☆☆ |
米消費者物価指数(7月) | ☆☆☆ | |
米財政収支(7月) | ☆☆ | |
12日 | 企業物価指数(7月) | ☆ |
英国内総生産 速報値(4-6月期) | ☆☆☆ | |
英鉱工業生産指数(6月) | ☆☆ | |
ユーロ圏鉱工業生産(6月) | ☆☆ | |
米生産者物価指数(7月) | ☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
13日 | ユーロ圏貿易収支(6月) | ☆ |
米輸出入物価指数(7月) | ☆ | |
米ミシガン大消費者信頼感指数(8月速報値) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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