７月28日の週のニューヨーク金市場はドル安や米経済の先行き懸念を受けて急伸し、期近12月限が一代高値2,005.4ドルを付けた。米新規失業保険申請件数が２週連続で増加し、労働市場の回復が失速するとの見方や、第２四半期の米国内総生産（ＧＤＰ）速報値が過去最大の落ち込みを示したことを受けてドル安が進み、ドル指数が2018年５月以来の安値92.55を付けた。米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）で景気回復に向けて「あらゆる手段」を尽くすとし、必要な限り政策金利をゼロ％近辺にとどめると改めて表明した。しかし、米議会で追加経済対策の協議が難航し、月末で失業給付上乗せが失効した。トランプ米政権は失業給付上乗せを一時的に延長し、その後に対策案に取り組むことを提案したが、民主党が拒否した。８月１日も協議したが、ムニューシン米財務長官は合意成立には「片付けなければならないことがなお多い」と述べた。個人消費の先行きに対する懸念が出ており、ドル安が続くと、金は引き続き上値を試す可能性がある。今週は７日に７月の米雇用統計の発表があり、労働市場に対する見方を確認したい。事前予想は非農業部門雇用者数が167万5,000人増、失業率が10.5％（前月11.1％）となっている。
世界保健機関（ＷＨＯ）は31日、世界の新型コロナウイルス感染者が過去24時間で29万2,527人増加したと発表した。１日の増加として過去最多となり、収束の気配は見られない。新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいるが、利用可能になるのは年末とみられている。一方、米公衆衛生当局者や議員らは研究者や製薬会社がワクチン開発を進めるなか、トランプ米政権に全国的なワクチン配布に関する計画性が欠如していると指摘した。米国は感染者・死者ともに世界で最も多く、新型コロナウイルスの対応の行方を確認したい。
ポンペオ米国務長官は23日にカリフォルニア州で行われた演説で、習近平中国国家主席を「破綻した全体主義イデオロギーの信奉者だ」と呼び、中国人民たちに向かって、「共産党政権を交代せよ」と要求した。米国は中国共産党と中国人民を区別して中国に対する圧力を強めており、今後の米中の対立の行方を確認したい。トランプ米大統領は31日、中国・北京字節跳動科技（バイトダンス）傘下の短編動画投稿アプリ「ＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）」について、利用禁止も含めた多くの選択肢を検討している。利用者の個人情報が中国政府に悪用される恐れがあるとしている。米大統領は11月に予定されている大統領選を延期する可能性に言及しており、追加経済対策の方針や中国への圧力強化は米大統領選を見据えた動きである。米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、２日時点の全米の支持率はトランプ大統領が42％、民主党のバイデン前副大統領が49.4％とバイデン氏が優勢となっている。
７月31日のニューヨークの金ＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は前週末比13.15トン増の1,241.96トンとなった。ドル安や新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念などを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、７月28日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは23万6,801枚となり、前週の26万6,436枚から縮小した。今回は手じまい売りいが２万1,649枚、新規売りが7,986枚出て２万9,635枚買い越し幅を縮小した。

ニューヨーク・プラチナ期近10月限はドル安や金堅調を受けて上値を伸ばし、２月20日以来の高値1,002.0ドルを付けたのち、戻りを売られて上げ一服となった。米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）後にドル安が一服したことも上値を抑える要因になった。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、上海プラチナの出来高が減少し、実需筋が高値での買いを見送っており、どの水準で安値拾いの買いが入るかを確認したい。一方、テクニカル面での改善を受けてプラチナＥＴＦ（上場投信）に投資資金が流入しており、引き続き買われるかどうかも焦点である。
プラチナＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は、29日のロンドンで17.59トン（前週末17.59トン）、ニューヨークで31.24トン（同30.51トン）、30日の南アで19.55トン（同19.37トン）となった。テクニカル面で改善し、ニューヨークと南アで増加した。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、７月28日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは２万2,412枚となり、前週の２万0,412枚から拡大した。新規買いが新規売りを上回った。

ニューヨーク金12月限はドル安などを受けて急伸し、一代高値2,005.4ドルを付けた。米経済指標の悪化で労働市場の回復が失速するとの見方や第２四半期の米国内総生産（ＧＤＰ）が過去最大の落ち込みとなったことを受けてドル安が進んだ。また米議会で追加経済対策の協議が難航し、月末で失業給付上乗せが失効した。テクニカル面では1,900ドルの節目を突破してから2,000ドル台に急伸するなか、ＲＳＩが買われ過ぎの水準で推移しており、過熱感が出ている。ドル安が一服すると、利食い売り主導の調整局面が警戒される。今週は米雇用統計などの発表がある。