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2021-12-04 00:26:34

リーマンショックから10年、金市場を俯瞰する

提供:SBIゴールド

2008年秋にリーマンショックが発生して、極めて不安定な世界経済・金融市場からの逃避先として資金が金市場に流入し、金価格が2013年初頭まで高騰した。一方、金融市場が落ち着き、世界経済(特に米国)が好転する兆しを見せた2013年春から2015年まで、こうした逃避資金は再び他の資産に向かい、金価格は下落した。逃避資金がほぼ退出した2016年以降は、金市場が正常化し、マクロ経済の不確実性の上昇を反映して、金価格は緩やかな上昇傾向に転じた(図表1参照)。

一方、ここ数ヶ月、米ドル為替レートの上昇の影響(金価格と米ドル為替レートと逆相関の関係にある)も受け、金価格はここ2年のレンジ下限である1オンスあたり1200米ドル台前半で推移しており、悲観論まで飛び出している。しかし、100年に一度の危機から生じた逃避資金の流入と流失による金価格への影響を取り除き、長いタイムスパンで金市場を分析すれば、金価格・金需要は未だ堅調に推移していると見ることもできる。

図表2は、リーマンショック前の金価格・金需要を、逃避資金の影響を受けない現在と比較したものである。

図表2:金市場の10年比較

金価格も金需要も、逃避資金の影響を除けば、リーマンショック前に比べ明らかに底上げされていることが分かる。構造的な要因として、1) 中国およびインドの消費者需要の拡大、2)中央銀行の金保有に対する考え方の変化、3)ETFを通した機関投資家の市場参入などが考えられる。まず、金と文化的・歴史的なつながりが強い中国やインドにおいて、経済規模の拡大と中間層の増加が原動力となり、金市場のスーパー・パワーに成長した。現在では、両国で消費者需要の半分以上を占めるようになった。また、外貨準備の保有において、リーマンショックおよびユーロソブリン危機で信頼が低下した主要通貨からの分散の必要性を感じ、それまで長期にわたり金を売却してきた中央銀行は、2010年から金の購入者に転じた。さらに、資金の逃避先としてではなく、ポートフォリオ投資における金の様々な役割(分散効果やリスクヘッジ機能)に着目した中長期の投資家が、金ETF市場に積極的に参入したことも金需要の増加に寄与し、金価格の上昇を支えた。

したがって、金市場の将来を展望する上で、これらの構造要因が持続するかどうかを考えることが重要となる。

中国やインドについては、しばらくの間、経済は引き続き成長し、中間層が加速的に増加すると多くの専門家が予測しており、潜在需要は力強いと言えよう。中央銀行は、政策目的(外貨準備における通貨分散や国の流動性確保)の達成に向けて、積極的に金を積み増しているところもまだ多く、当面は需要を支える勢力となろう。機関投資家は、マクロ経済・政治環境の不確実性がなかなか低下しない中、投資における金の保険機能に対する期待が本格的に後退する可能性は低く、ETF需要は堅調さを維持されるだろう。また、鉱山からの金供給が2019年から減少に向かう傾向にあり、需要・供給バランスが悪化することを考えると、中長期的に金市場はダウンサイド・リスクよりもアップサイド・ポテンシャルの方が大きいと議論できるのではないだろうか?

森田アソシエイツ 森田 隆大(もりた たかひろ)
ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得。1990年にムーディーズ・インベスターズ・サービス本社(ニューヨーク)にシニア・アナリストとして入社。2000年に格付委員会議長を兼務。2002年に日本及び韓国の事業会社格付部門の統括責任者に就任。2010年にワールド・ゴールド・カウンシルに入社、翌年、日本代表に就任。金ファンダメンタルズおよび投資における金の役割に関する調査・研究の提供、および投資家との直接対話を通して、金投資の普及活動に取り組む。
2016年に森田アソシエイツを設立、ワールド・ゴールド・カウンシル顧問を兼務。現在、埼玉学園大学大学院客員教授、特定非営利活動法人NPOフェアレーティング代表理事、MSクレジットリサーチ取締役兼評価委員会議長も兼任。立命館大学金融・法・税務研究センターシニアフェロー、法政大学大学院兼任講師を歴任。

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