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2018-10-21 03:52:27

中央銀行需要から見る金投資の意味

提供:SBIゴールド

1989年から2009年までの約20年間、長きにわたり外貨準備資産として保有した金を年平均で約400トン売却してきた中央銀行セクターは、2010年に再び金の購入者に転じた。その後、2017年まで年平均で約400トン強を購入し、2018年第一四半期の購入量も115トンを超えた。年間需要が4000トン前後の金市場にとって、大きな構造変化である(図表1参照)。

(図表1)

出所: Gold Demand Trend, World Gold Councilより作成

ここ5年ほどの主な金の購入国は、中国、ロシア、カザフスタン、トルコ、インド、メキシコ、韓国、ブラジル、アルゼンチンなどの新興国の中央銀行である。しかしながら、中央銀行の外貨準備における金の保有量は、未だに米国、ドイツ、イタリア、フランスをはじめ、金本位制時代に金を大量に保有した国によって上位が占められている。8134トンを保有するトップの米国は、ここ数十年、金を購入しなかったものの、欧州の主要中央銀行が積極的に金を売却した90年代においても、追随する行動を一切取らなかった。当時のグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は、議会で「金は究極の支払い手段だ」と証言し、売却の可能性を強く否定した。わが国は765トンの金を保有し、世界第9位である(図表2参照)。現在、世界に存在する金の約17%を中央銀行が保有している。金は米ドル、ユーロに次ぐ第3位の準備通貨であり、中央銀行全体が保有する外貨準備の約10%を占めている。

(図表2)

余談だが、グリーンスパンはFRB議長を引退後、ヘッジファンドの講演会に招かれ、報酬として受け取りたい通貨を聞かれ、金と答えたのは有名な話である。

中央銀行が金を購入・保有する目的は、主に外貨準備における通貨分散である。リーマンショックやユーロソブリン危機の発生をきっかけに、ドルやユーロなどの主要通貨に対する信頼が揺らぎ、新興国の中央銀行を中心に特定の通貨への依存度を下げ、外貨準備の多様化が図られた。主要通貨、特に米ドルと長期にわたり負の相関関係を維持している金が、分散効果を持つ資産として積み増しされた。
中央銀行の金に対する期待は他にもある。例えば、外貨準備のうち米ドルとユーロが大半を占めていたロシアは、ウクライナ問題を巡って欧米が発動した経済制裁に対抗するため、金の蓄積を加速した(図表3参照)。

(図表3)

出所:MF IFS; ICE Benchmark Administration; World Gold Council

国際通貨基金(IMF)から特別引出権(SDR)の構成通貨として人民元が認められた中国は、国際通貨の仲間入りを目指す過程において、自国通貨の信用力を担保するものとして金の保有高を積極的に増やし、信頼が揺らぐ米ドルやユーロとの差別化を図った。中国の高官は、人民元の国際化を推進するにあたり、金に対する期待についても様々な場で言及している。欧米主要国における債務膨張への警戒感から、国の財政・金融問題や金融危機に影響を受けない金の保有量を増加させている中央銀行もある。誰の負債でもない実物資産としての金の信用力への信認である。
中央銀行の積極的な金購入は、想定した目標効果が得られるまで、しばらく継続される見込みである。これらの動きは、多くの当局が、世界経済・通貨・金融市場が引き続き高い不確実性を内包し、地政学リスクも減少しないおそれがあることに対する懸念を主な背景としている。こうしたマクロ環境において、通貨・資産分散、テールリスクへの備え、流動性の確保、信用力リスクヘッジなど、金は様々な投資リスクに対する保険として機能する。まさに時代背景と金保有の意義がマッチし始めたのである。不確実性が高い投資環境がしばらく続くと思われるため、中央銀行だけではなく、投資家も金をもう一度見つめ直す時期が来たのではないだろうか?

森田アソシエイツ 森田 隆大(もりた たかひろ)
ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得。1990年にムーディーズ・インベスターズ・サービス本社(ニューヨーク)にシニア・アナリストとして入社。2000年に格付委員会議長を兼務。2002年に日本及び韓国の事業会社格付部門の統括責任者に就任。2010年にワールド・ゴールド・カウンシルに入社、翌年、日本代表に就任。金ファンダメンタルズおよび投資における金の役割に関する調査・研究の提供、および投資家との直接対話を通して、金投資の普及活動に取り組む。
2016年に森田アソシエイツを設立、ワールド・ゴールド・カウンシル顧問を兼務。現在、埼玉学園大学大学院客員教授、特定非営利活動法人NPOフェアレーティング代表理事、MSクレジットリサーチ取締役兼評価委員会議長も兼任。立命館大学金融・法・税務研究センターシニアフェロー、法政大学大学院兼任講師を歴任。

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