日経平均株価が、ついに19,000円の大台に乗せてきました。来期の日本経済に対する期待感がさらに高まっていることが背景です。また、円安や原油安の効果が見込まれること、ベア実施で実質所得の増加が期待されること、さらに法人税減税の効果や消費増税の影響剥落も予想されること等も一因です。年金買いによる相場下支えや、世界的低金利を背景に運用難から欧米投資家による買いも想定され、日経平均株価は「2万円回復」も「時間の問題」とみる向きが多いようです。
一方、米国のNYダウは一進一退の展開を続けています。同平均株価の年初来上昇率は1%(3月18日)にとどまり、日経平均の同12%をかなりアンダーパフォームしています。図表1にもあるように、日経平均株価との格差は拡大傾向です。米国では、雇用の拡大を背景に、政策金利引き上げへの警戒感が強まる一方、ドル高の進行で、企業業績に悪影響が表れ始めるなど、消化不良の材料が増えています。
さて、今後の日米株価はどう推移するでしょうか。日経平均は20,000円に乗せるでしょうか。仮にそうなった場合、それを契機に下落するでしょうか。それとも、上昇を続けるでしょうか。複数の視点から現在の日経平均をみてみたいと思います。
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日米株価「デカップリング」の背景にあるものは? |
図表1:「デカップリング」の傾向を強める日米株価
- 当社チャートツールもとにSBI証券が作成。6ヵ月前を1として日経平均及びNYダウを指数化したもの。
「米国がくしゃみをすれば日本が風邪を引く」と言われるように、日米経済は密接な関係にあります。このため、日本と米国の株価は連動(カップリング)しやすいと考えられてきました。しかし、そうした日米株価の連動性が最近は崩れ始めています。なぜでしょうか。
米国経済・株式が好調な時は一般的に、米長期金利が上昇し、ドル高・円安となり、それが日本株高につながりやすくなります。逆に米国経済・株式が不調の時は、米長期金利が低下し、「リスク回避」もあって、ドル安・円高となり、日本株安につながりやすくなります。現在も、この構図が完全に崩れたとは言い難いでしょう。
ただ、冒頭でご説明したように、日本の景気回復に寄与するとみられるベア実施や、消費税増税一巡、法人税減税等の動きは、米国経済と関係性が比較的薄い日本独自の動きとみられます。また、医薬品、陸運、サービスなど、年初来の日本株市場をけん引してきた業種の多くが為替の影響を受けにくい内需型業種であったことも影響しているとみられます。
さらに、外為市場で「リスク回避の円高」という現象が起こりにくくなっている可能性も指摘できます。かつて、日本が世界で最も低金利だった頃ならば、円で借りて外貨で運用する取引が増え、それが巻き戻される時に円高になりやすいという理屈が通じたと思います。しかし、現在は日本が最も低金利な訳ではありません。むしろマイナス金利が浸透するユーロ圏での資金調達が増えやすく、今後は「リスク回避のユーロ高」となる日が来るかもしれません。
いずれにせよ、日米株価のデカップリングは、日米経済を取り巻く環境の変化が影響していると考えられます。
こうした中、米国は、政策金利の引き上げをいつ実施し、その後どういうペースで引き上げを継続するか、その読みに悩まされるタイミングに差し掛かっています。普通に考えれば、最初の政策金利引き上げまでは米株価は軟調に推移し、実際に引き上げられた後は、堅調に転ずる可能性が大きいとみられます。当面、米国株は下げないまでも、上値を抑えつけられた状態で推移する可能性があります。ただ、最近の「デカップリング」の傾向から、日本株への悪影響は限定的とみられます。
RSIの逆行現象に注意 |
図表2:RSIの逆行現象に注意
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
東京株式市場はテクニカル的にみると過熱感を強めています。日経平均のRSI(14日)が73%と過熱圏(70%以上)入りしていること、東証一部の騰落レシオが136%と、やはり過熱圏(130%以上)入りしていることがあげられます。日経平均の25日移動平均からのかい離率も5%近くに達しており、最近の傾向では「過熱圏」に近い状態と言えます。
このうち、RSIと日経平均の関係を見たものが図表2です。この指標の難しい所は、70%を付けたからといって直後に株価が下がるとは限らない点です。むしろ、そこから上昇が加速する時すらあります。しかし、RSIが過熱圏から低下しながらも、株価が上昇する「逆行現象」が出た時は、注意が必要です。その後に調整が入るケースが多いためです。(図表2)
仮に短期間のうちに日経平均が20,000円まで上昇した場合、25日移動平均からのかい離率が7%前後に達してくる可能性が大きく、テクニカル指標のほとんどが過熱圏を示唆することにもなりそうです。その場合は「目標達成感」も手伝い、一時的にせよ、調整が広がってくる可能性もありそうです。
ただ、冒頭に述べた日本経済の回復をもたらす様々な要因が、来年度以降は実際に、日経平均株価の予想EPS上昇をもたらすと予想されます。その最初の動きが出てくるのは、4月下旬からスタートする決算発表になりそうです。日経平均がその時に再度上昇してくる可能性は大きいと考えられます。そう考えると、ここからの東京市場は「次のジャンプのために、いつ屈むか」がポイントと言えるかもしれません。
リスク限定で調整局面に備えるには |
図表3:日経平均プット・オプション(2015年4月限・権利行使価格19,500円)のプレミアム推移
- ※日経平均オプション取引データをもとにSBI証券が作成。最新データは2015年3月19日(日中)。
日経平均株価の調整が想定される時、どのようにリスク・ヘッジすべきでしょうか。信用取引でのカラ売りや先物市場での売りなどはその代表例と言えます。しかし、これらの方法は、相場観と逆の方向に大きく傾いた時に、損失が大きく膨らみやすいので、市場動向に精通した上級者向きの取引であると言えます。
そうした中、「プット・オプションの買い」は、リスクを限定させながら、下落相場に備えることができるので、有効なリスクヘッジ手段のひとつと考えられます。日経平均の「プットオプション」は、日経平均が下がる時に上昇しやすい特性があるためです。
図表3は、日経平均プット・オプション(2015年4月限・権利行使価格19,500円)のプレミアム推移を示しています。これまで、日経平均は上昇傾向でしたので、プット・オプションは下落基調でした。仮に、ここから日経平均が20,000円を付けに行くような場面があれば、さらに下落が加速する可能性があります。
しかし、そこがプットの「買い場」になる可能性もあります。オプション取引は時間の勝負です。買いから入って、時間が経過すると「時間的価値」の減少で、収益確保に苦労することがあります。それだけに、投資タイミングについては、今回のように「想定シナリオ」を決めて臨むことも一つの方法と言えるのではないでしょうか。
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