相場の上昇基調は継続か〜NT倍率の乱高下に注意〜
年末連騰・年明け波乱と物色のひずみ
東京株式市場では12月17日から30日にかけ、日経平均株価が9営業日連続で上昇しました。12月18日まで開催されていた米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)が、債券買い入れ額を、これまでの月850億ドルから750億ドルに縮小することを決定。日米株式市場で、アク抜け感が広がるとともに、円安が加速したことが大きな要因と考えられます。
図1は2013年後半における日経平均株価の動きとドル・円相場の動きを比較したものです。もともと、我が国の株価は、円安で上昇しやすく、円高で下落しやすい傾向がある訳ですが、年末にかけ、円安・ドル高が加速し、1ドル105円まで円安・ドル高が進んだことで、株式市場に大きな追い風をもたらしました。
2013年12月の相場については、事前予想では、キャピタルゲイン課税の税率変更があるため、益出しが増加し、調整する場面もあると警戒されていましたが、そうした見方はほとんど杞憂に終わった形となりました。むしろ、26日の実質年替わり以降は、NISA(少額投資非課税制度)を通じた買いも入るようになり、上昇スピードを速める展開となりました。
こうした中、東京株式市場は、2014年1月6日の大発会を迎えることになりました。日本が正月休みを過ごしている間、米国株が小幅安に終わったことや、外為市場でやや反動的な円高・ドル安/円高・ユーロ安が進んだことを受け、日経平均株価はこの日、382円安と波乱の展開になりました。
ただ、日経平均の下落幅から受ける印象ほどには、市場の勢いは弱まってはいないと考えられます。事実、6日の東京株式市場では、東証一部の値上がり銘柄数は値下がり銘柄数を上回り、ジャスダックやマザーズなどの指標は上昇しています。6日の波乱は、株式市場のトレンド転換ではなく、NT倍率の乱高下が演出したテクニカルな現象であった可能性が大きいと言えます。
図1:日経平均株価(日足)と主要移動平均線(日足)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
株式市場と外為市場の営業日を合わせる調整をしており、休業日も含めているため、同じ値が何日か続いている部分がある。
NT倍率が乱高下〜ただし、1月6日の波乱でひずみが解消方向
図2は、2013年後半におけるNT倍率(日経平均株価/TOPIX(東証株価指数))の推移を示したものです。11月上旬までは12倍をはさんだ水準で推移してきましたが、そこから年末にかけては急上昇となりました。
以前、ご説明したように、日経平均は簡単に言えば「ファーストリテイリングやファナックなどの影響を強めに受けやすい単純平均型指数」であり、TOPIXは「トヨタやメガバンクなどの影響を強めに受けやすい時価総額加重平均型指数」です。年末は、ファーストリテイリングやファナックの上昇が顕著になった反面、トヨタなどが冴えない展開になり、NT倍率が上昇傾向となりました。ただ、ファーストリテイリング・ファナックと、トヨタやメガバンクの間に、特に業績の方向感にそれ程大きな違いがある訳ではないとみられます。むしろ前2社について「予想PER40倍台」を許容できるかといえば、否定的にとらえる投資家も多いとみられます。そのため、このNT倍率の高さが、2014年は波乱要因のひとつになるかもしれないと考えられていました。
1月6日に、東証一部で過半数の銘柄が値上がりしたにもかかわらず、日経平均株価が急落した背景には、上述したようなひずみの解消が一気に進んだことが指摘されます。
ちなみに、図3はNT倍率が、自らの25日移動平均から、どの程度乖離・収束してきたのかを示しています。これを見る限りでは、NT倍率が25日移動平均から上下2%乖離すると、収束に向かう傾向が認められます。1月6日が終わった段階で、この乖離率は▲1.2%になっていますので「調整完了」の水準とは言いにくいですが、この日のような動きがもう少し続けば、調整完了になる可能性は大きいとみられます。
図2:NT倍率・日足
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。NT倍率=日経平均/TOPIX(東証株価指数)
図3:NT倍率(日足)の25日移動平均からの乖離率
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。NT倍率=日経平均/TOPIX(東証株価指数)