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“「トランプ劇場」の佳境近し〜プラス面とマイナス面”
“「トランプ劇場」の佳境近し〜プラス面とマイナス面”
2020/8/12
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
“「トランプ劇場」の佳境近し〜プラス面とマイナス面”
- 11月の米大統領選挙の再選に向けて「トランプ劇場」が佳境を迎えようとしている。それは米国株式市場に対しどのような影響を及ぼすのだろうか。
- トランプ大統領は8/8、失業保険給付の上乗せなど追加の新型コロナウイルス経済対策を実施する大統領令に署名した。連邦政府の支出権限は議会にあり法的な問題に直面する可能性があるが、何も決められない議会に対し、国民生活のために決断をしたトランプ大統領の行動力を際立たせる効果が見込まれよう。株式市場も8/10のNYダウ平均株価終値が前日比357ドル高の27,791ドルに上昇するなど景気敏感株を中心にこの動きを好感しているように見られる。
- その一方、トランプ大統領は8/6、中国の動画投稿アプリ「TikTok」および通信アプリ「WeChat」が関わる取引を米国居住者が行うことを禁止する大統領令に署名した。米国民の個人情報が収集されることによる国家安全保障上のリスクを理由に挙げているが、世界のテクノロジー業界における中国の台頭を抑える取組みを強化することで支持率を上げることを狙っている面もあろう。禁止は45日後に発効するが、ウィーチャットの親会社であるテンセント・ホールディングスの株価は8/7香港市場で一時前日終値比10%超の下落となった。その他にも、アザー米厚生長官の台湾訪問による「一つの中国」原則への挑戦、米財務省による香港行政長官など高官11人に対する制裁措置の発表など対中強硬策を一挙に打ち出してきた。これは2018年10月にペンス副大統領がワシントンのハドソン研究所で講演し、中国共産党との戦いを呼びかけた時を彷彿とさせるものであり、ダウ平均株価において2018年10月の同年高値26,951ドルから2018年12月の同年安値21,712ドルまで下落したことが想起される。
- 中国も香港国家安全維持法違反の疑いで香港紙創業者や活動家を逮捕するなど強硬姿勢を強めており、トランプ政権は更に強硬策を打ち出すことで支持率を上げることが可能になる面もあろう。ただし、軍事的緊張へのエスカレートは株式市場への打撃となり得るほか、中国のEコマース大手アリババ・グループ・ホールディング(BABA)の株価にも要注意だろう。NYSE FANGプラス指数を通じ、同社と同様に指数構成銘柄である米国株のFAANG銘柄やテスラ(TSLA)、エヌビディア(NVDA)の株価も影響を受ける可能性があろう。対中国強硬策の激化はトランプ大統領の支持率にとってはプラスの面があっても、株式市場にとっては短期的には大きなリスクと見なされよう。(笹木)
- 8/12号では、アップル(AAPL)、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)、フェイスブック(FB)、ファイサーブ(FISV)、アルファベット(GOOG)、Rocket Cos Inc(RKT)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(8/7現在)
8月11日(火) | シスコ、ブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ |
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8月12日(水) | シスコシステムズ |
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8月13日(木) | アプライド・マテリアルズ、タペストリー、百度[バイドゥ]、網易[ネットイース] |
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8月17日(月) | JDドットコム |
8月11日(火) | - 米サンフランシスコ連銀総裁がオンライン討論会に参加
- 米PPI (7月)
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8月12日(水) | - 米ボストン連銀総裁が講演(オンライン)、ダラス連銀総裁が質疑応答に参加、サンフランシスコ連銀総裁がオンライン討論会に参加
- 米CPI (7月)、財政収支(7月)
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8月13日(木) | - 米新規失業保険申請件数(8月8日終了週)、輸入物価指数(7月)
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8月14日(金) | - 米小売売上高 (7月)、鉱工業生産(7月)、企業在庫(6月)、ミシガン大学消費者マインド指数(8月)
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8月17日(月) | - ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)、NAHB住宅市場指数(8月)
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- 1974年創業。モバイル通信端末、メディア機器、PCの設計・製造および販売を行う。ソフトウェアやアクセサリー、ネットワークソリューション、デジタルコンテンツ、アプリケーションなども手掛ける。
- 7/30発表の2020/9期3Q(4-6月)は、売上高が前年同期比10.9%増の596.85億USD、純利益が同12.0%増の112.53億USD。売上高では、主力のiPhoneが同1.7%増の264.18億USDだったが、Apple WatchやAirPodsを含む周辺機器部門が同22.9%増、サービス部門が同14.8%増と伸びた。
- コロナ禍に伴う不確実性を考慮し、2020/9期4Q(7-9月)の会社計画を見送った。アップルストアの有料登録者数が1Q末比3,500万人増加の5.5億人超に拡大。米国の新学期が始まる秋以降、iPadやMacの需要が高まるとの見方を示した。その一方、毎年9月後半開始の新型iPhone販売時期が数週間遅れる見通しに言及。また、同社は8/24を基準日とし株式1株を4株に分割すると発表。(李)
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- 1920年代にアニメスタジオとして発足。世界最大のエンターテインメントおよびメディア企業で、テレビ放送をはじめ、映画・ゲーム制作、テーマパーク・リゾートの運営など幅広い事業を手掛ける。
- 8/4発表の2020/9期3Q(4-6月)は、売上高が前年同期比41.9%減の117.79億USD、継続事業からの純利益が前年同期の14.3億USDから▲47.18億USDへ赤字転落。5月再開の上海ディズニーを除き全施設が休止となったためテーマパークが同85.0%減収。また、映画部門が同54.7%減収。
- コロナ禍による不確実性を考慮し、2020/12期に係る会社計画を非開示とした。動画配信サービスのDisney+の会員者数は2Q末比72%増の6,050万人(8/3時点)となり、2024/9期末目標の6,000-9,000万人の下限に届く水準に達した。9/4にDisney+で配信予定の新作映画「ムーラン」は月会費の他に29.99USDを課金する方針。また、Disney+の11月以降の南米進出も成長に寄与しよう。(李)
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- 2004年にザッカーバーグCEOらがサービス開始。無料登録SNSの「Facebook」のほか、画像・動画共有アプリの「Instagram」、メッセージアプリの「Messenger」、「WhatsApp」、および「Oculus」を展開。
- 7/30発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比10.7%増の186.87億USD、純利益が同2.0倍の51.78億USD。稼働契約者数が日次で同12%増、月次で同12%増と伸びたことが増収に寄与した。前年同期に計上した制裁準備引当金がなくなり、利益を押し上げた。
- 同社が7-9月の広告収入を10%増との見通しを示したなか、7月最初の3週間の広告収入が前年同期比10%増と2Qと同じ伸びで推移。人種差別問題で広告撤収に参加した約1,100社にスターバックスなどの大手が含まれるが、同社の広告主の主力は中小企業で占められており、広告収入への影響は限定的と見られる。米地域経済の再開進展に伴い広告収入の上振れが期待される。(李)
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- 1984年に設立のフィンテック・サービス企業。金融機関向けにモバイル銀行システム、電子決済サービスを展開するほか、個人間(P2P)の支払いサービスに進出。顧客数は44,000社に上る。
- 8/5発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比2.3倍の34.65億USD、調整後純利益が同5.8%減の6.31億USD。ファーストデータ社の買収効果でペイメント事業が同99.4%増収(13.29億USD)と増収に寄与。買収の影響を除く調整後売上高は前年同期比11.6%減の32.2億USD。
- コロナ禍の影響が不透明なため2020/12通期の会社予想の公表を見送ったが、通期の調整後EPSは少なくとも前期比10%以上増の4.33USDとの見通しを示した。同社は1-6月期に1,430万株(14.4億USD)の自社株買いを実施。また、バンク・オブ・アメリカ(BAC)との合弁事業が7/1に終了したなか、合弁事業から一部の顧客を獲得したほか、BACの新規顧客と5年間のサービス協定を締結。(李)
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- 2015年にGoogleの持株会社として設立。傘下企業で最大のGoogleは、Android、Chrome、Gmail、Googleドライブ、Googleマップ、Google Play、Google検索、YouTubeなどを提供している。
- 7/30発表の2020/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比1.7%減の382.97億USD、純利益が同30.0%減の69.59億USD。主力の広告事業が同8.1%減の298.67億USD。その内、検索連動型広告が同9.8%減だったことが響いた。ユーチューブ広告は同5.8%増収だったが、伸びが鈍化した。
- コロナ禍の影響が不透明なため2020/12期に係る会社予想を非開示とした。前年同期比43.2%増収だったクラウド事業は、受注残が148億USDと高水準であり高成長が見込まれるほか、コロナ禍で減少した企業の広告出稿も改善傾向にあると見られる。また、2Qに純利益と同額となる69億USDの自社株買いを実施したほか、8/3に社債100億USDを発行。財務レバレッジを高める方針だ。(李)
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- 1985年設立。ネット経由で「ロケット・モーゲージ」ブランドの住宅ローンを提供するフィンテック企業であり、市場シェアは大手銀行を抜いて業界トップとなった。今年8/6に新規上場を果たした。
- 7/28発表の2020/12期1Q(1-3月)は、総収益が前年同期比2.2倍の13.66億USD、純利益が前年同期の▲2,99億USDから9,772万USDへ黒字転換。コロナ禍に対応したFRBの金融緩和強化によりモーゲージ金利が低下したこと、および巣ごもりによるネット経由の申込み需要増が業績に寄与した。
- 1Qのセグメント別収益は、ローン売却益が前年同期比2.5倍の18.22億USD、債権回収フィー収益が同14.5%増の2.57億USD、モーゲージ・サービシング権(MSR)の公正価値変動額が前年同期の▲4.75億USDから▲9.91億USDへ赤字拡大、その他収益が同79.2%増の2.44億USD。モーゲージ金利低下によるローン売却益の増加額がMSRの赤字額拡大を上回ることで増収となっている。(笹木)
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