2013年も残り1ヶ月少々を残すだけとなり、また寒い季節になってきました。家族や通勤電車の中など、筆者のまわりにもマスクをする人が増えてきました。
今回の福の神レポートでは、報道等で取り上げられることが増えている“PM2.5”や、それに関連する銘柄に焦点をあてご紹介したいと思います。
“PM2.5”って何?
PM2.5(微小粒子状物質)は、大気汚染物質の1つで、直径2.5μm(1μm=0.001mm)以下の小さな粒子であり、様々な成分からなっており、影響も異なると考えられます。従来より、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準である環境基準を定め対策を進めてきた浮遊粒子状物質(SPM:10μm 以下の粒子)に比べて肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系への影響に加え、循環器系への影響も懸念されています。
近年、日本ではこれまで取り組んできた大気汚染防止法に基づく工場・事業場等のばい煙発生施設の規制や自動車排出ガス規制などにより、年間の平均的な濃度は減少傾向にあります。
図1:PM2.5質量濃度の推移(平成13〜22年度)
- 出典:微小粒子状物質等曝露影響実測調査
しかしながら、中国では2013年1月に、「歴史上まれにしか見られないほど」(中国気象局)とされるレベルで、1月10日頃から始まった激しい汚染はおよそ3週間も継続し、呼吸器疾患患者が増加したほか、工場の操業停止や道路・空港の閉鎖などの影響が生じたようです。この時期は偏西風に乗って、日本本土へのPM2.5の飛散が懸念され、実際に日本の各地でPM2.5の測定値の上昇が見られました。日本国内でも、中国からのPM2.5の飛散による大気汚染が大々的に報道され、大きな話題となっていました。株式市場においても影響が出ており、PM2.5関連銘柄に大きく値が動くものが散見されました。
再び深刻化する“PM2.5”
2013年11月15日付の中国紙・北京青年報などによると、北京市環境局は大気汚染の主な原因となる微小粒子状物質(PM2.5)について、今年の平均濃度が、1立方メートルあたり90マイクログラム前後に上ることを明らかにしています。中国の環境基準の約2.5倍、日本の基準値の6倍に当たるそうです。
PM2.5を増加させる原因として、工場や自動車から出される窒素酸化物・硫黄酸化物などのガス状大気汚染物質が考えられています。コレに加えて、気温が急激に下がって、中国でも石炭暖房の使用が増加したこともその要因でしょう。今後、もっと寒くなれば、燃やされる石炭が増加することから、PM2.5による問題も深刻化しそうです。
また、日本にとっても偏西風による北西の季節風が吹く季節となり、日本海を飛び越しての、PM2.5の飛散が懸念される状況となりそうです。
上述のような状況になった場合、過去にあったような“マスク”に関連する銘柄に再び注目が集まりそうです。
過去に発生した“マスク”関連銘柄の株価推移
2002年冬 SARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行
SBI証券投資調査部にて作成。2003年3月3日時点の株価を1として指数化し騰落率を表示。WHO(世界保健機関)が世界規模に警告を出した2003年3月を起点として3ヶ月間の株価の推移を表示。
騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
2005年秋 鳥インフルエンザが東南アジアで大流行
SBI証券投資調査部にて作成。2005年11月1日時点の株価を1として指数化し騰落率を表示。2005年当時で鳥インフルエンザ死亡者数が最大であるベトナムにて、同国政府が鳥インフルエンザ防止緊急対策を発表した2005年11月を起点として3ヶ月間の株価の推移を表示。
騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
“PM2.5”関連銘柄をご紹介
国民の健康に関するニュースに対しては、株式相場は敏感に反応することが多いです。
まずは、第一弾のニュースで関連銘柄が急騰、追加でドンドン状況が悪化していけば、関連銘柄は更に上値追いすることになります。2013年の1月以降、中国・北京を中心としたPM2.5の猛威の報道より、PM2.5関連銘柄が動意づいています。今後も、寒さが厳しくなるにつれて、中国からのPM2.5に関する報道が増加すると想定されるので、半歩先読みでPM2.5関連銘柄をご紹介いたしましょう。
銘柄コード |
6709 |
|
---|---|---|
銘柄名 |
||
市場 |
東証2部 |
|
株価 |
103円 |
|
単元株数 |
1,000株 |
|
予想PER(連) |
34.2倍 |
|
実績PBR(連) |
2.55倍 |
|
時価総額 |
約137億円 |
|
銘柄概要 |
IHI(7013 東証1部)傘下の観測機器メーカーである明星電気。1938年の創業時より、常に日本の気象観測、地震・津波観測など、気象・環境・防災分野において重要な役割を担っています。2012年6月に株式会社IHIのグループ会社となっており、宇宙・防衛関連や民間・海外市場を連携して開拓しています。 |
|
株価の推移 |
2012年11月26日安値69円より、2013年5月7日高値111円まで大きく値を飛ばしました後、2013年6月26日安値78円まで反落しています。その後、反発しており直近5月高値を抜けてきています。 |
|
ポイント |
・ 大気汚染の観測機器を製造。地域気象観測システムの大手で官公需の比率が高い。 ・ 2012年6月より、IHIのグループ会社となり、様々な事業での連携が期待出来そうです。 ・ 株価100円台の低位株であることから、一旦動意づくと変動率が高くなることが魅力。 |
SBI証券投資調査部にて作成。株価・予想PER(連)・実績PBR(連)・時価総額は、2013/11/18/終値を基準に表示。
銘柄コード |
6848 |
|
---|---|---|
銘柄名 |
||
市場 |
東証1部 |
|
株価 |
518円 |
|
単元株数 |
100株 |
|
予想PER(連) |
11.4倍 |
|
実績PBR(連) |
0.97倍 |
|
時価総額 |
約103億円 |
|
銘柄概要 |
東京都新宿区高田馬場に本社がある環境・工業用計測器メーカーの大手。「水、大気、ガスなどの計測をテーマとする技術集団」として、環境ビジネスをメインビジネスとしています。 |
|
株価の推移 |
2012年12月18日安値275円から、2013年1月中旬の中国のPM2.5関連銘柄として人気が急騰。3月11日高値886円をつけるなど3倍超の大暴騰となりました。その後は反落して400円前後の値動きが続いていましたが、東証1部市場替えのニュースから急騰、一旦反落したが再度反発し、500円台の値動きが続いています。 |
|
ポイント |
・ 環境省の「等価性評価試験」に合格したPM2.5自動測定装置(FPM-377型)を販売しており、2013年3月末までに全国の国の機関及び地方自治体用に約300台を納入されています。同社機種を含め5社6機種がPM2.5自動測定装置として合格しており、全国で約600台の設置が行われているので、同社は約5割のシェアを持つトップ企業です。 ・ 今後は、中国での販売を目指しており、測定装置の認証に注力中です。中国での販売が可能になれば、販売増が期待出来そうです。 ・ 2013年10月31日に東証2部から東証1部の市場替え。2013年11月末にTOPIX(東証株価指数)の構成銘柄となる予定。11月末にかけてインデックス買いの思惑の可能性がありそうです。 |
SBI証券投資調査部にて作成。株価・予想PER(連)・実績PBR(連)・時価総額は、2013/11/18/終値を基準に表示。
銘柄コード |
6856 |
|
---|---|---|
銘柄名 |
||
市場 |
東証1部 |
|
株価 |
3,565円 |
|
単元株数 |
100株 |
|
予想PER(連) |
22.2倍 |
|
実績PBR(連) |
1.45倍 |
|
時価総額 |
約1,516億円 |
|
銘柄概要 |
「おもしろおかしく」という独自のモットーを持つ分析機器大手企業。 |
|
株価の推移 |
2012年12月3日安値2,300円からアベノミクス相場に乗り急騰、1月以降はPM2.5 関連としても注目され、2013年5月21日には4,050円の年初来高値をつけています。その後は高値を切り下げ、安値を切り上げる三角保ち合いになっています。 |
|
ポイント |
・ PM2.5の原因となる自動車排ガスの測定装置が主力商品 ・ 大気汚染監視用 (PM2.5) 濃度測定装置 APDA-3750Aは、環境省の認定試験に合格しています。 ・ JPX日経400構成銘柄 |
SBI証券投資調査部にて作成。株価・予想PER(連)・実績PBR(連)・時価総額は、2013/11/18/終値を基準に表示。
銘柄コード |
7980 |
|
---|---|---|
銘柄名 |
||
市場 |
東証JQスタンダード |
|
株価 |
947円 |
|
単元株数 |
1,000株 |
|
予想PER(連) |
68.13倍 |
|
実績PBR(連) |
1.78倍 |
|
時価総額 |
約69億円 |
|
銘柄概要 |
産業用防毒マスクのトップメーカー。 |
|
株価の推移 |
PM2,5関連の報道が多くなった2013年1月中旬から大暴騰し、400円台だった株価は2013年3月11日には、株価4倍の1,699円の高値をつけました。しかし、その後は大きく下げ、6月24日には500円ちょうどまで急落しました。それ以後は、25日移動平均線に支えながらの上昇基調が続き、一時1,000円の大台を超えていました。 |
|
ポイント |
・ PM2.5を吸い込まないためにはマスクは必要不可欠。同社は、PM2,5に対応できる「N95微粒子用マスク」を手がけています。 ・ 世界中の紛争で、毒ガスなどの事件が起これば、反射的に同社株が買われる傾向にあります。単発的な動きで持続性はないことが多いです。 |
SBI証券投資調査部にて作成。株価・予想PER(連)・実績PBR(連)・時価総額は、2013/11/18/終値を基準に表示。
銘柄コード |
4082 |
|
---|---|---|
銘柄名 |
||
市場 |
東証2部 |
|
株価 |
2,679円 |
|
単元株数 |
100株 |
|
予想PER(連) |
4.51倍 |
|
実績PBR(連) |
1.30倍 |
|
時価総額 |
約132億円 |
|
銘柄概要 |
自動車排ガス浄化触媒の大手。ジルコニウム化合物の世界トップメーカー。ジルコニウム化合物は、多種多様な産業分野で使用されますが特に、耐熱性とイオン伝導性を応用した排ガス浄化用触媒は環境面から世界の自動車産業になくてはならない物質です。また、燃料電池の材料としても注目を集めています。 |
|
株価の推移 |
2012年11月5日の1,013円安値から、自動車業界の好調、燃料電池に注目が集まったことなどから、大きく上昇。 |
|
ポイント |
・ PM2.5の大きな要因である自動車の排ガスを浄化するには必要不可欠な材料を供給しており、PM2,5問題でよりきれいな排ガスへの要求が高まれば同社にフォローの風となりそうです。 ・ 次世代燃料である燃料電池でも同社の製品が使用されており、燃料電池がもっと普及すれば、更なる追い風になりそうです。 |
SBI証券投資調査部にて作成。株価・予想PER(連)・実績PBR(連)・時価総額は、2013/11/18/終値を基準に表示。
銘柄選定の根拠(基準や前提)
SARS関連銘柄として選定
(3514)日本バイリーン
鳥インフルエンザ関連銘柄として選定
(3107)ダイワボウホールディングス
PM2.5関連銘柄として選定
(6709)明星電気
(6848)東亜ディーケーケー
(6856)堀場製作所
(7980)重松製作所
(4082)第一稀元素化学工業
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。