マーケット > レポート > 米国ウィークリー・マンスリー >
“大型ハイテク銘柄の決算・自社株買いを投資に生かす”
“大型ハイテク銘柄の決算・自社株買いを投資に生かす”
2024/5/8
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“大型ハイテク銘柄の決算・自社株買いを投資に生かす”
- 先週号(2024年5月1日号)で「4/30のアマゾン・ドット・コム(AMZN)、5/2のアップル(AAPL)の決算発表も含め、今後の大型ハイテク株の決算発表では巨額自社株買い発表の可能性を考慮すべきだろう。アップルは昨年5月に900億ドルの巨額自社株買いを発表している。」と述べた。アップルの1-3月決算は減収減益で成長分野のサービス分野もEU(欧州連合)のデジタル市場法(DMA)の本格運用など難敵が立ちはだかる中で、1100億USDの巨額自社株買い枠追加を発表と、期待に応える形となった。
- その他の大型ハイテク株の直近の自社株買い枠追加を見ると、マイクロソフト(MSFT)が21年11月に600億ドル、アマゾンが22年3月に100億ドル、エヌビディア(NVDA)が23年8月に250億ドルを追加。今年2月に枠を追加したメタ・プラットフォームズ(META)は500億ドル、4月のアルファベット(GOOGL)が700億ドルと、巨額化傾向が加速。マイクロソフトやアマゾン、エヌビディアについても今後、大きな額の枠追加が期待されるのではないだろうか。
- 大型ハイテク企業は業界の覇権を握る存在でもある。アマゾンの1-3月決算ではオンライン店舗が前年同期比7%増収、サード・パーティ販売者向けサービスも同16%増収と、Eコマースの堅調さが窺われる。アルファベットの1-3月決算でも、広告事業が同13%増収である。業界・市場が堅調であることがわかれば、その領域で有望とされる競合他社または有力提携先企業についても業績が堅調であることが期待されるだろう。クラウド型ECプラットフォーム運営のショッピファイ(SHOP)や広告向けソフトウエアプラットフォーム運営のトレードデスク(TTD)の1-3月期業績(5/8決算発表)に注目したい。
- 主要企業における決算でその他注目すべき点として2点挙げられる。第1に、先週号の「銘柄ピックアップ」で取り上げたクアルコム(QCOM)の1-3月決算がスマホ向けの市場回復と成長分野の自動車向けの伸びを受けて増収増益。スマホや車載でAI(人工知能)機能搭載のデータ処理に係る半導体需要の高まりが示された。生成AIに係る機械学習・深層学習では電力消費と発熱が問題となることから、デバイスや車載の半導体は省電力化の要請が高まろう。第2に、新たなCEOの下で構造改革・財務改善に取り組む「ターンアラウンド」銘柄の健闘である。スリーエム(MMM)は過去64年連続増配の「配当貴族」として知られてきたなか、配当引き下げを検討していると伝えられた。ペイパル・ホールディングス(PYPL)は新たな成長ドライバーを模索する次の段階にシフトしつつある。5/7決算発表のウォルト・ディズニー(DIS)もターンアラウンドの進展度合いが注目される。(笹木)
- 5/8号では、カメコ(CCJ)、レモネード(LMND)、ファイザー(PFE)、ペイパル・ホールディングス(PYPL)、ショッピファイ(SHOP)、トレードデスク(TTD)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(5/3現在)
5月8日(水) | ニューズ・コーポレーション、アトモス・エナジー、コアペイ、セラニーズ、ザ・トレードデスク、エアビーアンドビー、ステリス、フォックス、ウーバー・テクノロジーズ、ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ、エマソン・エレクトリック、ナイソース |
---|
5月9日(木) | インシュレット、アカマイ・テクノロジーズ、メトラー・トレド・インターナショナル、ジェン・デジタル、Constellation Energy Corp、タペストリー、ワーナーブラザース・ディスカバリー、EPAMシステムズ、ソルベンタム、ビアトリス、エバジー、チャールズリバー・ラボラトリーズIntl |
5月8日(水) | - 米クックFRB理事講演、米10年債入札
- 米卸売在庫(3月)
|
---|
5月9日(木) | - 米30年債入札
- 米新規失業保険申請件数(5月4日終了週)
|
---|
5月10日(金) | - 米シカゴ連銀総裁質疑応答に参加
- 米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値 (5月)、米財政収支(4月)
|
---|
5月13日(月) | |
カメコ(CCJ)市場:NYSE・・・2024/8/2に2024/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
|
- 1987年設立のカナダのウラン製造・販売企業。世界最大ウラン鉱床を保有。ウラン探査・採掘等のウラン部門、精製・変換等の燃料サービス部門を営む。カザフスタンで国営企業と合弁で生産も。
- 4/30発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比7.7%減の6.34億USD、非IFRSの調整後EPSが同51.9%減の0.13USD。昨年買収完了の原子力発電設備大手ウエスチングハウス関連費用で調整後EPS減益もウラン平均実現価格の同27%上昇寄与で調整後EBITDAが同53%増の3.45億USD。
- 通期会社計画は、売上高が前期比10-16%増の28.5-30.0億USD、ウエスチングハウス関連の調整後EBITDAを4.45-5.10億USDと従来計画を据え置いた。生成AI(人工知能)普及で電力需要が爆発的に伸びるとみられ原発への恩恵から原子力発電燃料のウラン取引価格は直近1年間で約7割高騰。米上院は4/30、ロシア産ウラン輸入禁止法案を全会一致で可決(下院は昨年12月に可決済み)。
|
レモネード(LMND)市場:NYSE・・・2024/8/2に2024/12期2Q(4-6月期)の決算発表を予定
|
- 2015年設立のインシュアテック企業。テクノロジー、データ、人工知能(AI)、行動経済学などを活用して、欧米で賠償責任や家財保険を提供。事務プロセスの大部分はチャットボットが対応。
- 5/1発表の2024/12期1Q(1-3月)は、総収益が前年同期比25.1%増の1.19億USD、純利益が前年同期▲65百万USDから▲47百万USDへ赤字幅縮小。有効保険料(IFP)が同22%増の7.94億USD、保険加入者数が同13%増の約209万人、1人当たり保険料が同8%増の379USDと堅調に拡大。
- 通期会社計画を上方修正。総収益を同19-20%増の5.11-5.15億USD(従来計画5.05-5.10億USD)、調整後EBITDAを▲1.55-▲1.51億USD(同:▲1.60-▲1.55億USD)へ赤字幅縮小とした。株価は21年1月高値から約9割下落もAI活用が利益率改善に繋がろう。事業展開国(5カ国)や取扱商品(賃貸人保険、住宅所有者保険、生命保険、ペット保険、自動車保険)拡大による成長余地も見込まれる。
|
ファイザー(PFE)市場:NYSE・・・2024/8/1に2024/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
|
- 1941年にペニシリン商用化成功後に業容拡大。新型コロナのワクチン・経口治療薬のほか、関節リウマチ(エンブレル)、乳がん(イブランス)、静脈血栓塞栓症(エリキュース)等を主要医薬品とする。
- 5/1発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比19.5%減の148.79億USD、非GAAP調整後EPSが同33.3%減の0.82USD。新型コロナワクチン・経口治療薬を除けば同11%増収。23年12月買収完了のがん治療薬シージェンが約7億USD売上貢献。調整後EPSは前四半期0.10USDから増加。
- 通期会社計画を上方修正。調整後EPSをコスト削減(今年末までの40億USD)の進捗を受けて前期比17-28%増の2.15-2.35USD(従来計画2.05-2.25USD)とした。売上高は前期比0-5%増の585-615億USDで従来計画据え置き。FRB(連邦準備制度理事会)がバランスシート縮小ペース減速を決めるなど金融引き締めに変化の兆しの中で足元の予想配当利回り(5.9%台)は投資好機の面もあろう。
|
|
- 1998年設立の電子決済サービス企業。利用者が事業者にクレジットカード番号等を伝える必要がない点に強み。Eコマースやホテル・飲食店での予約・事前決済など個人・法人向けで利用される。
- 4/30発表の2024/12期1Q(1-3月)は、営業収益が前年同期比9.4%増の76.99億USD、非GAAPの調整後EPSが同27.1%増の1.08USD。稼働口座数が同1%減も決済総額が同14%増、1口座当たり取引件数が同13%増と堅調推移。調整後フリーキャッシュフロー(FCF)も同86%増の18.56億USDへ拡大。
- 2024/12通期会社計画を上方修正。構造改革費用の4.90億USDへの引き上げを受けて調整後EPSを前期比1桁台半ば〜後半(従来計画:横ばい)の伸び率とした。財務改善が進む一方、株価は21年7月高値から約8割下落し予想PER14倍台に低下と割安感が強まる。昨年9月就任のクリス新CEOが打ち出したAI活用革新的な新サービスで成長性を示せるかどうかが株価上昇への鍵を握ろう。
|
|
- 2004年にカナダで設立。フェイスブックやインスタグラム上で商品の販売が可能となるネットショップ、およびEコマースサイト構築用のクラウド型ECプラットフォームを運営。越境ECにも事業を展開。
- 2/13発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比23.6%増の21.44億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.9倍の0.34USD。流通総額(GMV)が同23%増、サブスクリプション収益が同31%増。 GMVに占める自社決済システム利用比率も同4ポイント上昇の60%。粗利益率が同3.5ポイント改善。
- 2024/12期1Q(1-3月)会社計画は、物流事業売却の影響を除く売上高伸び率が前期比20%台半ば〜後半、粗利益率が51.0%(4Q実績49.5%)。物流事業売却と自社決済利用率拡大の粗利益率上昇へ寄与が見込まれる。4/30発表のアマゾン・ドット・コム(AMZN)1-3月決算でもEコマース分野が好調。ショッピファイは昨年8月、アマゾンとの提携を発表。アマゾンの成長取り込みが注目される。
|
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
|
- 2009年設立。デマンドサイドプラットフォーム(DSP)と呼ばれる広告向けソフトウエアプラットフォーム運営。AI(人工知能)を広告システムに活用し、広告主向けに効率的な広告提供で収益化実現。
- 2/15発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比23.4%増の6.06億USD、非GAAPの調整後EPSが同7.9%増の0.41USD。顧客契約更新率が年間通じて95%超と安定的に推移。同社が開発し広告主がプレミアムデジタル広告在庫に直接アクセスできる「OpenPath」の普及が奏功した。
- 2024/12期1Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比24.8%増の4.78億USD、調整後EBITDAが同19.3%増の1.30億USD。同社が強みを持つ「パブリッシャー直接取引」は取引手数料の透明性を高めることで「コネクテッドTV」やオフサイトの小売メディアでウォルマート(WMT)など大手企業が活用拡大。4/25発表のアルファベット(GOOGL)1-3月決算でもネット広告市場の堅調さが示された。
|
- (※)決算発表の予定は5/3現在であり、変更される可能性があります。
米国ウィークリー・マンスリー一覧へ戻る
免責事項・注意事項
- 当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項> 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
マーケットへ戻る
|