<直撃インタビュー!>2018年の注目ファンド、JPモルガン・アセット・マネジメントの岡村知佳氏に聞く
2018年は低インフレで金利の引き締めが緩やかに進むため、リスク資産の運用には環境が追い風になるという見通しです。2018年の注目ファンドについて、JPモルガン・アセット・マネジメントのクライアント・リレーションシップ・マネジャーの岡村知佳氏に聞きました。聞き手は、モーニングスターのファンド分析部マネージャーの坂本浩明氏。
「JPMベスト・インカム」は10資産1,800銘柄に分散した安定運用
坂本氏「インカム」を重視した戦略をコアに置き、アクティブ運用で上値を狙っていくスタンスでという話だったが、具体的な商品を教えてください。まず、コアとなるファンドはどのファンドでしょうか?
岡村氏「JPMベスト・インカム」というファンドは、当社が提供しているファンドの中で一番人気がありますが、インカム収益の獲得を重視した投資戦略をとっており、運用のコアとして考えていただけると思います。銀行のお客様を中心に、預金から最初に投資するファンドとして一歩目に選んでいただくケースが多いのが特徴です。
当社の運用ファンドだけでなく、バランス型カテゴリー全体でも資金流入がもっとも多いファンドのひとつといえます。日本では2014年9月に設定し、2017年10月末時点で毎月決算型と年1回決算型の合計で2,500億円以上の運用残高になりましたが、海外の同じ運用戦略のファンド残高を合わせると約5兆円の資産規模になります。世界でも高い支持を集めている運用戦略といえるのではないでしょうか。
運用のポイントは3つです。まず、1つめは「利回りを取りに行く」ということ。利回りというと、債券への投資をイメージされやすいですが、当ファンドでは、債券だけでなく株式やリート(不動産投信)、CB(転換社債)など、インカム収益が期待できるあらゆる資産クラスに投資し、遜色のない利回りを得ています。
2つめは、「リスクを抑制している」こと。利回りを取りに行くのであれば、ハイイールド債券やリートなどへの投資を考えますが、これらは値動きが荒いです。やみくもに利回りを追求すると、想定外のリスクを取ってしまうことがあります。そこで、アセットクラスとしては10資産、90ヵ国以上、1,800銘柄以上に分散投資することによってリスクを抑えています。併せて、インカム重視のファンドの場合、為替ヘッジあり・なしのコースをそれぞれ用意していることも多いですが、「ベスト・インカム」は為替ヘッジありのみです。海外でも同じで、どの国、どの地域でもヘッジありしか用意していません。
理由は明確です。為替の動きだけで10%以上変動する場合があります。このファンドはインカムを着実に積み上げていくコンセプトですが、10%の円高で積み上げたインカムが吹き飛んでしまうことがあります。過度にリスクをとらずお客様に安心して利回りを確保していただくというベスト・インカムの運用方針に基づき、為替変動のリスクは取らないということを徹底しています。
最後のポイントは、「おまかせ運用」だということ。運用のプロとして、さまざまなアセットクラスごとに運用チームを擁していますが、「ベスト・インカム」の運用で組み入れている銘柄は、各アセットクラスの運用チームが一つひとつ銘柄を吟味した結果の1,800銘柄になっています。インデックスを組み合わせた1,800銘柄は、比較的容易に達成できますが、ボトムアップで1,800銘柄を選定できる運用会社は少ないと思います。
また、リスクオフの局面であれば債券を中心にした運用を行い、リスクオンの局面では株式の組み入れを増やすことを丁寧に実行しています。たとえば、チャイナショックの前、中国のPMIが悪くなっていたことから債券の割合を高くしていたため、他のバランス型ファンドより下げ幅が抑えられました。一方、トランプ大統領の当選が決まった後の株高局面では、景気の実勢をみて株式への投資割合を増やしていました。海外では2008年12月から運用していますが、運用の中味は、その時々の市場環境に応じて機動的に変えています。
坂本氏リーマンショックを境に不透明な環境になり、柔軟に資産配分を変えるファンドの運用が優れた成績になっているという傾向があります。貴社の米国におけるバランス型ファンドの運用力をモーニングスターの格付けでみると全体平均で5段階評価の4なので、高い成績を残していることがわかります。
「JPMアジア・成長株・ファンド」はアジアの構造変化に着目して厳選投資
坂本氏アクティブ運用のファンドはどうでしょう?
岡村氏ある程度の余剰資金があって、しっかりリターンを取りに行くという考えで投資をされる方には、「JPMアジア・成長株・ファンド」を検討していただきたいです。
このファンドには、3つポイントがあります。まず「運用が長い」。1991年から運用していますが、投資信託協会の分類で、アジアに投資しているファンドの中で、もっとも古いファンドになります。日本で一番古いアジア株に投資するファンドといえるでしょう。
次に、「パフォーマンスの良さ」。過去1年でベンチマーク(MSCI AC アジア・インデックス)を大きくアウトパフォームしています。過去3年でも、設定来でも同じことがいえます。
そして、アクティブ運用ですが、「コストが抑えられている」点も特徴です。信託報酬の中で運用会社が受け取る部分が、パフォーマンスに応じて0.5184%〜0.4104%の間で変動する報酬になっているため、全体的なコストが抑えられています。
坂本氏運用体制の強みは?
岡村氏アジア株で運用するファンドは世の中に複数ありますが、その中でも運用チームに強みがあると思っています。アジアにはさまざまな国が含まれているので、各国の現地の言葉が使えるかどうかは、大きな意味があります。たとえば、その国の方が英語でコミュニケーションができるからといって、本音の部分ではどう思っているのか、ビジョンはどうなのかなどの対話では、現地の言葉が使えるか否かで差が出てくるのです。その点、当ファンドの運用チームは世界各国に100名規模の担当者を擁しており、アジア諸国にも強固なネットワークがあります。
加えて、45年を超える運用の長さがあり、データ量、過去からの流れを汲みとるという点でも歴史があることは、運用面での強みになると思っています。
坂本氏運用プロセスの特徴は
岡村氏ベンチマークにとらわれることなく運用をしており、ひとつひとつの銘柄を選んで、積み上げてポートフォリオをつくっています。よくあるケースとして、トップダウンで国別配分割合やセクター配分を決めてポートフォリオをつくるということがありますが、このファンドの場合は、この市場の中で一番成長しそうな銘柄を、ひとつひとつの市場で選んでいます。
銘柄を選ぶうえで着目しているポイントは、「アジアの構造変化」、「ライフスタイルの向上」、「インターネットサービスの浸透」そして「人口動態の変化」など、根本的に何が変わっていくのかを見極め、その中で成長が期待できる銘柄は何なのかということを考慮して選んでいます。
ご参考:運用チームが注目するアジアの構造変化のイメージ
坂本氏組み入れ上位銘柄をみてもメリハリがついていますね。
岡村氏確信度の高い銘柄を選んでいるので、銘柄数を絞り込んでいるのも特徴です。10月末で50銘柄に厳選しています。100名以上の運用チームなので、たとえば、大型株だけでなく、より小さい銘柄も、IPO(株式公開)したての銘柄も分析して適宜組み入れています。
坂本氏アジア株の市場の現状と見通しはいかがでしょう?
岡村氏まずぜひ下のグラフを見てください。世界におけるアジアの存在感は大きくなっているにもかかわらず、アジアの株式市場の規模は以前小さいまま放置されている状況です。このギャップを取りにいくことが重要であると考えています。株に投資をせずして、世界の成長は手に入らないと言えます。
岡村氏さて足元株価上昇を遂げてきているので、現在の株価の位置が割安か割高かという点では、過去15年の平均と同じ水準、もしくは、やや割安という位置にあります。EPS(1株あたり利益)の成長率でみると、2017年はしっかり上に切り上がって、来年以降も伸びてくると予測されており、企業の業績で、まだ成長が見込めるといえます。
問題は、この成長も現在の株価に織り込まれているか? ということになります。過去の上昇局面と比較すると、現在は過去平均の5合目程度にいるという段階ではないでしょうか。
過去の上昇相場と比較すると、足元の上昇は緩やか
岡村氏これまでもアジア株は上昇し、その中心として中国が上がってきました。特にテクノロジーの株価が上がっています。ただ、先ほどの重見の話にもあったように、テクノロジー株の上昇は、現在ではリスク要因にもなっているので、どのタイミングで次の銘柄に行くのかということにも備えているのが、現在の状況です。
また、中国株については、共産党大会を機に調整するかもしれないといわれていましたが、実際には大きな影響は出ず、一段と上値があるのではと期待されるようになっています。
坂本氏「JPMアジア・成長株・ファンド」はモーニングスターレーティングで5ツ星と最高位にあり、カテゴリー内でのリスク調整後リターンも良好となっています。また、コストでも、モーニングスターフィーレベルでみて、「新興国・アクティブ」の中で比較すると、5段階で一番低く、コスト競争力もあると言えます。
- ※トータルリターン、レーティングは11月末時点のものを記載しています。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
投資信託に関するご注意事項
- 投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
- 投資信託は、個別の投資対象毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客様が実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
- 「毎月分配型投資信託」または「通貨選択型投資信託」をお取引する場合、お取引前に必ず「毎月分配型投資信託・通貨選択型投資信託に関するご注意事項」の内容をご確認いただきますようお願いいたします。
- ご投資にあたっては、目論見書や契約締結前交付書面をよくお読みください。