225先物は前週末終値比1,000円高(上昇率3.56%)の29,120円と4週ぶりに大幅反発。
前の週末に岸田首相が「金融所得課税引き上げについて当面触ることは考えていない」と、急がない姿勢を示したことが、政権に対する過度な不安感を後退させ、週初から先物主導で買い戻しが入った。
また、14日の衆議院解散から31日の投開票日までは株高になりやすい経験則が意識された背景もあったようで、海外勢の買い戻しに拍車がかかった。その後、商品市況の上昇を背景としたインフレ懸念や米長期金利の先高観が警戒されたものの、9月の米消費者・生産者物価指標の発表後は過度なインフレ懸念が後退。
長期国債の入札が堅調だったこともあり、債券売り方の買い戻しにより長期金利が低下。期待インフレ率が高止まりするなか、実質金利の低下が好感され、週後半は値がさハイテク株が大きく買われたことも、先物買いに寄与。週末には、台湾積体電路製造(TSMC)の好決算や良好な見通しが半導体株の追い風となり、値がさハイテク株買い、先物買いに弾みをつけた。
10月8日時点の裁定残高は、ネットベースで1兆1,862億円の買い越し(前週は1兆2,614億円の買い越し)と減少した。株数ベースでは、4億1,343万株の買い越しで、10月1日時点(4億2,442万株の買い越し)から減少している。
日経平均と裁定残(10月8日時点)
TOPIX先物でBofA証券が連日の大量買い越し
長期金利低下などを背景に買い戻しが続いた週だったことから、両先物ともに買い方主体の手口だった。売り方では、225先物では裁定買いに伴う動きくらいしか見られず、TOPIX先物でも裁定買いの動きが中心で、バークレイの売り越し継続が目立った他は、シティGやドイツなどの売り越しが散見された程度。
一方、買い方では、225先物でみずほや野村の国内勢が上位を独占。国内機関投資家の買いも入ったとみられる。CSなど海外勢も上位に並んだ。他方、TOPIX先物では、前週に売り一服感が見られたBofA証券が連日の大量買い越しを見せ、基調の転換を象徴するような動きとなった。また、JPモルガンの買い越しも目立ち、野村、みずほの国内勢も上位に並んだ。
日経225先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
TOPIX先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は前週末終値比2.21pt安(下落率9.85%)の20.23と低下した。岸田政権への過度な不安感の後退、インフレ懸念や長期金利上昇の一服感から、先行き不透明感が緩和。相場の下値不安も和らぐなかプット(売る権利)の手仕舞い売りが進み、日経平均VIは低下。
他方、商品市況の上昇を背景としたインフレ懸念がくすぶるほか、225先物が29,000円を回復したことに伴う戻り一服感から、株価下落に備えたヘッジニーズが高まったとみられ、週末にはプットの建玉が大きく膨らんだ。
ボラティリティ
NT倍率(先物)は上昇、金利低下や先行き不透明感緩和で短期筋の買い戻し進展
NT倍率(先物)は上昇。岸田首相が金融所得課税引き上げについて当面触ることは考えていないと発言したことで投資家心理が改善。中国政府の電力不足解消に向けた石炭確保の動きなどを背景に供給網の混乱が緩和されるとの期待も投資家心理を向上させた。NY原油先物相場が7年ぶりとなる高値を記録するなか、週前半は景気敏感株優位の展開となり、NT倍率はやや低下。
しかし、米物価指標の発表後、過度なインフレ懸念が後退し、米長期金利が低下するなか、週後半は値がさハイテク株が大きく上昇する展開に。また、衆議院の解散から投開票日までは株高になりやすいアノマリーが意識され、短期筋の買い戻しにも弾みがつき、週末にかけてはNT倍率は上昇、週間でも上昇となった。
今週の225先物は一進一退か。
注目された米物価指標の発表を終え、ひとまずインフレ懸念が後退したことや米長期金利の上昇にも一服感が見られたことは相場の下支えになりそうだ。
TSMCの好決算を背景に、現物株市場で半導体製造装置など値がさハイテク株に勢いが出てきたことも投資家心理を明るくさせる。
しかし、NY原油先物価格の上昇基調は変わらず、期待インフレ率も高止まりしているなか、インフレ懸念が完全に後退したとはいえない。また、長期金利もイベント通過を受けた売り方の買い戻しなどテクニカル要因に基づくものとの指摘が多く、金利先高観も変わっていない。
実際、前週後半に一旦低下した長期金利は週末には再び上昇に転じた。引き続き長期金利の動向に一喜一憂する展開が続きそうだ。また、週初に中国で発表された7-9月国内総生産(GDP)が素材高やコロナの影響で4.9%増に減速。また、9月小売売上高など重要な経済指標があり、中国リスクがくすぶる中、結果次第では再び下に振れる可能性もあるため注意したい。
一方、国内では岸田政権に対する過度にネガティブな見方が後退し、再び衆院選投開票日までの株高アノマリーに期待する向きも増えてきた。また、TOPIX先物でのBofA証券をはじめ海外勢が再び先物買い越しに転じてきたことも需給面で好要素。ただ、決算シーズンを控えていることもあり、下値は堅い一方で上値も追いづらい展開となりそうだ。今週の225先物予想レンジは28,500-29,500円とする。
経済スケジュール(10月18日〜10月22日)
日付 |
曜日 |
国内 海外 |
時間 |
内容 |
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10月18日 | 月 | 国内 | 13:00 | 9党党首討論会 |
14:00 | 首都圏新築分譲マンション(9月) | |||
海外 | 06:45 | NZ・消費者物価指数(7-9月) | ||
11:00 | 中・GDP(7-9月) | |||
11:00 | 中・鉱工業生産(9月) | |||
11:00 | 中・小売売上高(9月) | |||
11:00 | 中・不動産投資(9月) | |||
11:00 | 中・固定資産投資(都市部)(9月) | |||
11:00 | 中・調査失業率(9月) | |||
20:00 | ブ・FGV消費者物価指数(IPC-S)(先週) | |||
20:25 | ブ・週次景気動向調査 | |||
22:15 | 米・鉱工業生産指数(9月) | |||
22:15 | 米・設備稼働率(9月) | |||
23:00 | 米・NAHB住宅市場指数(10月) | |||
27:00 | ブ・貿易収支(先週) | |||
29:00 | 米・対米証券投資収支(ネット長期TICフロー)(8月) | |||
米・カンザスシティー連銀総裁とミネアポリス連銀総裁がフォーラム(18-22日)で講演 | ||||
米・アップルの「MacBook Pro(マックブック・プロ)」の新機種発表イベント | ||||
欧・欧外相理事会 | ||||
10月19日 | 火 | 国内 | 衆院選公示(31日投開票) | |
家電・IT見本市「CEATEC(シーテック)」がオンラインで開幕(22日まで) | ||||
海外 | 16:20 | インドネシア・中央銀行が政策金利発表 | ||
17:00 | ブ・FIPE消費者物価指数(先週) | |||
21:00 | ハンガリー・中央銀行が政策金利発表 | |||
21:30 | 米・住宅着工件数(9月) | |||
21:30 | 米・住宅建設許可件数(9月) | |||
中・全国人民代表大会(全人代)常務委員会(23日まで) | ||||
米・ボウマン連邦準備制度理事会(FRB)理事とサンフランシスコ連銀総裁が同連銀主催のフォーラム参加 | ||||
米・アトランタ連銀総裁がイベントに参加 | ||||
米・グーグルが「ピクセル6」発表イベント | ||||
英・ベイリーイングランド銀行(英中央銀行)総裁が講演 | ||||
英・グローバル・インベストメント・サミット(GIS)2021主催 | ||||
決算発表 エリクソン、J&J、フィリップ・モリス、P&G、ネットフリックス | ||||
10月20日 | 水 | 国内 | 08:50 | 貿易収支(9月) |
08:50 | 輸出(9月) | |||
08:50 | 輸入(9月) | |||
10:10 | 国債買い入れオペ(残存1-3年、残存3-5年、残存5-10年、残存25年超)(日本銀行) | |||
14:00 | コンビニエンスストア統計調査月報(9月) | |||
14:30 | 日本証券業協会の森田会長が定例会見 | |||
海外 | 10:30 | 中・新築住宅価格(9月) | ||
10:30 | 中・1年物貸出金利(10月) | |||
10:30 | 中・5年物貸出金利(10月) | |||
15:00 | 英・消費者物価コア指数(9月) | |||
15:00 | 英・生産者物価産出指数(9月) | |||
17:00 | 南ア・消費者物価指数(9月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏経常収支(8月) | |||
18:00 | 欧・ユーロ圏CPI(9月) | |||
21:30 | 加・消費者物価指数(9月) | |||
米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表 | ||||
米・地区連銀(シカゴ、アトランタ、セントルイス、ミネアポリス)総裁が人種差別関連オンラインイベントに参加 | ||||
米・20年債入札 | ||||
決算発表 バイオジェン、ベライゾン、IBM、テスラ | ||||
10月21日 | 木 | 国内 | 08:50 | 対外・対内証券投資(先週) |
14:00 | チェーンストア販売統計(9月) | |||
14:00 | スーパーマーケット売上高(9月) | |||
15:00 | 工作機械受注(9月) | |||
決算発表 ディスコ | ||||
海外 | 20:00 | トルコ・中央銀行が政策金利発表 | ||
21:30 | 米・新規失業保険申請件数(先週) | |||
21:30 | 米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(10月) | |||
23:00 | 欧・ユーロ圏消費者信頼感指数(10月) | |||
23:00 | 米・景気先行指数(9月) | |||
23:00 | 米・中古住宅販売件数(9月) | |||
米・5年インフレ連動債入札 | ||||
欧・欧首脳会議(22日まで) | ||||
決算発表 ボルボ、バークレイズ、SAP、ダウ、AT&T、ブラックストーン、インテル、スナップ | ||||
10月22日 | 金 | 国内 | 08:30 | 消費者物価コア指数(9月) |
09:30 | 製造業PMI(10月) | |||
09:30 | サービス業PMI(10月) | |||
09:30 | 総合PMI(10月) | |||
10:00 | 営業毎旬報告(10月20日現在、日本銀行) | |||
決算発表 中外薬 | ||||
海外 | 15:00 | 英・小売売上高指数(9月) | ||
16:30 | 独・製造業PMI(10月) | |||
16:30 | 独・サービス業PMI(10月) | |||
16:30 | 独・総合PMI(10月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏製造業PMI(10月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏サービス業PMI(10月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏総合PMI(10月) | |||
17:30 | 英・製造業PMI(10月) | |||
17:30 | 英・サービス業PMI(10月) | |||
17:30 | 英・総合PMI(10月) | |||
19:30 | 露・ロシア中央銀行が政策金利発表 | |||
21:30 | ブ・海外直接投資(9月) | |||
21:30 | ブ・経常収支(9月) | |||
21:30 | 加・小売売上高(8月) | |||
22:45 | 米・製造業PMI(10月) | |||
22:45 | 米・サービス業PMI(10月) | |||
22:45 | 米・総合PMI(10月) | |||
米・サンフランシスコ連銀総裁が講演 | ||||
欧・欧州中央銀行(ECB)専門家予測調査 | ||||
APEC財務相会合 | ||||
決算発表 アメックス |
- 提供:フィスコ社