先週の225先物は前週末の終値比で770円高(上昇率2.71%)の29,120円と大幅に反発した。インフレ加速や米長期金利上昇、ビットコイン価格の急落など、これら波乱要因に対する警戒感の後退と、それに伴う断続的な買い戻しが週後半まで続いた。
前週と同様に、高値では戻り待ちの売り圧力が強く、もみ合いながらの緩やかな反発基調となったが、週末は一転して600円近い急反発で一本調子の上昇となった。27日の大引けにかけてMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しに伴う売り需要が発生していたが、週末は、このイベント通過に伴うあく抜け感から、需給が軽くなったところに一気に買い戻しが入った。
そのほか、バイデン大統領が28日公表する予算案で、歳出が年6兆ドルに拡大するとの報道も後押し材料になった。直前の夜間取引の間から28,880円と既に大きく上昇していたが、日中取引の開始直後にはすぐに29,000円を回復し、高値では29,200円を付けた。昼すぎまで断続的な買い戻しで上昇が続いた後も、最後まで勢いを落とすことなく、高値圏での推移が続いた。
5月21日時点の裁定残高は、ネットベースで4,014億円の売り越し(前週は3495億円の売り越し)と増加した。株数ベースでは、1億4,629万株の売り越しで、5月14日時点(1億2,806万株の売り越し)から増加している。
日経平均と裁定残(5月21日時点)
目立った買い戻しは週末のみ
27日までは、もみ合いの末、じり高の反発基調となり、断続的な買い戻しが入っていたようだが、差し引きの手口では目立った動きは確認しにくかった。しかし、225先物が600円近く急反発し、5月11日以来となる29,000円を回復した週末は、当然ともいえるが、両先物で買い戻しがしっかりと確認された。
225先物では、1,000枚超傾けたのはドイツ、BofA証券のみだったが、TOPIX先物では、CS、ドイツ、JPモルガンのほか、27日まで売り越しが続いていたモルガンSによる買い戻しが確認された。
日経225先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
TOPIX先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は前週末の終値比3.29pt安(下落率14.27%)の19.76ptと大きく低下した。
インフレや長期金利、ビットコイン価格など波乱要因に対する警戒感が後退し、株価がじり高基調となるなか、日経VIは週を通して低下基調となった。225先物が大幅反発となった週末には5月10日以来となる、警戒水準の20ptを下回って終えた。
ボラティリティ
NT倍率(先物)は上昇、インフレなど警戒感の小休止でハイテク中心に買い戻し
NT倍率(先物)は上昇。中国の規制強化により鉄鉱石や銅の価格上昇に一服感が見られたことや、米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリング(資産購入縮小)を示唆し、インフレに機動的に対応する柔軟な姿勢を見せたことから、過度なインフレへの警戒感が後退。
これを受けて長期金利が低下したことや、要人発言を背景に暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格にも落ち着きが見られていたことから、種々の警戒感が小休止。現物株市場では軟調だったハイテク株に買い戻しが入り、225型がTOPIX型に対して優位の展開となった。こうした背景から、NT倍率は週後半にかけて上昇基調が続いた。
今週の225先物はもみ合いか。前週末に29,000円を回復し、ムードは大分明るくなってきたが、今週は神経質な動きとなりそうだ。インフレや長期金利は落ち着きを取り戻しているが、今週はISM景況指数のほか、ADP雇用リポート、そして週末の雇用統計と、米国で物価や金利への影響力の大きい重要な経済指標が多く控えている。
売り方は、大幅反発となった前週末に買い戻したばかりで、改めてすぐに売り崩してくることは考えにくい。また、前週末は騰勢が衰えることなく、終日強い動きを見せていたため、売りを仕掛けにくくなっているとも思われる。昨年末来の海外勢の先物ポジションとしては、現状は中立付近にあると想定され、どちらにも傾ける余地はある。このため、売りにも買いにも積極的に一方向に傾けることは考えづらく、大勢は方向感に欠ける動きになると予想する。
ただ、前週の反発の大きさ故の戻り一服感も踏まえると、もし29,000円を割り込む場面があれば、日経平均株価の25日線が位置する28,650円までの調整はあると想定しておきたい。今週の225先物予想レンジは28,650-29,400円とする。
経済スケジュール(5月31日〜6月4日)
日付 |
曜日 |
国内 海外 |
時間 |
内容 |
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5月31日 | 月 | 国内 | 08:50 | 小売売上高(4月) |
08:50 | 百貨店・スーパー売上高(4月) | |||
08:50 | 鉱工業生産指数(4月) | |||
14:00 | 消費者態度指数(5月) | |||
14:00 | 住宅着工件数(4月) | |||
17:00 | 長期国債買い入れの月間予定(6月、日本銀行) | |||
海外 | 10:00 | 中・製造業PMI(5月) | ||
10:00 | 中・非製造業PMI(5月) | |||
10:00 | 中・総合PMI(5月) | |||
16:00 | トルコ・GDP(1-3月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏マネーサプライ(4月) | |||
19:30 | 印・財政赤字(3月) | |||
20:25 | ブ・週次景気動向調査 | |||
21:00 | 印・GDP(1-3月) | |||
21:00 | 印・年間GDP予想(21年度) | |||
21:00 | 独・消費者物価指数(5月) | |||
21:30 | ブ・基礎的財政収支(4月) | |||
21:30 | ブ・純債務対GDP比(4月) | |||
21:30 | 加・経常収支(1-3月) | |||
経済協力開発機構(OECD)が世界経済見通しを公表 | ||||
「OPECプラス」共同技術委員会(JTC) | ||||
米・株式市場は祝日のため休場(メモリアルデー) | ||||
英・株式市場は祝日のため休場(スプリング・バンクホリデー) | ||||
6月1日 | 火 | 国内 | 08:50 | 設備投資(1-3月) |
08:50 | 企業利益(1-3月) | |||
08:50 | 企業売上高(1-3月) | |||
09:30 | 製造業PMI(5月) | |||
14:00 | 自動車販売台数(5月) | |||
16:00 | 債券市場サーベイ(5月調査、日本銀行) | |||
海外 | 10:30 | 豪・経常収支(1-3月) | ||
10:45 | 中・財新製造業PMI(5月) | |||
13:30 | 豪・オーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利発表 | |||
14:00 | 印・製造業PMI(5月) | |||
16:00 | スイス・GDP(1-3月) | |||
16:55 | 独・失業率(失業保険申請率)(5月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏製造業PMI(5月) | |||
17:30 | 南ア・失業率(1-3月) | |||
18:00 | 欧・ユーロ圏消費者物価コア指数(5月) | |||
18:00 | 欧・ユーロ圏失業率(4月) | |||
20:00 | ブ・FGV消費者物価指数(IPC-S)(5月) | |||
21:00 | ブ・GDP(1-3月) | |||
21:00 | ブ・PPI製造業(4月) | |||
21:30 | 加・GDP(1-3月) | |||
22:00 | ブ・製造業PMI(5月) | |||
23:00 | 米・建設支出(4月) | |||
23:00 | 米・ISM製造業景況指数(5月) | |||
27:00 | ブ・貿易収支(5月) | |||
米・ブレイナード連邦準備制度理事会(FRB)理事が講演 | ||||
英・ベイリーイングランド銀行(英中央銀行)総裁が講演 | ||||
「OPECプラス」閣僚級会合 | ||||
6月2日 | 水 | 国内 | 08:50 | マネタリーベース(5月) |
10:00 | 営業毎旬報告(5月31日現在、日本銀行) | |||
10:30 | 安達日銀審議委員が静岡県金融経済懇談会で講演、同記者会見 | |||
海外 | 10:30 | 豪・GDP(1-3月) | ||
17:00 | ブ・FIPE消費者物価指数(5月) | |||
18:00 | 欧・ユーロ圏生産者物価指数(4月) | |||
21:00 | ブ・鉱工業生産(4月) | |||
米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表 | ||||
米・フィラデルフィア連銀総裁が講演 | ||||
サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(5日まで) | ||||
国際決済銀行(BIS)などが主催する金融と気候変動巡る会議「グリーンスワン2021」(4日まで) | ||||
6月3日 | 木 | 国内 | 08:50 | 対外・対内証券投資(先週) |
09:30 | サービス業PMI(5月) | |||
09:30 | 総合PMI(5月) | |||
海外 | 10:30 | 豪・貿易収支(4月) | ||
10:45 | 中・財新サービス業PMI(5月) | |||
10:45 | 中・財新総合PMI(5月) | |||
14:00 | 印・サービス業PMI(5月) | |||
14:00 | 印・総合PMI(5月) | |||
16:00 | トルコ・消費者物価指数(5月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏サービス業PMI(5月) | |||
17:00 | 欧・ユーロ圏総合PMI(5月) | |||
21:15 | 米・ADP全米雇用報告(5月) | |||
21:30 | 米・非農業部門労働生産性(1-3月) | |||
21:30 | 米・新規失業保険申請件数(先週) | |||
23:00 | 米・ISM非製造業景況指数(5月) | |||
米・フィラデルフィア連銀総裁が講演 | ||||
米・クオールズFRB副議長(銀行監督担当)が講演 | ||||
英・ベイリー英中銀総裁が講演 | ||||
6月4日 | 金 | 国内 | 08:30 | 家計支出(4月) |
海外 | 13:30 | 印・インド準備銀行(中央銀行)が政策金利発表 | ||
13:30 | 印・RBI現金準備率 | |||
18:00 | 欧・ユーロ圏小売売上高(4月) | |||
18:00 | 台湾・GDP(1-3月) | |||
21:30 | 加・失業率(5月) | |||
21:30 | 米・非農業部門雇用者数(5月) | |||
21:30 | 米・失業率(5月) | |||
21:30 | 米・平均時給(5月) | |||
22:00 | ブ・サービス業PMI(5月) | |||
22:00 | ブ・総合PMI(5月) | |||
23:00 | 米・製造業受注(4月) | |||
米・パウエルFRB議長とラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁がグリーンスワン2021の討論会に参加 | ||||
英・G7財務相会合(5日まで) |
- 提供:フィスコ社