先週の225先物は前週末の終値比で310円高(上昇率1.10%)の28,350円と反発した。週を通じて方向感の定まらない上下に振れ幅の激しい展開が続いた。週初はインフレ懸念一服を引き続き好感して28,340円まで上昇したと思えば、日本国内や東南アジアでの新型コロナ再拡大を嫌気してか、急失速する展開となり、28,000円を大きく割り込んで終えた。
その後も、根強いインフレ懸念や米長期金利の上昇に神経質な状況が続くなか、イエレン財務長官の法人税引き上げの要請、一部メンバーが将来的なテーパリング議論開始を示唆した4月開催分のFOMC議事録、ビットコイン価格の乱高下など、様々な米国発の波乱要因を背景に、225先物も上下に振れる動きが週後半まで継続。ただ、一貫して、28,000円割れでは押し目買いに支えられる一方、28,500円近辺では戻り待ちの売りに押される、という動きに終始していた。
5月14日時点の裁定残高は、ネットベースで3,495億円の売り越し(前週は2,377億円の売り越し)と増加した。株数ベースでは、1億2,806万株の売り越しで、5月7日時点(7,452万株の売り越し)から増加している。
日経平均と裁定残(5月14日時点)
海外勢の買い戻し確認されず
週を通じて前の週の急落局面で売り越していた海外勢の買い戻しは確認されず。買い方では、18日にドイツ証券が両先物で揃って1,000枚超傾けているが、その他は、同日の野村、GSなどにとどまる。CSも同日にTOPIX先物を1,000枚超買い越してはいるが、翌日には1,000枚超売り越している。
一方、売り方では、225先物では目立った動きはなかったが、TOPIX先物ではUBSやBofA証券、モルガンSなどが1,000枚超傾ける日がみられた。報道では「海外勢の先物主導での買い戻し」と言われていたが、手口をみる限り、海外勢はあまり買い戻していないようだ。
日経225先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
TOPIX先物手口(期近) 週間累計上位15社(売り買い差し引き)
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は前週末の終値比1.04pt安(下落率4.31%)の23.05ptと低下した。インフレ・長期金利を巡る懸念、仮想通貨相場の乱高下など、多くの波乱要因を背景に225先物が1日に500円以上、上下に振れるなか、日経VIも方向感に欠ける動きが続いた。
ただ、週末にかけて、各種波乱要因に落ち着きが見られはじめたことから、週間ではやや低下となった。しかし、それでも、警戒水準とされる20ptは優に上回った状態が続いている。
ボラティリティ
NT倍率(先物)はやや上昇、根強いインフレ懸念を巡って方向感に欠ける動き
NT倍率(先物)はやや上昇。根強いインフレ懸念や長期金利を巡る思惑がくすぶるなか、225先物は一日に500円以上も上下するなど、振れ幅の激しい動き。これに伴い、NT倍率も週半ばまでは方向感に欠ける動きとなった。
しかし、4月分米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて、当局のインフレに対する政策対応が遅れるとの懸念が後退。米10年物ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率の指標)や米長期金利が低下し、急落していた仮想通過相場がいったん反発していたこともあり、値がさグロース(成長)株を中心に買われ、NT倍率は週末にかけてやや上昇した。
今週の225先物は一進一退か。テーパリング議論開始を示唆したFOMC議事録の公表後に一時上昇していた米長期金利は低下した後、前週末まで落ち着いた動きが継続している。
「物価上昇は一時的」とするFRBの政策対応の遅れを警戒していた市場は、むしろポジティブに捉えているようだ。期待インフレ率もようやく低下しはじめ、インフレ・長期金利に対する耐性は付いてきたか。今週末には、FRBが物価指標のなかで最も重視しているPCEコアデフレーターの4月分の発表があり、直前には再び神経質になる場面があるかもしれない。
ただ、5月以降の経緯からすると、改めて過度な反応を示すことは考えにくい。そのほか、ビットコイン価格は前週末にかけても動きが定まっておらず、しばらく警戒は必要だが、週末の米株式市場の動きは相対的に落ち着いており、こちらも耐性を示してきている様子。様々なショックを一気に織り込んできた分、相場は下値を固めてきているとも言える。,500-29,000円とする。
一方、先物手口をみても分かるように、急落局面で大量に売り越していた海外勢は、前週までの間に一部しか買い戻していない。ワクチン接種の遅れ、政治の混迷など、日本独自の株安要因も残るなか当面は買い戻しを期待できそうにない。ワクチン接種率が上がってくれば、28,500円の壁を超えて買い戻しを誘発することも叶うかもしれないが、当面は28,500円手前で押し返される動きが続きそうだ。今週の225先物予想レンジは27,800-28,500円とする。
経済スケジュール(5月24日〜5月28日)
日付 |
曜日 |
国内 海外 |
時間 |
内容 |
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5月24日 | 月 | 国内 | 10:00 | 営業毎旬報告(5月20日現在、日本銀行) |
10:10 | 国債買い入れオペ(残存1-3年、残存3-5年)(日本銀行) | |||
14:30 | 全国百貨店売上高(4月) | |||
14:30 | 東京地区百貨店売上高(4月) | |||
20:05 | 黒田日銀総裁が2021年国際コンファランスであいさつ | |||
東京、大阪で新型コロナワクチンの大規模接種センター開設 | ||||
新型コロナ感染症対応の金融支援特別オペ(日本銀行) | ||||
海外 | 07:45 | NZ・小売売上高(1-3月) | ||
20:00 | ブ・FGV消費者物価指数(IPC-S)(5月22日まで1カ月間) | |||
27:00 | ブ・貿易収支(週次)(5月23日まで1カ月間) | |||
米・ブレイナードFRB(連邦準備制度理事会)理事が講演 | ||||
米・クリーブランド連銀総裁がパネル討論会で開会の辞 | ||||
米・アトランタ連銀総裁が講演 | ||||
米・カンザスシティー連銀総裁が講演 | ||||
欧・特別欧州連合(欧)首脳会議(25日まで) | ||||
世界保健機関(WHO)第74回世界保健総会開催(6月1日まで) | ||||
エクアドル・新大統領が就任 | ||||
5月25日 | 火 | 国内 | 15:00 | 工作機械受注(4月) |
海外 | 09:00 | シンガポール・GDP(1-3月) | ||
15:00 | 独・GDP改定値(1-3月) | |||
16:20 | インドネシア・中央銀行が政策金利発表 | |||
17:00 | ブ・FIPE消費者物価指数(週次)(5月23日まで1カ月間) | |||
17:00 | 独・IFO企業景況感指数(5月) | |||
21:00 | ブ・IBGEインフレ率IPCA-15(5月) | |||
22:00 | 米・S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数(3月) | |||
22:00 | 米・FHFA住宅価格指数(3月) | |||
23:00 | 米・新築住宅販売件数(4月) | |||
23:00 | 米・消費者信頼感指数(5月) | |||
米・クオールズFRB副議長(銀行監督担当)が上院銀行委で証言 | ||||
5月26日 | 水 | 国内 | 08:50 | 企業向けサービス価格指数(4月) |
10:30 | 鈴木日銀審議委員が山口県金融経済懇談会で講演、同記者会見 | |||
14:00 | 景気先行CI指数(3月) | |||
14:00 | 景気一致指数(3月) | |||
14:00 | スーパーマーケット売上高(4月) | |||
月例経済報告(5月) | ||||
海外 | 07:45 | NZ・貿易収支(4月) | ||
11:00 | NZ・ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利発表 | |||
21:30 | ブ・経常収支(4月) | |||
21:30 | ブ・海外直接投資(4月) | |||
米・大手米銀CEOが上院銀行委公聴会で証言 | ||||
シリア・大統領選挙 | ||||
決算発表 エヌビディア、小米集団 | ||||
5月27日 | 木 | 国内 | 08:50 | 対外・対内証券投資(先週) |
パナソニックの楠見雄規・新CEOによる説明会 | ||||
海外 | 10:30 | 中・工業企業利益(4月) | ||
21:00 | ブ・全国失業率(3月) | |||
21:30 | 米・新規失業保険申請件数(先週) | |||
21:30 | 米・耐久財受注(4月) | |||
21:30 | 米・GDP改定値(1-3月) | |||
23:00 | 米・中古住宅販売成約指数(4月) | |||
26:30 | ブ・中央政府財政収支(4月) | |||
韓・中央銀行が政策金利発表 | ||||
米・大手米銀EOが下院金融委公聴会で証言 | ||||
決算発表 デル、HPインク、セールスフォース・ドットコム、ギャップ、聯想集団 | ||||
5月28日 | 金 | 国内 | 08:30 | 東京CPI(5月) |
08:30 | 有効求人倍率(4月) | |||
08:30 | 失業率(4月) | |||
10:10 | 国債買い入れオペ(残存3-5年、残存5-10年)(日本銀行) | |||
海外 | 18:00 | 欧・ユーロ圏景況感指数(5月) | ||
18:00 | 欧・ユーロ圏消費者信頼感指数(5月) | |||
20:00 | ブ・FGVインフレ(IGP-M)(5月) | |||
21:30 | ブ・ローン残高(4月) | |||
21:30 | ブ・融資残高(4月) | |||
21:30 | ブ・個人ローン・デフォルト率(4月) | |||
21:30 | 米・個人所得(4月) | |||
21:30 | 米・個人消費支出(4月) | |||
21:30 | 米・個人消費支出(PCE)価格コア指数(4月) | |||
21:30 | 米・卸売在庫(4月) | |||
22:45 | 米・MNIシカゴ購買部協会景気指数(5月) | |||
23:00 | 米・ミシガン大学消費者マインド指数(5月) | |||
米・バイデン大統領が2022年度予算教書発表 | ||||
G7財務相・中央銀行総裁会議 |
- 提供:フィスコ社