日経平均株価は再び戻りを試す展開となっています。3/8(金)および3/11(月)には一時21,000円を割り込むなど、上昇一服になっていましたが、その後は再び21,500円前後まで値を回復しています。週足ベースでみた場合、3月第1週(3/4〜3/8)に前週比577円13銭(2.7%)下落した後、同第2週(3/11〜3/15)はすかさず反発に転じ、前週比425円29銭(2.0%)高となっています。
今後はどうなるのでしょうか。スケジュール的には、米国時間3/20(水)に結果が発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)を通じ、米国の金融政策の方向感を確認することが重要です。ただ、テクニカル的には「春の嵐」が来るかもしれない気配となっています。どういうことでしょうか。
日経平均株価は再び戻りを試す展開となっています。3/4(月)の取引時間中に21,860円39銭まで上昇した後、3/8(金)および3/11(月)には一時21,000円を割り込むなど、上昇一服になっていました。しかし、その後は再び21,500円前後の水準まで値を回復しています。週足ベースでみた場合、日経平均株価は3月第1週(3/4〜3/8)に前週比577円13銭(2.7%)下落した後、同第2週(3/11〜3/15)はすかさず反発に転じ、前週比425円29銭(2.0%)高となっています。
なお、3/11(月)〜3/18(月)の日次の動きは以下のようになっています。
- 3/11(月)99円53銭高・・・5営業日ぶりに反発。値頃感から押し目買い。ただ東証1部売買代金は1.8兆円台にとどまりました。
- 3/12(火)378円60銭高・・・米株高(FRBの中立姿勢を好感)に加え、離脱案でEUと英国が同意したことも追い風になりました。
- 3/13(水)213円45銭安・・・英国議会がメイ首相とEUの合意案を否決したことを嫌気しました。
- 3/14(木)3円22銭安・・・米国株高を受け一時200円高も、中国の経済指標が悪く、最後は値を消しました。
- 3/15(金)163円83銭高・・・上海株高に加え、配当・優待等の権利取りの動きが本格化しました。
- 3/18(月)133円65銭高・・・米中協議進展への期待で米国株が上昇(3/15)したことを好感しました。
FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策について、年内に追加利上げをすることはなく、むしろ、資産縮小停止が判断される可能性が大きいとの市場の見方に変化はないと考えられます。米中通商交渉についても、中国が貿易赤字削減を目指し、知財保護や技術移転の問題でも多少の妥協をするとの期待が維持され続けているように思われます。逆に言えば、これらの問題について、新たな好材料も少なかったというのが、正直な印象になっています。
そうした中、Brexit(英国によるEU離脱)に関する報道に株価が影響を受けたように見える場面もありました。3月第2週については、3/12(火)には追い風になり、3/13(水)には逆風となった格好です。ただ、英国における動きはほぼ、市場のメインシナリオ通りになっており、こちらも新たな材料は少なかったように見受けられます。
全体的に新たな株価材料に乏しく、数少ないニュースが必要以上に過大評価されていた可能性がありそうです。
図1 再び戻り歩調の日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/3/19取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/3/18現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/3/19取引時間中
当面の注目材料としては、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表があります。米国時間では3/20(水)に発表が予定され、パウエルFRB議長が会見する予定です。日本時間では3/21(木)早朝の発表予定ということになり、「春分の日」で休場の日の早朝ということになります。東京株式市場の市場参加者にとり、ややポジションを取りにくいスケジュールですが、米国時間3/20(水)および3/21(木)の2営業日をかけ織り込まれた内容が、3/22(金)の東京市場の反応につながる形です。
FOMCについては、市場の予想通り、利上げについては見送りになる可能性が大きいと考えられます。また、2/27(水)に米下院金融委員会でパウエル議長が証言した所によると、資産縮小(量的金融緩和でFRBが購入してきた債券等を逆に市場に売却すること)についても、年内で停止する予定です。今回のFOMCについては、そのスケジュール等の示唆があるか否かも併せて注目されると考えられます。
表1 FRBの金融政策に対するスタンスを再確認
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
3/19(火) |
ドイツ |
3月ZEW景況感指数 |
350人のアナリストや市場関係者に景況感をアンケート |
米国 |
☆決算発表 |
フェデックス〜米国景気に先行性あるとの見方が有力 |
|
3/20(水) |
日本 |
2月訪日外客数 |
2018年は3,119万人(前年比+8.7%)。1月は前年同月比7.5%増 |
英国 |
EU離脱協定案採決期限 |
合意なき離脱回避に向けた交渉が続く |
|
米国 |
FOMC結果発表/パウエルFRB議長会見 |
市場予想の年内「利上げ確率」はゼロ。「利下げ確率」は17.0% |
|
米国 |
☆決算発表 |
マイクロンテクノロジー〜半導体メモリ大手企業 |
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3/21(木) |
日本 |
◎東京市場は休場(春分の日) |
|
欧州 |
EU首脳会議 |
Brexitに関し、新たな交渉期限を設定か |
|
米国 |
3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
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3/22(金) |
日本 |
2月消費者物価指数 |
|
米国 |
2月中古住宅販売件数 |
市場コンセンサス(年換算)は510万件 |
|
3/25(月) |
ドイツ |
IFO景況感指数 |
約7,000社のドイツ企業に現在・6ヵ月先の景況感をアンケート |
米国 |
アップルが特別イベント |
新しい動画サービスを開始か |
|
3/26(火) |
日本 |
権利付最終日 |
3月末に配当・株主優待等の権利が確定する銘柄について |
日本 |
日銀金融政策決定会合「おもな意見」 |
||
米国 |
2月住宅着工件数 |
市場コンセンサスは前月比0.8%減 |
|
米国 |
コンファレンスボード消費者信頼感指数 |
米国の消費者心理は? |
|
米国 |
S&P/ケースシラー住宅価格指数 |
12月は前年同月比4.2%増 |
|
3/27(水) |
米国 |
1月貿易収支 |
|
3/28(木) |
米国 |
2月中古住宅販売仮契約指数 |
|
3/29(金) |
日本 |
2月有効求人倍率 |
1月まで3ヵ月連続で1.63倍 |
日本 |
2月失業率 |
1月は2.5% |
|
日本 |
3月東京都区部消費者物価(前年同月比) |
||
3/31(日) |
中国 |
製造業PMI |
2月(49.2)まで3ヵ月連続で50割れ |
4/1(月) |
日本 |
日銀短観(3月調査) |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は日経平均株価の「一目均衡表」です。このテクニカル・チャートを構成するのは、「日々線」、「基準線」、「転換線」、「遅行スパン」に加え、2本の「先行スパン」となっています。「先行スパン」については、以下のような決まりで作られています。
- 先行スパン1・・・転換線と基準線を足して2で割り。それを26日後(その日を含む)に記載したもの
- 先行スパン2・・・過去52日間の高値と安値を足して2で割り、それを26日後(本日を含む)に記載したもの
そして、2本の先行スパンによって囲まれた部分は「クモ」と表現されます。「日々線」(日々形成されるローソク足の部分)と「クモ」の関係は一般的に以下の通りとなっています。これらは、一目均衡表分析の中でもっとも、基本的かつ代表的な部分になっています。
- 「日々線」が「クモ」の上にある・・・・相場は強いと判断されます。
- 「日々線」が「クモ」の下にある・・・・相場は弱いと判断されます。
- 「日々線」が上昇して、その上に覆いかぶさっていた「クモ」にぶつかる・・・・相場は「上値抵抗」を受けます。
- 「日々線」が下落して、その下をはっていた「クモ」にぶつかる・・・・相場は「下値支持」を受けます。
さらに重要なことは、2本の「先行スパン」が交差する点を「要注意日」として認識する点です。今度の「要注意日」は3/27(水)であることが計算からわかっています。この日は、株価が下がる可能性が大きいゆえに、その名前が付いているのではありません。それまでの方向感が時に大きく反転し、変動が大きくなりやすいという意味での「要注意日」なのです。
ちなみに、その前日の3/26(火)は3月末決算銘柄の権利付最終日であり、3/27(水)は権利落ち日となっています。仮に権利付最終日にかけて、需給が締まりやすく、株価が上昇しやすいと考えるのであれば、3/27(水)以降は株価が下落しやすくなると考えられます。決算期末でポジションを取りにくいタイミングでもあり、注意しておいて損はなさそうです。
英国政府、議会、EUの交渉がまとまらなければ、3月いっぱいをもち、英国の「合意なき」EU離脱の可能性が残っています。また、4/1(月)公表の日銀短観が厳しい内容になり、企業業績に対する見方がさらに厳しくなる可能性があります。また、この日以降、順次施行の「働き方改革」が国内景気に影響を与える可能性も指摘されています。桜の開花とともに、株式相場に「春の嵐」が来るかもしれません。
それにしても、過去の歴史の積み重ねが将来を示唆する形となっている「一目均衡表」は、テクニカル・チャートの中でも特異で、なかなか奥深い存在と言えるかもしれません。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表〜2本の先行スパンが交差する3/27(水)に注意か
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成