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株価急変に注意!?〜米中覇権争いと日本株の今後を占う

2019/2/26

日経平均株価が昨年12月中旬以来の高値水準を回復してきました。景気・企業業績に対する不透明感の織り込みが進む一方、米中通商協議が妥協成立に向けて進展し、株式市場を取り巻く不透明感が後退していると考えられるためです。

ただ、日経平均株価が昨年末安値から上昇に転じ、2/26(火)でちょうど2ヵ月になりました。昨年3月末株価21,454円30銭を上回る場面もみられるようになり、機関投資家も一息つきやすく、ここから上値は利益確定売りが増えてきやすい水準となりそうです。戻り売りを消化してさらに上昇するのか、再び波乱となるのか、米中覇権争いを中心に投資環境の再吟味が必要であると考えられます。

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1日経平均株価は昨年12月中旬以来の高値水準を回復

日経平均株価は2月第3週(2/12〜2/15)に567円46銭(2.8%)高、第4週(2/18〜2/22)に524円88銭(2.5%)高と週足ベースで2週続伸となりました。この間、1,092円34銭(5.4%)の上昇です。続く2/25(月)も102円72銭高となり、昨年12月中旬以来の高値水準を回復し、昨年3月末株価21,454円30銭を上回ってきました。2/26(火)は反落しました。

日本株が上昇してきた理由は、景気・企業業績に対する不透明感の織り込みが進む一方、米中通商協議が妥協に向けて進展し、株式市場を取り巻く不透明感が後退してきたためと考えられます。なお、2/25(月)までの日次の動きは以下の通りです。

  • 2/18(月)381円22銭高・・米中通商協議が場所を米国に替えて開催されると報道され、同協議の前進が期待されました。
  • 2/19(火)20円80銭高・・・前日の米国株式市場が休場で様子見気分が強まり、東証1部売買代金は2兆円割れでした。
  • 2/20(水)128円84銭高・・・日経平均高寄与度銘柄の上昇がけん引役になりました。
  • 2/21(木)32円74銭高・・・米中通商協議決着に向け「6項目の覚書作成か」と伝えられ、同協議進展が期待されました。
  • 2/22(金)38円72銭安・・米経済指標の悪化が懸念されました。東証1部の売買代金は再び2兆円を割り込みました。
  • 2/25(月)102円72銭高・・中国の対米輸出関税引き上げ判断が延期されましたが、売買代金の低迷は続きました。

3/1(金)で米中通商交渉の期限が到来し、中国の対米輸出2,000億ドル分の関税が10%から25%に引き上げられる「最悪の事態」は避けられる見通しになりました。すでに1/3(木)安値2,464ポイントを安値に反発に転じていた上海総合指数は2/25(月)には前週末比157ポイント高と上昇し、3,000ポイント回復が目前となってきました。

こうした流れは日米株式市場にとっても追い風とみられ、この日の日経平均株価およびNYダウは続伸となりました。ただ、株式市場は純粋に、この投資環境を「リスクオン」とは捉えていないように見受けられます。東証1部の売買代金は2/22(金)と2/25(月)に連日で2兆円割れとなり、盛り上がりに欠ける状態になっているためです。

図1 昨年12月中旬以来の高値水準を回復してきた日経平均株価

  • ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/2/26取引時間中

図2:NYダウ(日足)

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/2/25現在

図3:ドル・円相場(日足)

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/2/26取引時間中

2米国経済・金融政策の現状を確認

当面の最大の注目点はパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)によるの議会証言であると考えられます。同議長と彼が率いるFRBが、機械的に政策金利の引き上げを継続していくという「タカ派的」な姿勢を改め、世界経済の変動に柔軟に対応し、政策金利引き上げや資産縮小の停止も検討する「ハト派的」な姿勢を取り始めたことが、最近の世界的な株高の前提となっています。議会証言はそうした姿勢を「確認」する機会になりそうです。

通商協議を戦わせている米国と中国の経済指標も要チェックです。特に当面は、両国の企業の景況感を示す指標の発表が続きます。2/28(木)には中国・製造業PMIが、3/1(金)には米国・ISM製造業景況指数が発表となります。ともに、足元では低下傾向を示し始めているので要注意であると思われます。

表1 米国経済・金融政策の現状を確認

月日(曜日) 国・地域 予定内容 ポイント

2/26(火)

米国

12月FHFA住宅価格指数

 

米国

12月S&PコアロジックCS住宅価格指数

 

米国

パウエル議長議会証言(上院銀行委員会)

資産縮小の停止等に対する方向感は?

2/27(水)

米国

米朝首脳会談

ハノイにて(〜28日)

英国

議会でEU離脱案採決

 

米国

パウエル議長議会証言(下院金融サービス委員会)

資産縮小の停止等に対する方向感は?

2/28(木)

日本

1月鉱工業生産

 

中国

2月製造業PMI

12月は49.4、1月は49.5と2ヵ月連続で50を下回っている

米国

10〜12月GDP(前期比・年率)

前回は3.4%、今回の市場コンセンサスは2.6%

3/1(金)

日本

1月労働力調査・有効求人倍率

 

米国

米中貿易協議の「期限」が到来

トランプ大統領がこの期限の延期を表明

米国

2月ISM製造業景況指数

米国の企業マインドの強弱は

3/5(火)

中国

中国全国人民代表大会

 

米国

2月ISM非製造業景況指数

雇用等の個別指標にも注意

米国

12月新築住宅販売件数

 

3/6(水)

米国

2月ADP雇用統計

 

米国

ベージュブック

 

3/7(木)

欧州

ECB定例理事会・ドラギ総裁会見

 

3/8(金)

米国

2月雇用統計

 

表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)

  2019年
日銀金融政策決定会合 3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木)
  • ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。

3【ココがPOINT!】米中貿易摩擦と日本株の今後を占う!?

最初の項でご説明したように、投資家は現在の投資環境を必ずしも「リスクオン」とは捉えていないように見受けられます。東証1部の売買代金は連日で2兆円割れとなり、盛り上がりに欠ける状態になっているためです。

日経平均株価は昨年末安値から上昇に転じ、2/26(火)でちょうど2ヵ月になりました。昨年3月末株価21,454円30銭を上回る場面もみられるようになり、機関投資家も一息つきやすく、ここから上値は利益確定売りが増えてきやすい水準となりそうです。戻り売りを消化してさらに上昇するのか、再び波乱となるのか、米中覇権争いを中心に投資環境の再吟味が必要であると考えられます。

振り返ると、日経平均株価が年初来高値(27年ぶりの高値水準)を示現したのは2018/10/2(火)で、株価はそこを起点に下落に転じました。2018/10/4(木)に「ペンス演説」で米国と中国が「新冷戦」に突入したと考えられるようになっていますが、それが株価下落の契機になったように思われます。ただ、この演説は当時さほど大きくは報じらず、重要視されませんでした。

「ペンス演説」は、米国がその知的財産を奪われ、国際競争力で中国の後塵を拝し、その結果ドルを基軸通貨とする体制や安保上の優位性が危機に瀕することを明確に拒否し始めたことを示していると考えられます。一方、中国についても「中国製造2025」で打ち出した「製造大国」や覇権への道を簡単にあきらめるとは考えられず、両国は文字通り「長い冷戦」に入ったと考えられます。

その意味で、わずか数ヵ月の交渉で両国が完全に合意することは難しく、仮に合意したようにみえても、対立の火はくすぶり続けると考えられます。特に米国の中国に対する考え方は大きく変わり、それは共和党も民主党も大差はないと考えられます。このため、株式市場は今後も驚くような出来事に動揺を受ける場面がありそうです。また、世界の企業は日本も含めサプライチェーンの再構築を迫られるものと考えられます。中長期的に株式市場には、まだまだ、織り込んでいないことが多くありそうです。

また、米国にとっては拡大を続ける貿易赤字(図4)への対応も急務とみられます。貿易赤字の増加の要因は中国に求められます。今回の米中通商協議ではこの問題に対する合意の獲得が大きな目的とされ、それについては今、一定の妥協が成立しようとしています。ただ、米国はアップルの業績悪化が示したように、中国へ圧力をかけることで、自国企業への悪影響が増幅することも考慮せざるを得ません。このため、短期的には時折、米国と中国の妥協が成立する場面も出てきそうで、今回はその一例になりそうです。

景気・企業業績に対する織り込みで下げた後の自律反発や、米中通商問題での妥協成立に向けた期待は一巡しつつあるように思われます。このため、3月にかけては株価が反落する場面に注意が必要と思われます。その後の株価底入れは、2020年度の企業業績見通しが明らかになる「10連休」後になると予想され、それまでは個別物色の展開とみるのが妥当ではないでしょうか。

表3 米国と中国を中心とする通商問題に関するおもな出来事

 

おもな出来事

2018年

3/1(木)

トランプ大統領が米国への鉄鋼・アルミ輸入に関税導入を示唆

3/23(金)

米国が中国からの輸入品600億ドルの関税を示唆

5/21(月)

中国が米国からの輸入拡大表明

5/24(木)

トランプ大統領が自動車輸入関税引き上げ検討を表明

6/15(金)

米国が中国からの輸入について課税する品目リストを発表

6/19(火)

米国が中国からの輸入2,000億ドル分へ10%の課税を表明

7/6(金)

米国が中国からの輸入品340億ドル分に課税を実施

8/1(水)

トランプ大統領が中国からの輸入2,000億ドルにも25%課税を検討

8/28(火)

米国とメキシコがNAFTA見直しで合意

9/18(火)

米国が中国からの輸入2,000億ドル分へ10%の課税を実施

9/30(日)

米国とカナダがNAFTA見直しで合意

10/4(木)

ペンス副大統領が演説し、中国との「新冷戦」を「宣言」

11/12(月)

アップルが納入先への発注を減少させたことが判明

12/1(土)

G20で米中一時「休戦」し、交渉期限90日を設定

12/5(水)

米国の要請でカナダが中国通信機大手ファーウェイの副会長を逮捕

2019年

1/17(木)

ムニューシン財務長官が対中関税取下げを主張と伝わる

2/24(日)

米中閣僚級協議が進展し、トランプ大統領が関税引き下げ判断を延期

図4 米国の国・地域別貿易赤字(億ドル)

  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。貿易収支は月次データを直近12ヵ月合計した数値
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