東京株式市場では、日経平均株価が1月第2週(1/7〜1/11)に前週末比797円74銭(4.1%)高、第3週(1/15〜1/18)に同306円37銭(1.5%)高、第4週に107円49銭(0.5%)高と、週足ベースで3週間続伸しました。日経平均株価は1/21(月)に一時、20,892円68銭まで上昇しましたが、1月相場はそこが高値となっており、その後はそれ以下の水準で推移しています。米中貿易摩擦で妥協が成立することへの期待はいったん織り込まれたと考えられます。
株価反発後は再び波乱相場が続くのでしょうか。株価が反発した理由を吟味してみれば、投資環境の変化を感じることができると考えられます。そこに「相場の春」の兆しが出てきている可能性もありそうです。
東京株式市場では、日経平均株価(図1)が1月第2週(1/7〜1/11)に前週末比797円74銭(4.1%)高、第3週(1/15〜1/18)に同306円37銭(1.5%)高、第4週に107円49銭(0.5%高)と、週足ベースで3週間続伸しました。米中通商協議が進展するとの期待が強まり、米国株が総じて上昇したことが背景とみられます。このうち、1月第4週における日経平均株価の日次の動きは以下の通りです。
- 1/21(月)53円26銭高・・・米株高を受け一時急伸しましたが、米大統領が対中関税取り下げを否定し、伸び悩みました。
- 1/22(火)96円42銭安・・・中国・世界経済の減速が嫌気されました。前日米国が休場のため様子見気分も強まりました。
- 1/23(水)29円12銭安・・・貿易統計で中国向け輸出の減速が確認され、それが嫌気されました。
- 1/24(木)19円09銭安・・・米国のロス商務長官が米中貿易摩擦について「解決までは程遠い」と述べました。
- 1/25(金)198円93銭高・・・米国で半導体株が買われた流れを引き継ぎ、半導体株が買われ、全体をけん引しました。
日経平均株価は1/21(月)に一時、20,892円68銭まで上昇しましたが、1月相場はそこが高値となっており、その後はそれ以下の水準で推移しています。米中貿易摩擦で妥協が成立することへの期待はいったん織り込まれたと考えられます。
1/25(金)の米国株式市場では、一部報道で「FRB(米連邦準備制度理事会)が資産縮小の終了を検討している」と伝えられたこともあり、NYダウは183.96ドル高となりました。しかし、FRBによる資産縮小終了は外為市場で円高・ドル安要因となるため、週明け1/28(月)の東京株式市場はこれを好感できず、この日の日経平均株価は前週末比124円56銭安と反落しました。さらにこの日の米国市場では、キャタピラーやエヌビディアなど、主力銘柄の業績が市場の期待を下回り、NYダウは208.98ドル安と下落しました。それを受け、1/29(火)の日経平均株価は売り先行となりました。ただ、売り一巡後は下げ渋るなど、方向感に乏しい展開となっています。
図1 戻り一巡となりつつある日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/1/29取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/1/28現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/1/29取引時間中
今週は日米で、重要な企業の決算発表が続く予定です。日本の場合、発表社数ベースでは1/31(木)に第1のヤマを迎えます。続く2/1(金)の発表社数はそれよりは少ないものの、表4にもあるように、時価総額上位の銘柄が多くなっています。なお、米国でも1/29(火)のアップル、AMDに続き、1/30(水)マイクロソフト、フェイスブック、1/31(木)アマゾンなど、重要企業の決算発表が続きます。
1/30(水)には米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表およびパウエルFRB議長の記者会見があります。本年からFRB議長の会見は、FOMCが開催されるたびに「毎回」実施へと変るだけに、市場との対話増加が期待されています。なお、発表のタイミングは日本時間では1/31(木)の午前4時頃の見込みです。
2/1(金)には米国で雇用統計が発表される予定です。非農業部門雇用者数(前月比)は12月の31.2万人増に対し、1月は16.5万人増(民間は17.8万人増)となる予想(市場コンセンサス)です。また、失業率は3.9%、時間当たり賃金の前年同月比は3.2%増加というのが市場コンセンサスです。
表1 当面の主要タイムスケジュール〜日米で主力企業が決算発表
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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1/29(火) |
日本 |
★決算発表(65社) |
信越化学、JPX他 |
英国 |
EU離脱修正案を議会で採決 |
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米国 |
11月S&PコアロジックCS住宅価格指数 |
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米国 |
1月CB消費者信頼感指数 |
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米国 |
☆決算発表 |
3M、AMD、アップル他 |
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1/30(水) |
日本 |
★決算発表(179社) |
OLC、キヤノン、JR東・西・東海、ヤマトHD |
米国 |
10〜12月期GDP |
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米国 |
1月ADP雇用統計 |
市場コンセンサスは前月比17万人増 |
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米国 |
米中首脳級協議 |
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米国 |
FOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表 |
日本時間では1/31(木)午前4時頃の予定 |
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米国 |
☆決算発表 |
ボーイング、マクドナルド、マイクロソフト、ビザ、FB他 |
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1/31(木) |
日本 |
12月鉱工業生産 |
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日本 |
日銀金融政策決定会合(1/23発表分)「主な意見」 |
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日本 |
★決算発表(400社)〜前半のヤマ場 |
第一三共、コマツ、ファナック、村田製、任天堂、東京エレク他 |
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中国 |
1月製造業PMI |
前月は49.4 |
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米国 |
☆決算発表 |
アマゾン、GE、スプリント |
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2/1(金) |
日本 |
12月労働力調査・有効求人倍率 |
有効求人倍率の前回は1.63倍 |
日本 |
★決算発表(155社)〜重要企業の発表が多い |
住友化、武田、日立、ソニー、キーエンス、デンソー、三井物、ドコモ |
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米国 |
1月雇用統計 |
非農業部門雇用者数のコンセンサスは前月比16.5万人 |
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2/4(月) |
日本 |
★決算発表(123社) |
花王、ヤフー、パナソニック、三菱電、住友電他 |
中国 |
春節の休日 |
〜2/10(日) |
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米国 |
☆決算発表 |
アンルファベット、シーゲイト・テクノロジー |
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2/5(火) |
日本 |
★決算発表(165社) |
スズキ、三菱商事、ソフトバンク他 |
米国 |
1月ISM非製造業景況指数 |
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米国 |
☆決算発表 |
ウォルト・ディズニー、エレクトロニック・アーツ他 |
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2/6(水) |
日本 |
★決算発表(167社) |
三菱ケミ、新日鉄住金、トヨタ、ソフトバンクG |
米国 |
☆決算発表 |
GM他 |
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2/7(木) |
日本 |
1月都心オフィス空室率 |
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日本 |
★決算発表(262社) |
大成建、JT、旭化成他 |
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米国 |
☆決算発表 |
ツイッター |
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2/8(金) |
日本 |
★決算発表(544社) |
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米国 |
1月雇用統計 |
非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは16.5万人増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 |
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日銀金融政策決定会合 |
3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) |
1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 |
3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
表3 決算発表スケジュール(社数)
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
---|---|---|---|---|
1/28 |
1/29 |
1/30 |
1/31 |
2/1 |
2/4 |
2/5 |
2/6 |
2/7 |
2/8 |
2/11 |
2/12 |
2/13 |
2/14 |
2/15 |
表4 東証時価総額上位銘柄の決算発表予定日
コード |
銘柄名 |
発表予定日 |
---|---|---|
7203 |
トヨタ |
2/6 |
9437 |
NTTドコモ |
2/1 |
9432 |
NTT |
2/7 |
9984 |
ソフトバンクG |
2/6 |
8306 |
三菱UFJ |
2/4 |
6758 |
ソニー |
2/1 |
9434 |
ソフトバンク |
2/5 |
9433 |
KDDI |
1/31 |
4502 |
武田 |
2/1 |
6861 |
キーエンス |
2/1 |
- ※弊社WEBサイト「決算発表スケジュール」(国内株式)より、SBI証券が作成。決算発表スケジュールは予告なく変更される場合があり、上記の決算発表スケジュールも日々変化する可能性があります。
10月上旬頃から、世界的に株価が下落に転じた理由として、前回は「ペンス演説」について、ご説明しました。昨年10/4(木)に米ペンス副大統領が演説を行い、覇権を目指す中国を激しく非難。単純に貿易面で中国を批判しているのにとどまらず、世界の覇権を目指す中国と長期戦覚悟で「戦う」ことを宣言したものと理解されました。米国の対中戦略の転換を意味するものであり、中国が米国からの輸入を増やすという程度の妥協では、最終的な解決に至る可能性は小さいと考えられます。この「ペンス演説」は株価の大きな転機点になったとみられるのみならず、将来になってここを振り返れば、「歴史の転換点」になっていたと言えるかもしれません。
ただ、このような変化があったから、株価は今後も下がり続けるということにはならないでしょう。第2次世界大戦後の米ソ冷戦が、皮肉にも戦後日本の復興を早め、経済成長をもたらす要因になったとする考え方があります。今回の米中「新冷戦」という大きな変化も日本経済にチャンスとなるかもしれません。ただ、米国が新しい技術のすべてで覇権を握る訳にもいかないとみられ、やはり、いくつかの分野では他の国との協調が必要になってくると考えられます。現在は、新しい枠組みが確立するまでの過渡期と言えるかもしれません。
米中覇権争いの激化が予想されることで、米国の金融政策が「ハト派的」になってきたことは、重要かつ前向きな変化であると考えられます。短期金融市場からみた米国政策金利の引き上げ確率は「3月まで」で1%、「6月まで」で17.9%、「9月まで」で23.4%と低水準になっています。むしろ「2019年に利上げするか否かの判断はいったん凍結された」状態にあると言えそうです。市場ではさらに、FRBによる資産縮小の凍結までも織り込みつつあるようです。
米国の「金融引き締め」が終ると、新興国等へ資金が流入しやすくなるでしょう。米中貿易摩擦の影響で足元の新興国経済には不安も残りますが、製造拠点の分散が中国から他の新興国へと進む可能性が強まるため、チャンスを迎える新興国も出てくるのではないでしょうか。世界経済は再び、活性化へ動き出すのかもしれません。
図4は日経平均株価の一目均衡表です。2/6(水)にトヨタ(7203)やソフトバンクG(9984)の決算が終わり、2/8(金)には544社の決算発表が予定され、名実ともに決算発表はピークアウトする予定です。この時期に日経平均株価が21,000円前後で安定できれば、「クモ」を上抜けできるのみならず、遅行スパンも日々線を上抜けてくるため、より「春の兆し」が強まってくるかもしれません。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成