11月末の日経平均株価終値は22,351円06銭となり、前月末比430円60銭(2.0%)の上昇となりました。月次ベースでは10月にマイナス9.1%と大きく下げた後の「反発」となりました。
こうした中、12/4(火)の東京株式市場では、日経平均株価が前日比538円71銭安と急落しました。7連騰となった11/22(木)〜12/3(月)の上昇幅1,067円の約半分を打ち消す格好となりました。
現在、日経平均株価の予想EPSは1,786円であり、それに12倍を乗じると21,432円と計算されます。この水準は11/21(水)の水準に近く、再び予想PERが「アベノミクス相場で最低」となる計算です。現在、日経平均株価がそれをさらに割り込んで下落する理由は見出しにくいと考えています。
11月末の日経平均株価(図1)終値は22,351円06銭となり、前月末比430円60銭(2.0%)の上昇となりました。月次ベースでは10月にマイナス9.1%と大きく下げた後の「反発」となりました。
東京株式市場では10月下旬以降、3月決算企業の「中間決算」の発表が本格化し、強弱対立する内容に一喜一憂する展開になっていました。それでも、11/5(月)にソフトバンクグループ、11/6(火)にトヨタといった主力企業の発表が無難に終了。さらに米国時間11/6(火)に実施された米中間選挙の大勢が日本時間11/7(水)に判明し、市場予想通りの結果(上院は共和党、下院は民主党が多数派になるとの見方)に落ち着きました。市場は「重要イベント通過」の形となり、リスク許容度が回復する中、日経平均株価は11/8(木)に一時22,486円92銭まで上昇しました。
テクニカル的には、11/8(木)の高値水準には100日移動平均線が位置しており、日経平均株価はそこで跳ね返される形となり、再び下落に転じました。この頃から、米アップル社のスマートフォンである「iPhone」について販売不振の可能性を心配する声が増え始めたこと、それと並行して半導体・電子部品株に売りが広がったことも逆風となりました。もともと、「iPhone」は米国で商品開発し、日本を含む世界で部品を調達し、中国で生産を行うという「国際的分業体制」の申し子的存在であり、米中貿易摩擦の激化も同社の先行きに影を投げかける存在になっていました。
日経平均株価は11/21(水)に一時21,243円38銭まで下落、終値も21,507円54銭と、ここが11月の安値となりました。ただ、この日の日経平均株価の予想PERは12.13倍であり、3/23(金)の12.22倍を下回り年初来最低水準となりました。さらに、アベノミクス相場では最低水準を更新したことになります。日経平均株価はここを起点に反発に転じ、11/22(木)〜12/3(月)は7営業日連続高となりました。
11/23(金)に「大阪万博」が決定したこと、また同じ日の米国(ブラックフライデー)でオンラインの小売売上高が前年同月比で大幅に増加したこと等が、市場心理を明るくした面もありそうです。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が11/28(水)の講演で、現在の政策金利が「中立金利」に近いとハト派的な発言を行ったことで、米利上げ停止観測が強まり、米国株が追い風を受けたことも影響したと考えられます。
ただ、日経平均株価は12/3(月)、終値が22,574円76銭となり、100日移動平均線22,551円18銭をわずかに上回ってきました。この水準は11/8(木)に跳ね返された「鬼門」でしたが、またもこの水準では売り優勢に転じることになります。12/4(火)の日経平均株価は結局、前日比538円71銭安と8営業日ぶり反落となり、7連騰となった11/22(木)〜12/3(月)の上昇幅1,067円の約半分を打ち消す格好となりました。
図1 日経平均株価は「W底」完成の形だったが・・・
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/12/4現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/12/3現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/12/4取引時間中
米国では11/30(金)にジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領が死去しました。共和党から大統領選挙に出馬し、1989〜1993年に第41代米大統領を務めました。1989/12/3にソ連のゴルバチョフ書記長と「冷戦の終結」を宣言したことで知られています。
その意味で、米国が中国と新たな冷戦状態になっていることは皮肉と言えます。子息のジョージ・W・ブッシュも大統領を務めた「大統領一家」です。
同氏の死亡を受け、米国トランプ大統領は12/5(水)を「国民追悼の日」として休日にすることを決めました。米株式市場も休場となり、経済指標の発表等も予定変更となっていますので注意が必要です。特に、この日に予定されていたパウエルFRB議長の議会証言は「中止」となっています。
なお、12/7(金)には米雇用統計(11月)の発表が予定されています。週次の新規失業申請件数等をみる限り、強い労働市場にピークアウト感が漂い始めていると考えられ、一応の注意が必要です。
表1 当面の主要タイムスケジュール〜2018年最後の米雇用統計が発表予定
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
12/4(火) | 欧州 | EU財務省理事会 | |
12/5(水) | 米国 | ◎米国市場は休場(国民追悼の日) | ブッシュ元大統領(父)の国葬で臨時休日 |
12/6(木) | 米国 | 11月ADP雇用統計 | 市場コンセンサスは前月比19.5万人増 |
米国 | 11月ISM非製造業景況指数 | 新規受注、雇用などの個別指標にも注目 | |
米国 | ベージュブック | ||
- | OPEC総会 | これに先行するG20の方が重要との見方も | |
米国 | ★決算発表 | ブロードコム | |
12/7(金) | 米国 | 11月雇用統計・非農業部門雇用者数(前月比) | 市場コンセンサスは19.82万人増。前月は25万人増 |
米国 | 同・失業率 | 市場コンセンサス・前月ともに3.7% | |
米国 | 同・時間当たり賃金(前前比) | 市場コンサンサスは3.1%増 | |
12/8(土) | 中国 | 11月貿易収支 | 市場コンセンサス(輸出・前年同月比)は9.0%増 |
12/9(日) | 中国 | 11月消費者物価指数 | 市場コンセンサス(前年同月比)は2.4%増 |
12/10(月) | 日本 | 7〜9月期GDP(改定値) | 市場コンセンサスは前月比・年率0.5%減 |
12/11(火) | 英国 | EU離脱合意案の採決 | |
ドイツ | 12月ZEW景況感指数 | 350人のアナリストや市場関係者にアンケート | |
米国 | 11月生産者物価指数 | ||
12/12(水) | 日本 | 10月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
米国 | 11月消費者物価指数(食品・エネルギーを除く) | 市場コンセンサス(前年同月比)は2.2%上昇 | |
12/13(木) | 日本 | 11月都心オフィス空室率 | 10月は2.2% |
欧州 | ECB理事会 | ||
12/14(金) | 日本 | 12月調査日銀短観 | 市場コンセンサス(大企業・製造業・業況判断指数)は+19 |
日本 | メジャーSQ | ||
中国 | 11月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.9%増 | |
中国 | 11月小売売上高 | 市場コンセンサス(前年同月比)は8.7%増 | |
中国 | 11月固定資産投資(年初来・累計) | 市場コンセンサス(前年同期比)は5.7%増 | |
米国 | 11月鉱工業生産 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
12/4(火)の東京株式市場では、日経平均株価が前日比538円71銭安と急落しました。最初の節でもご説明した通り、7連騰となった11/22(木)〜12/3(月)の上昇幅1,067円の約半分を打ち消す格好となりました。
テクニカル的に節目となる株価に到達したことで、売りが優勢になった側面がありそうです。日経平均株価は12/3(月)、終値が22,574円76銭となり、100日移動平均線22,551円18銭をわずかに上回っていました。この水準は11/8(木)に跳ね返された「鬼門」でしたが、またもこの水準では売り優勢に転じたことになります。
先週末のG20では米中貿易交渉で、米国による中国からの輸入品に対する関税引き上げ(2,000億ドル相当分)が猶予され、株式市場はこれを貿易戦争の「一時休戦」と捉えました。ただ、交渉で特に大きな前進があった訳ではなく、最終的な着地点は依然不透明であると考えられます。米中貿易戦争は「一時休戦」ですが、これからの「本格的な戦争」を控えた踊り場にすぎないという見方も出ています。
米中貿易戦争に対する不透明感に加え、米為替市場にも波乱の芽が生まれつつあります。原油価格の下落でインフレ圧力が低下していることや、米労働市場にピークアウト感が漂っていることにも要注意です。2019年にかけ、円高・ドル安圧力が強まる可能性に要注意だと思います。
ただし、目先の下値不安は大きくないと「225の『ココがPOINT!』」では考えています。日経平均株価の予想PERは過去1年間、平均で13.5倍となっています。仮に今後。日経平均株価の予想PERが13.5倍を中心に12.0〜15.0倍で推移すると予想します。
現在、日経平均株価の予想EPSは1,786円であり、それに12倍を乗じると21,432円と計算されます。この水準は11/21(水)の水準に近く、再び予想PERが「アベノミクス相場で最低」となる計算です。現在、日経平均株価がそれをさらに割り込んで下落する理由は見出しにくいと考えています。
図4 日経平均株価(日足)と予想PER12.0倍、13.5倍、15倍相当ライン
- ※日経平均株価公表データをもとにSBI証券が作成