日経平均株価は8/28(火)に一時23,000円を回復しました。米中貿易摩擦やトルコ問題への懸念が後退する中、米国株が上昇基調となり、東京市場でも「リスクオン」の空気が強まりつつあるようです。
ただ、2018年の日経平均株価は年初から2/2(金)まで23,000円以上の水準で推移し、その後はおおむね23,000円以下の水準で推移し、23,000円前後が天井になるというパターンを繰り返してきました。今回はこの23,000円を明確に上抜けることができるのでしょうか。改めて、「日経平均株価23,000円」の意味について再考したいと思います。
ココがPOINT!
先週(8/20〜8/24)の東京株式市場では日経平均株価が売り先行となったものの、その後は上昇に転じ、週足ベースでは1.5%上昇となり、4週間ぶりの反発となりました。
日経平均株価は8/20(月)、トルコ問題への不安がくすぶり続けたことに加え、外為市場で円高が進んだこともあり、前週末比29円49銭安となり、終値は5営業日ぶりに22,000円台を割り込んでしまいました。しかし、その後の同平均株価は上昇に転じ、上記したように週足ベースでは4週間ぶりの反発となりました。
- (1)トルコが「犠牲祭」およびその前夜祭の大型連休(8/20〜8/24)となり、追加的な悪材料を発信しなかったこと
- (2)景気対策への期待や、米中貿易交渉への期待等を背景に、上海総合指数が8/17(金)を底に上昇に転じたこと
- (3)米国株が総じて堅調に推移し、外為市場では8/21(火)までで円高圧力が一巡したこと
等が日本株上昇の背景と考えられます。
焦点の米中貿易摩擦については、8/23(木)以降、160億ドルの輸入品について相互に関税が賦課されることになりましたが、株式市場では「織り込み済み」となり、目立った反応はみられませんでした。むしろ、8/24(金)・8/27(月)にNYダウが大幅続伸する中で、日経平均株価も上昇ピッチを加速。結局、8/21(火)から8/28(火)まで、日経平均株価は6営業日連続高となり、取引時間中ベースとしては6/12(火)以来の23,000円台回復を実現しました。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が8/24(金)にジャクソンホール会議で講演を行い、FRBは利上げを急いでいないとの印象を市場に与えました。さらに、8/27(月)には米国とメキシコがNAFTA(北米自由協定)見直しで合意に達し、世界的な貿易戦争への懸念が後退しました。NYダウは8/27(月)に2/1(木)以来の26,000ドル台を回復。ナスダック指数は史上初めて8,000ポイント台乗せを実現しました。
もっとも、世界的に貿易摩擦問題に対する懸念が解消された訳ではありません。夏休みから市場参加者が戻りきっていないこともあり、8/17(金)〜8/27(月)の東証1部市場では7営業日連続で売買代金が2兆円を下回る閑散商状となりました。
図1:日経平均株価は6/12(火)以来2ヵ月半ぶりに一時23,000円台を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/8/28現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/8/27現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/8/28取引時間中
8月に株主優待や配当の権利が確定する銘柄について、権利付最終日は8/28(火)でした。言い換えれば、8/29(水)からは受渡しが9月になるので、実質的に9月相場入りすると考えることができます。
ちなみに、SBI証券の株主優待検索ページをベースとして考えた場合、9月に株主優待の権利が確定する銘柄数は425銘柄で、3月の792銘柄に次ぐ第2位となっています。また、9月末に「中間期」の配当が支払われる銘柄も少なくありません。このように、8/29(水)以降はいよいよ、9月に配当・株主優待の権利が確定する銘柄への物色も本格化してくると考えられます。
なお、9月に配当・株主優待の権利が確定する銘柄の権利付最終日は原則9/25(火)となっています。9月は9/17(月)が「敬老の日」、9/24(月)が「秋分の日の振替休日」であり、3連休が2回あることになります。営業日が少ない分、ポジション調整が少々難しい月になりそうです。
表1 実質的には9月相場入り
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
8/28(火) | 日本 | 8月末権利確定銘柄の権利付最終日 | |
米国 | 8月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | ||
8/29(水) | 米国 | 4〜6月GDP改定値 | 速報値(前期比・年率)は4.1%増 |
米国 | 7月中古住宅販売仮契約 | 6月は前期比0.9%増 | |
8/30(木) | トルコ | 休場(「戦勝記念日」) | ケマル・アタチュルク率いるトルコ軍がギリシャに勝利した日 |
8/31(金) | 日本 | 7月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前月比)は0.2%増 |
中国 | 8月製造業PMI | ||
9/3(月) | 日本 | 4〜6月法人企業統計 | |
米国 | 休場(レイバーデー) | 夏休み明けを終える市場関係者も多い | |
9/4(火) | 米国 | 8月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは57.4 |
9/5(水) | 米国 | 7月貿易収支 | |
9/6(木) | 米国 | 中国に対する2,000億ドル分の追加関税に関する意見募集期限 | |
米国 | 8月ADP雇用統計 | 雇用者数の市場コンサンサスは前月比19.1万人増 | |
米国 | 8月ISM非製造業指数 | 雇用、新規受注等の指標にも注目 | |
9/7(金) | 米国 | 8月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは19.2万人増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日経平均株価は8/28(火)の取引時間中に一時、23,000円を回復しました。2018年の日経平均株価は年初から2/2(金)まで23,000円以上の水準で推移し、その後はおおむね23,000円以下の水準で推移し、23,000円前後が天井になるというパターンを繰り返してきました。
表1は2018年の相場の節目となる月日と、その日の日経平均株価、予想PER、予想EPS(一株利益)、TOPIX等を比較したものです。各局面の意味については「備考」に示した通りで、「局面2」を除けばおおむね終値が23,000円近辺となっています。日経平均株価は2月以降、23,000円を大きく上回って終値を形成することができず、その前後で小天井を形成後は跳ね返されてしまっています。8/28(火)も一時23,000円を示現後は急速に売りが増え、かなり伸び悩んで1日の取引を終えています。
ただ、同じ23,000円近辺の日経平均株価でも「中身」は良くなっています。予想EPSが回を追うごとに増加しているため、予想PERは低下傾向となり、割安感が増しているためです。8/28(火)終値は結局、昨年末終値とあまり変わらない水準ですが、予想EPSは14%も増えています。仮に、日経平均株価が予想EPSと同程度に増えていたと仮定すれば、
22,764円×1.14=25,950円
より、日経平均株価は26,000円まで上昇しても不思議でななかったと考えられます。また、日経平均株価の23,000円前後という同一水準で比較したTOPIXについては数値が低下してしまい、NT倍率の低下に歯止めがかかっていません。TOPIXベースでは日本株はさらに頭打ち感が強く出ていると言えそうです。
日経平均株価の予想EPSは企業業績という「現実」を示し、予想PERは市場の「期待」の強弱を示すと考えられます。日経平均株価が23,000円を壁に伸び悩んでいるのは、企業業績という「現実」が強くなっているにもかかわらず、「期待」が弱くなっているためと考えられます。ここで「期待」を引き下げているのが世界的な貿易戦争への懸念ということになりそうです。
ただ、米国とメキシコのNAFTA見直しで合意が成立し、不透明感は少しずつ解消に向かいつつあります。「期待」が回復し、予想PER上昇が株価上昇につながる局面が接近しつつあるようです。
表3:日経平均株価が同じ23,000円でも、中身は良くなりつつある
局面 | 節目となる日付 | 日経平均 | 予想PER | 予想EPS | TOPIX | NT倍率 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2017/12/29(金) | 22,764.94 | 15.06 | 1,511.62 | 1,817.56 | 12.53 | 2017年大納会 |
2 | 2018/1/18(木) | 24,084.42 | 15.56 | 1,547.84 | 1,876.86 | 12.83 | 2018年の高値 |
3 | 2018/2/2(金) | 23,274.53 | 15.10 | 1,541.36 | 1,864.25 | 12.48 | この日まで2万3千円 |
4 | 2018/5/21(月) | 23,002.37 | 13.88 | 1,657.23 | 1,813.75 | 12.68 | 終値が23,000円台 |
5 | 2018/6/12(火) | 23,011.57 | 13.68 | 1,682.13 | 1,792.82 | 12.84 | 終値が23,000円台 |
6 | 2018/7/18(水) | 22,949.32 | 13.48 | 1,702.47 | 1,751.21 | 13.10 | 一時23,000円台 |
7 | 2018/8/28(火) | 22,813.47 | 13.22 | 1,725.25 | 1,731.6 | 13.17 | 一時23,000円台 |
- ※日経平均株価データ、東証株価データをもとにSBI証券が作成。8/28(火)の予想EPSは8/27(月)と同じ数値とし、予想PERはそこから逆算しています。
図4:日経平均株価(日足)〜23,000円が強力な「壁」に
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。