東京株式市場の7月相場が終りました。日経平均株価は6月末終値22,304円51銭に対し、7月末終値は22,553円72銭となり、月足ベースでは1.1%の上昇になりました。
8月相場はどうなるのでしょうか。米IT企業の収益にピークアウト感が強まっており、ナスダック指数が下げ始めていることが気がかりな材料です。貿易摩擦問題について、米国と欧州の間では一定の妥協が成立したものの、米国と中国との間では対立が継続しています。日本株についても、NT倍率が反落傾向となっており、日経平均株価高寄与度銘柄等に波乱が継続する可能性には注意が必要と思われます。
東京株式市場の7月相場が終りました。日経平均株価(図1)は6月末終値22,304円51銭に対し、7月末終値は22,553円72銭となり、月足ベースでは1.1%の上昇になりました。
東京株式市場は6月半ば以降、米国による中国からの輸入に対する関税強化の動きが続く中、世界的な貿易戦争の激化が懸念され、下落基調となっていました。月替わりとなった7/2(月)には、メキシコ大統領選挙での新興左派候補の当選確実が伝わり、貿易戦争がさらに激化するとの懸念から、日経平均株価は前週末比492円58銭安と急落。波乱の月替わりとなりました。
こうした中、米中通商協議に進展がなければ、7/6(金)以降は米国が中国からの輸入品340億ドル分に25%の関税賦課を開始する日程となっていたため、株式市場では警戒感がくすぶり続け、7/5(木)に日経平均株価は一時、21,462円95銭の安値を付けました。結局、この日まで日経平均株価は4営業日続落となり、6/12(火)高値23,011円57銭から上記の安値までの下落率は6.7%に達しました。
ただ、7/5(木)を境に東京株式市場は反発に転じました。米国による中国からの輸入に対する課税が実際に開始となったことで、逆に悪材料出尽くしとなった形です。好調な企業業績への期待を背景に、NYダウ(図2)は6/28(木)安値23,997.21ドルから7/26(木)高値25,587.24ドルまで6.6%上昇し、東京株式市場にとっても支援材料となりました。特にIT株は堅調で、ナスダック指数は過去最高値を更新しました。こうした米国株の上昇が市場のリスク許容度を高める中、外為相場(図3)が一時1ドル113円台の円安・ドル高となったことも、東京株式市場での買い安心感につながりました。
日経平均株価は7/18(水)には一時22,949円32銭まで値を戻しました。しかし、5/21(月)および6/12(火)に「ダブル・トップ」を形成した高値水準に接近したこともあり、それ以降は再び下落に転じました。日銀が7/31(火)に結果が発表される金融政策決定会合において緩和的金融政策に修正を加えるとの観測が台頭したこと、米国株がIT株を中心として下落に転じたことも逆風となりました。結果的に、日経平均株価は7/18(水)の高値をもってトリプル・トップを形成した格好になりました。
しかし、その日銀金融政策決定会合では、緩和的金融政策の方向性自体には変化が生じなかったこともあり、波乱は回避され、7/31(火)午後の日経平均株価は小幅な動きで終り、冒頭でご説明したように、月末終値は22,553円72銭(前月末比1.1%高)となりました。
図1:結局、23,000円近辺で「トリプル・トップ」形成となった日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/7/31現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/7/30現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/7/30取引時間中
東京株式市場ではいよいよ、決算発表が佳境を迎えます。決算発表社数ベースでは581社が発表を予定している8/10(金)が最大のヤマ場となり、411社が発表を予定している7/31(火)が第2のヤマ場となる見込みです。
もっとも、7/31(火)は表1に例示しているように時価総額規模で大きい企業の発表予定が多く、実質的にはこちらの方が最大のヤマ場と言えるかもしれません。同様に、我が国で時価総額が最大のトヨタ(7203)をはじめ、大企業の発表が目白押しの予定である8/3(金)も大きなヤマ場であると考えられます。
なお、8/3(金)には米国で雇用統計(7月)の発表が予定されています。市場の関心は「非農業部門雇用者数」および「時間当たり賃金」にあり、特に最近は後者の注目度が高まる傾向にあります。現状で「時間当たり賃金」(前年同月比)の市場コンセンサスは2.7%増となっており、これを上回るとドル高・米国株安要因になると考えられます。
このように、8/3(金)は国内で重要企業の決算発表が多く、同時に米国では雇用統計(7月)の発表が予定されており、非常に重要な日になると考えられます。このため、直前は売り買いともに、ポジションを膨らませにくいタイミングになると考えられます。
表1 8/3(金)は重要日程が重複
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
7/31(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表/展望レポート | ETFの配分見直し他、金融政策の変更・修正はあるのか |
日本 | 6月有効求人倍率 | ||
中国 | 7月製造業PMI | ||
韓国 | サムスン電子の決算発表 | 半導体市場の見通しは? | |
日本 | ★決算発表(411社) | 三菱ケミカル、パナソニック、ソニー、村田製、任天堂他 | |
米国 | 7月CB消費者信頼感指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | アップル(日本時間8/1の早朝) | |
8/1(水) | 日本 | ★決算発表(89社) | エーザイ、小野薬、キーエンス |
米国 | 7月ADP雇用統計 | 雇用者数の市場コンセンサスは17.8万人増 | |
米国 | 7月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは59.1 | |
米国 | ☆決算発表 | スプリント | |
米国 | FOMC結果発表(日本時間では8/2の午前3時) | ||
8/2(木) | 日本 | ★決算発表(108社) | 新日鉄住、三菱商、ドコモ他 |
8/3(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(6/15発表)議事要旨 | |
日本 | ★決算発表(251社) | トヨタ、三井不、三菱地所、住友商、伊藤忠他 | |
米国 | 7月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは18.5万人増 | |
時間当たり賃金(6月)は前年同月比2.7%増 | |||
8/6(月) | 日本 | ★決算発表(138社) | 東レ、ソフトバンクG他 |
8/7(火) | 日本 | 6月現金給与総額 | 5月は前年同月比2.6%増 |
日本 | ★決算発表(220社) | 鹿島、NTT他 | |
8/8(水) | 日本 | 7月景気ウォッチャー調査 | |
日本 | 日銀金融政策決定会合「おもな意見」(7/31発表分) | ||
中国 | 7月貿易統計 | 6月の輸出は前年同月比11.2%増 | |
日本 | ★決算発表(235社) | 住友鉱、MS&AD他 | |
8/9(木) | 日本 | 6月コア機械受注 | 5月は前月比3.7%減 |
中国 | 7月消費者物価指数 | 6月は前年同月比1.9%増 | |
日本 | ★決算発表(362社) | 富士フィルム、T&DHD、住友不、第一生命 | |
8/10(金) | 日本 | 4〜6月期実質GDP | 1〜3月期は前期比・年率0.6%減 |
中国 | 7月新規銀行融資・マネーサプライ | ||
日本 | ★決算発表(581社)〜決算発表がピーク | リクルートHD、日本郵政、東京海上他 | |
米国 | 7月消費者物価指数(食品・エネルギーを除く) | 6月は2.3%増 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
7月第4週(7/23〜7/27)に入り、市場の一部では、7/31(火)に結果が発表される日銀金融政策決定会合において、金融政策に修正が加えられるのではないかとの観測が強まっていました。
市場では、(1)マイナスの政策金利の解除、(2)ゼロ近辺としている長期金利の誘導目標水準の柔軟化、(3)買い入れるETF(上場投資信託)で日経平均連動分を減らしてTOPIX連動分を増額、等について決定ないしはそれらを示唆する動きがあるかもしれないと考えられていました。これを受け、債券市場では一時10年国債利回りが上昇し、外為市場で円高が進展、また株式市場では銀行株が上昇する等の動きがみられました。
これらの動きに対し、日銀は7/23(月)、7/27(金)、7/30(月)の3回にわたり、「指し値オペ」(日銀が金利上昇を抑えるために指定する利回りで国債を買い入れる手法)を実施して金利上昇観測の後退を図る一方、指し値の変更により、政策の柔軟性強化を示唆する動きを示していました。
こうした中、日銀は7/31(火)に金融政策決定会合の結果を発表し、「フォワードガイダンス」を導入して低い長短金利を当面は維持することを明らかにする一方、長期金利のある程度の変動や、マイナス金利が適用される政策金利残高の減少、TOPIX連動型ETFの買入額増大等を決定しました。これは、緩和的金融政策を維持する方針を明確にする一方で、市場が要求する金利変動の柔軟性強化に配慮を示した修正であると考えられます。すなわち上記した、市場の観測(1)〜(3)のうち、(1)については否定されたものの、(2)と(3)については実現方向になったと考えられます。
これを受けた7/31(火)午後の東京株式市場では、緩和的金融政策の大枠が維持されたことが好感され、日経平均株価は上昇したものの、銀行株に利益確定売りが目立ち、TOPIXは下落して終わっています。
8月相場はどうなるのでしょうか。米IT企業の収益にピークアウト感が強まっており、ナスダック指数(図4)が下げ始めていることが気がかりな材料です。貿易摩擦問題について、米国と欧州の間では一定の妥協が成立したものの、米国と中国との間では対立が継続しています。日本株についても、NT倍率(図5)が反落傾向となっており、日経平均株価高寄与度銘柄等に波乱が継続する可能性がありそうです。
もともと、8月は市場関係者の間で夏休みを取る動きが増えやすいため、様子見気分が強まるケースも想定されます。市場関係者の減少により、商いが薄くなると、逆に上下に波乱となる可能性もあり、その点でも注意が必要と思われます。
図4:ナスダック指数(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/7/30現在
図5:NT倍率(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/7/31現在