2月第2週(2/5〜2/9)の東京株式市場では、一週間で日経平均株価が1,900円近くも下げ、年初来の上昇を帳消しにしてしまいました。連休明けの2/13(火)も上値の重い展開で、まだまだ波乱が続く可能性を示唆しているかのようです。
今後の日経平均株価はどうなるのでしょうか。その鍵を握るのは「PER」であると考えられます。PERが低下傾向にあることが株価下落につながっているとみられるためです。今回の「225の『ココがPOINT!』」はPERについて考え、その先行きについても占ってみたいと思います。
<今週のココがPOINT!>
世界株安の中で日経平均株価も下落基調が継続 |
世界的な株式市場の波乱が続いています。2/2(金)に665.75ドル安、2/5(月)に1,175.21ドル安となったNYダウはその後切り返す場面もありましたが、2/8(木)には1,032.89ドル安と再び1千ドルを超える下げになりました。雇用統計(1月)で平均時給が予想以上に増え、長期金利の上昇に弾みが付いたことが要因と考えられます。ボラティリティ(株価変動率)が急拡大し、それが新たな売りを誘発する形となり、株価下落を助長した面もあるようです。
米国株の急落が世界的な株価下落へと拡散する中、東京市場も下落基調に転じています。日経平均株価は2/5(月)に前営業日比592円45銭安、2/6(火)に1,071円84銭安と下げた後、少し落ち着きを取り戻したものの、2/9(金)には再び508円24銭と急落してしまいました。米国株の反発を受け、2/13(月)の東京株式市場は買い先行となり、日経平均株価は一時300円近く上昇する場面もありましたが、終値では137円94銭安と値を消してしまいました。週を明けても地合いの悪さに大きな変化はないように感じられます。
図1は日経平均株価(日足)、図2はNYダウの値動きを示したものです。前者は、1/23(火)の昨年来高値から2/6(火)の取引時間中安値まで12.6%の下落となりました。これに対して後者は、1/26(金)の史上最高値から2/9(金)の取引時間中安値まで12.2%の下落率となっています。日本株の下落はほぼ米国株の下落で説明できるかもしれません。
図3はドル・円相場の推移を示したものです。1/9(火)には1ドル113円近辺にありましたが、その後は円高・ドル安基調に転じ、2/9(金)には一時1ドル108円03銭まで円高・ドル安が進む展開になりました。マイナス金利が金融機関の経営に悪影響を与えていることもあり、日銀が長期国債の金利誘導目標を引き上げるとの観測が台頭したことや、リスク回避の円買いが進んだことが背景とみられます。2/9(金)および2/12(月)にNYダウが計740ドル上昇したにもかかわらず、2/13(月)の日経平均株価が下落で終わった一因は、この円高・ドル安の進行であると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜21,000円近辺での攻防が続く
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/02/13現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/02/12現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/02/13取引時間中
当面のタイムスケジュール〜米国インフレ関連指標への注目度が高まりそう |
1月下旬以降続いてきた決算発表は終盤を迎えました。2/13(火)および2/14(水)にはそれぞれ、300数十社の上場企業が2017年10〜12月期の決算発表の予定です。今後は発表された決算内容をもとに、銘柄間で株価の明暗が分かれてくる可能性がありそうです。
ところで、米雇用統計(1月)で発表される多くの指標の中で、なぜ今回は平均時給が注目されたのでしょうか。理由は、平均時給の伸びが加速するとインフレ率の上昇につながりやすいためです。インフレ率が上昇すると、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げペースが速まる可能性が強まり、株価には逆風になると考えられています。
その意味で、今後はインフレ関連指標への注目度が高まると予想されます。2/14(水)には米国で消費者物価指数(1月)の発表が予定されています。変動が大きい食品およびエネルギーを除いた部分で市場コンセンサスは前年同月比1.7%の上昇となっています。これが大きく予想を上回るようですと、株式市場が下げる可能性が出てくると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜米消費者物価指数の重要性が高まる
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
2/13(火) | 日本 | ★決算発表345社 | 電通、住友不動産他 |
2/14(水) | 日本 | 10〜12月期GDP | コンセンサス(前期比・年率)は+0.9% |
日本 | ★決算発表332社 | リクルートHD、郵政3社、第一生命、東京海上他 | |
米国 | 1月消費者物価指数 | コンセンサス(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+1.7% | |
米国 | 1月小売売上高 | 米個人消費の勢いは? | |
2/15(木) | 日本 | 12月機械受注 | 民間設備投資を占う |
中国 | 春節の大型連休(〜21日) | インバウンド消費の動向を左右 | |
米国 | 1月鉱工業生産 | ||
米国 | 2月フィラデルフィア製造業景況指数 | 企業マインドは? | |
2/16(金) | 北朝鮮 | 故金正日総書記生誕75日 | |
2/17(土) | 米国 | 2月ミシガン大学消費マインド指数(米国時間16日) | |
2/19(月) | 日本 | 1月貿易収支 | |
2/20(火) | ドイツ | 2月ZEW景況感調査 | 今後6ヵ月の景況感を市場関係者等にアンケート調査 |
2/21(水) | 日本 | 1月全国百貨店売上高 | |
2/22(木) | 米国 | 1月中古住宅販売件数(米国時間20日) | 米住宅市場は9割が中古で、新築は1割 |
米国 | FOMC 議事要旨(1/31発表分) | ||
米国 | 2月IFO企業景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート | |
2/23(金) | 日本 | 1月全国消費者物価指数 | 12月(除食品・エネルギー・前年同月比)は+0.3% |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】すでに「買い場」に到達!?〜鍵を握る「PER」の行方は? |
株式市場の波乱が続き、昨年来高値からの日経平均株価の下落率は一時12.6%に達しました。株価下落を受け、日経平均株価の予想PERは前週末に13.08倍まで低下しました。
株価はEPS(一株利益)とPER(株価収益率)の掛け算で決まっています。このうち、前者は企業業績を示しています。業績が悪くなる企業の株価が下がるのはそのためです。それでは今回の株価急落は企業業績の悪化を示しているのでしょうか。昨年末に1,500円を少し超えた程度だった日経平均株価の予想EPSは先週末に1,634円まで上昇しました。日本経済新聞によると、2018年3月期に上場企業の純利益は前期比27%増となる予想です。どうやら企業業績が「犯人」ではないようです。
一方、PERの方はどうでしょうか。一時15.8倍まで上昇した日経平均株価の予想PERは先週末、冒頭にご説明したように13.08まで低下してしまいました。どうも「犯人」はこちらのようです。EPSが企業業績という事実の反映であるとすれば、PERは市場の心理を反映すると考えられます。しかし、そう考えるだけでは不十分かもしれません。それを左右する「金利」、「成長率」、「安定性」についても考察すべきでしょう。
一般的にPERは金利が低いほど、企業の成長率が高いほど、業績が安定しているほど高いと考えらます。今回の株価下落はこのうち「金利」の影響が大きそうです。米国では長期金利が上昇したことで、妥当なPERの水準が下がり、株式の割高感が強まり、株価下落につながったと言えそうです。我が国でも日銀の長期金利誘導目標が引き上げられるとの観測が台頭しました。その意味では、世界的に中央銀行の金融政策が「緩和」から「引き締め」に向かう端境期に入ったとみられることが株価下落の原因とみられます。特に米国では減税やインフラ投資など相次いで景気を刺激する材料が発表され、金利が上昇しやすい材料が揃っています。
日本はどうでしょうか。確かに我が国も景気・企業業績は好調であり、金融政策が転機を迎えても不思議ではないかもしれない。しかし、憲法改正や消費税引き上げを控え、金利引き上げのリスクは大きいと考えられます。本格的なインフレ率の上昇が見通せるようになってきた訳でもありません。実際に長期金利の誘導目標を今引き上げることは難しいと思われます。
図4は日経平均株価の予想PERについて、その推移をみたものです。期間は「アベノミクス相場」がスタートした2012/11/14の前日(2012/11/13)からとなっています。仮にこのまま日経平均株価の下落が続く場合、予想PERは13倍を割り込むことになるとみられます。それはPER的には「アベノミクス相場」の下限に近づくことになります。また、2012/11/13の予想PER13.58倍を下回ることは「アベノミクス」の効果を全面否定することになり、さすがに「行き過ぎ」になると考えられます。
図4:日経平均株価(左軸)とその予想PER(右軸・倍)の推移
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/02/09現在
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