東京株式市場では、日経平均株価が11/9(木)には一時、1992/1/10以来の2万3千円台(取引時間中ベース)を回復しましたが、その後はやや伸び悩んでいます。9/8(金)に19,274円82銭の安値を付けて以降上昇に転じ、一時は約2ヵ月で約2割上昇した日経平均株価ですが、スピード調整が必要な局面に来ているのかもしれません。
ちなみに、野田前首相が解散・総選挙を示唆したのが2012/11/14(水)であり、その日以降事実上の「アベノミクス相場」は始まったと考えられています。すなわち、11/14(火)で「アベノミクス相場」はスタートしてから5年経ったと考えられます。今回の「225の『ココがPOINT!』では、「アベノミクス相場の5年間」における株価パフォーマンスを総括し、今後の株式市場について展望してみたいと思います。
<今週のココがPOINT!>
一時1992/1/10以来約25年10ヵ月ぶりの2万3千円台 |
10/2(月)から10/24(火)まで16営業日連続高となった後も、日経平均株価(図1)は11/7(火)までの9営業日で「7勝2敗」と、堅調に推移。11/9(木)には一時、1992/1/10以来約25年10ヵ月ぶりの2万3千円台(取引時間中ベース)を回復しました。
同じ期間、米国市場では好調な企業業績や税制改革に対する期待を背景に、NYダウ(図2)が上昇基調となりました。また、外為市場ではドル・円相場(図3)がおおむね1ドル113〜114円台で安定した推移となりました。我が国では2017年7〜9月期の決算発表が進み、業績予想の上方修正を発表する企業が相次ぎました。米株高、為替の安定、好調な企業業績が日本株高の要因になったと考えられます。
ただ、日経平均株価は9/8(金)に19,274円82銭の安値を付けて以降上昇に転じ、一時は約2ヵ月で約2割上昇した形になりました。さすがに上昇ピッチが速過ぎるとの印象を市場参加者に与え始めました。11/9(木)には、特に目立った材料もない中で、日経平均株価が午前中に一時、前日比468円高水準の23,382円まで上昇したものの、午後は逆に前日比390円安水準の22,522円まで下げるなど、まさに乱高下になりました。日経平均株価のボラティリティー(株価変動率)が一定水準以上になると、自動的にクローズされるポジションもあるようです。午前中の急騰が、午後の急落を招いたと言えるかもしれません。
結局、日経平均株価は終値ベースでは、11/7(火)の22,937円60銭が年初来高値となり、その後は11/8(水)から11/14(火)まで5営業日連続安となるなど、スピード調整局面の様相を呈しています。
図1:日経平均株価(日足)〜一時1992/1/10以来約25年10ヵ月ぶりの2万3千円台
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/11/14現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/11/13現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/11/14取引時間中
当面のタイムスケジュール〜米企業マインドの好調は維持されるか? |
我が国では11/10(金)に上場企業556社が決算発表を行い、2017年7〜9月期の決算発表はピークアウトしました。その後も11/13(月)と11/14(火)に各250社ずつ発表となり、一部保険会社を除き、これでほぼ終了となります。今回の決算発表は、業績予想の上方修正が多く、株価の支援材料になることが多かったとみられます。決算発表の終了は、株式市場にとり、追い風が弱まることを意味しているのかもしれません。
こうした中、11/15(水)には我が国のGDP(2017年7〜9月期)速報が発表されます。代表的な経済指標の発表ですが、GDPの発表は常に、同じ四半期の決算発表が一巡した後になることもあり、その結果が株式市場に与える影響は限定的なものにとどまると考えられます。むしろ、11/16(木)に発表される米国の「フィラデルフィア連銀製造業景況感指数」(11月)などを通じ、米国企業のマインドの強弱を計っておくことの方が重要になりそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜米企業マインドの好調は維持されるか?
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
11/14(火) | 日本 | ★決算発表〜電通、リクルート、三菱UFJ他 | 郵政3社も発表 |
中国 | 10月小売売上高 | コンセンサスは前年同月比+10.5%(年初来) | |
中国 | 10月固定資産投資 | コンセンサスは前年同月比+7.3%(年初来) | |
中国 | 10月鉱工業生産 | コンセンサスは前年同月比+6.3% | |
ドイツ | 7〜9月期GDP | コンセンサスは前年同期比+0.8% | |
ドイツ | 11月ZEW景況感指数 | 350人のアナリスト・市場参加者に半年先の景況感を質問 | |
11/15(水) | 日本 | 7〜9月期GDP(速報) | コンセンサスは前期比(年率)+1.4% |
日本 | 10月訪日外客数 | 1〜9月累計で2,120万人(前年同期比+17.9%) | |
米国 | 10月消費者物価指数 | 前回(コア)は前年同月比+1.7% | |
米国 | 10月小売売上高 | コンセンサスは前月比±0% | |
11/16(木) | 米国 | 11月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | |
米国 | 10月鉱工業生産 | コンセンサスは前月比+0.5% | |
米国 | 11月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表〜ウォルマート、アプライド・マテリアル | ||
11/17(金) | 日本 | ★決算発表〜SOMPO、東京海上他 | |
米国 | 10月住宅着工件数 | コンセンサスは前月比+5.6% | |
11/20(月) | 日本 | 10月貿易統計 | 前月の輸出(前年同月比)は+14.1% |
11/21(火) | 米国 | 10月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比+0.3% |
11/22(水) | 米国 | 10月耐久財受注 | コンセンサス(輸送用機器を除く)は前月比+0.3% |
米国 | FOMC議事録(11/1発表分) | ||
11/23(木) | 日本 | ◎東京市場は休場〜勤労感謝の日 | ◎米国市場は休日〜感謝祭 |
11/24(金) | ドイツ | 11月Ifo景況感指数 | 約700社のドイツ企業に現状と半年後の景況感を質問 |
米国 | ブラックフライデー | 米国は年末商戦に突入 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】「アベノミクス相場の5年間」でどうなった?今後はどうなる? |
野田前首相が解散・総選挙を示唆したのが2012/11/14(水)であり、その日以降事実上の「アベノミクス相場」は始まったと考えられています。ちなみに、その前日の日経平均株価終値は8,661円05銭でした。日経平均株価は約5年で2.5倍に上昇した形になっています。
ちなみに「平成バブル相場」は、1985/09/22(土)のプラザ合意を契機にスタートしたと考えれば、1989/12/29まで約4年3ヵ月続いた形になっています。「アベノミクス相場」は、その持続期間という意味では、すでに「バブル相場超え」を果たしたと言えます。ちなみに、「プラザ合意」直前の1985/09/21(金)における日経平均株価終値は12,733円01銭でしたので、1989/12/29に付けた過去最高値38,915円87銭まで3.1倍の上昇でした。「アベノミクス相場」はその期間、上昇率の面で「バブル相場」と比べても、なかなかの迫力になっているとみられます。
株価の上昇をバブルと考える人にとっては、「アベノミクス相場」はバブルと映るかもしれません。また、「アベノミクス相場」は、「実感が乏しい上昇相場」と考える投資家が多いかもしれません。景気が拡大していても、賃金上昇に反映されている部分が少なく、高揚感に乏しいからかもしれません。
ただ、「アベノミクス相場」は企業業績という実体を伴っているという面では、「バブル相場」と大きく異なります。上記したように、「アベノミクス」相場で日経平均株価は約2.5倍に上昇しましたが、この間に日経平均株価の予想EPS(一株利益)は637円(2012/11/13)から1,513円(2017/11/13)まで2.4倍に増大(図4)しています。すなわち、株価の上昇はほとんどその全てを、企業業績の拡大によって説明できるのです。このため、日経平均株価を予想EPSで割った予想PER(図5)は「アベノミクス相場」の全期間において、ほぼ横ばいになっているのです。
予想PERが「市場心理」を反映するものと考えるならば、投資家は5年前に比べ、特に「強気」に変わった訳ではなく、企業業績が拡大した分だけ、株価も上昇したのが「アベノミクス相場」と言えるかもしれません。
図5にもあるように、一時の例外的期間を除き、「アベノミクス」相場では予想PERは14〜16倍を中心に動いていると考えることができます。仮に現在の日経平均株価の予想EPS(1,513円)が続くと仮定(実際は当面増える可能性が大きいとみられる)すれば以下のような計算が成り立ちます。
市場心理が弱気(予想PER14倍)の時・・・・・ 1,513円×14倍=21,182円
市場心理が強気(予想PER16倍)の時・・・・・ 1,513円×16倍=24,208円、
すなわち、2017年7〜9月期の決算発表を確認した上で、向こう数ヵ月の日経平均株価の推定される中心的なレンジはおおよそ21,000円〜24,000円前後と考えることが可能になります。
図4:「アベノミクス相場」における日経平均株価(週足)と予想EPS(一株利益)
図5:「アベノミクス相場」における日経平均株価の予想PERの推移
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成
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