日経平均株価の歴史的な連騰記録は16連騰で途切れましたが、株価の上昇基調は続いています。10/27(金)には、1996/7/5以来21年3ヵ月ぶりに終値で22,000円台を回復しました。
このまま上昇を続けた場合、日経平均株価の次の目標は1996/6/26(水)の取引時間中に付けた22,750円(この日の終値は22,666円)になると考えられます。この株価は「バブル崩壊後の高値」と位置付けられていますが、日経平均株価がそこに到達し、さらに上抜けた場合、その意義は大きいと考えられます。
日経平均株価は21年3ヵ月ぶりに22,000円台を回復 |
10月相場が終わりました。日経平均株価は10/2(月)から10/24(火)まで16営業日連続高となり、これまでの14営業日連続高(1960/12/21〜1961/1/11)を上回る過去最長の連騰記録を樹立しました。10/25(水)には反落したものの、上昇基調は続き、10/27(金)には1996/7/5以来21年3ヵ月ぶりの22,000円台を回復(終値基準)しました。結局、10月の日経平均株価終値は前月末比8.1%高の22,011円61銭となり、2ヵ月連続の上昇となりました。
日経平均株価が堅調に推移した背景には第1に、世界的な株高があげられます。図2にもあるように、米国ではNYダウが上昇基調を維持し、9月末から10/30(月)までの期間に4.2%上昇しました。さらに、同期間にドイツDAX指数は3.1%、上海総合指数は1.2%上昇しました。世界的な景気拡大に加え、米国の「出口戦略」が緩やかなものにとどまり、株式市場からの目立った資金流出は観測されませんでした。
米国では「ハービー」(8月下旬)に続き、9月中旬には「イルマ」が南部を襲うなど、相次ぐハリケーンの上陸に悩まされました。10月に発表される9月分の経済指標は、それらハリケーンの影響が心配されましたが、雇用統計で非農業部門雇用者数が減少した他、あまりネガティブな影響は表れませんでした。むしろ自動車販売台数や新築住宅販売件数が上振れるなど、復興需要の増加が表面化しました。また決算発表(2017年7〜9月期)も好調で、主要企業のEPSは前年同期比+8.4%と増益基調(10/27現在)になっています。
こうした中、米10年国債利回りは9月末2.33%から10/26(木)には2.46%まで上昇し、それを受けて外為市場では同期間、ドル・円相場が1ドル112円51銭から一時114円台半ばへと円安・ドル高が進展(図3)しました。
これら世界的な株高や円安・ドル高に加え、10/22(日)に投開票となった衆議院選挙では、与党が予想を超える大勝となりました。ロシア疑惑がくすぶり続ける米国、極右勢力の台頭がみられるドイツ等と比べ、先進国の中では政治の安定ぶりが目立つ存在になったことも、日経平均株価の下支え要因になりました。
さらに、10月下旬から始まった決算発表(3月決算企業の「中間決算」が中心)では、業績予想の上方修正を発表する企業が続出し、好調な企業業績を確認する形になりました。日経平均株価採用企業の予想EPS(一株利益)は9月末の1,414円から10/30(月)には1,435円まで上昇しました。
図1:日経平均株価(日足)〜21年3ヵ月ぶりに22,000円台を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/10/31現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/10/30現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/10/31取引時間中
当面のタイムスケジュール〜我が国の決算発表が佳境に |
日米で決算発表が進捗しています。米国では、11月初めにテスラ、アップル等の決算が予定されていますが、主要企業の発表はこれらでおおむね一巡してくることになります。反面、日本では10/31(火)に最初のヤマ場を迎えた後も多くの企業で発表が続きます。発表社数ベースでは562社の発表が予定されている11/10(金)がピークで、それまでは企業業績から目を離せない局面が続きそうです。
なお、11月第1週の米国市場では、重要な経済指標の発表が目白押しになっています。中でも11/3(金)の雇用統計(9月)は重要で、特に「時価当たり賃金」の動向は、金融政策への影響が大きいとみられるために、注意が必要とみられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜我が国の決算発表が佳境に
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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10/31(火) | 日本 | 9月鉱工業生産 | 8月は前月比+2% |
日本 | 9月有効求人倍率/失業率 | 8月は有効求人倍率1.52倍、失業率2.8% | |
日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表 | 展望レポートも公表 | |
日本 | ★決算発表〜ソニー、パナソニック、村田製他 | 発表社数は363社。前半のヤマ場 | |
中国 | 10月製造業PMI | ||
米国 | 10月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | ||
米国 | 8月S&P/ケースシラー住宅価格指数 | 7月は前年同月比+5.81% | |
11/1(水) | 日本 | 特別国会召集(調整中) | 首班指名 |
日本 | ★決算発表〜ホンダ、武田薬、KDDI他 | ||
米国 | 10月ISM製造業景況指数 | 米国の企業マインドを反映。株価にも影響? | |
米国 | 10月ADP雇用統計 | 雇用統計(労働省発表)の前哨戦 | |
米国 | 10月自動車販売台数 | 9月は年換算1,847万台 | |
米国 | FOMC結果発表 | メインシナリオは12月に再利上げ | |
米国 | ☆決算発表〜フェイスブック、テスラ | ||
11/2(木) | 日本 | ★決算発表〜伊藤忠、三井物産、マツダ他 | |
米国 | ☆決算発表〜アップル | ||
11/3(金) | 日本 | ◎東京市場は休場(文化の日) | |
日本 | アップルが「iPhone]」販売開始 | ||
米国 | 10月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは30.8万人増 | |
11/5(日) | 日本 | 米トランプ大統領が初来日 | |
米国 | 冬時間入り | 株式市場取引時間(日本時間)は23:30pm〜 6:00am(11/6〜) |
|
日本 | 日銀会合議事要旨(9/21発表分) | ||
日本 | 日米首脳会議 | 北朝鮮問題と米国の対日赤字が焦点か | |
日本 | ★決算発表〜三菱商、住友商、ソフトバンクG他 | ||
ドイツ | 「COP23」(〜11/17) | 国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議 | |
11/7(火) | 日本 | ★決算発表〜トヨタ、味の素、NTTデータ他 | |
韓国 | 米韓首脳会議 | ||
11/8(水) | 日本 | ★決算発表〜清水建、日産自、NTTデータ他 | |
中国 | 10月貿易収支 | ||
中国 | 米中首脳会議 | ||
米国 | 10年国債入札 | ||
11/9(木) | 日本 | 9月機械受注 | 船舶・電力を除く民需(8月)は前月比+3.4% |
日本 | 10月都心オフィス空室率 | 9月は3.17%(前月比-0.18%)。08/4(3.03%)以来の低水準 | |
日本 | ★決算発表〜資生堂、ブリヂストン、住友鉱、東芝他 | ||
中国 | 10月消費者物価 | 9月は前年同月比+1.6% | |
米国 | ☆決算発表〜ディズニー | ||
11/10(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表〜東レ、三井不、NTT他 | ||
フィリピン | ASEAN首脳会議(〜11/14) | ||
ベトナム | APEC首脳会議(〜11/11) | ||
米国 | 11月ミシガン大学消費者マインド指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 10/31(火)、12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/1(水)、12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】「日経平均株価22,750円」の意味 |
1985/9/22の「プラザ合意」以降、急速に進んだ円高・ドル安から日本経済を守るべく、日銀が大規模な金融緩和を進めたことで、株式や不動産が高騰し、「平成バブル」となりました。日経平均株価は「プラザ合意」から1989年末に高値を付けるまで約3倍となりました。その後はバブルが崩壊し、日本経済は「失われた20年」と称される長い低迷期を迎えることになります。
バブル崩壊の第1幕は、湾岸戦争も重なって急速な下げとなり、1992/8の「総合経済対策」(宮沢内閣)で最初の安値から反発に転じるまで日経平均株価は63.5%も下落しました。その後、同平均株価は20数年にも及ぶボックス相場を展開することになります。日経平均株価の22,750円(1996/6/26の取引時間中に付けた高値)は、そうした長期ボックス相場の上限に位置しています。したがって、2012/11/14以降「アベノミクス相場」となり、日経平均株価が上昇に転じたといっても、この水準を超えない限り、我々は「失われた20年」を克服したとは言えないのかもしれません。
日経平均株価が上記の高値を付けた1996/6の月末、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は391円でしたが、現在はそれが1,435円まで3.6倍に増えています。また、同じ期間に日経平均株価のBPS(一株純資産)はほぼ2倍になっています。バリュエーション的に、日経平均株価の割安感は強まっており、その面では、上記の高値を上抜けても不思議ではないと思います。
問題は、「失われた20年」の間、株価の上値を抑えていたとみられる「少子高齢化を背景とする成長期待の低下」や「長引くデフレ」、「不安定な為替相場」、「株式需給の長期的な悪化傾向」、「金融システムの脆弱性」といった課題を日本経済は乗り切ったのか否かという評価になりそうです。確かに、このうちの多くは克服したように思われますが、日本経済について長期的な成長シナリオが描け、デフレを脱したとは言い切れないように感じられます。
仮に日経平均株価が1996/6/26の高値22,750円(この日の終値は22,666円)を上抜けた時は、株式市場では一気に楽観的な空気が拡散する可能性があります。チャート的には平成バブルの高値38,915円まで大きな節目がないためです。現在の予想EPSから逆算すると、平成バブル高値と同水準での予想PERは27倍と計算されるので、さすがに現段階では「非現実的」と考えられるでしょう。平成バブルの天井(38,915円)から「失われた20年」の安値(2008/10の6,994円)までの下げ幅に対する「半値戻し」は22,954円と計算されます。長期的に、日経平均株価の23,000円近辺は次の大きな節目と言えるかもしれません。
図4:日経平均株価(月足)〜「22,750円」の意味を考える
- Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
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