来週の株式見通し(2021/11/29〜12/3)
来週(2021/11/29〜12/3)の日経平均株価の予想レンジは28,500円-29,400円。東京株式市場は方向感がはっきりしない相場展開か。業績改善期待と好需給が支えとなる一方、新型コロナ感染再拡大による景気への懸念を織り込みながら神経質な展開が予想される。不安定な米主要指数の動向も引き続き要注意だ。
米国の年末商戦に関する報道が出てくることが予想され、例年以上にネット商戦に楽観ムードが強まれば、ネット関連を中心にハイテク株への買い戻しが強まる公算が大きい。
今週公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(11/2〜3開催分)では、政策金利を「早く引き上げる準備をすべきだ」との考えを示し、インフレ高進が続けばテーパリング(資産購入の段階的縮小)のペースを加速させる可能性が示された。また、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として重視している10月の個人消費支出(PCE)価格指数が1990年以来の高水準を記録した。来週は、11月のISM製造業景気指数や雇用関連指標など注目の経済指標の発表が多く、米金利動向が高値圏にある株価の変動要因になる。
物色面では、再び円安方向をうかがうドル円の動向に反応しやすい景気敏感株の動向に注目か。特に今月に入って業種別で最も下げている鉄鋼株や海運株は値固めが進んでおり、押し目買いが入れば上昇しやすくなっている可能性が高いほか、自動車関連や銀行などバリュー株シフトを意識した選別が必要とみられる。
3月決算企業の中間配当金の支払いが12月上旬にかけて発生する。中間期末となる9月末に中間配当がすぐに受け取れるものではなく、実際配当金が支払われるのは2カ月〜3カ月先になるからだ。その配当金が支払われるタイミングに入ってくるため、市場への再投資効果など需給面でポジティブな要因が増える。
図表1は、過去の11月末を含む週の日経平均株価とマザーズ指数の勝率と騰落率である。日経平均株価がバブル崩壊後に初めて8,000円を割り込んだ2003年〜2020年の18年間でみると、17勝1敗と下げた年は2015年しかない。上昇した17年間の平均上昇率は3.1%である。
18年間すべての週次ベースで上昇した520週の平均上昇率が2.1%であるため、11月末を含む週は上昇しやすいだけでなく、相対的に良好なことがわかる。
図表1:11月末を含む週の騰落率(2003-2020)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表2)は3万円を前に上値が重い。10月初旬安値からの右肩上がりの上昇基調が続いているが、上昇モメンタムは減速している。11/10につけた終値ベースの安値29,106円を下回ると、10月安値からの三段上げが終了したサインとなり、12月中旬ごろに向けて調整局面入りにつながる公算が大きい。
一方、11/25は25日移動平均線(29,353円 11/25)上を終値で回復し、前日の中陰線の中心水準で小さな動きとなる「陽線はらみ足」を形成した。「陽線はらみ足」の次線で「陽線」が続くことが強気継続の重要な要素になりえる。いずれにしても、11/24の陰線高値(29,758円)を早々に超えるような強い動きが必要な局面である。
上値メドは、11/16高値(29,960円)、9/28安値(30,001円)、9/27高値(30,414円)、9/14高値(30,795円)など。下値メドは、11/11安値(29,040円)、75日移動平均線(28,953円 同)、200日移動平均線(28,945円 同)、100日移動平均線(28,734円 同)、10/29安値(28,475円)などが考えられる。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2021/1/4-11/25)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
主要な国内経済指標の発表は、10月商業動態統計(11/29)、10月失業率、10月有効求人倍率、10月鉱工業生産、10月住宅着工統計(11/30)、7-9月期法人企業統計、11月新車販売台数(12/1)がある。
企業決算では、トリケミカル(11/30)、伊藤園(12/1)、ラクーンHD(12/2)、アインHD、ファーマフーズ、日駐、内田洋、ロックフィール、ポールHD、モロゾフ(12/3)が発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米サイバーマンデー、米10月NAR仮契約住宅販売指数(11/29)、中国11月製造業PMI、米9月FHFA住宅価格指数、米9月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米11月消費者信頼感指数(11/30)、中国11月財新製造業PMI、米11月ADP全米雇用リポート、米11月ISM製造業景気指数、ベージュブック(12/1)、OPECプラス会合(12/2)、米11月雇用統計、米11月ISM非製造業指数、米10月製造業受注(12/3)がある。
来週の注目銘柄!(11/29〜12/3)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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4739 | 4,400 | 3,440 | 伊藤忠系システムインテグレーター。通信事業者向けが主力。2022年3月期の上期(4-9月)の連結営業利益(IFRS)は196億円(前年同期比47.2%増)で着地。市場コンセンサス173億円を上回る好調ぶりだ。製造、建設、通信、官公庁、金融などさまざまな分野で好調に推移。開発不採算案件の抑制、高付加価値案件や複合案件の獲得推進なども寄与したもよう。株価は直近で年初来高値を更新。需給環境は良好である。長期波動も上昇基調を継続しており、26カ月移動平均線をサポートに再動意の兆しとみられる。2020年8月高値4,430円を上回ると、4,700円〜5,100円が上値目標の水準となる。ターゲットは4,400円、ロスカットは3,440円 | |
5201 | 6,930 | 5,250 | 三菱系。ディスプレー、建築、自動車のガラスは世界トップクラスの生産量を誇る。2021年12月期の通期の連結営業利益(IFRS)は2,000億円(前期比2.6倍)を見込む。コロナ禍で落ち込んだ事業の業績が回復基調であることに加え、塩化ビニル樹脂の市況が高水準で推移するもよう。株価は9月以降でもみ合いが続くが、上昇が続く75日移動平均線との乖離が縮小してきた点がポイントだ。さらに、10日・25日移動平均線などの短期線に75日移動平均線が収斂(しゅうれん)してきており、煮詰まり感が強くなっている。株価のもみ合い放れが近いことを示唆しており、上放れなら上値余地は大きい。ターゲットは6,930円、ロスカットは5,250円 | |
5411 | 1,660 | 1,310 | 粗鋼生産国内2位・世界10位台のJFEスチールが中核の持株会社。2022年3月期の通期の連結純損益(IFRS)は2,500億円の黒字(前期は219億円の赤字)の見通し。直近決算発表時に上方修正した。鉄鋼事業については鋼材価格改善の取り組みの成果によるスプレッド改善を見込む一方、金属、スクラップなどのコストアップ要因を考慮した。株価は市場コンセンサスを下回ったことで大幅調整を強いられたが、200日移動平均線割れでは押し目買いが優勢だ。6月後半から7月にかけての値固め時の節目(1,367円)付近で下げ渋っており、短期的なリバウンド狙いでも妙味大だ。ターゲットは1,660円、ロスカットは1,310円 | |
5541 | 2,560 | 2,125 | 日本製鉄系。ステンレス原料のフェロニッケル製錬で世界上位級。同社は10/29、2022年3月期の通期の連結純利益予想を従来の16.9億円から37.1億円(前期比3.2倍)に上方修正した。ニッケル事業の主需要先であるステンレス鋼業界において、国内外の稼働が回復基調となっており、想定よりも販売の増加を見込む。株価は8月安値1,531円を起点に下値を切り上げる展開。戻り売りが強い水準に差し掛かっているが、週足の一目均衡表では雲を上抜ける勢いもみられ、年初来高値2,622円をトライする動きが予想される。ターゲットは2,560円、ロスカットは2,125円 | |
7545 | 1,700 | 1,469 | ベビー・子ども衣料と生活雑貨のロードサイド大型店を全国展開している。2022年2月期の上期の営業利益は64.5億円(前年同期は64.5億円)で着地。広告宣伝費などの経費が増加したことが影響し、会社計画の68.5億円を下回った。一方、月次は底堅い。客数や客単価の上昇が寄与し、11月度の既存店売上高は前年同月比10.8%増。前月比では23.6ポイント上昇した。株価は8月安値1,314円を起点に下値を切り上げる動きを続け、200日移動平均線を上回る展開となっている。6月につけた戻り高値1,595円を上回ると、次は1,700円付近まで上値余地は拡大する。ターゲットは1,700円、ロスカットは1,469円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・11/24現在、東証1部上場銘柄で時価総額が300億円以上、PERが30.0倍以下、PBRが5.0倍以下、予想配当利回りが1.5%以上、今期増収増益(純損益)予想の中から、テクニカル面や成長性、話題性も含め総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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