来週の株式見通し(2018/02/26〜3/2)
来週(2018/02/26〜3/2)の東京株式市場は再び反発局面か。日経平均株価の予想レンジは21,500円-22,100円。イベントとして注目は、2/28に予定されている米議会下院の金融サービス委員会でのパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の議会証言である。議長就任後の最初の証言となり、米東部時間午前10時(日本時間3/1午前0時)から始まる。NY連銀のダドリー総裁が株価急落に動じない姿勢を示したことで、3月の利上げが既定路線となっている。依然として株式や債券市場が不安定に推移する中、マーケットを混乱させる発言は控える可能性が高い。
一方、需給面では、裁定取引に係る現物株式の買い残高が2/16現在、金額ベース(図表1)で1兆5,708億円と昨年9/4以来の水準まで減少している点に注目したい。9月前半といえば、日経平均株価が16連騰する上昇波動の起点となった頃である。今週も株価下落場面で買い残の減少が続いていることが予想され、過去の経験則では需給改善が一段と進んでいる可能性が高い。
物色の観点からは、週前半はイベント前で売られ過ぎた銘柄への自立反発狙い中心にリターン・リバーサル的な売買に限られるが、後半はイベント通過がポジティブに作用すれば、主力株中心に反発が予想される。
国内の経済指標では、1月鉱工業生産(2/28)、10-12月期法人企業統計(3/1)、1月有効求人倍率(3/2)などが重要。海外の経済指標やイベントでは、米1月耐久財受注、米2月消費者信頼感指数(2/27)、中国2月製造業PMI、米10-12月期GDP改定値(2/28)、米1月個人支出、米2月ISM製造業景況指数など注目材料が多い。
図表1:裁定取引の残高と日経平均株価の推移(2011/09/02-2018/02/21)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
ドル円は先週の1ドル=105.50円でいったん円高にブレーキがかかる公算が大きい。ポイントは米長期金利(米10年債利回り)の動向だろう。前回、米10年債利回りは2012年6月の水準(1.45%)から2013年末の3%まで約1.55%上昇した経緯があり、2016年7月の1.35%から同じく1.55%上昇したと仮定すると、2.9%程度で落ち着くことが予想できるとコメントした。ただ、なかなか低下せず、むしろ一段と上昇する可能性も高くなってきた。
金利上昇で予想できる1つのシナリオは、米国株の上値が重くなる、そしてドル高・円安ではないだろうか。米国株の下落幅次第では円安でカバーしきれないこともあるだろうが、短期的には日本株が優位となる局面入りが予想される。
一方、別の観点からみると、円安に加え米国株高シナリオも浮かび上がる。米国市場ではJPモルガンやバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックスなど金融株の強さが目立つ。JPモルガンは今週に入ってからも年初来高値を更新している。つまり、米10年債利回りの目先的な若干の上昇は株式市場がすでに織り込んでいる可能性が高く、仮に3.0%を上回る動きとなっても、米国株は金融株主導で急回復するという見立てだ。
米長期金利の動向を度外視したとしても、ドル円は昨年11月高値114.73円を起点に、すでに三段下げ(所々で少し円安に戻しながら、3回強く円高方向に動く)を達成したようにみえる。先週の安値1ドル=105.55円の水準は、2016年にトランプ氏が米大統領に決まる前後の重要な水準である。当時を振り返ると、昨年11/9の午前中の高値が105.47円で、そのあとトランプ氏の躍進が伝えられる中、101.20円まで急速に円高が進行したが、NY時間を経過していったん落ち着いた水準が、105円〜106円水準だった。つまり、その中心となる105.50円付近というのは、チャート上では非常に重要であり、いったん止まるべきフシと考えることができる。
日経平均株価(図表2)は直近安値からのリバウンドがいったん止まった。RSI(9日)は57.2%→46.5%に低下(2/22現在)。50%割れは戻り一服を示唆している可能性もあり注意したいところだ。ただし、一目均衡表では転換線(21,551円)がようやく下げ止まった。上昇に転じる2/27以降、再び反発基調に戻ることができるかが焦点となる。
ダウ平均と日経平均株価の価格差は、先週末の2/16時点で3,499ポイントだった。2016年以降の週末時点では最大である。2/21現在でも2,826と比較的大きい。来週にかけては、両者の価格差が縮小する可能性が高く、日経平均株価の相対的な優位性が高まるかが注目される。
反発基調に転じた場合、1/23高値(24,129円)から2/14安値(20,950円)までの下げに対する半値戻し22,539円、あるいは昨年12月になかなか上回れなかった23,000円付近を早期に回復できるかが、再び強気相場に転じる条件となる。
上値のフシになりやすいのは、2/7高値22,353円、2/5安値22,659円、2/2安値23,122円など。100日移動平均線(22,364円、2/22)、75日移動平均線(22,780円、同)、25日移動平均線(22,644円、同)なども重要である。
一方、下値の目安は、2/14安値20,950円付近、昨年6/20高値20,318円(終値ベースは20,230円)、20,000円〜昨年9/15高値19,933円などが考えられる。
図表2:日経平均株価の日足チャート(2017/08/01-2018/02/22)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表は、1月商業動態統計、1月鉱工業生産(2/28)、10-12月期法人企業統計、2月消費動向調査、2月新車販売台数(3/1)、1月完全失業率、1月有効求人倍率(3/2)がある。
企業決算では、ラクーン、ウチダエスコ(2/26)、東和フード、内田洋(2/27)、エイチ・アイエス、パーク24、スリープロ、大和コン、はてな、共和工業(2/28)、伊藤園、巴工業、アルチザ(3/1)、アインHD、アイ・ケイ・ケイ、DyDo、ロックフィール、ナトコ、ダイサン、ハイレックス(3/2)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表は、世界最大級のモバイル展示会「モバイル・ワールド・コングレス2018」(バルセロナ、〜3/1)、米1月シカゴ連銀全米活動指数、米1月新築住宅販売件数(2/26)、米1月耐久財受注、米12月FHFA住宅価格指数、米12月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅、米2月消費者信頼感指数(2/27)、中国2月製造業PMI、米10-12月期GDP改定値、米2月シカゴ購買部協会指数、米1月NAR仮契約住宅販売指数、FRBのパウエル議長が初の議会証言(下院)(2/28)、米1月個人所得、米1月個人支出、米2月ISM製造業景況指数、米1月建設支出、米2月新車販売台数、FRBのパウエル議長が議会証言(上院)(3/1)などが注目される。
米企業決算の発表では、オートゾーン、メイシーズ(2/27)、ロウズ、マイラン、セールスフォース・ドットコム(2/28)、ベスト・バイ、ノードストローム(3/1)、フット・ロッカー(3/2)などが予定している。
新規上場が2件予定されている。2/28は、マザーズにジェイテックコーポレーション(3446)が上場する。X線ナノ集光ミラーの世界最大手。創業来の事業として、各種自動細胞培養装置も手掛ける。創薬、医療技術分野におけるイノベーションの推進に貢献するシステムを開発、販売している。 国内最先端の研究施設に採用実績があり、優れた技術を持っているもよう。技術ベンチャーとして人気化しそうな案件だ。用途が非常に限られるうえ量産できるようなものでもないため、継続的に業績が拡大していくシナリオはイメージしづらいが、ひとまず足元の今期は急拡大の予想となっている。目論見書によれば最近は基礎研究だけでなく、応用研究や産業利用のニーズも高まっているとのこと。相場地合いが強固ななか、多少の荷もたれ感は関係なく需給が逼迫する方向か。
一方、3/2は、SERIOホールディングス(6567)がマザーズに上場する。子育て中の既婚女性の就労支援が主力。学童保育などの放課後事業や保育園運営なども展開する。女性の就労支援をうたう切り口は面白いが、もともと派遣業態そのものが女性が多いので、希少性はなさそう。ただ、切り口は女性活用をうたう政権の方針に合致する内容といえ、テーマ性は持っている。需給的に不安のある規模でもなく、初値は順調に上げそうだ。
ただ、この業態でPER100倍台でのプライシング。すぐには売却できないとはいえ、上場前の取引価格やストックオプションの行使価格は著しく安く、業績もまだ営業利益は1億円にさえ乗っていない。
来週の注目銘柄(2018/02/26〜3/2)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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2454 | 1,700円 | 1,190円 | 総合ポータル運営。大日本印刷が筆頭株主。専門分野のプロが情報を提供するサービスに特徴がある。有償サンプル商品を取り扱うEC事業が高成長。高利益率の動画広告でも成長期待が大きい。立会外分売で流動性向上図る。株価は2017年8月高値(1,892円)から調整が続いている。直近高値からの下げの急落局面では52週移動平均線をサポートに切り返しの雰囲気が出てきた。下向きの26週移動平均線が上値抵抗になる可能性もあるが、高値もみ合いを形成中とみられ、いずれはもみ合い上放れの公算が大きい。ターゲットは1,700円、ロスカットは1,190円 | |
2485 | 1,250円 | 985円 | 葬儀会館「ティア」の運営。名古屋が地盤。直径3キロの範囲内に多店舗展開するドミナント戦略が特色。関東、関西進出を加速している。葬儀単価は核家族化や規模の縮小などにより減少傾向にある。株価は直近高値(1,230円)を起点に調整が続いている。ただ、水準訂正を強いられつつも、4ケタの心理的フシが目先の下値支持帯になっており、上昇が続いている26週移動平均線などもサポートになりやすい。PERやPBRに特段割安感はないが、長期波動でみると過熱感に乏しい。2月までの下落局面では信用買い残が大幅に増加しており、押し目買いの強さがうかがえる。ターゲットは1,250円、ロスカットは985円 | |
2412 | 3,330円 | 2,430円 | 官公庁や企業向け福利厚生業務の運営代行を手がける。パソナグループ傘下。中堅・中小企業の開拓に注力。課金型のビジネスモデル。海外展開も推進している。働き方改革や同一労働同一賃金などの社会情勢が福利厚生導入機運の高まりとなり、事業環境には追い風だ。疾病予防のための健康支援も健診サービスが大幅に拡大している。株価は高値波乱も微調整の範ちゅうである。13週移動平均線と26週移動平均線のゴールデンクロスのあとは底堅く、年初来高値(2,886円)が射程圏にある。PERとPBRに割安感ないが、好取組で需給相場が続く公算が大きい。ターゲットは3,330円、ロスカットは2,430円 | |
2678 | 4,700円 | 3,580円 | オフィス用品の通販サービス。ヤフーと個人向け「LOHACO」で連携。アマゾンが対抗勢力となり、火災からの回復力への懸念が重しとなっている。ちなみに、直近の1月度(12/21〜1/20)の月次業績は、BtoC流通総額は48億5,400万円(前年同期比29.2%増)、単体売上高では、BtoB事業は前年同月比1.7%増、LOHACOは同0.6%減、合計では同1.4%増だった。一方、株価は低迷から脱した公算が大きい。直近の上昇局面で昨年の戻り高値(3,800円)を上抜けており、2017年の3,000円前後の安値で二番底を形成したかたちとなっている。短期的な微調整を交えながら、2015年高値(5,540円)に向けてじり高の展開が予想される。ターゲットは4,700円、ロスカットは3,580円 | |
3180 | 2,830円 | 1,750円 | 理美容機器や業務用化粧品の通販サイトなど手掛ける。低価格に特徴でリピート客が増加。スマホ発注アプリで受注上乗せに注力している。一方、2018年4月期の上期(5-10月)の連結営業利益は2.3億円(前年同期比17.7%減)で着地。円安基調になった影響による売上総利益率の低下や、物流コストの上昇や大阪総合ショールーム開設費用など販管費の増加により、物販事業が減益となった。通期の会社計画6.0億円に対する進ちょくは38.0%となっている。株価は昨年12月高値(2,470円)からの二段下げで売り一巡。52週移動平均線割れから早々に13週移動平均線上に一気に浮上した。中短期波動ともに大きな崩れなく、買い物を誘いやすい値動きである。ターゲットは2,830円、ロスカットは1,750円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証上場銘柄で2/21現在、時価総額が3,000億円以下、PBRが14.0倍以下、今期増収・増益予想(純損益、日経予想)、10日・100日移動平均線を上回っている中から、成長性や話題性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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