来週の株式見通し(2015/11/16〜11/20)
来週(2015/11/16〜11/20)の日経平均株価の予想レンジは19,100円-19,700円。東京市場は決算発表が一段落する。全体の売買代金も減少する可能性が高い。高値警戒感が強い米主要指数の動向次第では、週後半にかけては弱含む展開が予想される。
国内では、11/16の寄り付き前に発表される7-9月期実質GDP(国内総生産)や、11/18からの日銀金融政策決定会合が注目材料だ。図表1は、国内実質GDPの前期比年率ベースの推移である。4-6月期は3四半期ぶりにマイナス成長となった。個人消費が悪天候やセールの後ずれといった特殊要因などで全体の足を引っ張った。ただ、市場予想をやや上回ったことから、その日は円安・株高で反応した。7-9月期の市場予想はマイナス0.3%(11/12時点)。日銀金融政策決定会合の結果を週後半に控えているだけに、結果次第では追加緩和への思惑の強弱が相場を動かす可能性はあるだろう。
一方、日銀による追加緩和期待は薄れている。鉱工業生産が7-9月でマイナスになったことに加え、成長率もマイナスとなれば行動を起こす可能性は高いが、需給ギャップの改善傾向や、日銀が重要視する食品とエネルギーを除く消費者物価は着実に上昇傾向にある。また、足元は再び円安バイアスがかかり始めている。企業業績の側面からでも想定為替レートを割り込むような円高が進まない限り、早期に緩和に動く可能性は低い。
米国指標では、米11月NY連銀製造業景気指数、米10月住宅着工件数、米10月CB景気先行総合指数などが相場に影響しやすい。ダウ平均やS&P500は海外市場でみても相対的に戻りが強く、水準的にはほぼ全値戻しに近い。短期的な調整はあるだろうが、経済指標で景気の強さを確認しながら、金利上昇・ドル高・株高が進む展開が予想される。景気鈍化を示す指標を背景に利上げ先送りが株高になるよりも、景気に勢いがあった方が史上最高値を更新する原動力、株価モメンタムは強いはずであろう。
11/18に公表される10月27・28日開催分のFOMC議事録では、声明文が市場参加者の期待を裏切るタカ派的な内容となっただけに相場を動かす要因になる。
イベントでは、日本郵政(6178)とゆうちょ銀行(7182)のMSCIによる指数組み入れが注目される。両者は11/17の引けで指数に組み入れられることになるため、指数をベンチマークとするパッシブ運用の買い付けが週明けから11/17引けにかけて入る公算が大きい。
SMBC日興証券では、指数採用の影響についてまとめた。株価を11/4終値で計算した場合、日本郵政については3,150.0万株(554.40億円)、ゆうちょ銀行については2,835.0万株(473.73億円)の買い需要があると予想している。
図表1:国内実質GDPの前期比年率ベースの推移(%)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
ドル円相場(図表2)は8/28に付けた戻り高値(121.75円)を上回り、8月急落後の下値固めが完了。円安方向に一段と騰勢を強める公算が大きい。一方、短期的には8/12安値(123.79円)前後は上値の節目となりやすい。直近高値(123.60円)は、8/24安値(116.18円)から8/28高値(121.75円)までの上昇幅5.57円を10/15安値(118.07円)からの上昇で当てはめたN計算値123.64円などが意識されており、下落基調が続く75日移動平均線の影響でいったん押しを入れる可能性が高い。
テクニカル面での足元の注目点は、25日移動平均線が上昇に転じ、200日移動平均線や75日移動平均線などを上抜く可能性が高まったことだ。それだけではなく、短期から長期の移動平均線が収れんしたあとに好転する場合、当面のトレンドは比較的大きくなりやすい。75日移動平均線の上昇転換も時間の問題であり、特に12月以降の展開に注目できそうだ。
上値メドは、8/28高値から10/15安値までの下落幅3.68円を8/28高値に加えたV計算値125.43円前後。8/24安値から8/28高値までの上昇幅を8/28高値に加えたE計算値127.32円前後などが考えられる。8/12高値(125.28円)から8/24安値までの下落幅9.10円を10/15安値から上げた背反値が127.17円となることから、高値を更新した直後の節目として127円台前半は重要である。
日柄面では、2007年6月高値から2011年10月安値までの「53」カ月間を、2011年10月安値から先に当てはめた2016年2月が重要となる。現在のもみ合い相場から抜け出す起点として注目できるほか、2月まで円安基調を辿る可能性も高まった。
図表2:ドル円相場(日足、2015/1/1〜11/11)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)は8/28に付けた戻り高値(19,192円)や、200日移動平均線(19,300円、11/12現在)を上回り堅調な動きが続いている。短期的には、9/29安値から10/9高値までの上昇幅を10/9高値に加えたE計算値19,975円前後がターゲットになる。20,000円前後は8月後半からの急落前にもみ合いを形成した中値水準でもあり、年初来高値(20,952円)手前の重要な節目となる。
一方、足元の相場で頭を抑えられている19,700円水準は、8/21の下落で形成したマド下限(19,737円)の節目に近いことに加え、週足では一目均衡表上で重要な節目(遅行スパンが当時の株価に頭を抑えられる)と重なっている。75日移動平均線(18,965円、11/12現在)は依然として下落基調が続いているため、200日移動平均線(19,300円)付近まで調整する展開も想定しておきたい。
下値メドは、8/28高値19,192円〜200日移動平均線(19,300円)、75日移動平均線(18,965円)、18,300円〜10/9高値18,438円、10/15安値17,758円などがある。
図表3:日経平均株価の短期チャート(日足、2015/1/5-2015/11/12)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表やイベントは、7-9月期実質GDP、10月首都圏新規マンション発売(11/16)、5年国債入札(11/17)、日銀金融政策決定会合(〜11/19)、10月訪日外客数(11/18)、黒田日銀総裁会見、10月貿易統計、9月全産業活動指数、10月日本製半導体製造装置BBレシオ(11/19)などがある。
企業の決算発表では、東京海上、損保JPNK、MS&AD(11/18)が予定している。
一方、海外の経済指標やイベントでは、G20首脳会議(〜11/16トルコ)(11/15)、米11月NY連銀製造業景気指数(11/16)、独11月ZEW景況感指数、米10月消費者物価、米10月鉱工業生産・設備稼働率、米11月NAHB住宅市場指数、米9月対米証券投資、米ロサンゼルス国際自動車ショー(〜11/29)(11/17)、ASEAN首脳会議(〜11/22マレーシア)、米10月住宅着工件数、10月27・28日開催のFOMC議事録(11/18)、米10月CB景気先行総合指数、米11月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、10月北米半導体製造装置BBレシオ(11/19)などが注目される。
米企業決算の発表は、ウォルマート・ストアーズ、ホーム・デポ、TJX(11/17)、ロウズ・カンパニーズ、ターゲット、セールスフォース・ドットコム(11/18)、ギャップ(11/19)、アバークロンビーアンドフィッチ(11/20)などが予定している。
来週の新規上場は、11/19にあんしん保証(7183)、ロゼッタ(6182)の2社、11/20にはコールセンター最大手のベルシステム24ホールディングス(6183)が東証1部に上場する。
ベルシステム24ホールディングスは10年10カ月ぶりの再上場となる。かつてはCSK(現SCSK)の子会社だったが、日興プリンシパル・インベストメンツ(現シティグループ・キャピタル・パートナーズ)が買収し、2005年1月に上場廃止になった。その後2009年12月に米投資会社のベインキャピタル・パートナーズ系のファンドが買収した。2014年10月に伊藤忠商事の持分法適用関連会社になった。有利子負債依存度は60.4%と高い。典型的な外資系ファンドの再上場案件となっており、市場からは歓迎されにくい。PERでは割安感も乏しく、同値発進が関の山ではないか。
来週の注目銘柄(2015/11/16〜11/20)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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3402 | 1,300円 | 1,030円 | 炭素繊維で世界首位。合繊から電子材料まで幅広く展開している。同社は11/10、2016年3月期通期の連結営業利益が従来予想の1,500億円を上振れ、1,550億円(前期比25.5%増)になりそうだと発表した。市場予想(1,545億円)を上振れた。併せて発表した上期(4-9月)の営業利益は751億円(前年同期比46.4%増)で着地。主力の繊維事業で採算が改善した。株価は年初来高値を更新すると同時に、長期の節目である2006年5月高値(1,128円)をも上回った。今後は新たなゾーンに入っていく可能性が高く、機関投資家なども買い姿勢を強めるだろう。ターゲットは1,300円、ロスカットは1,030円 | |
4041 | 880円 | 720円 | 農薬、飼料添加剤、医薬、電子材料など幅広く手掛ける。同社は11/6、2016年3月期通期の連結経常利益が従来予想の127億円を上振れ、189億円(前期比26.6%増)になりそうだと発表した。一転して経常増益を確保する見込みとなったが、市場予想(200億円)には届かない見通しだったため、株価は材料出尽くしで急落。その後も下げが続き10/19に形成したチャート上のマドを埋め戻し、足元はやや落ち着いた動きとなっている。一目均衡表では抵抗帯(雲)を下値で意識する可能性が高いことや、長期的には底値を切り上げる波動が続いている。PERやPBRに割安感があることに加え、信用残は売り残と買い残がきっ抗しており、ダラダラ下げが続く想定はしづらい。短期的にはリバウンドが見込めそうだ。ターゲットは880円、ロスカットは720円 | |
4704 | 5,200円 | 4,280円 | ウイルス対策ソフトを手掛ける。企業向けにクラウドを使ったセキュリティー対策ソフトの販売が好調。11/10に発表した2015年1-9月期の決算では、売上高が前年同期比9.1%増の915億円だった一方、連結営業利益は前年同期比 2.1%減の241億円で着地。円安で海外拠点の人件費などが膨らみ、業績の足を引っ張った。2015年12月期通期の連結業績見通しは従来予想を据え置いた。株価はもみ合い基調から25日移動平均線の上昇を待つかたちで再動意の可能性大。8月高値(4,885円)を上回れば上昇に弾みがつく展開か。2004年11月高値(5,780円)を上回れば長期N字波動が始まり、まずは6,050円付近まで上値余地は拡大するだろう。短期的には一目均衡表の基準線が上昇するタイミングに注目したい。ターゲットは5,200円、ロスカットは4,280円 | |
7731 | 1,900円 | 1,530円 | 同社は11/6、2016年3月期上期(4-9月)の連結営業利益について、145億円(前年同期比11.0%増)だったと発表した。会社の通期予想(340億円)に対する進ちょくは42%程度となった。主力の映像事業が市場縮小の影響を受けて売り上げ、利益ともに苦戦する一方で、精機事業におけるFPD露光装置分野で、高精細中小型パネル向けが順調に販売を伸ばしたほか、高精細大型パネル向けも堅調に推移し、会社全体で増収・増益となった。株価は月足では24カ月移動平均線に突っかける動きとなっており、月間の終値で上回ることができれば反発基調を強める公算が大きい。1,800円処の上値の壁をさらに上抜けることができれば、心理的節目2,000円まで上値余地が広がる。日足ベースでは8月高値1,720円をクリアできれば、短期二番底が完成する。ターゲットは1,900円、ロスカットは1,530円 | |
8111 | 7,000円 | 5,650円 | スポーツウェア中堅。「ザ・ノース・フェイス」、「ヘリー・ハンセン」などマルチブランドに強み。直営店やウェブを通じたリテール売上が拡大。値引きロスや返品などを抑制し粗利益率は改善。人工合成クモ糸素材を使ったアウタージャケットを試作した。10/27、2016年3月期上期(4-9月)の連結営業利益が従来予想のゼロを上振れ、4.2億円(前年同期比35.0%増)になったようだと発表した。一転して営業増益を確保した。株価は直近高値(7,120円)から25日移動平均線付近まで調整。信用残は売り残と買い残がきっ抗しており、需給面に不安は乏しい。夏場からの上昇に過熱感はあるが短期的なリバウンドを狙いたい。ターゲットは7,000円、ロスカットは5,650円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証1部上場銘柄で11/11現在、時価総額が500億円以上、PBRが3.0倍以下、配当利回りが0.7%以上、信用倍率が7.0倍以下、今期増益予想(日経予想、純損益ベース)、200日移動平均線を上回る銘柄の中から、出来高面や話題性を考慮しピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。