来週の株式見通し(2015/8/3〜8/7)
来週(2015/8/3〜8/7)の日経平均株価の予想レンジは19,980円-20,800円。底堅い展開が予想される。中国株の乱高下も比較的落ち着く可能性が高く、米国を筆頭に海外の景気動向を冷静に判断する環境が整いつつあるようだ。来週は国内では日銀金融政策決定会合があることや、米国では企業決算がピークを通過し、株式市場の焦点は景気動向に移る。7月ISM製造業景況指数や7月雇用統計の結果に注目だ。6月雇用統計は市場予想を下回る内容となったが、日本株への影響は限定的だった。ギリシャ国民投票が直前に控えていたことで反応が薄れた面があったようだ。それだけに今回の結果への注目度は高く、米国の早期利上げ観測の強弱感が相場のカギとなる。円安・ドル高がともなえば国内の輸出関連株へ買い戻しは入るだろうが、新興国での実需が減速するなかで長期資金の流入は期待しづらい。国内の主力大型株は業種によって方向感にばらつきが生じている。欧米株式が持ち直せば指数の下支え要因にはなるだろうが、主力株全体で指数を押し上げる効果はまだ限られそうだ。
東京市場は企業の決算を材料に短期資金の売買が活発化している。好決算に対するポジティブな反応が目立ってきたことや、コマツや新日鉄住金など減益決算に対しても材料出尽くしで買われるものが出始めており、日本株への買い安心感が回復基調にある。
一方、中国を中心としたアジアの景気減速懸念で最近下げに拍車がかかった一部のハイテク株や、上値が重い自動車関連株などが相場の足を引っ張る構図が続く見込み。ただ、片方では証券株やメガバンク株がもみ合い上放れの期待が強まってきており、足元まで好調に推移する小売セクターやディフェンシブ株に変わって、出遅れ内需株という位置づけで資金シフトが予想され、相場が強含む要因になる公算が大きい。特に銀行株は、足元の高配当銘柄物色の流れから説得力のある存在だ。
8月の日経平均株価の騰落実績は、過去15年間(2000〜2014年)で6勝9敗と負け越し。相場の上昇局面では、良好な企業業績・景気指標、政治や金融政策の好転を背景に海外投資家の買いが入るという構図だったが、下落局面では景気減速懸念などからハイテク主導の下落となる構図で、両極端の様相を呈している。また、「45日ルール」といわれる海外ヘッジファンドによる換金売りが出やすいとの見方が先行しやすい時期でもある。投資家が9月末にファンドを解約するには、45日前(8月中旬)までに申し出なければならないルールがあるためだ。ただ、8月は市場参加者が少なく薄商いとなりやすいだけに、不安定な動きが噂を先行させるケースなどもあり、過度に懸念する必要はないだろう。
一方、10月ごろに予定されている日本郵政の上場承認が8月下旬〜9月上旬に発表される公算が大きい。10月に向けては年金買いなどの思惑が高まりやすく、8月下旬に向けて弱い場面があれば買い場の好機となるかもしれない。
5月高値のダウ平均は今のところセル・イン・メイの格言どおり。図表1の直近20年間(1995年-2014年)の月間平均騰落率をみると、12カ月中で8月のパフォーマンス(-1.08%)は最も悪い。今年も米国株が弱いとすれば、海外投資家による日本株への売り越しリスクを高める要因となる。
ダウ平均は7/21-27 にチャート上で「五陰連(5日連続の陰線)」を形成した。5月高値を起点に上値が切り下がると同時に、下値も切り下げる弱気の動きが続いている。2015年だけの動きをみる限りでは、少し悪い形になってきた印象が強い。一方、2014年10月に大きく下に突っ込んで急反発する場面があったが、そのあたりからの動きではまだ高値圏でのもみ合いの範ちゅうといえる。
2013年以降では、5日以上連続して陰線となったのは、今回含めて8回あった(図表2)。たいていは5日間下げるとそれなりに下落幅も大きいため、いったん反発するケースは多い。ただ、連続陰線が長期トレンドを示す200日移動平均線割れにつながったのは、2014年10/9-16 と今回の2回のみ。直近、数カ月のもみ合い相場の中でも何度か下げる場面はあったが、長期トレンド線を下回る5日連続の陰線はそれだけ地合いが弱くなっていることを示唆し、本格調整に入るとどめのサインになった可能性も高い。
一方、採用銘柄を多く含んだS&P500やナスダックはそこまで崩れていない。足元の原油安によるエネルギー関連株の下げや、ドル高が業績の重荷となる国際企業が多く採用されているダウ平均の方が一時的に下げが大きくみえるだけかもしれない。そのあたりを割り引いて考えると、米国市場全体の動きは強い形状を維持しているといえそうだ。
図表1:ダウ平均の直近20年間の月間平均騰落率(%)(1995年-2014年)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表2:ダウ平均の5日以上の連続陰線(日足)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)は25日移動平均線(20,391円、7/29現在)が下げに転じ、短期的には年初来高値(20,952円)を前に上値の重い展開が続きそうだ。ただ、現在サポートとなっている75日移動平均線(20,186円、同)で踏みとどまれば25日移動平均線の下げは一時的なリスクにとどまり、当面の同線の上昇基調は続くと思われる。一方、目先的に75日移動平均線を大幅に下回るような下げが生じると、調整が長引く公算が大きい。
6/24高値(20,952円)を上回ったあとの上値メドは21,870円前後。下値メドは5/7安値(19,257円)となるが、7/9安値(19,115円)を下回れば、18,196円(2007年高値18,300円に近い)前後まで下落余地は広がる公算が大きい。現在のもみ合い相場の中で最も大きく動いた値幅1,837円(6/24高値→7/9安値)を、もみ合い相場の中心(20,033円)から上値と下値に動くと試算した。
図表3:日経平均株価の短期チャート(日足、2015.1.5-2015.7.29)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要なイベントや国内経済指標の発表は、7月新車販売台数(8/3)、7月マネタリーベース、10年国債入札(8/4)、日銀金融政策決定会合(〜7日)、7月都心オフィス空室率、6月景気動向指数(8/6)、黒田日銀総裁会見(8/7)などがある。
決算発表は、カルビー、JT、塩野義、大塚商会、浜松ホトニク、NOK、スズキ、スズケン、山崎パン、三菱ガス、プリマハム、ブラザー、マルハニチロ、タカラスタン、協エクシオなど(8/3)、鹿島、旭化成、小野薬、テルモ、いすゞ、トヨタ、伊藤忠、三菱商、横浜銀、西武HD、リンナイ、丸井G、出光興産、双日、カゴメ、椿本チ、アース製薬など(8/4)、明治HD、博報堂DY、キリンHD、三菱ケミHD、クボタ、シスメックス、バンナムHD、クレセゾン、千葉銀、京急、NTT、セコム、住友ゴム、カカクコム、Uアローズ、グリー、太陽誘電、ラウンドワンなど(8/5)、大成建、清水建、サントリーBF、楽天、コニカミノルタ、三菱マ、ダイキン、ニコン、オリンパス、リコー、アシックス、三井物、三井不、ソフトバンクG、クラレ、アマダHD、ヤマダ電、スクエニHD、コナミ、ディスコ、KLabなど(8/6)、国際帝石、大和ハウス、日清食HD、東レ、大塚HD、関西ペ、ブリヂストン、住友鉱、LIXILG、ユニチャーム、セブン銀行、損保 JPNK、東京海上、住友不、東急、KDDI、太平洋セメ、DENA、共立メンテ、東建物、長谷工、岩谷産、ゼンショーHD、ソディックなど(8/7)が予定している。
一方、海外のイベントや経済指標では、中国7月製造業PMI(8/1)、米6月個人所得・個人支出、米7月新車販売台数、米6月建設支出、米7月ISM製造業景況指数(8/3)、豪州準備銀行理事会、米6月製造業受注(8/4)、BOE金融政策委員会(〜6日)、米7月ADP雇用統計、米6月貿易収支、米7月ISM非製造業景況指数(8/5)、米7月雇用統計、米6月消費者信用残高(8/7)などが注目材料となる。
米決算の発表は、AIG(8/3)、スプリント、ケロッグ、ウォルト・ディズニー、コーチ(8/4)、プライスライン・グループ、ラルフローレン(8/5)などが予定している。
新規上場では8/4にPCIホールディングス(3918)がマザーズに上場する。ソフトウエア開発、自社ソリューションの開発・保守、IT技術者の派遣などの情報サービス事業を営んでいる。類似企業多数のSIベンダー中堅で新奇性はない。業績水準的にも特に高くないため上場半年もすれば、存在感がなくなりそうだ。ただ、景気回復やマイナンバー対応などで官民ともにIT投資は増加しており、事業環境は良好。バリュエーション面でも配当利回り2.77%と高めでPERは低めの設定のため、割安修正による堅調な展開が望めそうだ。
一方、8/5は福証Qボードにエスケーホーム(1431)が上場する。熊本県北部のハウスメーカー。注文住宅の企画、設計、販売、施工監理を展開している。人口減少地域で地元市場への上場とあって、全国的な注目は浴びにくい。しかし、PERが低く需給的にも無理はなし。流動性に懸念があり市場が縮小するため、長期で持つには配当が高くないと妙味がないが、ひとまず上昇直後の売却ならば問題ないか。なお、配当については実施するかどうかも含め、全くの未定。上場前には実施していない。
来週の注目銘柄(2015/8/3〜8/7)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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2678 | 5,050円 | 4,200円 | 7/28に発表された7月度(6/21〜7/20)の月次業績は、単体売上高が前年同月比13.2%増と2桁の伸びを記録した。成長分野の「LOHACO」の伸びが著しく、同事業は前年同月比74.4%増、4カ月連続で過去最高の月次売上高を更新した。2015年5月期は前期比60.2%営業増益と業績が大きく改善したが、今期も6月、7月と月次が順調な伸びを示しており、成長期待から買いを集めそうだ。株価は前期決算発表を受けて7/3に急伸。25日移動平均線をサポートにもみ合いが続くが、上値に動意が続く公算が大きい。2012年安値を起点としたN計算値5,050円処が短期的な目安となる。ターゲットは5,050円、ロスカットは4,200円 | |
3087 | 2,300円 | 1,850円 | ドトールは改装効果で既存店売上が底堅く推移。日本レストランシステムは関東圏を中心とした都心部は堅調に推移する一方、ロードサイド店が苦戦している。全店売上は星乃珈琲店の積極的な新規出店により上乗せ。「洋麺屋 五右衛門」も展開し、ユーロ安によるパスタ輸入コストの削減なども追い風となる。ドトールはアジア出店意欲高い。株価は月足の一目均衡表では転換線まで調整。8月相場は転換線の上昇をサポートに株価の押し上げに期待したい。特段の割安感はないが、信用面では売り残と買い残がきっこうし需給面は不安に乏しい。日足では下落トレンド続くも、陽線つつみ足形成で反発基調に転じられるかが注目される。ターゲットは2,300円、ロスカットは1,850円 | |
3436 | 1,600円 | 1,030円 | 半導体用シリコンウェーハの製造・販売。300mmウエハーの出荷は高水準を維持するものの、中国スマートフォンの生産調整を背景とした需要の減速懸念が台頭。7〜9月期は数量減を見込む向きは多い。新日鉄住金による売却懸念なども不透明感を強める要因となっている。信用買い残も反発時の上値の重荷となるだろう。一方、株価は3月高値2,458円からの調整は5カ月目に入っている。月足では24カ月移動平均線まで下げたことで値ごろ感が魅力だ。8月相場で反発できれば利幅はある程度見込めそうだ。全体の下落に連動してさらに下げるような場面があれば、打診買いのチャンスだろう。出来高の増加やたくり足などがでれば、わかりやすい底値と判断したい。ターゲットは1,600円、ロスカットは1,030円 | |
6044 | 2,300円 | 1,690円 | 空調などのメンテナンス。空調機器をはじめ調理場機器・電気設備・給排水衛生設備などのトータルに設備メンテナンスしている。1977年7月に設立され、三洋空調システムサービス(現パナソニックES産機システム)と業務提携し、大型空調機器の据付・組立・試運転、保守管理に関する受託業務を開始した。今年4月にJASDAQスタンダードに上場した。業種は地味であるが、配当利回りは比較的高く、業績は堅調だ。株価は上場来高値2,228円を起点に調整が続いたが、7/9に形成した十字の転換足で底入れか。2,000円超は戻り売りが予想されるが、押し目買いを継続するスタンスが有効だろう。ターゲットは2,300円、ロスカットは1,690円 | |
6166 | 2,500円 | 1,890円 | ダイヤモンドと超硬合金の工業用機器のメーカー。6月にマザーズに上場したばかりだ。切削工具のダイヤモンドワイヤが主力。電子材料スライス周辺関連や特殊精密機器関連、化学繊維用紡糸ノズル関連を開発・製造・販売している。海外売上高比率はアジア向けが大半で、中国向けの減速など懸念材料はある。一方、株価は上場来高値2,567円から調整続くが、ここ2,100円前後で下げ渋れるかがポイントである。初値を付けたあとの買い方は回転が効いており、比較的需給悪化が避けられた銘柄ではないか。上場後のレンジも700円程度であり、2,300円処を超えることができれば、高値更新コースをたどる公算が大きい。ターゲットは2,500円、ロスカットは1,890円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で7/28現在、1部銘柄は時価総額が1,000億円以上(新興銘柄は30億円以上)、PBR5.0倍以下、今期増収営業増益(日経予想)であることをベースに、出来高や話題性、テクニカル面などを考慮しピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。