来週の株式見通し(2014/4/14〜4/18)
来週(2014/4/14〜4/18)の東京市場は不安定な動きが続きそうだ。円高による国内企業の業績下振れ懸念や世界景気の減速懸念などが台頭している。国際通貨基金(IMF)は4/8、世界の2014年の経済見通しを3.7%→3.6%へ、日本に関しては1.7%→1.4%に下方修正した。大幅に下げたあとで値ごろ感はあるが、自律反発後の上値追いの新規材料に乏しい。米国の長期金利の低迷なども続いており、日米金利差を背景とした円安基調への反転は短期的には想定できない。時価総額の大きいトヨタ自動車(7203)やソフトバンク(9984)の軟調な動きを踏まえれば、大型株への戻り売りがしばらくは全体相場の重荷となるだろう。
中国が発表した3月の貿易統計では、輸出・輸入ともに市場予想の前年同月比プラスに反しマイナスで着地した。上海総合指数はすでに2,100P台を回復し反応は限定的だった一方、同日、中国証券監督管理委員会により発表された香港と上海の株式市場の相互乗り入れ計画の方を好感した。来週は4/16、1-3月期実質GDP成長率(図表1)や3月の主要統計が発表される。中国の株価対策や景気動向が日本株の下支え要因となるかが注目ポイントの1つになる。
図表1:中国の実質GDP成長率(前年同期比)の推移
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
また、国内に先行して米国企業の決算発表が本格化する。シティグループ(4/14)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、インテル(4/15)、バンク・オブ・アメリカ、アメリカン・エキスプレス、グーグル、IBM(4/16)、GE、モルガン・スタンレー、ゴールドマン、AMD(4/17)などが予定している。特に注目したいのはハイテク企業の決算内容や見通しだ。失望を誘う内容であれば、昨年から米国市場をけん引してきたNASDAQ(ハイテク株中心の指数)が下値のフシである3,996Pを割り込み、ダウ平均などの下げを加速させる要因になりかねない。一方、今期業績に対する強気見通しを示す企業が続けば、直近売られたバイオテクノロジー関連株の反発が予想され安心感につながりやすい。東京市場にもリバウンド機運が高まる展開が予想される。
このところの日本株の低迷要因は、ウクライナ情勢を背景とした欧米とロシアの対立の長期化懸念や、3月までの日本株の押し目買いの根拠となってきた米国株の強さに陰りが出てきた点が挙げられる。加えて、直近発表された2月景気動向指数や3月景気ウォッチャー調査では、先行き見通しが前回から大きく落ち込み、国内景気に対する先行き不透明感が強まった。それらを要因とした市場心理の悪化により、日銀に対する追加金融緩和期待が必要以上に高まっていたため、失望売りが株価を押し下げる要因となった。
国内企業の3月本決算発表が月後半からスタートする。消費増税が企業業績にどの程度影響を与えうるかを見極めるため、大口投資家などの売買はしばらくは手控えられる公算が大きい。よって、指数は薄商いのなか不安定な動きが予想され、GW(ゴールデンウィーク)明けまでは個別物色の様相を強める展開が予想される。
東証が発表した2市場の信用取引残高は4/4現在、買い残が29,897億円と213/11/29現在の水準まで減少した。2013年11月といえば、日経平均株価が5月高値からの長いもみ合いを上放れた起点となったタイミングである。東証の空売り比率なども30%超の水準が続いている。個別ベースでは極端な買い長状況は解消されてきており、需給面から早期に深い調整におちいる環境ではないとみられる。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株に対する運用方針が見直された。これまでのパッシブ運用はTOPIXがベンチマークとなってきたが、これからはJPX日経400やJ−REITなどがベンチマークに加わる。他の企業年金などに波及する可能性が高く、ベンチマークに加わった指数採用銘柄にはこれまで以上に買い余地が生じることになる。
特に中小型株などにはインパクトが比較的大きく、足元のような下落局面では先駆して出直り基調を強めてくる展開が予想される。
図表2は、JPX日経400に採用されている銘柄の中から小型株の一部をピックアックした。日経平均株価との連動性を小さくするため、JPX日経400採用銘柄から日経平均採用銘柄(152銘柄)を除外した上で、東証一部のSmall区分に限定。信用倍率(買い残/売り残)が4倍以下で増収・増益予想、売られ過ぎ・買われ過ぎをみるRSI(14日ベース)が下から50%水準を上回った直後の銘柄を取り挙げた。全体相場の売り一巡後に注目すべき銘柄として参考にしたい。
図表2:JPX日経400指数採用の注目小型株
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の国内の経済指標では、3月首都圏新規マンション発売(4/15)、黒田日銀総裁が信託大会で挨拶(4/16)、3月消費動向調査、3月日本製半導体製造装置BBレシオ、さくらレポート、日銀支店長会議で黒田日銀総裁挨拶(4/17)、2月第3次産業活動指数(4/18)などが重要。国内決算発表は、ウエルシアHD、アデランス、松屋、松竹、東宝、キャンドゥ(4/14)、東製鉄、安川情報(4/18)などが予定している。
一方、海外の経済指標やイベントでは、ユーロ圏2月鉱工業生産、米3月小売売上高(4/14)、ユーロ圏2月貿易収支、独4月ZEW景況感指数、米3月消費者物価、4月NY連銀製造業景気指数、米4月NAHB住宅市場指数(4/15)、中国3月都市部固定資産投資、中国3月小売売上高、中国3月鉱工業生産、中国1-3月期GDP、米3月住宅着工件数・建設許可件数、米3月鉱工業生産・設備稼働率、ベージュブック、NY国際自動車ショー(〜27日) (4/16)、米4月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(4/17)などが注目される。
来週の新規上場は1社のみ。4/18に東証1部にジョイフル本田(3191)が上場する。茨城県土浦市発祥のホームセンター。北関東や千葉県を中心に15店舗を展開している。広大な敷地内にグループで帯同出店し、「ジョイフル本田タウン」を構築。プロ需要にも応えられるよう木材、建築資材、塗料、金物などの各種資材、DIY関連商品、インテリア用品、日用雑貨・消耗品などを販売している。ファンドが筆頭株主のため毎年上場観測が出ていたうちの一つだが、今回は承認直前にも報じられたファンドからの放出はない。ほとんどが創業家からとみられる個人からとなっている。想定価格は割高ではないにしろ割安感に乏しく、配当妙味もない。東証1部のため過度な需給不安はなさそうだが、成熟企業で配当が少なければ魅力に乏しい。
日経平均株価の予想レンジは13,750円-14,300円。今週は前週から一転して下値模索となり、2/5安値(13,995円)を下回った。来週(2014/4/14〜4/18)は14,000円割れからいったん自立反発が予想されるが、戻りが鈍ければ再び売り圧力が強まる公算が大きい。12/30高値(16,320円)を起点とした下落トレンドの継続が確認されたことで、現時点で考えられる主要な下値メドの水準は13750円前後、12,800円〜12,650円処となる。
一方、14,000円付近は週足の一目均衡表では抵抗帯上限があり、下げ止まりが意識されやすい。14,000円付近をサポートにもみ合いにとどまり、3/7高値(15,312円)を起点とした右肩下がりの上値抵抗線や、3/7高値を上回れば、7月ごろには16,629円処に到達するシナリオを改めて想定したい。
日柄面で比較的重要なのは5/2前後である(図表3の上向き矢印)。相場の上振れ・下振れの起点、または高値や安値の変化日となりやすい。ダウ平均を長期の日柄予測でみた5/2、ドル/円を日柄予測した5/1〜5/3と重なるため重要である。
図表3:日経平均株価(一目均衡表、2013/12/25-2014/4/10)
出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の注目銘柄(2014/4/14〜4/18)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット株価(円) |
注目ポイント |
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1888 |
177円 |
124円 |
海上土木中堅。関西国際空港や東京湾横断道路、中部国際空港などの大型工事に携わり、海外でも実績豊富。2/12、2014年3月期の通期業績予想の上方修正と復配を発表した。ミャンマーでの大学講義棟受注を機に、東南アジア圏でのシェア拡大目指す。株価は昨年からの三角もち合いを上放れ、一時的な揺り戻しの局面にある。2月安値を切り上げる展開が続いており、25日移動平均線前後を意識して反発に転じる公算が大きい。信用買い残は重荷だが、出来高の増加でカバーか。2011年高値179円を上回れば、300円処まで利を伸ばしたい。短期的なターゲットは177円、ロスカットは124円 |
|
3715 |
4,300円 |
2,780円 |
携帯向け音楽配信が主力、家庭用ゲームなども手掛けている。動画投稿共有サイト「ニコニコ動画」を軸に成長した。2/13、2014年9月期の通期営業利益予想を増額修正した。MAGES.(メージス)を子会社化した影響を織り込んだ。第1四半期(10〜12月期)の連結営業利益は12億円(前年同期比71.2%増)と有料会員の増加が収益に貢献。ゲーム事業は「進撃の巨人〜人類最後の翼〜」が好調だった。株価は昨年後半から下値を切り上げる動きを維持している。信用買い残の減少で取り組み妙味も増大。2013年5月高値3,785円や2004年高値3,950円を上回れば、2013年12月高値(3,285円)からの下げの倍返し4,344円処を早期に達成する公算も。ターゲットは4,300円、ロスカットは2,780円 |
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5105 |
1,000円 |
680円 |
国内ではタイヤ4位。トラックやバス用に強い。海外向けは生産能力増強でアジアが好調のほか、北米はSUV向けに底堅い。米国ではタイヤ販売が堅調である。2月の米国タイヤ出荷本数は前年同月比5.9%増と3カ月連続の増加。米新車販売台数の底堅さを受けて需要は旺盛である。株価は2007年高値690円をブレーク。一目均衡表では基準線上を維持し、直近高値780円が視野に入っている。高値警戒感はあるも、PERの割安感が底堅さの要因。長期の節目を突破したことで、短期の調整局面では押し目買いのスタンスが有効だろう。信用残は売り残と買い残が拮抗し、取り込みは悪くない。1989年高値からの調整の半値戻しは狙えそうだ。ターゲット1,000円、ロスカットは680円 |
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5310 |
3,450円 |
2,080円 |
等方性黒鉛の先駆者で世界シェア3割。黒鉛は中国向け太陽電池がやや持ち直しだが、本格回復は鈍い。一方、機械用や電気用カーボンの健闘に加え、LED用は復調。2013年12月期より決算期を5月から12月に変更した。次世代パワー半導体製造機器向け、農業やバイオ案件にも用途拡大図る。株価は2013年5月高値2,427円を上回ったことで、2012年後半からの底固め完了。週足の一目均衡表では三役好転に続き、遅行線の抵抗帯(雲)突破を確認した。目先的には日足の上ヒゲで微調整の可能性はあるが、2,200円処までの押しは仕込み場となろう。ターゲットは3,450円、ロスカットは2,080円 |
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6849 |
4,760円 |
3,990円 |
医用電子機器専業。病院向け生体情報モニターが主力。世界首位の脳波計やAED(自動体外式除細動器)にも強い。国内では大学や官公立病院、診療所市場向けが好調。AEDリモート監視システムが好調でAEDは大幅増。欧州や中国は伸び悩むが米州やインドの伸びでカバー。米国の開発拠点では救命救急分野に注力している。株価は12カ月移動平均線をサポートに上値を試す展開が続いている。2013年5月高値を起点とした中期もみ合い相場は、4,000円前後で値固め完了間近。1月高値4,285円を上回れば、昨年来高値(4,420円)更新は時間の問題か。上値の目安は、1月高値から2月安値3,810円までの下げ幅475円の倍返しの上げ。ターゲットは4,760円、ロスカットは3,990円 |
- 出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証一部上場銘柄で4/8現在、時価総額が100億円以上、今期増収・営業増益予想。
かつ、4/8現在、週足の一目均衡表の転換線を上回っている銘柄中から、売られ過ぎや話題性を考慮してピックアップした。 - 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。