来週の株式見通し(2013/9/9〜9/13)
来週(2013/9/9〜9/13)の東京株式市場は神経質な展開が予想される。主力株は売買代金の低迷で戻り待ちの売りに押されやすい一方、キヤノン(9/3に500億円上限の自社株取得枠の設定を発表)など出遅れ感のある主力株には買い安心感がある。また、ドル円相場は一目均衡表では抵抗帯(雲)を上回っており、1ドル99円台の推移は当面維持できそうだ。
短期的には9/6発表の米雇用統計の結果次第といえる。米雇用統計の結果が月内の米量的緩和縮小の可能性を高める結果となれば、緩和縮小を織り込んでいる米長期金利はいったん下落に転じる可能性がある。ドル売り円買い圧力が予想され、輸出主力株の上値を重くする要因になる。
逆に、米雇用統計が悪かったとしても金利上昇に打ち止め感が浸透し、米国株式の反発のきっかけになるとみられる。円高は輸出主力株以外に日本株全体の弱含む要因でもあるが、仮に東京での五輪開催が決まれば不動産や建設、小売セクターなどの内需株が物色される展開が想定される。東京以外で決まれば特に不動産や建設セクターにはネガティブに作用するだろう。9/17〜18のFOMCの結果判明までは株式市場全体の方向性は出にくいだろう。
9月に米量的緩和縮小が決まれば、足元の経済統計などを通じて、ドル買い圧力が次第に強まり、日本株に再び海外から資金流入が起きる展開を想定。シリア情勢をめぐる市場の反応は次第に消化されていく可能性が高く、日米の景気改善期待に加え、欧州や中国の景気持ち直しが鮮明となり、世界的な株高局面に移行していくシナリオが予想される。
来週の国内の経済指標は、4-6月期GDP改定値、8月景気ウォッチャー調査(9/9)、8月工作機械受注、日銀金融政策決定会合議事要旨の公表(9/10)、7月機械受注、8月都心オフィス空室率(9/12)などが重要。
海外では、中国8月貿易収支(9/8)、中国8月消費者物価、中国8月生産者物価(9/9)、中国8月鉱工業生産、中国8月小売売上高、中国8月都市部固定資産投資、インド8月貿易統計(9/10)、豪8月失業率、インド7月鉱工業生産(9/12)、ユーロ圏7月貿易収支、米8月小売売上高、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数(9/13)などが発表される。
主要なイベントでは、9/7にIOC総会で2020年夏季五輪の開催地が決定されるほか、来週は米アップルがイベントで新商品発表の可能性(9/10)、世界経済フォーラム夏季ダボス会議(中国・大連、9/11)がある。国内では9/13に先物・オプションの9月限メジャーSQを迎えるほか、サンワカンパニーが新規上場となる。同社は住宅内装設備関係の建築資材のインターネット通信販売。人気が高まりやすいインターネット関連であることや、ビジネスモデルの独自性などが評価されそうだ。吸収金額の少なさによる需給ひっぱくから、基本的には高い初値が予想される。
日経平均株価の予想レンジは13,600円−14,300円。13,600円前後をサポートに値固めが続く可能性はあるが、それは近い将来7/19高値(14,953円)や5/23高値(15,942円)トライに繋がる株価形成であると思われる。
一方、前回指摘した「強気派には見逃せない小さな兆候」である、2013/7/19高値を起点とした上値抵抗線と2013/7/30を基点とした下値支持線とで形成される「下降ウェッジ型」を9/3に上抜けた。下降ウェッジ型はレンジと逆方向に強く放れていく可能性の高いパターン。まさにその流れであれば、2013/7/19高値は早々に上回ってくる可能性もある。足元は、5/23高値と7/19高値を通る上値抵抗線付近で伸び悩んでおり、まさに正念場である。
図表1は、月足の一目均衡表である。2013年9月は転換線が上昇基調を一段と強め、2013年8月の12,659円から13,170円まで上昇している。三役好転が続くなか、株価と接近した転換線が株価を押し上げる展開に期待したいところだ。なお、転換線は順調であれば2014年1月まで上昇基調が続く見込みである。
図表1:日経平均株価の一目均衡表(月足、2010年11月〜2013年9月3日)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
一方、図表2の青線は、日経平均ボラティリティインデックス(VI)である。急落時に大幅に上昇する傾向が高い指標だが、足元は膠着が続いている。2008年のリーマン・ショック以降でボラティリティが高まった局面は、株価の急落場面である。株価と同じ感覚でみると、上値抵抗線を引くことができると同時に、昨年後半から下値が切り上がっている(赤の直線)のが気掛かりだ。昨年、日経平均が秋口までのもみ合い相場から急速に上昇に入る場面でも、少しボラティリティが高まる場面があった。だが、足元の膠着は何を意味しているのか? 今回もポジティブなニュースに少しボラティリティが高まる程度ならよいが、超ネガティブな材料に反応するボラティリティ急騰前の膠着でないように祈るだけである。
図表2:日経平均株価とボラティリティインデックス(VI)の推移(2008年8月21日〜2013年9月3日)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の注目銘柄!(2013/9/9〜9/13)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット株価(円) |
注目ポイント |
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6706 |
830 |
494 |
携帯基地局や放送用アンテナの開発・設計。移動通信事業はLTEや新周波数割当に伴うアンテナ需要発生も伸び悩む。各自治体の防災体制強化の動きから消防救急や防災無線の取り込み図る。放送関連分野ではマルチメディア放送の基地局需要が継続、太陽光発電の案件も進行し工事が本格化。株価はもち合い放れなら上げ5波動目に突入へ。26週移動平均線まで調整するも、立ち直りの早さはもち合い特有の動き。大底からの上昇もまだ若く、中期的には半値戻しの830円処が視野か。2011年以降で形成される二番底からの上げメド値も2E計算値(858円)で一致。週足の一目均衡表で基準線の上昇が再び始まる10月上旬の動きに注視しながら、待ち伏せ狙いの戦略で望みたい。PERやPBRの割安感も下支え。ターゲットは830円、ロスカットは494円。 |
|
6758 |
2,800 |
1,885 |
AV機器で世界首位級。全体の業績は依然として円安頼みだが、テレビやスマホの黒字化や金融は市況改善で好調。エレキ改善の持続性が引き続き最大の注目点。ゲーム「PS4」向け開発費は重荷か。デジタルカメラ並みの撮影性能がある「エクスペリアZ1」を世界で順次発売する予定。米アップルや韓国サムスン電子との違いを打ち出す。株価は2012年高値1,832円を上回り、トレンド転換に期待。2013年5月高値2,413円は2009年以降のネックラインでもあり上値抵抗は強力だが、それだけに上回ればトレンド転換は本物。短期的には三角もち合い上放れがポイント。信用買い残の減少傾向は将来の株価形成にプラスに。ターゲットは2,800円、ロスカットは1,885円。 |
|
6767 |
990 |
690 |
電子部品の総合大手。14年3月期はスマートフォン用カメラ部品や車載用などの底堅い推移を見込むほか、構造改革や合理化を進め、4期ぶりの営業黒字を目指す。直近の株価上昇は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが3DS向けソフト「パズドラZ」を発売すると発表したことが材料視された。同社は任天堂ゲーム機部品を手掛けていることで恩恵を受けるとの思惑が及んだ。ほか、9月出荷が見込まれる新型「iPhone」の関連銘柄として業績寄与を期待する向きもある。株価は2012年3月高値825円を上回り、中期下落トレンドは上昇に転じた可能性。一時的にもみ合い調整にあるが、26週移動平均線サポートに切り返し。2013年5月高値880円を上回れば、2011年のマド埋め(1,240円)が中期ターゲットに。短期ターゲットは990円、ロスカットは690円。 |
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7701 |
1,040 |
830 |
業績モメンタムは良好。主力の計測器事業は医薬・機械・輸送機などの分野が好調に推移している。官需は補正予算執行の影響で受注、売上ともに前年同期比で堅調。海外は中国を除くアジアや欧州は弱いものの、北米ではヘルスケア分野や臨床検査機関向けなどが伸び、全体をカバー。中国は食品安全分野などでクロマトグラフや光分析装置などが強含み。医療機器事業では診断分野から治療分野へ事業の拡充図る。円安効果は業績に本格寄与へ。株価は75日移動平均線をサポートに順調にトレンド形成。13週移動平均線の上昇加速で株価は上値追いへ。2013年5月高値874円から6月安値704円までの下げ幅の倍返しは狙えそう。ターゲットは1,040円、ロスカットは830円。 |
|
8078 |
570 |
418 |
鉄鋼主体の独立系商社。建材、石油、食品、セメント、機械なども扱う。中国に強い。鉄鋼事業では鋼材市況は伸び悩むも、需要面では公共事業の増加などで建設、製造業分野ともに概ね堅調に推移。円安進行も鋼材輸出の収益に寄与。北米事業拡大で食品のグローバル販売網を構築へ。外国人持ち株比率高い。株価は2009年以降の戻り高値をクリアした。9/4現在、月足の抵抗帯(雲)上限を上抜いた状況にある。地味な存在ではあるが、出来高の減少局面で買い、出来高の増加局面で売り対応が有効か。主要な節目は500円前後や2008年7月安値575円までないといえる。ターゲットは570円、ロスカットは418円。 |
- 出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証一部で時価総額300億円以上、今期増収増益(営業利益)予想のうち、PBRが1.5倍程度以下が条件。テクニカル面では9/4現在の株価が、月足の一目均衡表で基準線を上回っている、25日移動平均線を上回っていることが条件。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。