当レポートは、一般投資家の皆さまにも、アナリストの分析手法の基本知識や考え方、さらにはノウハウを身につけていただく一助になればとの思いで執筆しています。毎回一つのテーマに関して、分析手法やその裏側に隠れている大事な意味などについて解説していきたいと思います。当社の国内株の銘柄スクリーニング(銘柄条件検索)機能が昨年末に大幅にリニューアルされ、バージョンアップしました。このスクリーニング機能を使って、実際にテーマにちなんだ銘柄のスクリーニングも併せて行ってみたいと思います。
第11回のテーマは、「β(ベータ)値」です。第6回のテーマにも登場しましたが、「β値」は機関投資家のファンドマネージャーがファンドを運用するときに考慮しなければならない重要な考え方です。この数値は、個別企業の株価が市場全体の動きに対して、どの程度敏感に反応するかを表す数値で、現代のポートフォリオ理論ではよく用いられる言葉です。また、アナリストが個別銘柄選択を行う際にも、気にしなければいけない概念です。
今回は、β値を使って、株式相場が仮に今後反発に向かうと仮定した場合、相場の上昇率以上に値上がりが期待できそうな銘柄をピックアップしてみることにしました。皆さまの投資のご参考になれば幸いです。
β値とは個別企業の株価が市場全体の動きに対して、どの程度敏感に反応するかを表す数値です。現代のポートフォリオ理論ではよく用いられる言葉でもあります。β値は過去の個別銘柄の株価と市場全体の値動きの相関(期間はおおむね2年から3年程度)から求められます。
例をあげれば、A社のβ値が1.5とします。これは、市場全体(TOPIXや日経平均)が10%上昇する場合に、A社の株価は15%上昇し、逆に市場全体が10%下落する時には、A社の株価は15%下落する傾向があるということです。この場合市場全体に対する感応度が高く、ハイリスク・ハイリターンな銘柄ということになります。
逆にC社のβ値が0.5とします。これはA社とは対照的に、市場全体が10%上昇する場合に、C社の株価は5%しか上昇しませんが、逆に市場全体が10%下落する時にはC社の株価は5%しか下落しない傾向があるということです。この場合は市場全体に対する感応度が低く、相対的には安心感のある銘柄(ディフェンシブ銘柄)ということが言えそうです。
したがって市場全体が強く、上昇すると予想した場合には、β値の高い銘柄を多くポートフォリオに入れ、全体のβ値を1以上にします。つまり攻撃型のハイリスク・ハイリターン型のポートフォリオにするわけです。一方で市場全体の値動きより感応度を下げたい場合には、β値を1以下にコントロールし(銘柄を入れ替え)、ローリスク・ローリターンでディフェンシブなポートフォリオにするわけです。
このように相場の局面に応じて、β値を意識した銘柄選択を行うことは、極めて重要と考えられます。ぜひともご自分で、各銘柄のβ値を実際に調べてみることをおすすめいたします。また、多くの銘柄を保有している投資家の方は、ご自分のポートフォリオのβ値(加重平均)を計算し、その特性を把握しておくことも有用ではないかと思います。
日経平均株価は3/19(木)に一時1万6,385円の年初来安値をつけましたが、その後は反発局面に入っています。今後は新型コロナウイルスの感染収束を前提に回復局面が本格化する可能性が高いものと考えています。その際には、前述したβ値の高い銘柄のリターンが有利になってくると考えられます。また、その銘柄のこれまでの株価下落率が大きいものほど、大幅な反発が期待できる可能性が大きいと思われます。
そこでこうした銘柄を当社のWEBサイトのスクリーニング(銘柄条件検索)機能を使って、実際に抽出してみたいと思います。抽出条件は以下の通りです。
(1) 東証1部上場のJPX日経400採用銘柄で、時価総額が1,000億円以上であること
(2) 対日経平均株価のβ(ベータ)値が1.3以上であること
(3) 年初来高値からの株価下落率が30%以上であること
下の表1は、上記条件を満足する銘柄群です。掲載順はβ値の高い順にしています。これらの銘柄を主体にポートフォリオを作成すれば、仮に株式相場全体が今後上昇軌道に乗ると仮定したときに、日経平均に比べて優位なパフォーマンスを得られる可能性が大きいと思われます。
なお、すでに複数銘柄のポートフォリオを構築している時に、個々の銘柄のβ(ベータ)値を加重平均したポートフォリオのβ(ベータ)値を計算することにより、そのポートフォリオが攻撃的なのか、守りに強いのか、判断することができます。例えば、相場は強いと予想しているのに、ポートフォリオのβ(ベータ)値が1より低い場合は、β(ベータ)値が高い銘柄に入れ替えるという作戦が有効になると考えられます。
表1 【ご参考】株価大幅下落の高β銘柄群
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価(円) 4月15日 |
年初来高値からの 下落率(%) |
β値 |
6723 | 6723 | 6723 | 6723 | ルネサスエレクトロニクス | 465 | -43.6 | 1.74 |
4849 | 4849 | 4849 | 4849 | エン・ジャパン | 2,129 | -57.1 | 1.52 |
7735 | 7735 | 7735 | 7735 | SCREENホールディングス | 4,190 | -49.9 | 1.52 |
3288 | 3288 | 3288 | 3288 | オープンハウス | 2,178 | -34.6 | 1.48 |
6728 | 6728 | 6728 | 6728 | アルバック | 2,720 | -38.9 | 1.45 |
6762 | 6762 | 6762 | 6762 | TDK | 8,930 | -30.7 | 1.42 |
6141 | 6141 | 6141 | 6141 | DMG森精機 | 925 | -47.1 | 1.39 |
7013 | 7013 | 7013 | 7013 | IHI | 1,181 | -59.1 | 1.39 |
6479 | 6479 | 6479 | 6479 | ミネベアミツミ | 1,661 | -31.3 | 1.37 |
2181 | 2181 | 2181 | 2181 | パーソルホールディングス | 1,033 | -52.7 | 1.36 |
6841 | 6841 | 6841 | 6841 | 横河電機 | 1,395 | -33.9 | 1.35 |
6504 | 6504 | 6504 | 6504 | 富士電機 | 2,499 | -31.8 | 1.34 |
8015 | 8015 | 8015 | 8015 | 豊田通商 | 2,369 | -40.6 | 1.33 |
6098 | 6098 | 6098 | 6098 | リクルートホールディングス | 2,800 | -39.3 | 1.32 |
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