大きく上昇も、17日に波乱となり、激動した株式市場 |
10月17日以降、日経平均株価が上昇基調を続けています。その初期段階では、世界経済に対する減速懸念が後退し、米国株高、円安・ドル高の流れが戻ってきたことが追い風になりました。さらに、10月31日に、日本銀行が金融政策決定会合で、大規模・追加的な量的緩和を発表し、株式市場に強いサプライズをもたらし円安が加速したことで、株価急騰となりました。また、この間に発表された2014年4〜9月期決算では、上場企業の業績見通し上方修正が多かったこともプラス材料でした。加えて、11月第2週になると、にわかに主要メディアが「消費税再増税延期」「解散・総選挙」の可能性を報じるようになり、14日(金)には日経平均株価は17,520円まで上昇しました。
しかし、ここで波乱が起きました。11月17日の取引時間開始前に内閣府から発表された2014年7〜9月期の実質経済成長率が、前期比・年率▲1.6%となり、事前の市場コンセンサス(+2%強)を大きく下振れるという衝撃が走りました。これを受けて、その日の東京株式市場では日経平均が前日比517円安と急落しました。ただ、海外市場や外為市場の反応が落ち着いていたこと、18日(火)の日経平均が370円高と急反発したことで、波乱は取りあえず収まる形となりました。そうした中、18日の夜、安倍首相が「消費税再増税延期」「解散・総選挙」を正式に発表するに至りました。
オプション市場はこの間、当然激しい動きとなりました。日経平均コール・オプション(2014年12月限・権利行使価格17,375円)の動きを辿ると、10月17日に12円だったプレミアム料は、11月14日には一時575円と48倍の水準まで上昇。しかし、翌営業日の17日には50%低い285円まで急落、19日には高値500円と75%上昇と、まさに「乱高下」しました。
図1:大きく上昇したもの時々波乱を演じた日経平均株価(日足)
- ※日経平均株価データ、各種報道をもとにSBI証券が作成。
前向きな中にも慎重さを〜メジャーSQ直後に総選挙投開票 |
今後の株式市場をどうみるべきでしょうか。17日(月)発表の実質経済成長率の悪さは、まさに衝撃的でしたが、消費税再増税が2017年4月まで延期されることで、当面は個人消費の底入れ・回復が展望できそうです。そもそも、経済成長率を最も押し下げたのは在庫調整ですので、同調整が進捗したことで10〜12月期の景気下振れリスクは低減するとみられます。上場企業の業績自体は、円安効果もあって輸出企業を中心に上振れつつあり、日経平均株価の予想一株利益も上昇傾向です。よって、ファンダメンタルズは決して悪くないと考えられます。
そして何よりも、FRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和を終了する一方で、逆に日銀が量的緩和を強化するため、円安・ドル高が加速しやすくなっている点が重要です。このため、日経平均株価への寄与度の高い輸出株が上昇しやすくなっています。そもそも、戦後の東証再開以降、解散日から投開票直後までの日経平均は平均して上昇傾向となっています。総じて、日経平均株価は上昇する可能性が大きいと考えられます。
ただし、注意すべき点もありそうです。それは、10月17日(金)からの日経平均株価上昇率が、17,500円を回復した時点で約2割に達し、スピード警戒感が強まっていることです。その分「選挙中は株価が高い」という傾向が、今回も素直に当てはまるかどうかは、微妙な所です。注目の総選挙も、前回の総選挙が連立与党の勝ち方(480議席中325議席を確保)が甚だしかった分、多少の反動も警戒されるので、世論調査等が株価に影響する可能性も残ります。
オプション・先物市場参加者にとり、年に4回しかないビッグ・イベントである「メジャーSQ」が、12月12日(金)に迫っています。しかし、総選挙の投開票が14日(日)ですので、直前にリスク回避の売りが膨らめば、波乱を演出する可能性もあります。「前向きな中にも、慎重さを忘れないようにしたい」所と言えましょう。
相場観に微妙なさじ加減を加えることが可能な、オプション取引 |
仮に、今後も株式相場見通しに対し「強気」でのぞむとした場合、取るべき戦力は何でしょうか。
無論、代表的な所では、「現物株の買い」になるでしょう。個別株の場合、想定される損益は様々ですので、議論を単純化するために、今は、日経平均株価に連動する現物株のポートフォリオを保有するとします。この場合、日経平均株価連動型のインデックス・ファンドを想像するとわかりやすいと思います。
図2の(1)で示したのは、そうした日経平均(現物株)を11月19日終値17,288円で買ったと仮定した場合の想定損益(諸コストを除く)です。17,288円で買い17,500円で売れば、212円の利益、逆に17,000円で売れば288円の損失が出ます。
前項で、今後の相場展望について「前向きな中にも、慎重さを忘れないようにしたい」と、ご説明しました。「前向き」の部分は、現物株の買いで対応できたとします。それでは「慎重さ」の部分はどうすべきでしょうか。
そのひとつの方法として、「プットの買い」を組み合わせる手があります。図2の(2)は、日経平均プット・オプション(2014年12月限)で権利行使価格17,250円の買いについて、SQでの想定損益図を示したものです。
(1)と(2)を組み合わせたポートフォリオの合成損益図を太線で示しました。株価が大きく下落するほど、現物株の損失が膨らむ反面、買ったプットは逆に利益が拡大しますので、損失は一定線で固定されるようになります。逆に株価が大きく上昇した場合は、現物株で利益が拡大する一方、プット買いの損失はプレミアム料以上には出ませんので、トータルとしては、株価が上昇するほど、パフォーマンスが良くなる計算です。しかし、この合成損益図、どこかでご覧になったグラフと似ていませんでしょうか?
実は、「現物株の買い」と「コール・オプションの買い」の合成ポートフォリオは、図3に示した「コールの買い」と、形の上では同じということになります。最大損失を計算すると、合成ポートフォリオが418円、コールの買いが490円ですので、前者が有利そうですが、組み合わせになっている分、手数料が高くなりがちです。コストまで含めても大きな差にはならなそうなので、やはり、ほぼ同一の性格を持つポジションと言えそうです。
株式相場に対する見通しを仮に「強気」とした場合、現物株を買うことが代表的な方法ですが、オプション取引を利用することで、「慎重さ」を付加するという微妙なさじ加減をすることができるのも、オプション取引のもうひとつの側面と言えないでしょうか。
図2:現物株ポートフォリオをヘッジ〜日経平均(現物株)+プット・オプションの合成損益図
図3:日経平均コール・オプションの損益図
- ※日経平均株価・オプション取引各種データをもとにSBI証券が作成。
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