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「新型肺炎」を冷静に分析すると何が見えてくるのか?

2020/2/18

投資情報部 鈴木英之

2月の東京株式市場は、米国株式市場の高値更新基調が続いたこともあり、やや戻り歩調でスタートしました。日経平均株価は2/6(木)に再び24,000円が意識される水準を回復しました。しかしその後は下落傾向となっています。新型肺炎の感染拡大が意識され、日本の景気・企業業績に対する悪影響が心配され始めたことが要因と考えられます。

今後はどうなるのでしょうか。新型肺炎が日本の景気・企業業績に及ぼす影響を冷静に分析し、株式市場の今後を占ってみたいと思います。

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1日経平均株価は24,000円手前まで上昇し、その後は下落基調に転換

2月の東京株式市場は、米国株式市場の高値更新基調が続いたこともあり、やや戻り歩調でスタートしました。日経平均株価は2/6(木)に再び24,000円が意識される水準を回復し、2月第1週は前週末比622円80銭(2.7%)上昇して終わりました。

しかしその後は下落傾向に転じました。新型肺炎の感染拡大が意識され、日本の景気・企業業績に対する悪影響が心配されたためです。2月第2週の日経平均株価は前週末比140円39銭(0.6%)安となりました。2月第3週も続落でスタートしており、2/18(火)現在では4営業日続落となっております。

図1は日経平均株価の推移を日足チャートでみたものです。結局、12月、1月、2月と3回24,000円前後の水準まで上昇しましたが、そこを上方向に抜き切ることはできず、下落に転じ、25日移動平均線や75日移動平均線を割り込んできています。チャート的には下方向への波乱となりやすい形であると見られます。

上場企業については、2/14(金)までで実質的に2019年10〜12月期の決算発表は終了しました。日本経済新聞の集計によると、2019年4〜12月期累計の経常利益は製造業で前年同期比17.4%減、非製造業で同1.0%減、全産業(金融を除く)で同9.7%減となりました。2020年3月期通期では全産業(同)で10.4%の経常減益が予想されています。

また、2/17(月)に発表された2019年10〜12月期のGDP統計では、実質経済成長率(前期比・年率)が6.3%減となり、市場コンセンサスの同3.8%減を大きく下回りました。

日本の景気・企業業績は消費税引き上げの反動を回避できなかったことに加え、米中貿易摩擦や大型台風の影響を受けて急速に減速した形になっています。2020年1〜3月期は新型肺炎の影響を受けてさらなる落ち込みが警戒されます。日本経済は後退局面に入っている可能性が大きそうです。

表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/2/3〜2020/2/18)

   日経平均株価 日米株式市場等の動き 
終値 前日比
2/3(月) 22,971.94 -233.24 米国が中国に「渡航禁止・避難勧告」の措置。NYダウは603ドル安。上海株は急落。
2/4(火) 23,084.59 +112.65 急落の反動で前日のNYダウが反発(143ドル高)。
2/5(水) 23,319.56 +234.97 経済・金融政策への期待でNYダウ(2/4)が407ドル高。香港株も上昇。
2/6(木) 23,873.59 +554.03 12/13以来の上昇幅。肺炎治療薬への期待もありNY(2/5)が大幅続伸(483ドル高)。
2/7(金) 23,827.98 -45.61 短期的過熱感に加え、決算発表がヤマ場を迎え利益確定売りが増加。
2/10(月) 23,685.98 -142.00 NYダウ(2/7)反落を嫌気。ただ、上海株の反発基調継続を好感。
2/12(水) 23,861.21 +175.23 2/10〜2/11累計でNYダウが上昇。高値更新。新型肺炎の新規患者数減少も追い風。
2/13(木) 23,827.73 -33.48 基準の変更で新型肺炎の新規患者数が急増したことを嫌気。
2/14(金) 23,687.59 -140.14 NYダウ(2/13)反落を嫌気。企業業績悪化も懸念材料。
2/17(月) 23,523.24 -164.35 米国が休場(2/17)で市場参加者が少ない中、10〜12月期GDPが予想を下振れ。
2/18(火) 23,193.80 -329.44 アップルが収益計画未達の可能性を示唆。半導体・電子部品に売り。
  • ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/2/18取引時間中。

図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/2/17現在。

図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/2/18取引時間中。

2新型肺炎感染拡大の影響をチェック

2019年10〜12月期の上場企業決算やGDP統計の発表が終わり、従来であればほっと一息つける場面といえるかもしれません。決算発表を終わった企業の冷静な分析が進み、銘柄選別が本格化する季節であると考えられます。

しかし、消費税引き上げや大型台風、新型コロナウイルスを原因とする新型肺炎の感染拡大等、日本経済はいくつもの嵐に巻き込まれ、景気・企業業績は悪化局面を迎えようとしています。

そうした中、2/19(水)には訪日外客数(1月)の発表が予定されています。中国の春節休暇が1/24(金)からスタートした訳ですが、それとほぼ同時に団体旅行等が禁止されたため、中国人観光客の落ち込みがどの程度であったのかが注目点(ただし、前年の春節は2/4〜2/10であった点に注意)になります。また、同じ日に発表予定の我が国の貿易収支(1月)において、対中貿易の動向もチェックが必要です。

2/21(金)には東京地区および全国の百貨店売上高(1月)が発表されます。普段はそれほど注目度が高い指標ではありませんが、今回はインバウンド需要の動向を探る指標として注目したいと思います。

表2 当面の重要スケジュール

月日(曜日) 国・地域 予定内容 ポイント
2/18(火) ドイツ 2月ZEW景況感指数 350人の市場関係者・エコノミストにアンケート。
  米国 2月NY連銀製造業景況指数
2/19(水) 日本 1月貿易収支 中国との輸出・輸入は?
  米国 1月住宅着工件数
  米国 1月訪日外客数 2019年は3188万人(前年比2.2%増)。うち中国人が30%を占める。
2/20(木) 米国 FOMC議事録
  日本 1月コンビニエンスストア売上高
  米国 2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
2/21(金) 日本 1月全国消費者物価指数(生鮮食品を除く) 12月(前年同月比)は0.7%上昇
  日本 1月東京地区/全国百貨店売上高 インバウンド消費はどの程度影響を受けているのか。
2/22(土) 米国 1月中古住宅販売件数
  - G20財務相・中央銀行総裁会議 経済対策に期待
2/24(月) 日本 ◎東京市場は休場(天皇誕生日の振替休日)
  ドイツ 1月Ifo景況感指数 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート
2/25(火) 米国 12月S&PコアロジックCS米住宅価格指数
2/26(水) 日本 2月末権利確定銘柄の権利付最終日
2/27(木) 米国 1月新築住宅着工件数
  米国 10〜12月期GDP改定値 市場コンセンサス(前期比・年率)は+2.2%
  米国 1月耐久財受注 民間設備投資の先行指標
2/28(金) 日本 1月失業率・有効求人倍率
2/29(土) 中国 2月製造業PMI 新型肺炎の影響は?

表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)

  2020年
日銀金融政策決定会合 3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 3/12(木)、4/30(木)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木)
  • ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。決算発表のポイント欄に書かれた銘柄名は発表会社の例であり、ほかにも発表会社がある時が多くなっています。

3【ココがPOINT!】「新型肺炎」の影響を冷静に分析すると何が見えてくるのか?

今後はどうなるのでしょうか。新型肺炎が日本の景気・企業業績に及ぼす影響を冷静に分析し、株式市場の今後を占ってみたいと思います。

残念ながら新型肺炎自体の感染者数および死亡者数は増加を続けています。2/18(火)現在の中国メディアが集計した最新データでは感染者数累計が72,530人、死亡者数が1,870人となっています。病院に行けない人の存在等を考慮すれば、実数はもっと大きいかもしれません。武漢市を省都とする湖北省の感染者数累計は59,989人、死亡者数は1,789人となっています。中国以外の累計感染者数は日本520人、シンガポール77人、タイ35人等となっています。(図4参照)

新型肺炎と株価の動向を比べる上では、図5の新型コロナウイルスの感染者の新規発生数が問題になりそうです。この新規発生数の減少が株価の下げ止まりにつながる大きな要因になると考えられるためです。事実、新規発生数は2/4(火)をピークに減少に転じたとみられた期間があり、その時点では株価も堅調でした。しかし、感染者としてカウントする時の基準が見直され、2/12(水)に新規発生数が急増すると、株価は動揺をみせることになりました。今後は感染者数等の基準に変更が加えられることなく、日々の新規感染者数がさらに顕著に減少すれば、株価下落に歯止めがかかる可能性がありそうです。

2020年1〜3月期の日本経済については、数多くの逆風が吹いており、悪化する可能性に注意が必要とみられます。

(1)春節需要を見込んで投資や在庫を増やした直後に大量のキャンセルが出た形となっており、外食や小売等で急速に業績が悪化する企業が出てきそうです。中小企業では3月末の資金繰り悪化も心配されます。
(2)世界の著名な観光地で中国人が見られなくなったようです。2020年春節の中国人の旅行回数は前年比7割程度減ったとみられ、世界経済への影響も大きいと見られます。
(3)新聞報道等では、インドの不良債権が問題化しているようです。世界人口の第1位、第2位を占める国の経済悪化が世界経済に及ぼす悪影響は小さくないとみられます。
(4)世界の製造業における中国のシェアはセメントで60%、鉄鋼で50%強との分析があります。2019年10〜12月期決算では鉄鋼業等の急速な悪化が伝えられていますが、その苦境は長期化する可能性があります。
(5)日本経済へ多大な影響力を有する自動車や電子機器でサプライチェーンが寸断されており、本格的な回復までには時間を要しそうです。米国ではアップルが収益計画未達の可能性を表明し、それが2/18(火)の株価下落の一因になった可能性があります。これらの産業の不況感は今後さらに強まる可能性がありそうです。
(6)2020年の日本のGDPはマイナス成長になる可能性がありそうです。また、2021年3月期上場企業の業績見通しは、減益見通しになるリスクが膨らんできたと考えられます。

今後、2020年1〜3月期の日本経済の落ち込みを示す材料が多く出てくると見られますが、株価は十分に織り込んでいないと見られますので、注意が必要です。ただ、新型肺炎感染者数の新規発生数からみると、この問題はピークに接近している可能性もあります。総合的に、日経平均株価は3〜4月頃に安値を付け、反発に転じるというシナリオが有力になってきたように思われます。

図4 新型コロナウイルスの感染者数および死亡者数

図5 新型コロナウイルスの感染者の新規発生数

  • ※中国「国家衛生健康委員会」の公表データをもとにSBI証券が作成。図5は、中国「国家衛生健康委員会」が日々公表している中国の感染者数累計から日々の増加数を計算したものです。
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