日経平均株価は短期調整の後、再び高値をうかがう展開になっています。11/26(火)の取引時間中には一時、取引時間中の本年高値を上回る23,608円06銭まで上昇しました。米中協議合意への期待を背景に、米主要株価指数が最高値を更新した流れを引き継ぐ展開になりました。
日経平均株価が仮に、現在の本年高値水準を上回ってくると、次の「目標水準」は2018/10/2(火)の高値水準、すなわち取引時間中ベースでは24,448円07銭となります。日経平均株価が仮に昨年の高値水準を上回ってくると、1991/11/13(水)以来、28年ぶりの高値水準を回復することになります。
株価は高値圏であり、今後は下落に転じてしまうでしょうか。そう考える前に、チャートの時間軸を長めに延長し、回復される株価水準の意義を考えると、また、別の見方ができるのではないでしょうか。
日経平均株価は11/8(金)の取引時間中に、一時23,591円09銭の高値を付けました。取引時間中ベースではここが本年高値となっています。また、終値ベースでは11/12(火)の23,520円01銭が本年高値となっています。しかし同株価はその後、下落局面となっています。米中協議の早期合意への期待が後退する中、米国株の上昇が一服となったことや、外為市場で円安・ドル高の動きが一服したこと等が響きました。
ただ、下落局面は短期間のうちに収束しました。図1にあるように、日経平均株価は11/21(木)、重要な下値支持線とみられる25日移動平均を下回り、一時22,726円71銭の安値を付けました。しかし、この安値水準が「下ヒゲ」となる形で押し目買いが入り、11/22(金)以降は連騰となり、11/26(火)の取引時間中には一時、冒頭で触れた取引時間中の本年高値を上回る23,608円06銭まで上昇しました。米中協議合意への期待を背景に、米主要株価指数が最高値を更新した流れを引き継ぐ展開になりました。
以前ご紹介した通り、日経平均株価が仮に、現在の本年高値水準を上回ってくると、次の「目標水準」は2018/10/2(火)の高値水準、すなわち取引時間中ベースでは24,448円07銭、終値ベースでは24,270円62銭となります。日経平均株価が仮に昨年の高値水準を上回ってくると、1991/11/13(水)以来、28年ぶりの高値水準を回復することになります。一般的に、1991年は平成バブルの崩壊過程と理解されていますので、回復される株価水準は「平成バブル(崩壊)以降の高値水準」と表現されることが多いようです。
「平成バブル相場」と呼ばれる大きな上昇相場は平成元年(1989年)12月末に高値を付け、翌年以降株価は長期低迷局面を迎えることになります。仮に、「平成バブル(崩壊)以降の高値水準」を回復するのが令和元年(2019年)12月末ということになると、それは非常に感慨深いもののように思われます。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2019/11/18〜11/26)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
---|---|---|---|
終値 | 前日比 | ||
11/18(月) | 23,416.76 | +113.44 | NYダウが史上初の28,000ドル台乗せ。ただ、円安・ドル高の勢いは限定的でした。 |
11/19(火) | 23,292.65 | -124.11 | NYダウは続伸も、円高基調が続きやや売り優勢となりました。 |
11/20(水) | 23,148.57 | -144.08 | 米上院が「香港人権法案」を可決し、米中関係悪化が懸念されました。 |
11/21(木) | 23,038.58 | -109.99 | 「香港人権法案」に大統領が署名し、米中関係悪化となる可能性を懸念しました。 |
11/22(金) | 23,112.88 | +74.30 | 引き続き米中対立を心配しつつ、電子部品株を中心に押し目買いが入りました。 |
11/25(月) | 23,292.81 | +179.93 | 米中合意へ向けた両国首脳の前向きな発言を好感。香港株高も追い風になりました。 |
11/26(火) | 23,373.32 | +80.51 | 中国が知財保護で妥協したとされ、米国株が最高値を更新した流れを引き継ぎました。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/11/26取引時間中。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/11/25現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/11/26取引時間中。
米国では11/28(木)、「感謝祭」(Thanksgiving Day)の休日となります。米国では多くの家族、友人グループで食事会が催されることになりそうです。そして、その翌日はいわゆる「ブラックフライデー」ということになります。買い物客が殺到して小売店が繁盛しやすい日となっており、米国の小売業界では1年でもっとも、多くの売り上げが見込める日になっているようです。一般的に、この日以降米国では「年末商戦」に本格的に突入すると言われています。
米国では、労働市場が「完全雇用」状態にある上、低金利の長期化もあり、家計の消費は堅調に推移しやすい環境にあるとみられます。全米小売業協会では、本年11〜12月の小売売上高を前年同期比で4%前後伸びると予想しているようです。米個人消費が堅調に推移し、米内需株の業績に追い風が吹けば、米国株もその分下支えされると期待されます。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
11/26(火) | 米国 | 9月FHFA住宅価格指数 | |
米国 | 9月S&PコアロジックCS住宅価格 | ||
米国 | 10月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は+0.4% | |
米国 | 11月消費者信頼感指数 | ||
11/27(水) | 米国 | 7〜9月期GDP改定値 | 市場コンセンサス(前期比・年率)は1.9%増 |
米国 | 10月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
11/28(木) | 米国 | ◎米国市場は休場(感謝祭) | |
11/29(金) | 日本 | 10月失業率・有効求人倍率 | 失業率は7、8月の2.2%(26年9ヵ月ぶり低水準)から9月は2.4%に。 |
日本 | 10月鉱工業生産 | ||
米国 | ブラックフライデー | 米国年末商戦の開始 | |
11/30(土) | 中国 | 11月製造業PMI | 5〜10月に50割れ |
12/2(月) | 日本 | 7〜9月期法人企業統計 | |
米国 | 11月製造業景況指数 | 米国製造業のマインドは? | |
米国 | サイバーマンデー | ||
12/4(水) | 米国 | 11月ADP雇用統計 | 市場コンセンサスは15.5万人増 |
米国 | 11月ISM非製造業景況指数 | 雇用・新規受注等の指標にも注目 | |
12/5(木) | 米国 | 10月貿易収支 | |
米国 | 10月製造業受注 | ||
- | OPEC総会・OPECプラス閣僚会議 | ||
12/6(金) | 米国 | 11月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは19.5万人増 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
1989年12月末まで続いた平成バブルが崩壊した後、日経平均株価は急速に下落し、1992年8月に「1番底」を付けるまで63%下落しました。その後、同株価は大雑把にみると、上値22,000円台、下値7,000円台の雄大なボックス相場を展開することになりました。この時期の日本経済を示す表現として、多くの人が「失われた20年」と言っています。一時は米国を脅かし、世界一の存在も期待された日本経済は長期低迷に苦しみ、投資家の関心は中国など、成長著しい新興国へ向かうことになりました。
そうした中、2012年11月に野田前首相が解散を表明し、その後スタートした「アベノミクス」相場において、ボックス相場の上限をトライすることになります。2017年10月にすでに、1996年6月の高値水準であり、「失われた20年」の高値である22,000円を超え、日経平均株価は新たな局面に入っていたとみられますが、24,000円まで上値を伸ばしてきたことで、日本経済が「失われた20年」を克服した可能性が一層強まったと考えられます。
多くの投資家にとり、日経平均株価が23,000円近辺を推移している現状は、経験が少ないため、株価は高値圏に達しているように思われるでしょう。無論、それら多くの投資家の読み通りとなり、日経平均株価が今後間もなく下落に転じる可能性もあります。
ただ、大きく上昇して株価が高値圏にみえる時、チャートの時間軸をさらに拡大して、その意義を考えることが重要になる時もあります。平成バブル相場が崩落する過程で、日経平均株価が2万円近辺まで下がるのに、それほどの期間があった訳ではなく、株価の滞留期間は比較的短かったと考えられます。言い換えれば、日経平均株価が昨年付けた24,448円07銭近辺の株価を超えてくると、戻り売りの抵抗はそれほどないかもしれません。
「失われた20年」の雄大なボックス相場の戻り売りをこなしつつ上昇してきたものの、むしろ信用売りや裁定売りも多く、予想PERも歴史的に高い訳ではないと思います。株価は高値圏であり、今後は下落に転じてしまうでしょうか。そう考える前に、チャートの時間軸を長めに延長し、回復される株価水準の意義を考えると、また、別の見方ができるのではないでしょうか。
表4 日経平均株価(月足)
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成