10/15(火)の日経平均株価は前週末比408円34銭高となり、9/26(木)以来の22,000円台を回復。米中通商協議で、部分合意が成立したことが好感されました。2月・8月決算企業等の決算発表を見る限り、企業業績が案外底固く推移していることも、株価の下支え要因となっています。4/25(木)に付けた年初来高値22,307円の更新も視野に入ってきました。
こうした中、東京株式市場では2019年7〜9月期の決算発表が本格化しようとしています。今後、日経平均株価は上昇を続けることができるのでしょうか。また、そのための条件は何になるのでしょうか。
日経平均株価は10月第1週(9/30〜10/4)に前週末比468円70銭(2.1%)安と、売りが先行する展開になりました。米国経済に減速する兆しが強まってきたためと考えられます。しかし、同第2週(10/7〜10/11)は388円67銭(1.8%)高となりました。米中閣僚級通商協議(10/10〜10/11)を控え、部分合意への期待が高まりました。この間に本格化した2月決算・8月決算等の銘柄の四半期決算発表で、大きな波乱がなかったことも、投資家に買い安心感を与えました。
そうした中、10/11(金)までの米中通商協議で、(1)中国が米国から農産物購入を拡大、(2)米国は中国から輸入される製品2,500億ドル相当への関税引き上げ(25%から30%へ)を中止、といった部分合意が成立しました。これを好感して10/11(金)および10/14(月)のNYダウは累計で290ドル高となり、ドル・円相場は一時1ドル108円台半ばまで円安・ドル高が進む展開になりました。米株高・円安の追い風を受け、連休明け10/15(火)の日経平均株価は大幅続伸となりました。
なお、10/7(月)〜10/15(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。
10/7(月)34円95銭安・・・米中通商協議に関し中国の消極的な姿勢が伝わりました。
10/8(火)212円53銭高・・・米10年国債利回りが8営業日ぶりに上昇し、円高が一服したことが好感されました。
10/9(水)131円40銭安・・・人権問題を巡る米国と中国の対立で米中通商協議の停滞が警戒されました。
10/10(木)95円60銭高・・・米トランプ政権が米国企業にファーウェイへの製品供給を一部認可する可能性が報道されました。
10/11(金)246円89銭高・・・米トランプ大統領が米中協議に楽観的な見方を示し、10/10のNYダウは150ドル高となりました。
10/15(火)408円34銭高・・・米中通商交渉で部分合意となり、連休中のNYダウが累計で290ドル上昇したことを好感しました。
東証1部の売買代金は10/4(金)〜10/10(木)に5営業日連続で2兆円を割り込み、特に10/7(月)には1兆5千億円台まで縮小しました。米中閣僚級通商協議を控え、基本的には様子見を決め込む投資家が多かったようです。
しかし、米中閣僚級会議で曲がりなりにも部分合意が成立したこと、国内的には、2月決算・8月決算等の銘柄の四半期決算発表で、大きな波乱がなかったこと等から、今後はややリスクを取りやすくなると考えられます。特に、設備投資関連銘柄の先行指標とされていた安川電機(6506)の2020年2月期・中間決算発表(10/10)で、業績見通しが下方修正されたにもかかわらず、その後の株価が予想外に底固く推移していることは、東京株式市場の投資マインドを強気方向に押し上げる要因になっていると考えられます。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/10/15現在。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/10/14現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/10/15取引時間中。
米中閣僚級通商協議で部分合意が成立し、当面の株式市場の関心はいよいよ「企業業績」にシフトしてくると考えられます。米国では10/15(火)に大手金融株、10/16(水)にIBMやネットフリックス等で決算発表が予定されています。当面は米主力企業の発表が続く予定で、目が離せない状態が続きます。
もっとも、米国の上場企業は決算をしめた後で、事前のガイダンスに対して著しく差があることが明らかになった時「プロフィット・ウォーニング」を発表する傾向にあります。逆に、決算発表では事前の市場予想純利益やEPSを実績が上回るケースが増えてくる傾向があります。したがって、米国企業の決算発表に過度な懸念は不要かもしれません。
日本企業については、2月決算・8月決算企業等の決算発表予定が10/15(火)56社となっており、この日で発表が一巡となります。今後は3月決算・9月決算企業等の発表が本格化するはこびになっています。発表社数ベースでは、10/31(木)の390社、11/8(金)の579社、11/14(木)の306社等が大きなヤマ場になっています。時価総額上位企業では、トヨタ(7203)の発表が11/7(木)、ソフトバンクグループ(9984)が11/6(水)、ソニー(6758)が10/30(水)の予定(変更に注意)になっています。
表1 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
10/15(火) | 日本 | ★決算発表(56社) | |
中国 | 9月消費者物価指数 | 市場コンセンサス(前年同月比)は2.9% | |
ドイツ | 10月ZEW景況感指数 | 約350人のアナリストや市場関係者に景況感をアンケート | |
米国 | 対中関税第1〜第3弾引き上げ(中止) | 25%から30%へ引き上げられる予定でした。 | |
米国 | ☆決算発表〜米国上場企業の7〜9月期決算発表が本格化 | シティG、GS、J&J、JPM他 | |
10/16(水) | 日本 | 9月訪日外客数 | 8月は前年同月比2.2%減 |
米国 | 9月小売売上高 | 米個人消費の勢いは? | |
米国 | 10月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | バンカメ、IBM、ネットフリックス他 | |
10/17(木) | 日本 | 9月首都圏新築マンション販売 | |
欧州 | EU首脳会議 | ||
米国 | 9月住宅着工件数 | ||
米国 | 10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | 米国企業のマインドは? | |
米国 | 9月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
10/18(金) | 日本 | 9月消費者物価 | |
中国 | 9月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.5%増 | |
中国 | 9月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前年同月比)は4.9%増 | |
中国 | 9月小売売上高 | 市場コンセンサス(前年同月比)は7.8%増 | |
中国 | 7〜9月期GDP | 市場コンセンサス(前年同月比)は6.1%増 | |
米国 | ☆決算発表 | アメックス、コカ・コーラ他 | |
10/19(土) | 英国 | EU離脱合意案締結期限 | |
10/21(月) | 日本 | 9月貿易統計 | |
10/22(火) | 日本 | 即位礼正殿の儀、祝賀御列の儀 | |
米国 | 9月中古住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は0.7%減 | |
米国 | ☆決算発表 | マクドナルド、P&G、トラベラーズ、TI他 | |
10/23(水) | 日本 | ★決算発表(11社) | 日本電産、ジャフコ他 |
日本 | 9月東京地区百貨店売上高 | 前回は前年同月比4.7%増 | |
米国 | 8月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | ボーイング、キャタピラー、マイクロソフト、フォード他 | |
10/24(木) | 日本 | 東京モーターショー | |
日本 | ★決算発表(22社) | ディスコ、ネットワンシステムズ、中外製薬他 | |
欧州 | ECB定例理事会 | ||
米国 | 9月耐久財受注 | 民間設備投資の先行指標 | |
米国 | 9月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は1.2%減 | |
米国 | ☆決算発表 | アマゾン、インテル他 | |
10/25(金) | 日本 | ★決算発表(58社) | エムスリー、信越化学 |
ドイツ | 10月Ifo景況感指数 | 約7,000社のドイツ企業にアンケート | |
米国 | ☆決算発表 | ツイッター他 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
10/15(火)の日経平均株価は前週末比408円34銭高となり、9/26(木)以来の22,000円台を回復。米中通商協議で、部分合意が成立したことが好感されました。2月・8月決算企業等の決算発表を見る限り、企業業績が案外底固く推移していることも、株価の下支え要因となっています。4/25(木)に付けた年初来高値22,307円の更新も視野に入ってきました。
こうした中、東京株式市場では2019年7〜9月期の決算発表が本格化しようとしています。今後、日経平均株価は上昇を続けることができるのでしょうか。また、そのための条件は何になるのでしょうか。
図4は日経平均株価と、予想PER10倍相当ライン、同12倍相当ライン、同14倍相当ラインを示しています。日経平均株価の予想PERは10/11(金)現在で12.44倍ですが、実は同PERは過去1年10.71倍〜13.16倍のレンジで推移しており、その変動は比較的小さくなっています。また、日経平均株価の予想PERは長期的に低下傾向にあります。図4の予想PER10倍相当ライン、同12倍相当ライン、同14倍相当ライン自体が横バイになっており、企業業績が伸び悩んでいることが、PER低下の背景であるとみられます。
米中通商協議で部分合意が成立したとはいえ、企業業績の底入れを見通すのは時期尚早と言えそうで、市場心理を示す予想PERが大きく上昇していくシナリオは望み薄かもしれません。日経平均株価が当面の高値を付けた昨年10/2の予想PERは13.95倍でしたが、現状でそこまで上昇することは難しそうです。
ただ、日経平均株価の予想EPS(1株利益)が決算発表を経て、現状の1,752円から大きく下がらなければ、米中通商協議や、消費税引き上げ等、企業業績が悪材料をおおむね織り込んだ形となり、予想PER13.16倍(過去1年の高値水準)程度までの回復は可能であると予想されます。その場合、
1,752円×13.16倍=23,056円
と計算されます。日経平均株価は決算発表を経て、23,000円近辺まで戻る可能性はありそうです。ちなみに、日経平均株価への寄与度がもっとも大きいファーストリテイリング(9983)の本決算発表が10/10(木)に終わり、予想EPSが大きく下がらなかったことも好材料のひとつと考えられます。
図4 日経平均株価と予想PER
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。