日本経済は正念場を迎えています。10/1(火)に発表された日銀短観(9月調査)では、大企業・製造業の業況判断が前回(6月調査)から2ポイント悪化し、+5となりました。非製造業も悪化が続いています。企業の経常利益は今年度、全規模・全産業で前年比6.7%減少する見通しです。基本的に景気・企業業績のベクトルは下向きとなっています。景気動向指数によって決まる国内景気の基調判断は4ヵ月ぶりに「悪化」となりました。
それでも、株価は底打ち・反転に向かう可能性がありそうです。なぜでしょうか。
日経平均株価は9月、前月末比1,051円47銭(5.1%)高となりました。しかし、10月は第1週に468円70銭(2.1%)安となるなど、売りが先行する展開になっています。米国経済に減速する兆しが強まっているためと考えられます。9/30(月)〜10/8(火)における日次の動きは以下の通りです。
9/30(月)123円06銭安・・・米政府が中国への投資を制限と報道されました。マイクロン等半導体株安も響きました。
10/1(火)129円40銭高・・・中国への投資制限報道が一部否定されたことや、日銀短観の上振れが追い風になりました。
10/2(水)106円63銭安・・・NYダウ大幅下落(10/1 343ドル安)を嫌気しましたが、円高一服で下げ渋りました。
10/3(木)436円87銭安・・・NYダウ大幅続落(10/2 494ドル安)に加え、円高加速もあり、大幅続落となりました。
10/4(金)68円46銭高・・・利下げ期待でNYダウが3営業日ぶりに反発したことを好感しました。
10/7(月)34円95銭安・・・米中通商協議に関し中国の消極的な姿勢が伝わりました。
10/8(火)200円00銭高・・・米10年国債利回りが8営業日ぶりに上昇し、円高が一服したことが好感されました。
東証1部の売買代金は9/10(火)〜9/30(月)は13営業日連続で2兆円以上となり、顕著な回復をみせました。しかしその後は再び減少気味となり、特に10/7(月)には1兆5,252億円と9/3(火)以来の低水準まで減少しました。米中閣僚級通商協議の開催を10/10(木)に控え、様子見気分が強まっているようです。米トランプ大統領に対する弾劾の動きが台頭していることも、微妙に影響しているかもしれません。
NYダウ(図2)はISM製造業景況指数の下振れを受け、10/1(火)に343ドル安、ADP雇用統計の悪化を受け、10/2(水)に494ドル安となりました。10/3(木)もISM非製造業景況指数の下振れを嫌気して売り先行となりましたが、利下げ期待の高まりを受けて122ドル高と反発に転じました。10/4(金)に発表された雇用統計(9月)は雇用者数の過去分が上方修正された上、失業率が50年ぶりの低水準となるなど、ほどほどに強い内容でしたがインフレ懸念の増幅にはつながらず、NYダウは372ドル高と大幅続伸しました。
このように、NYダウだけ見ていると方向感に欠く展開でしたが、米10年国債利回りは、9/13(金)以降は明確な低下基調となり、特に9/26(木)〜10/4(金)は7営業日連続で低下しました。これを受けてドル・円相場(図3)では円高基調となり、日本株にとって逆風になりました。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/10/8現在。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/10/7現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/10/8取引時間中。
3月決算企業等に先立ち、2月決算企業の中間決算、8月決算企業の本決算等について、発表が本格化しつつあります。ある意味で、決算発表シーズンはすでに始まっていると考えられます。
10/4(金)は35社の上場企業が決算発表をしました。発表予定社数でみると、10/9(水)40社、10/10(木)66社、10/11(金)115社、10/15(火)57社となっており、この時期が2月決算企業の中間決算、8月決算企業の本決算について、発表が佳境になると言えそうです。その後は徐々に、発表の主役が3月決算企業に移っていくはこびとなっています。
2020年2月を本決算とする企業にとって、下半期(2019年9月〜2020年2月)は駆け込み需要と、その後の反動減を織り込む期間になります。この時期の業績予想は難しいでしょうが、それにより一旦は「消費税引き上げ」というイベントを業績に織り込むことになります。
表1 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
10/8(火) | 日本 | 8月家計調査/毎月勤労統計 | |
日本 | 9月景気ウォッチャー調査 | いわゆる街角景気の現状 | |
日本 | ★決算発表(15社)〜小売・外食等、2月・8月決算企業の発表本格化 | Jフロント他 | |
米国 | ノーベル物理学賞発表 | ||
10/9(水) | 日本 | ★決算発表(40社) | ローソン、ABCマート、サイゼリヤ、ファミリーマート、イオン他 |
日本 | 9月工作機械受注 | 6割を占める外需は8月、前年同月比35%減 | |
- | ノーベル化学賞 | ||
米国 | FOMC(9/18発表)議事要旨 | 0.25%利下げ時のFOMCの空気は? | |
10/10(木) | 日本 | 8月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
日本 | 9月都心オフィス空室率 | ||
日本 | ★決算発表(66社) | ビックカメラ、7&i、安川電機、良品開発他 | |
- | 米中閣僚級通商協議(予定〜11) | ||
北朝鮮 | 朝鮮労働党創建記念日 | ||
- | ノーベル文学賞発表 | ||
米国 | 9月消費者物価 | 市場コンセンサス(コア・前年同月比)は2.4%増 | |
10/11(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(115社) | 東宝、高島屋他 | |
- | ノーベル平和賞 | ||
10/14(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(体育の日) | |
中国 | 9月貿易収支 | 市場コンセンサス(前年同月比)は輸出-3.3%、輸入-6.0% | |
- | ノーベル経済学賞 | ||
10/15(火) | 日本 | ★決算発表(57社) | |
中国 | 9月消費者物価指数 | 市場コンセンサス(前年同月比)は2.9% | |
ドイツ | 10月ZEW景況感指数 | 約350人のアナリストや市場関係者に景況感をアンケート | |
米国 | 対中関税第1〜第3弾引き上げ | 25%から30%へ | |
米国 | ☆決算発表〜米国上場企業の7〜9月期決算発表が本格化 | シティG、GS、J&J、JPM、ネットフリックス他 | |
10/16(水) | 日本 | 9月訪日外客数 | 8月は前年同月比2.2%減 |
米国 | 9月小売売上高 | 米個人消費の勢いは? | |
米国 | 10月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | バンカメ、IBM、ネットフリックス他 | |
10/17(木) | 日本 | 9月首都圏新築マンション販売 | |
欧州 | EU首脳会議 | ||
米国 | 9月住宅着工件数 | ||
米国 | 10月フィラデルフィア連銀製造業景況異数 | 米国企業のマインドは? | |
米国 | 9月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
10/18(金) | 日本 | 9月消費者物価 | |
中国 | 9月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.5%増 | |
中国 | 9月鉱業生産 | 市場コンセンサス(前年同月比)は4.9%増 | |
中国 | 9月小売売上高 | 市場コンセンサス(前年同月比)は7.8%増 | |
中国 | 7〜9月期GDP | 市場コンセンサス(前年同月比)は6.1%増 | |
米国 | ☆決算発表 | アメックス、コカ・コーラ他 |
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日本経済は正念場を迎えています。10/1(火)に発表された日銀短観(9月調査)では、大企業・製造業の業況判断が前回(6月調査)から2ポイント悪化し、+5となりました。非製造業も悪化が続いています。企業の経常利益は今年度、全規模・全産業で前年比6.7%減少する見通しです。基本的に景気・企業業績のベクトルは下向きとなっています。景気動向指数によって決まる国内景気の基調判断は4ヵ月ぶりに「悪化」となりました。
10月からは消費税の引き上げが実施されました。引き上げ直前には駆け込み需要の増加も観測され、今後は反動減の影響が懸念されます。働き方改革の影響が本格的に出てくるとみられることや、2020年の東京五輪に向けて盛り上がってきた需要のピークアウト等を考えると、景気・企業業績に関し、明るい数字は期待できないように思われます。
しかし、肌感覚的に厳しい時に、経済指標が示す底入れの兆しが、株価回復の兆しであったりもします。景気・企業業績がまだまだ悪いと思われる時に株価は底を付ける傾向にあるものです。
図4は工作機械受注と日経平均株価の関係を示したものです。工作機械受注は景気先行指数的な動きをすることで知られ、やはり景気に先行して動くことが多い株価と相関性が強いと言われています。このグラフからもおわかりいただける通り、工作機械受注が底入れすると、株価は上昇する傾向があるようです。
この工作機械受注について、9月の分が10/9(水)に発表される予定です。同受注額(前年同月比)は6月37.9%減、7月33.0%減、8月37.0%減と推移してきました。これに対して、9月の数字でマイナス幅の減少傾向が出てくれば、日本株全体にとっても、底入れ・反転の材料になる可能性がありそうです。ちなみに、10/10(木)には安川電機(6506)の2019年6〜8月期決算が発表されますが、営業利益の市場コンセンサス104億円に対し、どのような実績になるのか、中国向け受注動向の好不調等についても、注目されるところです。
5G商戦本格化に向けた動き等を勘案すると、そろそろ工作機械受注が底打ちしても不思議ではないと考えられます。
図4 工作機械受注が底入れすると日経平均株価は上昇する傾向
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。