日経平均株価は9月第3週、週足ベースでは3週連続の上昇となりましたが、上昇ピッチは減速しました。中東の地政学的リスクの高まりや、過度な米金融緩和期待の後退、米中通商協議が早期に合意するとの期待の後退等が影響しました。
今後はどうなるのでしょうか。一般的に日本株のパフォーマンスは、米国の長期金利が上昇する局面では向上しやすいと考えられます。仮に、米国の長期金利がボトムアウトし、今後上昇に転じるとすれば、日本株にも追い風になると考えられます。
日経平均株価は9月に入り、第1週(9/2〜9/6)は前週比495円20銭(2.4%)高、第2週(9/9〜9/13)は同788円72銭(3.7%)高、第3週(9/17〜9/20)は同90円80銭(0.4%)高と3週間続伸となりました。米中通商協議での合意成立に向けた前向きな報道が目立つ中、米国株の上昇や円安・ドル高等がプラス材料になりました。
ただ、第3週は上昇を維持したものの、上昇ピッチは減速しました。中東の地政学的リスクの高まりや、過度な米金融緩和期待の後退、米中通商協議が早期に合意するとの期待の後退等が影響しました。ちなみに、9/17(火)〜9/24(火)における日次の動きは以下の通りです。
9/17(火)13円03銭高・・・休み中のNYダウは2日で105ドル下落しましたが円安が下支え要因になりました。10日続伸です。
9/18(水)40円61銭安・・・FOMCを控え、全体的には様子見気分が支配的でしたが、任天堂が年初来高値を更新しました。
9/19(木)83円74銭高・・・FOMCの通過を好感し一時大幅高も、日銀会合後に円高が進んだため、伸び悩みました。
9/20(金)34円64銭高・・一時160円高も3連休を控え、後半は利益確定売りが優勢になりました。
9/24(火)19円75銭高・・・9月末の権利・配当取りや、配当の再投資に絡んだ買い需要の増加が指摘されました。
東証1部の売買代金は8/14(水)〜8/29(木)に12営業日連続で2兆円割れとなり、さらに9/2(月)には約1.33兆円と5年4ヵ月ぶりの低水準を記録しました。しかし9/10(火)〜9/24(火)は9営業日連続で2兆円以上となり、売買代金の回復は顕著になっています。
なお、NYダウ(図2)は9月第3週、週足ベースで小幅反落となり、米長期金利は再び低下し、外為市場では若干円高方向に揺り戻す展開になりました。サウジアラビアの石油施設に対する爆撃事件はその後、さらに深刻化する事態は避けられましたが、米中通商協議は合意まで時間がかかりそうな気配が強まっており、全般的に外部環境面で好材料は目立ちませんでした。
もっとも、こうした投資環境にもかかわらず、上昇を維持した日経平均株価はむしろ、世界の主要指標の中で底堅さが目立った存在と言えるかもしれません。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/9/24現在。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/9/23現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/9/24取引時間中。
いよいよ年度ベースでは「上半期」が大詰めとなっております。多くの企業で9月末に配当や株主優待の権利が確定することになります。このうち、株主優待については431社の企業で権利確定となる見込みです。
9月に権利が確定する企業の権利付最終日は原則、9/26(木)の予定になっています。9/27(金)は権利落ち日であり、この日以降に買い付けても配当や株主優待の権利を確保することはできませんのでご注意ください。
なお、権利付最終日に向けて、権利・配当取りの動きが強まりやすく、その分、需給は締まりやすいと考えられます。逆に権利落ち日以降は、需給が緩み下がりやすくなる銘柄も増えてくると考えられます。さらに、年金マネー等による配当資金の再投資の動きも想定され、注意が必要です。
表1 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
9/23(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(秋分の日) | |
9/24(火) | ドイツ | 9月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート |
米国 | 9月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | 米国家計の消費マインドをチェック | |
9/25(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(7/30発表分)議事要旨 | |
米国 | 9月新築住宅販売 | 市場コンセサスは前月比3.3%増 | |
日本/米国 | 日米首脳会談の予定 | 通商協議が合意の可能性(為替条項・関税は?) | |
9/26(木) | 日本 | 9月末配当・株主優待等権利確定銘柄の権利付最終日 | |
9/27(金) | 日本 | 9月東京都区部消費者物価 | |
中国 | 8月工業利益 | 中国の企業業績の方向感を探る | |
米国 | 8月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
9/29(日) | 英国 | 英国保守党大会(〜10/2) | 英国Brexitの行方は? |
9/30(月) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(9/19発表分)おもな意見 | |
日本 | 8月鉱工業生産 | ||
中国 | 9月製造業PMI | 中国経済のトレンドに影響 | |
10/1(火) | 日本 | 8月失業率・有効求人倍率 | |
日本 | 消費税率引き上げ(8%→10%) | 国内景気への影響はどの程度か。 | |
日本 | 9月調査日銀短観 | 市場コンセンサス(大企業製造業・業況判断指数)は+2(前回は+7) | |
中国 | 建国70周年記念式典 | 習主席が演説 | |
中国 | 国慶節の休日(〜7日) | ||
米国 | 9月ISM製造業景況指数 | 米製造増業のマインドをチェック。 | |
10/2(水) | 米国 | 9月ADP雇用統計 | |
米国 | ★決算発表 | レナー | |
10/3(木) | 米国 | 9月ISM非製造業景況指数 | |
10/4(金) | 日本 | 臨時国家/証券投資の日 | |
米国 | 米9月雇用統計 | 市場コンセンサスは非農業部門雇用者数+14万人 |
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日経平均株価の今後はどうなるのでしょうか。一般的に日本株のパフォーマンスは、米国の長期金利(10年国債利回り)が上昇する局面では向上しやすいと考えられます。仮に、米国の長期金利がボトムアウトし、今後上昇に転じるとすれば、日本株にも追い風になると考えられます。
米国の10年国債利回りが上昇する局面は通常、外為市場で円安・ドル高が進みやすくなります。事実、9/3(火)に1.459%まで下げていた米10年国債利回りが9/13(金)には1.899%まで回復し、その間、外為市場(図3)では円安・ドル高が進み、それが日本株への追い風になりました。今後もこの動きが中長期的に進めば、日本株の上昇も期待しやすくなると考えられます。
図4は2011年以降の米長期金利と日経平均株価の動きを重ねて示したものです。やや、大雑把な見方ではありますが、米10年国債利回りが1.3%〜1.4%台まで下がり大底を打つと、その後は当面回復傾向になることが多いようです。そして、赤矢印で示した米長期金利上昇局面では総じて、日本株も堅調に推移していることがわかります。
エコノミストの予想では、2020年以降の米実質成長率は1.7〜1.8%程度で、インフレ率(コアPCE)は2.0%前後、名目成長率は3.7〜3.8%程度と考えられます。それに対し、長期金利が1.4%台(9/3)というのはいかにも低過ぎましたし、現状でも低いと言えるかもしれません。少なくとも9月上旬までの米長期金利の水準は異常に低すぎたと言えるかもしれません。
一部の新興国で100年国債を発行し、それに投資する投資家がいることに象徴されているように、債券相場はバブルであった可能性があり、バブルが崩壊し、世界的に長期金利は長期的にはボトムを打って回復に転じても不思議ではないように思われます。少なくとも、米国経済の内需は堅調で、同国の利下げは意外にも、最終局面に接近している可能性があります。
金利先物市場からみた米政策金利の水準やFOMCメンバーの金利予想を参考にする限り、米国の利下げ局面は長期化せず、同国の長期金利は反転・上昇トレンドに入っているかもしれません。日本株の意外な底堅さはそのことを暗示しているのではないでしょうか。
図4 米長期金利が反転・上昇なら日本株にも追い風か
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。