日経平均株価が堅調です。4/12(金)には年初来高値を更新し、4/15(月)には12/4(火)以来4ヵ月ぶりに22,000円を回復しました。米国や中国で景気・企業業績に対する懸念が後退し、海外株式市場が堅調に推移していることが要因と考えられます。国内では、心配されていた小売企業を中心とする決算発表が波乱につながらなかったことで、安心感が強まっています。
今後はどうなるのでしょうか。株式市場では史上初めての10連休を控え、ポジション調整から波乱を警戒する向きも多いようです。さらに、連休後の5月は「セル・イン・メイ」(5月に株を売れ)という相場格言もあるように、株式の売りタイミングになりやすいという考え方もあります。それらの言葉が示唆するように、今後5月に向けては波乱相場になるのでしょうか。
日経平均株価は4月、第1週(4/1〜4/5)に前週比601円69銭(2.8%)高と順調なスタートを切った後、第2週(4/8〜4/12)も同63円06銭(0.3%)高と堅調を持続しました。米国や中国で景気・企業業績に対する懸念が後退し、海外株式市場が堅調に推移していることが要因と考えられます。国内では、心配されていた小売企業を中心とする決算発表が波乱につながらなかったことで、安心感が強まりました。足元の日次の動きは以下の通りです。
- 4/8(月)45円85銭安・・・強い雇用統計を背景とする米株高(4/5)で買い先行も、200日移動平均線手前で跳ね返されました。
- 4/9(火)40円94銭高・・・全体的には冴えない動きでしたが、サード・ポイントの買いが観測されたソニーが急騰しました。
- 4/10(水)115円02銭安・・・欧米通商摩擦が懸念され米国株が下げました。東証1部売買代金は4日連続2兆円割れです。
- 4/11(木)23円81銭高・・・様子見気分強く、日中値幅が3/7(木)以来の狭さでした。
- 4/12(金)159円18銭高・・・日経平均高寄与度銘柄のファーストリテイやソフトバンクGの上昇が貢献し、年初来高値更新です。
- 4/15(月)298円55銭高・・・前週末(4/12)の米国株が大幅に上昇。高寄与度銘柄も堅調でした。
- 4/16(火)52円55銭高・・・米国株反落の影響で全体的にはマチマチでしたが、高寄与度銘柄の好調が続きました。
日経平均株価はこれまで、取引時間中ベースでは3/4(月)の高値21,860円86銭、終値ベースでは同日の21,822円04銭が年初来高値でした。前者については4/8(月)にすでに更新されていましたが、終値ベースではようやく4/12(金)に更新することができました。さらに4/15(月)も大幅続伸となり、12/4(火)以来の22,000円回復となりました。
こうした動きの背景には日経平均高寄与度銘柄の活躍があげられます。4/9(火)にはソニー(6758)が「もの言う株主」として有名な米サード・ポイントの買いが観測され大場高になりました。米配車サービス最大手ウーバーの新規上場をめぐり、ソフトバンクG(9984)は4/10(水)、4/12(金)、4/15(月)に大幅高になりました。4/11(木)決算発表を経て「最悪期脱出」との見方が強まったファーストリテイ(9983)は4/15(月)まで7営業日続伸となりました。
このように、日経平均株価を通してみた東京株式市場は総じて順調でしたが、TOPIX(東証株価指数)ベースでは冴えない展開となりました。4月第1週こそ2.1%上昇しましたが、第2週は1.3%の反落に転じてしまいました。第2週の東証1部の値下がり銘柄数が全体に占める比率は1日平均で62.9%に達し、この週の同市場の売買代金は1日当たり2.02兆円にとどまりました。 これを受け、NT倍率(日経平均/TOPIX)の上昇基調も継続中となっています。
なお、米経済指標が総じて強いことから、同国の10年国債利回りは3/27(水)の2.373%をボトムに、4/12(金)には2.562%まで金利上昇となっています。これを受け、3月下旬には1ドル109円台後半まで円高・ドル安が進んでいましたが、4/12(金)には同112円を少し超える水準まで円安・ドル高が進みました。4/10(水)のEU首脳会議を経て、英国のEU離脱期限が10月末に再延期されたことも、円安・ドル高に効いた可能性があります。こうした円安・ドル高の流れも日経平均株価の上昇を支える要因になりました。
図1 3/4(月)の年初来高値を更新してきた日経平均
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/4/16現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/4/15現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/4/16取引時間中
当面は佳境を迎える米国企業の決算発表が注目され、4/16(火)のネットフリックスを皮切りに、主力のIT企業でも発表が本格化してきます。4/24(水)にはフェイスブック、4/25(木)にインテル、4/29(月)にアルファベット(グーグルの持株会社)、4/30(火)にアップルが発表の予定となっています。
日本の上場企業の決算発表については、4/23(火)の日本電産(6594)あたりから本格化し、4/25(木)には120社、4/26(金)には275社が発表の予定で、ここが10連休前のヤマ場になります。10連休(4/27〜5/6)後は連日多くの企業が決算発表予定で、発表社数ベースでは5/10(金)671社、5/13(月)367社、5/14(火)550社、5/15(水)473社と連日、目の離せない状態が続きます。なお、トヨタ(7203)は5/8(水)、ソフトバンクグループ(9984)は5/9(木)に発表の予定です。
表1 日米で決算発表シーズンがスタート
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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4/16(火) |
ドイツ |
4月ZEW景況感指数 |
350人のアナリスト、市場関係者に景況感をアンケート |
米国 |
3月鉱工業生産・設備稼働率 |
市場コンセンサス(前月比)は0.3%増 |
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米国 |
4月NAHB住宅市場指数 |
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米国 |
☆決算発表 |
バンカメ、IBM、J&J、ネットフリックス |
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4/17(水) |
日本 |
3月貿易統計 |
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中国 |
3月都市部固定資産投資 |
市場コンセンサス(年初来・前年同月比)は6.3%増 |
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中国 |
3月鉱工業生産 |
市場コンセンサス(同・前年同月比)は5.6%増 |
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中国 |
3月小売売上高 |
市場コンセンサス(同・前年同月比)は8.3%増 |
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中国 |
1〜.3月期GDP |
市場コンセンサス(前年同月比)は6.3%増 |
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- |
OPEC臨時総会(ウィーン) |
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米国 |
☆決算発表 |
モルガン・スタンレー |
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4/18(木) |
米国 |
3月小売売上高 |
市場コンセンサス(前月比)は0.5%増 |
米国 |
4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
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米国 |
☆決算発表 |
アメックス他 |
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4/19(金) |
日本 |
3月消費者物価指数 |
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米国 |
3月住宅着工件数 |
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米国 |
株式市場は休場(イースター) |
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4/22(月) |
日本 |
安倍首相が欧米歴訪(〜4/29) |
米国、カナダ、フランス、イタリア、スロバキア、ベルギー |
米国 |
3月中古住宅販売件数 |
市場コンセンサス(前月比)は-4.3% |
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米国 |
☆決算発表 |
コカ・コーラ、ツイッター、テキサス・インスツルメント、P&G他 |
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4/23(火) |
日本 |
★決算発表(17社) |
日本電産他 |
米国 |
2月FHFA住宅価格指数 |
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米国 |
3月新築住宅販売件数 |
市場コンセンサス(前月比)は-2.6% |
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米国 |
☆決算発表 |
ハリバートン |
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4/24(水) |
日本 |
★決算発表(42社) |
エムスリー、花王、ファナック、キヤノン、キーエンス他 |
ドイツ |
Ifo景況感指数 |
約7千社のドイツ企業にアンケート調査 |
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米国 |
☆決算発表 |
ボーイング、キャタピラー、フェイスブック |
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4/25(木) |
日本 |
日銀金融政策決定会合結果発表/黒田総裁記者会見 |
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日本 |
★決算発表(120社) |
ヤフー、任天堂、野村、JR東他 |
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米国 |
☆決算発表 |
フォード、インテル |
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4/26(金) |
日本 |
3月失業率・有効求人倍率 |
前回は失業率2.3%、有効求人倍率1.63倍 |
日本 |
★決算発表(275社) |
信越化、コーセイ、コマツ、NEC、ソニー、村田製、東エレク他 |
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米国 |
1〜.3月期GDP |
市場コンセンサス(前期比・年率)は+1.6% |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
今後の日経平均株価はどうなるのでしょうか。株式市場では史上初めての10連休を控え、ポジション調整から波乱を警戒する向きも多いようです。さらに、連休後の5月は「セル・イン・メイ」(5月に株を売れ)という相場格言もあるように、株式の売りタイミングになりやすいという考え方もあります。それらの言葉が示唆するように、今後5月にかけては波乱相場になるのでしょうか。
図4は日経平均株価の月次騰落率について、過去20年間の平均をみたものです。11月や12月は上昇しやすい傾向がある反面、1月や5月、8月は下がりやすいという傾向があるようです。ちなみに、5月の後は6月にリバウンドした後、7〜10月は冴えない傾向にあります。特に、外国人投資家が長期の休暇を取る夏休みの頃は閑散相場になるケースがあります。その意味では、5月頃に株を売っておく方が良いとの考え方もあります。
さらに2019年は、改元に絡んで史上初の10連休もあり、その間に米国で決算発表や雇用統計の発表等、重要日程も少なくありません。連休前にポジションを軽くしたり、リスクヘッジの役割をできる投資を検討したりすることは必要だと考えられます。
5月相場の次に来る6月相場ですが、英国がEU離脱を国民投票で決めた2016年6月こそ大きく下げましたが、2017年と2018年はプラスでした。要は、外部環境の変化に左右される部分も大きいと考えられます。仮に、米中通商協議での合意等、前向きな材料が出てくれば株価の上昇が加速する可能性が出てきそうです。
なお、この時期は3月決算企業の「本決算」が発表され、予想EPS(一株利益)の決算期の対象が次の期に移ります。多くの場合、予想EPSが増え、株価にも上昇圧力がかかります。反面、決算発表で強弱が対立することもあります。決算発表開始直前の4/20〜5/15(※)の期間について、過去10年間の平均騰落率は約+1%となっています。過去10年で波乱となったのは、この時期に11.7%下げた2011年で、やはり東日本大震災後であったという特殊要因があると考えられます。決算発表時期、株価が特に下がるというアノマリーはないようです。
- ※4/20が休日の場合は直前営業日、5/15が休日の場合は直後の営業日を計算に用いています。
図4 日経平均株価の平均月次騰落率(過去20年)
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。各月の騰落率の過去20年間の単純平均を示したもの