政府は4/1(月)、新元号「令和」を発表しました。この日の株式市場は「ご祝儀ムード」もあり、「大幅続伸」で取引を終了しました。4/2(火)も買い先行となり、日経平均株価は一時、3/4(月)に付けた年初来高値である21,822円04銭まであと一歩の水準まで上昇しました。
しかし、買い一巡後は伸び悩む展開になっています。3月以降はこの年初来高値を上限、21,000円を少し割った水準を下限とするボックス相場を形成しているようにも見え、日経平均株価にその上限を上放れる勢いがあるかと問われれば、微妙なところです。新元号発表とともに、平成最後の月となる4月相場がスタートした訳ですが、「令和時代」への橋渡しとなるすばらしい月(令月)になるのでしょうか。
3月末の日経平均株価は前月末比179円35銭(0.8%)安と「小動き」で終りました。米国と中国との間に関係を悪化させる新たな悪材料が出ることはなく、通商問題での妥協成立へ期待が持続しました。FOMC(米連邦公開市場委員会:3/19〜3/20)ではFRB(米連邦準備制度理事会)のハト派的なスタンス(利上げの停止など)も確認されました。しかし、米国や中国をはじめ世界経済への不透明感は強く、米国では長期金利が低下し、短期金利よりも低くなる逆転現象(逆イールド)が発生しました。これらを背景に、3月の米国株は若干の上昇となりましたが、外為市場では若干の円高が進行しました。
なお、足元の3月第4週(3/25〜3/29)末、日経平均株価は前週末比421円53銭(1.9%)の下落となりました。前週末の米国株が急落したことを嫌気し、3/25(月)の日経平均株価が本年最大の下げとなったことが響きました。これを含め、3月第4週以降の日次の動きは以下のようになりました。
- 3/25(月)650円23銭安・・・製造業PMIの下振れ、長短金利逆イールド等を嫌気し、NYダウ(3/22)が460ドル安。
- 3/26(火)451円28銭高・・・3月決算銘柄の権利付最終日。配当・権利取りの動きも。
- 3/27(水)49円66銭安・・・原油高受け米国株が上昇した流れが下支え。日経平均配当落ち影響額は推定で約171円。
- 3/28(木)344円97銭安・・・米国の長短金利逆イールドの拡大を警戒。
- 3/29(金)172円05銭高・・・米中通商協議の前進を期待。ただし、月末・期末で薄商い。
- 4/1(月)303円22銭高・・・米財務長官が米中協議進展を示唆し、NYダウ(3/29)が上昇。新元号で祝賀ムードも。
- 4/2(火)3円72銭安・・・米国株高を受け買い先行となりましたが、21,774円64銭を高値に利益確定売り優勢となりました。
なお、3月末の日経平均株価終値は前年同月末比で249円49銭(1.2%)の下落となりました。前年度が13.5%上昇したことを考えると、年度単位では急ブレーキがかかった形です。ただ、前年度の大幅上昇を考えると健全なスピード調整と表現できるかもしれません。なお、3月末まで1年間のTOPIX(東証株価指数)の下落率は7.3%で、そちらでみるとそこそこの下げになった格好です。同じ期間に銀行株指数が18%下げたこと等が響きました。
図1 「ボックス相場」を展開する日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/4/2現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/4/1現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/4/2現在
4/1(月)に発表された日銀短観(3月調査)では、大企業製造業の業況判断指数が+12となりました。前回(+19)から7ポイントも低下したことに加え、事前予想の+13も下回りました。また、3ヵ月後の見通しについても+8にとどまり、事前予想の+12を大きく下回りました。決算発表では、企業の業績見通しが厳しいものになりそうです。
なお、小売業については大企業の業況判断指数が前回の+3から+2へと若干の低下にとどまりました。先行きについては+8への若干の回復を見込んでいるようです。今年は10月に消費税増税が予定されており、小売業が年間計画をどう立案してくるのかは、景況感を読むうえで大きなヒントとなりそうです。
4月第1週は、7&iはじめ、2月・8月決算銘柄を中心に、小売業大手の決算発表が相次ぎます。そこで、各社がどのような業績予想を示してくるのか、大いに注目される可能性がありそうです。また、4/11(木)には安川電機(6506)の決算発表が予定されていますが、特にその業績見通しは設備投資関連銘柄の「先行指標」になりそうです。
表1 マクロからミクロへ
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
4/1(月) | 日本 | 日銀短観(3月調査) | 大企業・製造業の業況判断指数の市場コンセンサスは+13 |
日本 | 政府が新元号を公表 | ||
日本 | 働き方改革法施行 | ||
米国 | 2月小売売上高 | 市場コンセンサス(自動車・ガソリンを除く、前月比)は0.3%増 | |
米国 | 3月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは58.0 | |
4/2(火) | 米国 | 2月耐久財受注 | 市場コンセンサス(輸を除く、前月比)は0.3%増 |
4/3(水) | 米国 | 3月ADP雇用統計 | 市場コンセンサス(増加雇用者数)は16万人 |
米国 | ISM非製造業景況指数 | 雇用や新規受注など、個別指標にも注目 | |
4/4(木) | 日本 | ★決算発表 | 7&i他 |
4/5(金) | 米国 | 3月非農業部門雇用者数 | 市場コンセンサス(増加雇用者数)は17.5万人 |
米国 | 3月失業率 | 市場コンセンサスは3.8% | |
米国 | 3月平均時給 | 市場コンセンサス(前年同月比)は+3.4% | |
4/7(日) | 日本 | 統一地方選(前半)投開票 | |
4/8(月) | 日本 | 3月景気ウォッチャー調査 | いわゆる街角景気調査 |
日本 | ★決算発表 | 高島屋 ニトリHD他 | |
4/9(火) | 日本 | ★決算発表 | Jフロント他 |
4/10(水) | 日本 | 2月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
日本 | ★決算発表 | 良品計画、ユニーファミマ、イオン | |
日本 | 総務省が「5G」実施に向け大手携帯電事業者に電波割り当て | ||
欧州 | ECB定例理事会 | ||
4/11(木) | 日本 | 3月都心オフィス空室率 | |
日本 | ★決算発表 | ローソン、ビックカメラ、安川電機、ファーストリテイリング | |
中国 | 3月消費者物価 | ||
北朝鮮 | 最高人民会議 | ||
- | G20財務相・中銀総裁会合 | ||
4/12(金) | 日本 | オプションSQ | |
中国 | 3月貿易統計 | 輸出・輸入の増減にも注意 | |
英国 | 英国議会がEU離脱案を承認しない場合の離脱期限 | ||
米国 | ☆決算発表 | JPモルガン・チェース |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
4/1(月)に政府から新元号が「令和」になると発表されました。「心を寄せ合い文化が育つ時代」を願っているとされます。「令」は命令の「令」でもあり、上から指示されるような意味もありますが、「良い」や「立派な」という意味もあるようです。「和」が強調され「非常に平和な」時代が望まれているといえそうです。
ちなみに「和」は昭和に続いての登場であり、そこに意味を見出す人も多いかもしれません。逆に言えば、「和」は今まさに失われようとしているように見えます。第2次世界大戦後は曲がりなりにも「国際協調」という「和」が尊ばれましたが、現代では多くの国がこれをはじめから投げ捨て、自国第1主義を唱えています。ソニーのような世界的な企業が存立する前提条件も「和」ですが、株式市場も「和」の存在が前提になっています。元号として繰り返しての登場であるということは、それだけ重視されているということなのかもしれません。
図4の一目均衡表からも明らかな通り、日経平均株価は「要注意日」を何とか無事通過しました。あとは、10連休や決算発表が重なる4月下旬から5月下旬をどう無事通過するかにかかっています。その直前ではポジション調整が進行し、株価が想定以上に下げる可能性もあります。その意味では非常に注意を要する季節になりますが、逆に言えば2019年最大の買い場になるかもしれません。
米中対立は覇権争いであり、最終的な解決は難しいと思われますが、当面の妥協が現実に成立し、関税の負担が低下すれば、株価は反発に向かう可能性があります。4月相場が「買い場」という意味であれば「令月」(すばらしい月)になる可能性はありそうです。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表〜「要注意日」を通過
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/4/2現在