2018年12月の日経平均株価は終値で20,014円77銭となりました。月間では幅にして2,336円29銭、率にして10.5%の下落になりました。月次の下落率としては2010年5月以来の大きさになります。また、年間騰落率はマイナス12.1%となり、2011年(マイナス17.3%)以来の下落となりました。
2019年はどうなるのでしょうか。大発会の波乱の後はリバウンド傾向となっていますが、企業業績のさらなる上積みを期待しにくい現状では「最悪シナリオ」への考慮も必要になりそうです。年間の想定パターンとしては、4月末および10月直前が安値を付けやすく、年末にかけて回復する形が想定されそうです。
12月第4週(12/25〜12/28)、日経平均株価(図1)の終値は20,014円77銭となり、前週末比151円42銭(0.8%)の下落となりました。第1週の3.0%、第2週1.4%、第3週5.7%に続く下落となり、12月は4つの週すべてが下落となりました。なお、月間では幅にして2,336円29銭、率にして10.5%の下落になりました。月次の下落率としては2010年5月以来の大きさになります。また、年間騰落率はマイナス12.1%となり、2011年(マイナス17.3%)以来の下落となりました。
12月各週の動きを改めて、大まかに振り返ると以下のようになります。米中覇権争いの影響が我が国の企業マインドに大きな影響を及ぼし始めました。
第1週(3.0%下落)・・・米中「新冷戦」が「一時休戦」となりましたが、「華為(ファーウェイ)ショック」で早くも下落に転じました。
第2週(1.4%下落)・・・11月米雇用統計での賃金上昇圧力、12月日銀短観での製造業の厳しい見通し等が警戒されました。
第3週(5.7%下落)・・・新規上場株ソフトバンク(9434)の売出価格割れや、米国政府機関の一部閉鎖が嫌気されました。
第4週(0.8%下落)・・・米政府機関閉鎖やそれによる米国株の急落を受け、12/25(火)に1,010円45銭安となり、12/26(水)には一時18,948円58銭まで下落しました。しかし、好調な個人消費を背景に米国株が反発に転じたため、その後はやや切り返す展開になりました。
なお、12/28(金)の大納会を過ぎ、1/3(木)まで、我が国は年末年始の休暇に入りました。その間、米国株式市場では4営業日の取引が行われました。NYダウはこの間、累計で452.60ドルの下落となりました。スマホの中国における販売不振等を背景に米アップル社が業績見通しを下方修正し、1/3(木)のNYダウが660.02ドル下げたことが響きました。これを受け、2019年の大発会となった1/4(金)の日経平均株価は、大納会の日の終値に比べ452円81銭安となりました。
しかし、NYダウは1/4(金)に746.94ドル高、1/7(月)に98.19ドル高と続伸に転じたため、日経平均株価も1/7(月)に前週末比477円01銭高、1/8(火)に前日比165円07銭高と続伸に転じました。1/4(金)に米国で発表された12月雇用統計は雇用者数が市場予想を上回るなど総じて強い内容でした。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は世界経済に配慮し、金融政策に対し柔軟なスタンスを取ると発言したことから、米国株式市場で「FRBはタカ派的」との見方が後退しました。1/7(月)から開始された通商問題に関する米中次官級会議に期待が高まったことも追い風になりました。
図1 一時「解散価値」割れ水準まで下落した日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/1/8取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/1/7現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/1/8取引時間中
上述したように、1/4(金)に米国で12月雇用統計が発表されました。同統計では、非農業部門雇用者数が事前の市場予想(約18万人増)を大きく上回る31.2万人増となりました。前月の17.6万人増(速報値から2.1万人上方修正後)からも、雇用者数の増加が加速しました。さらに平均時給の上昇率も市場予想(3.0%)を上回る3.2%となりました。一方、失業率は前月比0.2%悪化の3.9%に上昇しましたが、能動的に職探しを始めた人が増えたことが背景であり、懸念は不要とみられます。
一方同じ日、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、世界経済の変動に対し、現在進めているバランスシートの縮小について、柔軟な姿勢を取ることを示しました。市場では、同議長のスタンスを「タカ派的」として懸念する向きが増えていただけに、その姿勢が後退したと捉えられました。
一般的に、雇用者数や賃金の増加加速はインフレ懸念から、米FRBによる利上げ加速懸念につながるため、株式市場のマイナス要因になることが多くなっています。しかし、FRBを「タカ派的」とみる見方の後退により、雇用統計の好調に反映されている強い米国経済を素直に評価できる形となりました。
米雇用統計の発表が終ると、短期的には重要な経済指標の発表は少なくなります。しかし国内では、小売・外食を中心とする2月・8月決算の銘柄が1/10(木)から1/11(金)にかけ、四半期決算発表のピークを迎えることになります。これらは今月下旬以降に四半期決算発表シーズンを迎える3月・9月決算企業の「先行指標」になると考えられます。なお、来週以降は米国でも10〜12月決算企業の決算発表シーズンが始まります。
表1 当面の主要タイムスケジュール〜米国で決算発表(10〜12月期)がスタート
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
1/7(月) | 日本 | 天皇陛下が即位30周年 | |
1/8(火) | 日本 | 武田薬品がアイルランド製薬大手シャイヤー買収完了予定 | |
米国 | 11月貿易収支 | 市場コンセンサスでは540億ドルの赤字 | |
1/9(水) | 日本 | ★決算発表(43社) | ABCマート、良品計画他 |
米国 | FOMC議事録 | 12/19(水)発表分 | |
1/10(木) | 日本 | ★決算発表(72社) | ファーストリテイ、安川電、7&i、ユニー・ファミマ |
日本 | 日銀支店長会議で黒田総裁が挨拶 | ||
1/11(金) | 日本 | ★決算発表(142社) | |
米国 | 12月消費者物価指数 | 市場コンセンサス(コア・前年同月比)は+2.2% | |
1/14(月) | 日本 | ◎東京市場は休場 | 成人の日 |
中国 | 12月貿易収支 | 市場コンセンサスは輸出(前年同月比)2.0%増、輸入(同)3.0%増 | |
米国 | ☆決算発表 | シティ | |
1/15(火) | 日本 | 12月工作機械受注 | 11月は前年同月比17%減 |
米国 | ☆決算発表 | JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ | |
1/16(水) | 日本 | 11月コア機械受注 | 10月は前月比7.6%増 |
米国 | 12月小売売上高 | 米個人消費のトレンドを占う | |
1/17(木) | 米国 | 12月住宅着工件数 | 市場コンセンサスは前月比横ばい |
1/18(金) | 米国 | ミシガン大学消費マインド指数 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
2018年末現在、日経平均株価は20,014円77銭で、そのBPS(一株純資産)、PBR(株価純資産倍率)、予想EPS(一株利益)、予想PER(株価収益率)等の関係は以下の通りになっています。
(日経平均株価)20,014円77銭=(BPS)19,244円97銭×(PBR)1.04倍・・・・・・・・・・・・・(1)BPSの何倍買っているのか?
=(予想EPS)1,783円85銭×(予想PER)11.22倍・・・・・・(2)EPSの何倍買っているのか?
より単純化して表現すれば、企業の株式の価値は(1)で示されるように、「純資産の何倍(何年分)で買えるのか」あるいは(2)で示されるように、「純利益の何倍(何年分)で買えるのか」ということになります。この式に従えば、企業は株式の価値を高めるために、純資産や純利益を増やす努力をすることになります。
なお、同じ純資産をもつ企業でも、PBRが高ければ株価は高くなります。ここでPBRが高い分、投資家はその企業に対して「強気」であると考えることができます。同様に、同じ純利益をもつ企業でも、PERが高ければ株価は高くなります。ここでやはり、PERが高い分、投資家はその企業に対して「強気」であると考えることができます。
(株価)=(企業業績)×(投資家心理)
=(企業財務)×(投資家心理) ※ただし、上と下で「投資家心理」を示す倍率は異なります。
2019年の年末に、日経平均株価はいくらになっているのでしょうか。それを考えるためには、1年後の「企業業績」や「企業財務」、「投資家心理」についていくつかシナリオを考える必要がありそうです。
ちなみにここで「純資産」は「総資産」から「負債」を引いた文字通り「純」な資産で、簡単に表現すれば「解散価値」となります。ある企業を買収した時に、その企業の負債を肩代わりし、残った資産を売却した後に残る資産といったイメージです。「解散価値」を一株当たりの数値に直したのが、BPSです。日経平均株価のBPSは19,244円97銭ですので、株価がここを割り込む場面は少なそうです。1/7(月)の日経平均急落場面で、日中安値は19,241円でしたが、この「解散価値」が下値支持ラインになった可能性もあります。
ただ、過去10年で日経平均株価のPBRの最低は0.88倍です。現在のBPSに0.88をかけると16,935円と計算されます。投資環境が「相当に悪い場合」にはこの程度までは「覚悟」する必要が出るかもしれません。
ちなみに、1年後の予想EPSが仮に1割減益となるならば、ここで述べる「相当に悪い投資環境」と言えそうです。その場合、市場心理はさらに悪化し、予想PERが10倍程度まで下がるかもしれません。「アベノミクス相場」前夜の2012年6月に10.59倍といった数字もあります。現在の予想EPSから10%マイナスし、それに予想PER10倍をかけると15,968円という計算が成立します。
米国と中国が対立を続け、企業業績が減益になるような「最悪シナリオ」を想定するならば、日経平均株価が最悪16,000円前後まで下がる可能性も想定できそうです。ただし、そこまで企業を放置することは米国、中国とも望まないでしょう。あくまでも「最悪シナリオ」と考えるべきでしょう。
ただ、世界的には米中覇権争い、国内的には消費税引き上げを控え、1年後の企業業績について、増益は読みにくいと考えられます。それでも、現在の予想EPS1,783円85銭に対し、予想PER14倍をかけると、24,973円と計算され、やや現実味が薄く感じられます。予想PER13倍をかけた23,190円なら可能かもしれません。ただし、年間の高値形成は年末になるのではないでしょうか。改元、10連休、決算発表を控えた4月末、消費税引き上げを控えた10月直前が安値形成の場面として警戒されます。
図4 日経平均株価(月足)とPBR、予想PER
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成