日経平均株価は、9月末の24,120円04銭から10月末は21,920円46銭と下落しました。月足レベルでの下落は5ヵ月ぶりで、下落率は9.1%に達し、Brexit(英国のEU離脱)で下げた2016年6月(9.6%下落)以来の大きな下げとなりました。その後、11月に入って以降は終値ベースでみると「もみ合い」となっています。
こうした中、東京株式市場ではソフトバンクグループ(9984)、トヨタ(7203)など重要企業の決算発表が終了し、11/6(火)には米国で中間選挙が実施され、日本時間で翌日午後には大勢が判明してきます。すなわち、11/7(水)以降の東京株式市場は、質的な意味で決算発表が峠を越える上、中間選挙がメインまたはサブのシナリオになった場合、重要日程通過も重なり、戻りを試す局面となる可能性が大きそうです。
日経平均株価(図1)は、9月末の24,120円04銭から10月末は21,920円46銭と下落しました。月足レベルでの下落は5ヵ月ぶりで、下落率は9.1%に達し、Brexit(英国のEU離脱)で下げた2016年6月(9.6%下落)以来の大きな下げとなりました。
米国では月初、好調な景気・企業業績に加え、NAFTA(北米自由貿易協定)見直し交渉におけるカナダとの合意成立が好感され、NYダウは史上最高値を更新(10/3)に向け上昇基調となりました。これを追い風に日経平均株価も10/2(火)に24,270円62銭の年初来高値(終値ベース)を示現しました。これは、1991/11/13(水)の24,416円23銭以来の高値水準となります。
しかし、その後の日経平均株価は下落に転じました。10/26(金)には一時20,971円93銭と21,000円大台を割り込み、翌日には終値でも21,149円80銭の月内安値を付けました。下落率は終値ベースで最大12.9%となりました。株価下落の要因はおもに、以下の4点であると考えられます。
(1)米国で長期金利が一時3.22%まで上昇し、再びその悪影響が懸念されたこと
(2)日米で一部企業の業績に、通商摩擦の影響が表面化し始め、市場の期待を下回る企業が増えてきたこと
(3)中国経済への不透明感が強まり、中国株が総じて下落基調で推移したこと
(4)日米通商交渉で米国が日本に「為替条項」の組入れを求めてくる可能性が残っていること
ただ、信越化学(4063)やローム(6963)など、我が国の半導体関連企業などでは、逆に業績予想の上方修正を発表する所もみられ、上記の(2)にまつわる過度な業績悪化懸念はやや後退し、月末にかけてはやや値を戻す形となりました。日経平均株価は10/30(火)に307円49銭高、10/31(水)には463円17銭高と大幅続伸しました。
その後、11月に入って以降の日経平均株価は終値ベースでみると「もみ合い」となりました。すなわち、NTTドコモ(9437)が料金引き下げを表明したことで通信株が全面安となり、11/1(木)は232円81銭安となりましたが、米中貿易協議開催への期待感が高まり、11/2(金)は一転、556円01銭高と大幅に反発しました。その後、アップルの業績不透明感を背景とした米国株安(11/2)もあり、11/5(月)は344円67銭安と反落しましたが、NYダウの上昇(11/5)を受け、11/6(火)の日経平均株価は248円76銭高と上昇しました。
ただ、取引時間中の安値でみると、10/30(火)を底値に11/6(火)まで5営業日連続で上昇し、「下値切り上げ」の展開になっています。
図1 10月の日経平均株価は「Brexit」の2016年6月以来の「大幅下落」
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/11/6現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/11/5現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/11/6取引時間中
株式市場は現在まさに、重要日程を通過中で、投資家は注意深い対応を求められる時期になっています。すなわち11/2(金)に米雇用統計(10月)、11/5(月)にソフトバンクグループ(9984)の決算発表、11/6(火)にトヨタ(7203)の発表と続いています。
11/2(金)発表の米雇用統計(10月)では非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったことに加え、時間当たり賃金の伸びも前回を大きく上回るなど、労働市場がひっ迫している現状を印象付けました。さすがに、米国時間11/8(木)に結果が発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げはあまり予想されていませんが、12月のFOMCで利上げされる可能性はさらに高まったようです。これを受け、米10年国債利回りが上昇し、円安・ドル高が進む展開になっています。
また、11/5(月)の取引終了後に発表されたソフトバンクグループの決算では、2018年4〜9月期の営業利益が事前の市場予想を上回りました。内容的にはファンド利益がけん引役となりました。ただ、NTTドコモ同様、携帯料金の値下げを検討しており、決算発表後は買い先行後に下げるなど、見方が分かれる展開になっています。また、トヨタは11/6(火)の午後、取引時間中に決算を発表。前提為替レートを円安方向に見直し、予想営業利益を上方修正し、とりあえずは買い先行となっています。上場企業の決算発表な大きなヤマ場を越えてきたと言えそうです。
表1 重要日程が目白押し
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
11/6(火) | 日本 | ★決算発表(171社) | トヨタ、キリン、NTT他 |
米国 | ◎中間選挙 | 上院100議席中35議席、下院435議席を改選 | |
11/7(水) | 日本 | 9月毎月勤労統計 | |
日本 | ★決算発表(196社) | 国際帝石、JXTG、三菱地所他 | |
米国 | ☆決算発表 | クアルコム、トリップアドバイザー | |
11/8(木) | 日本 | 9月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
日本 | 10月都心オフォス空室率 | ||
日本 | ★決算発表(291社) | 大成建、楽天、資生堂、東芝、日産他 | |
中国 | 10月貿易収支 | 輸出(ドル・前年同期比)の市場コンセンサスは12.0%増 | |
米国 | ☆決算発表 | ウォルトディズニー | |
米国 | FOMC結果発表 | 日本時間では11/9(金)午前4時 | |
11/9(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(511社)〜発表社数の面では最大のヤマ場 | 東レ、りそなHD、三井不他 | |
中国 | 10月消費者物価指数 | 市場コンセンサス(前年同月比)は3.4%増 | |
米国 | 11月ミシガン大学消費者マインド指数 | ||
11/11(日) | 中国 | 独身の日 | 2017年にアリババが約2.8兆円の売上。日本企業も越境ECを狙う? |
- | 米ロ首脳会議(パリ) | 第1次世界大戦終結100年記念行事(パリ)のタイミングで開催 | |
11/12(月) | 日本 | ★決算発表(221社) | ソニーFH他 |
11/13(火) | 日本 | ★決算発表(251社) | 三菱UFJ、リクルートHD他 |
ドイツ | 11月ZEW景況感指数 | 約350人のアナリストや市場関係者に景況感をアンケート | |
11/14(水) | 日本 | 7〜9月GDP | 市場コンセンサス(前期比・年率)は1.1%減 |
日本 | ★決算発表(248社) | 郵政3社、電通、三井住友、みずほFG、第一生命他 | |
中国 | 10月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(年同同月比)は5.9%増 | |
中国 | 10月小売売上高 | 市場コンセンサス(年同同月比)は9.3%増 | |
中国 | 10月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(年同同月比・累計)は5.5%増 | |
ドイツ | 7〜9月期GDP | 欧州景気は本当に減速しているのか? | |
米国 | 10月消費者物価指数(食品・エネルギーを除く) | 市場コンセンサスは±0% | |
11/15(木) | 日本 | 10月首都圏マンション発売 | |
米国 | 10月小売売上高 | ||
米国 | 11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | 米製造業のマインドを示唆 | |
米国 | ☆決算発表 | アプライド・マテリアルズ、エヌビディア、ウォルマート | |
11/16(金) | 米国 | 10月鉱工業生産・設備稼働率 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
11/6(火)は米国で中間選挙の日程になっています。米国時間の11/7(水)未明(日本時間では同日午後)くらいに大勢が判明してきそうです。株式市場や為替市場はどのよう反応を示すのでしょうか。米国市場が通常取引の時間帯には情報が少ないとみられ、11/7(水)の東京株式市場の取引時間中に情報が増えてくる可能性があり、急な値動きに注意が必要です。
株式市場の反応を、米国の代表的株価指数である「S&P500」の騰落率でみたものが図4となります。1978年〜2017年の過去40年について調べると、11月は平均1.7%上昇する傾向がありますが、中間選挙のある年に限って平均をとると2.3%と計算されます。アノマリー的に「中間選挙」が実施される11月の「S&P500」は上昇しやすいと考えられます。
しかし、中間選挙の結果によっては波乱になるケースもあります。一般的に大統領が属している政党と異なる政党が上下院両方で多数派になるような場合、大統領の政策を実現できなくなるケースが増えるため、株式市場にはマイナス要因となりやすいようです。最近の例では、2006年のブッシュ(ジュニア)大統領(共和党)の下で実施された中間選挙では、上下院ともに民主党が勝利する波乱となりました。もっとも、S&P500の下げは限定的で、日経平均株価の方が大きく下げるという、やや不思議な結果になっています。
今回の中間選挙では、
(1)上院・・・選挙前は、共和党51議席・民主党49議席。
計100議席のうち、今回改選されるのは35議席(共和党9議席、民主党26議席)であり、共和党がかなり有利。
11/4(日)現在、「優勢」・「やや優勢」合計で共和党が約半数。民主党は44議席前後の勢い。
(2)下院・・・選挙前は、共和党236議席・民主党193議席。
11/4(日)現在、「優勢」・「やや優勢」合計で共和党が196議席前後、民主党は202議席前後の勢い。
との見方が有力で、上院は共和党、下院は民主党が多数派になるという結果がメインシナリオになっています。(※)このシナリオ通りの場合、選挙後の株式市場は、選挙結果は織り込み済みで、むしろ「重要日程通過」により、株価が上昇する可能性がありそうです。ただ、下院でも共和党の追い上げが目立つとの報道があり、上院・下院ともに共和党になる可能性もサブ・シナリオとして残りそうです。この場合、減税の恒久化等が意識され、株高シナリオが継続しそうです。ただ、世界的に緊張状態がさらに高まると予想され、防衛関連銘柄にスポットが当たる可能性がありそうです。
上院で共和党の非改選議席が多く、そこが民主党多数に替わる可能性は小さいとの見方が有力です。仮に、ここが民主党に替わるようですと、「想定外」となり、株価が波乱になる可能性が大きくなりそうです。
11/7(水)以降の東京株式市場は、質的な意味で決算発表が峠を越える上、中間選挙がメインまたはサブのシナリオになった場合、重要日程通過も重なり、戻りを試す局面となる可能性が大きそうです。
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成
図4 S&P500の月別平均騰落率
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図5 「中間選挙」の結果で想定される4つのシナリオ
- ※報道等をもとにSBI証券が作成。ただし、現実の市場の動きはこれと大きく異なる可能性もあり、注意が必要です。