日経平均株価が上昇基調となっています。米国株が過去最高値を更新したことで、投資家のリスク許容度が高まりました。米景気・企業業績への楽観的な見方が持続し、同国10年国債利回りが3%台を回復し、それを受けて円安・ドル高が進んだことも日本株にとって追い風になりました。
今後も株高基調は続きそうです。すでに「完全雇用」状態の米国で、トランプ政権はさらに雇用を増やそうとしていおり、米金利上昇や円安・ドル高が予想されるためです。ただし、景気が過熱し、2019年にリスクを先送りする可能性も残ります。
日経平均株価(図1)が上昇基調となっています。9月第3週(9/18〜9/21)末の終値は23,869円93銭となり、前週末比775円26銭(3.4%)高と、前週(3.5%)並みの大幅高となりました。
同じ週、米国ではNYダウが前週末比2.3%高と10週間ぶりの2%を超える大幅高となり、過去最高値を更新したことで、投資家のリスク許容度が高まる方向となりました。米景気・企業業績への楽観的な見方が持続し、同国10年国債利回りが3%台を回復し、それを受けて円安・ドル高が進んだことも日本株にとって追い風になりました。
米国のトランプ大統領は米国時間9/17(月)に、中国からの輸入2,000億ドルに10%の関税を賦課することを決定しましたが、税率については一時25%の可能性も指摘されていたため、10%という税率はむしろ穏当に感じられた可能性があります。株式市場は日米ともに、この日以降に上昇が加速する形になりました。
9/24(月)からは実際に米国による関税の賦課が始まりましたが、9/25(火)の東京市場では、日経平均株価が70円33銭高いと7営業日続伸となりました。米中貿易摩擦について、株式市場はいったん織り込み済みとなった格好になっています。
図1:日経平均株価が年初来高値に接近
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/9/25取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/9/24現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/9/25取引時間中
当面は米国時間9/25(火)〜9/26(水)に開催され、同国の金融政策を決定するFOMC(米連邦公開市場委員会)が重要日程として注目されます。結果発表は米国時間で9/26(水)午後、日本時間では9/27(木)の午前3時頃になる見込みです。金利先物市場からみる限り、このFOMCで政策金利(上限)が0.25%引き上げられ、2.25%となることは「ほぼ確実」であると考えられます。
焦点はむしろ、米国時間12/19(水)に結果発表が予定されるFOMCで更なる利上げが実施されるか否か、また、2019年の利上げ回数はどの程度か、そして利上げ打ち止めのタイミングは接近しているのか、等に移ると考えられます。短期金利市場からみた、年内利上げ確率は7割程度とみられ、年内の利上げ継続についてはコンセンサスが形成されつつあり、2019年の見通しが一層の関心を集めそうです。
FOMCメンバーによる年末の政策金利の中央値は2019年にかけては上昇するものの、2020年にかけてその上昇カーブは緩やかになり、2021年は下がるとの予想です。すなわち、2019年は利上げ打ち止め論議が強まってくる可能性についても注意が必要です。その意味で、現在は過度の心配が不要とされているインフレ見通しについて、加速する可能性が強まってくるのか否か、10/5(金)発表の米雇用統計(9月)が注目されることになります。
なお、国内では10/1(月)に発表が予定されている日銀短観(9月調査)が注目されます。10月下旬以降に発表が本格化する上場企業の9月中間・本決算や業績予想の方向感等を占う重要な判断材料になりそうです。
表1:重要日程が目白押し〜中国は大型連休へ
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
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9/25(火) | 日本 | 9月権利確定銘柄の権利付最終日 | |
日本 | 日銀金融政策決定会合(7/31発表分)議事要旨 | ||
米国 | 7月FHFA住宅価格指数 | 市場コンセンサスは前月比0.2%上昇 | |
米国 | 9月CB消費者信頼感指数 | ||
9/26(水) | 米国 | FOMC結果発表/パウエルFRB議長会見(日本時間9/27未明) | 政策金利の0.25%引き上げがほぼ確実視されている |
- | 日米首脳会議 | ||
米国 | 8月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサスは前月比0.9%増 | |
9/27(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
米国 | 8月耐久財受注(輸送用機器を除く) | 市場コンセンサスは前月比0.4%増 | |
米国 | 8月中古住宅販売仮契約 | 市場コンセンサスは前月比0.2%減 | |
9/28(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(9/19発表分)「主な意見」 | |
日本 | 8月労働力調査・有効求人倍率 | 7月は失業率2.5%、有効求人倍率1.63倍 | |
日本 | 8月鉱工業生産 | 7月は前月比0.1%減 | |
9/30(日) | 日本 | 沖縄県知事選挙 | |
10/1(月) | 日本 | 9月調査日銀短観 | 市場コンセンサス(大企業・製造業・業況判断指数)は22 |
中国 | ◎国慶節 | 休日(〜10/7) | |
米国 | 9月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは60.1 | |
米国 | カナダとのNAFTA再交渉期限 | ||
10/3(水) | 日本 | ★決算発表 | 良品計画他 |
米国 | 9月ADP雇用統計 | 市場コンセンサス(雇用者数増減)は前月比18.5万人増 | |
米国 | 9月ISM非製造業景況指数 | 雇用等の個別指標にも注目 | |
10/4(木) | 日本 | 証券投資の日 | |
10/5(金) | 米国 | 9月雇用統計 | 市場コンセンサス(非農業部門雇用者数)は前月比18.8万人増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 10/31(水)、12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/25(木)、12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日経平均株価は米長期金利と強い関係で結ばれていることが知られています。すなわち、米長期金利が上昇すると、日経平均株価が上昇しやすいという関係です(図4)。逆に、米長期金利が低下する時は日経平均株価が下がりやすいという傾向があります。すなわち、米長期金利が上昇(低下)する時は、日米金利差(米国の金利から日本の金利を引いた数字)が拡大(縮小)しやすいため、円安・ドル高(円高・ドル安)になりやすいことが大きな理由です(図5)。
米国の金利が上昇している時は総じて、同国の景気が良い時と考えられます。米国の景気が良い時、同国をおもな輸出相手国としている日本の景気も良くなりやすく、日本株も上昇しやすいという図式です。日経平均株価は電気機器等、輸出企業の影響力が大きいため、米金利や為替相場の影響を受けやすいと考えられます。
ただ、米長期金利の上昇が日本の株高につながらなかった例外的な時期(2018年の初頭)もあり、いまだにその理由は明確になっていないのが現実です。それについては機会を改めて考えたいと思います。
さて、米国では労働市場のひっ迫状態が強まっています。8月雇用統計では時間当たり賃金が市場予想を上回り、前年同月比2.9%も増加しましたが、これは2009年以来の伸びです。時間当たり賃金の伸びが強い状態が続くと、インフレ見通しが強まり、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げペース加速につながるため、円安・ドル高要因となります。足元、外為市場でジリジリと円安・ドル高が進んでいる背景はこの辺にありそうです。
さらに、労働市場がひっ迫状態(完全雇用状態)になっているにもかかわらず、トランプ大統領は国内の雇用を増やす政策を取ろうとしています。また、中国等からの輸入に対し関税引き上げが実施され、すでに鉄鋼等で原材料価格の一部に高騰がみられます。インフレ高進を防ぐべく、FRBの着実な利上げは市場の想定よりも長期間続き、円安や日本株高につながる可能性が大きいように思われます。
ただ、景気の過熱と利上げの組み合わせが株式市場にダメージとなる可能性はあり、2019年にそれが表面化する可能性はありそうです。
図4:日経平均株価と米10年国債利回り(日足)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図5:米10年国債利回りとドル・円相場(日足)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成