日経平均株価は6/12(火)の23,011円57銭をピークに、7/5(木)の安値21,462円95銭まで6.7%下落しましたが、その後は反発に転じ、再び23,000円台が射程圏に入っています。
今後、日経平均株価はどこまで反発が可能でしょうか。単純に考えれば、23,000円近辺でWトップを付けており、そこをクリアすることは難しいと考えられます。しかし、足元で円安・ドル高が進展し、若干の市場心理改善がみられるため、日経平均株価の予想PERは上昇する余地を残していると考えられます。すなわち、現在の投資環境でも日経平均株価が23,000円台後半まで上昇するチャンスはあると考えられます。
日経平均株価(図1)は6/12(火)の23,011円57銭をピークに、7/5(木)の安値21,462円95銭まで6.7%下落しましたが、その後は反発に転じ、再び23,000円台が射程圏に入っています。
米国と北朝鮮の緊張緩和に向けた動きは6/12(火)でいったん「(好材料)出尽くし」の形となり、その後は米中貿易摩擦に対する警戒感が高まる展開となりました。メキシコで新興左派の大統領が誕生したことや、米半導体大手マイクロンの製品の一部が中国で販売差し止めとなったこと等も、世界的な貿易摩擦問題の深刻化につながる材料と考えられました。一方の当事者である中国では上海総合指数が6/12(火)から7/5(木)まで約11%も下落し、香港ハンセン指数も同期間に9%超下げる波乱の展開となりました。それを横目で見る形になった東京市場の市場参加者も警戒心を募らせることになりました。
7/6(金)は、この日までに米中間で妥協が成立しなければ、米国が中国からの輸入340億ドル分に25%の関税を課し、中国もその報復として米国からの輸入に同等規模の関税を課すという「期限」になっていました。市場の一部では「何らかの合意が形成される」との期待も残っていましたが、「期限」が接近する中で妥協が成立する兆しが見えず、7/5(木)の日経平均株価や上海総合指数、香港ハンセン指数等は軒並み、当面の安値を示現する展開となりました。
しかし、米中貿易摩擦問題については、上記の「期限」が到来したことで皮肉にも、当面の悪材料が出尽くした形になり、その後、世界の主要株価指数は上昇に転じました。さらに外為市場では、予想外に円安・ドル高の動きが加速する展開となり、7/11(水)には約6ヵ月ぶりにドルが対円で1ドル112円台まで上昇しました。7/12(木)には米ナスダック指数が約3週間ぶりに最高値を更新するなど、日本株への追い風はさらに強まりました。
こうした中、日経平均株価は7/12(木)に前日比255円75銭高、7/13(金)に同409円39銭高となり、さらに7/17(火)の終値は前週末比100円01銭高の22,697円36銭と3営業日続伸し、23,000円回復が意識される水準まで値を回復しました。
図1:再び23,000円に接近した日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/7/17現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/7/16現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/7/17取引時間中
米国で決算発表が活況に入りつつあります。米主要企業のEPS(一株利益)は2018年4〜6月期に前年同期比で20%程度増える見込みとなっています。法人減税の効果も期待されますが、IT企業等については、貿易摩擦問題に惑わされずに成長を維持できるとの見方も根強く、引き続き市場のけん引役となることが期待されています。
ただ、中国との輸出入について関税が強化されるため、今後一部の米企業で影響が出てくる可能性もありそうです。現状では企業業績への影響は限定的と考えられますが、企業の投資マインドの委縮や仕入価格の上昇、販売数量の減少等の可能性が企業経営者の口から発せられる可能性はあり、十分注意が必要であると考えられます。
表1:来週は日本企業も決算発表シーズンへ
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
7/17(火) | 米国 | 6月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前月比)は0.5%増 |
米国 | ☆決算発表 | J&J | |
米国 | パウエルFRB議長議会証言 | 上院銀行委員会 | |
7/18(水) | 米国 | 6月住宅着工件数 | 5月(前月比)は5.0%増 |
7/19(木) | 日本 | 6月貿易収支 | |
米国 | 7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | マイクロソフト、フィリップ・モリス他 | |
米国 | 米商務省が自動車輸入関税に関する公聴会を開催(〜7/20) | ||
7/20(金) | 日本 | 6月全国消費者物価指数 | 5月(生鮮食品を除く)は是年同月比0.7%上昇 |
米国 | ☆決算発表 | GE | |
7/21(土) | - | G20財務相・中銀総裁会議(〜7/22) | ブエノスアイレス |
7/23(月) | 米国 | 6月中古住宅販売件数 | 5月は前月比0.4%減 |
米国 | ☆決算発表 | アルファベット | |
7/24(火) | 日本 | テレワーク・デイ(一部企業) | 7/23〜7/27のうち、7/24を含む2日間、自宅などで勤務 |
7/25(水) | 日本 | ★決算発表 | 日電産、ファナック〜東証で4〜6月期決算発表が本格化 |
ドイツ | 7月Ifo景況感指数 | 約7,000社のドイツ企業の今後の景況感をアンケート調査 | |
米国 | 6月新築住宅販売件数 | 5月は前月比6.7%増 | |
米国 | ☆決算発表 | フェイスブック、ビザ他 | |
7/26(木) | 日本 | ★決算発表 | 富士通、日産自、キヤノン、東エレク他 |
欧州 | ECB理事会 | ||
米国 | 6月耐久財受注 | 米国民間設備投資の先行指標 | |
米国 | ☆決算発表 | アマゾン、スターバックス他 | |
7/27(金) | 日本 | ★決算発表 | コマツ、日立、JR東日本、JR東海他 |
米国 | 4〜6月期実質GDP | 市場コンセンサスは前期比(年率)3.8%成長 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は日経平均株価(日足)と、「予想PER12.5倍に相当する日経平均株価」、「予想PER14.0倍に相当する日経平均株価」、「予想PER15.5倍に相当する日経平均株価」を1枚のグラフにしたものです。
株価が年初からみると伸び悩んでいる原因は、米中貿易摩擦を中心とする世界的な貿易摩擦への警戒感であると考えられています。しかし、日経平均株価と予想PER、予想EPS(一株利益)の関係から考えた場合は、予想EPS(一株利益)の伸び悩みを背景に、予想PERが低迷している姿として捉えられます。
例えば予想PER14倍に相当する日経平均株価は図の赤丸の時点では24,000円でしたが、その後は23,000円台に下がっています。これは日経平均株価の予想EPSが下がったからです。予想EPSの低下は市場心理の悪化をもたらし、予想PERの低下につながる材料となります。日経平均株価は2017年には、予想PER14倍以上に相当する水準で推移していましたが、2018年はほとんどの期間、予想PER14倍未満の水準で推移しています。
今後、米中貿易摩擦等問題に解決の糸口が見い出せず、日経平均株価の予想EPSの伸び悩みが続いた場合、日経平均株価は予想PER12.5倍相当水準(21,222円)〜同14.0倍相当水準(23,768円)前後が妥当という理解が成立します。ただ、足元で円安・ドル高が進展し、若干の市場心理改善がみられるため、日経平均株価の予想PERは上昇する余地を残していると考えられます。すなわち、現在の投資環境でも日経平均株価が23,000円台後半まで上昇するチャンスはあると考えられます。
図4:日経平均株価と予想PER
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成