株式市場が世界的に波乱の様相を強め、その中で日経平均株価も調整色の強い展開となっています。米国と他の国との間で貿易戦争がより激しくなっており、その悪影響が徐々に表面化しつつあるように思われます。
投資家はこうした「世界貿易戦争」による波乱相場をどう理解すべきでしょうか。今秋の米中間選挙(11月)頃までは、トランプ米大統領が強硬姿勢を取り続けると思われ、株式相場は波乱含みの展開が続くことが想定されます。しかしテクニカル的にはいったん「底入れ」となっても不思議ではないタイミングが近づきつつあるようです。
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世界的貿易戦争の影響で下落基調に |
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株式市場が世界的に波乱の様相を強め、その中で日経平均株価(図1)も調整色の強い展開となっています。先週(6/18〜6/22)の東京株式市場では、日経平均株価の週末終値が22,516円83銭となり、前週末比334円92銭(1.5%)安となりました。米国と中国・欧州等との間で貿易戦争がより激しくなっており、その悪影響が徐々に表れつつあるようです。ただ、押し目買い意欲も強く、売買が交錯し、東証1部の1日当たり平均売買代金は2.57兆円と、前週比7.3%の増加となりました。
6/18(月)は米国の輸入関税引き上げに対し、中国が報復関税導入を示唆したことを受けて貿易戦争の激化が懸念されたことに加え、朝方に大阪北部を震源とする大きな地震が発生したことから様子見気分が強まり、日経平均株価は前週末比171円42銭安と反落しました。さらに6/19(火)には、米国が中国からの輸入2,000億ドル相当に10%の関税を課す方針であることが伝わり、日経平均株価は401円85銭安と大幅続落となりました。
そうした中、6/20(水)はアジア株が反発に転じたこともあり、日経平均株価は276円95銭高と3営業日ぶりに上昇しました。6/21(木)には米鉄鋼関税について、不二越等の除外が伝わり、日経平均株価は137円61銭高となりました。しかし、6/22(金)にはインドが米鉄鋼・アルミ課税への報復を示唆するなど、貿易戦争の広がりが意識され、日経平均株価は176円21銭安と反落してしまいました。結局、冒頭でご説明したように先週(6/18〜6/22)の日経平均株価は前週末比1.5%の下落となり、週足ベースでは3週間ぶりの下落となりました。
なお米国市場では、NYダウ(図2)が貿易戦争の拡大を懸念して下落基調となり、特に6/12(火)から6/21(木)には8営業日続落となりました。また、ドル・円相場(図3)も6/15(金)を境に円高・ドル安基調に転じ、日本株にとって逆風となりました。ただ、NYダウが連敗中も、米ハイテク株は総じて堅調で、ナスダック総合指数は6/20(水)まで上昇傾向が続きました。また、円高・ドル安のピッチも緩く、日経平均株価の下支え要因となりました。
日経平均株価はテクニカル的に、6/18(月)までは短期的な相場の強弱感を左右する25日移動平均線を上回っていましたが、6/19(火)には下回り、投資家心理をさらに冷え込ませる要因となりました。5/21(月)と6/12(火)に一時23,000円を上回りましたが、そこがWトップとなる形で下落に転じていますので、上値の重たさが意識される形になっています。
週が明け、6/25(月)の日経平均株価は178円68銭安と続落しました。トランプ大統領が中国系企業による米国企業の買収や米企業から中国企業への輸出を規制する新たな計画を示したと伝わり、貿易戦争の激化が懸念されました。この日は世界的な株安となり、同じ日のNYダウは前週末比328.09ドル安の大幅安となりました。続く6/26(火)の東京株式市場も波乱が続き、日経平均株価は一時22,104円12銭(前日比234円03銭安)まで下落しましたが、100日移動平均線(22,099円36銭)に限りなく接近したことで、それ以降は買い直される展開になりました。結局、この日の日経平均株価は前日比3円85銭高と、わずかではありますが、上昇して終わりました。
図1:貿易戦争を警戒して下落基調に転じた日経平均株価

- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/6/26現在
図2:NYダウ(日足)

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/6/25現在
図3:ドル・円相場(日足)

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/6/26取引時間中
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「日銀短観」に注目 |
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7/2(月)に日銀短観(6月調査)が発表される予定です。2018年3月調査の場合、全国で10,020社の企業にアンケートが行われ、99.3%の企業から回答が得られています。この調査での大企業・製造業(調査対象1,013社)の業況判断指数は+24で、12月調査の+26からは2ポイントのダウンとなりました。ただし、12月時点での「先行き」見通しは+21でしたので、それに対しては3ポイントほど、上振れた形になっています。
6月調査でも、大企業製造業および非製造業の業況判断指数がどうなるのか、注目される所です。
(1)大企業・製造業および同・非製造業の業況判断指数が前回(前者は+24、後者は+23)から増えるか否か
(2)大企業・製造業および同・非製造業の業況判断指数が市場予想(前者は+22、後者は+23)に対し上振れるか否か
(3)大企業・製造業および同・非製造業の「先行き」見通しは前回ともに+20で、そこから上振れるか否か
等が注目ポイントになると考えられますが、全体の数字のみならず、個々の業種についてもチェックしておくことが重要です。
特に3月決算企業の場合、7月下旬以降、2018年4〜6月決算の発表が予定されていますが、日銀短観はその有力なヒントになると考えられます。なかでも(2)や(3)で上振れとなるような業種は、市場や会社の予想以上に推移している企業が多いと推測されます。また、新たな「先行き」見通しについても、世界的な貿易戦争の影響を受け、大きく下がるのか、踏ん張りを示すのか、業種ごとにチェックする必要が大きいと考えられます。
表1:「日銀短観」に注目
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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6/26(火) | 日本 | 6月権利確定銘柄の権利付最終日 | 特に配当取り・株主優待権利確定で注意 |
米国 | 4月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 3月(20都市・前年同月比)は+6.77% | |
6月CB消費者信頼感指数 | 市場コンセンサスは128 | ||
6/27(水) | 米国 | 5月耐久財受注(輸送用機器を除く) | 市場コンセンサス(前月比)は0.5%増 |
米国 | 5月中古住宅販売仮契約 | 市場コンセンサス(前月比)は0.7%増 | |
6/28(木) | 日本 | 株主総会集中日 | |
日本 | ★決算発表 | Jフロント、ニトリHD他 | |
欧州 | EU首脳会議 | ||
6/29(金) | 日本 | 5月労働力調査・有効求人倍率 | 有効求人倍率(4月)は1.59倍 |
日本 | 5月鉱工業生産 | 市場コンセンサス(前月比)は1.0%減 | |
6/30(土) | 中国 | 6月製造業PMI | 市場コンセンサスは51.7 |
7/1(日) | 中国 | 輸入関税を15%に引き下げ | |
7/2(月) | 日本 | 6月調査日銀短観 | 大企業製造業業況判断指数のコンセンサスはプラス22 |
米国 | 6月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは58.2 | |
7/3(火) | 米国 | 5月製造業受注 | 市場コンセンサス(前月比)は0.1%減 |
米国 | 短縮取引(株式・債券) | ||
7/4(水) | 日本 | ★決算発表 | ABCマート、良品計画、イオン他 |
米国 | ◎休場 | 独立記念日 | |
7/5(木) | 日本 | ★決算発表 | 7&Iホールディングス |
米国 | 6月ADP雇用統計 | 市場コンセンサス(前月比・雇用者数)は19万人増 | |
米国 | 6月ISM非製造業景況指数 | 雇用、新規受注等の個別指標にも注意 | |
米国 | FOMC議事録(6/13発表分) | ||
7/6(金) | 米国 | 6月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは前月比20万人増 |
- | 米中が相互に制裁関税を発動か |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
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【ココがPOINT!】いったん「底入れ」となるタイミングは? |
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日経平均株価は波乱含みの展開が続いていますので、ここで改めて、現在の水準からさらに下がった場合の当面の下値メドを改めてチェックしておきたいと思います。
(1)22,089円・・・・100日移動平均線(6/26終値現在)
(2)22,050円・・・・200日移動平均線(6/26終値現在)
(3)22,000円・・・・心理的な節目
(4)21,931円・・・・5/30(水)の取引時間中に付けた安値
(5)21,698円・・・・一目均衡表の「クモ」の下限
等が参考になると考えられます。ちなみに、6/26(火)の日経平均株価は一時22,104円まで下落し、そこで下げ止まった形になっていますが、この水準は(1)〜(3)等の下値支持ラインが集中しており、押し目買いが入りやすかったと考えられます。
ちなみに、日経平均株価の騰落レシオ(25日)は6/25(月)現在で73%となっています。一般的にこの指標は、130%以上で「過熱圏」を、70%以下で「割安圏」を示すと理解され、現在は後者に限りなく迫りつつあります。図4からも明らかな通り、騰落レシオが現在くらいの水準まで下がると、日経平均株価は当面の底を打ちやすい傾向が認められます。日経平均株価はいったん底打ちしても不思議ではないと考えられます。
もっとも、やはり日経平均株価の売買タイミングを示唆するRSI(相対力指数)は現在44%程度で、「割安圏」の上限とされる30%まで少し距離を残しているように思われます。また、騰落レシオが大きく下げた割に、日経平均株価の下げが小幅にとどまっているとの印象も受けます。すなわち、足元の株式相場は幅広い銘柄で小刻みな下落が一定期間続いている姿を表しているのかもしれません。その意味では、底入れはやや大きめな押し目とともに出現する可能性もあり、注意が必要です。
図4:日経平均株価(左・円)と騰落レシオ(右・%)(日足)

- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成
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