5/28(月)〜6/1(金)の東京株式市場は、前週の下げ基調を引き継ぎ、株価は総じて軟調に推移しました。北朝鮮問題や世界的な貿易問題について不透明感が強まったことに加え、南欧の政治不安も意識されました。しかし、6/1(金)に発表された米雇用統計(5月)で「強い米国経済」が確認されたことが追い風となり、6/4(月)・6/5(火)の日経平均株価は続伸しています。
こうした中、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割った「NT倍率」が高値水準を維持しています。このことは、日経平均株価が下がりやすいことを示唆しているのでしょうか。それとも、他の見方があるのでしょうか。
100日移動平均線を回復した日経平均株価 |
5/28(月)〜6/1(金)の東京株式市場は、前週の下げ基調を引き継ぎ、株価は総じて軟調に推移しました。北朝鮮問題や世界的な貿易問題について不透明感が強まったことに加え、南欧の政治不安も意識され、日経平均株価は5/30(水)に一時、取引時間中ベースでは4/18(水)以来の22,000円割れとなりました。その後、南欧の政治不安に対する懸念は「行き過ぎ」との見方から、5/31(木)は値を戻す展開となりましたが、米雇用統計(5月)の発表を控えていたこともあり、上値は限定的でした。結局、6/1(金)の日経平均株価終値は22,171円35銭となり、週間では前週末比279.44円(1.2%)の「続落」となりました。
こうした中、6/1(金)に発表された米雇用統計(5月)では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想(19万人)を上回る22.3万人となり、失業率も18年1カ月ぶりの低水準(3.8%)にとどまったものの、平均時給の伸び(前年同月比2.7%増)は抑制的となりました。また、同じ日に発表されたISM製造業景況指数も市場予想を上回り、強い米国経済が確認された形になりました。さらに、米朝首脳会談について、6/12(火)にシンガポールで実施される可能性が再び濃厚になってきたとの報道もあり、この日のNYダウは前日比219ドル超の上昇となり、週明けの6/4(月)も勢いを引き継ぐ形で上昇し、178ドル超の上昇となりました。
前週末のNY株高を受けた6/4(月)の東京株式市場では、日経平均株価が前週末比304円59銭高と反発しました。さらに6/5(火)も63円60銭高と続伸し、日経平均株価は一時5/23(水)以来の22,600円台を回復しました。
図1は日経平均株価の動きを示した日足チャートです。5/24(木)〜5/29(火)には100日移動平均線が下値支持ラインとなり、そこで下げ渋る展開が続きましたが、欧州懸念等で下げた5/30(水)に一度、同移動平均線を割り込む展開になりました。しかし、50日移動平均線が新たな下値支持ラインとなって反発に転じ、6/4(月)には再び100日移動平均線を回復する展開となっています。
図1:5/30(水)に50日移動で下げ止まった日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/6/5現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/6/4現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/6/5取引時間中
メジャーSQに注意 |
米雇用統計やISM製造業景況指数の発表が終ったことに加え、名実ともに6月相場となり、投資家はややリスクを取りやすくなったものと考えられます。しかし、6/8(金)にメジャーSQを控えている上、米朝首脳会談やFOMC等の重要日程が予定されていることもあり、まだまだ注意が必要な状態が続くと考えられます。
なお日経平均株価先物取引と絡む裁定取引の買い残高については、2/26(月)〜3/2(金)の週に約1兆2,800億円でボトムを打ち、現在はその2倍程度まで「回復」しています。水準的にはこの2〜3年の中では高めの水準と言えそうです。裁定取引の買い残高が積み上がる過程では株価上昇が期待できますが、その解消過程では相場が波乱となるケースも警戒されます。したがって、メジャーSQ当日までは一応の注意が必要と考えられます。
表1:米朝首脳会談は6/12(火)の予定
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
6/5(火) | 米国 | ISM非製造業景況指数 | 市場コンセンサスは57.6 |
6/6(水) | 米国 | 4月貿易収支 | |
6/7(木) | 日本 | 5月都心オフィス空室率 | 4月は2.65% |
米国 | ★決算発表 | ブロードコム | |
6/8(金) | 日本 | 1〜3月GDP改定値(前期比・年率) | 速報値は-0.6%。改定値のコンセンサスは-0.4% |
日本 | メジャーSQ | 裁定買い残は3月第1週1.28兆円から2倍増 | |
中国 | 5月貿易収支 | コンセンサスは輸出が前年同月比11.1%増 | |
- | G7首脳会議(〜6/9 カナダ) | 米国対他の6ヵ国で貿易戦争を巡る駆け引きか | |
6/10(日) | 日本 | 新潟県知事選挙 | 与党敗北ならば自民党総裁選挙に影響も |
6/11(月) | 日本 | 4月機械受注 | 3月のコア機械受注は前年同月比3.9%減 |
6/12(火) | - | 米朝首脳会談(シンガポールの予定) | 朝鮮半島の非核化は実現するのか? |
ドイツ | 6月ZEW景況感調査 | 市場関係者に景況感をアンケート | |
米国 | ゲーム見本市「E3」 | ||
6/13(水) | 米国 | FOMC結果発表(日本時間では14日午前3時) | 政策金利(上限)は1.75%から2.0%へ引き上げられる見通し |
6/14(木) | 中国 | 5月鉱工業生産 | コンセンサス(前年同月比)は7.0%増 |
中国 | 5月小売売上高 | コンセンサス(前年同月比)は9.6%増 | |
中国 | 5月都市部固定資産投資(年初来) | コンセンサス(前年同月比)は7.0%増 | |
欧州 | ECB(欧州中銀)理事会(ドラギ総裁会見) | ||
- | イスラム世界のラマダン明け | ||
米国 | 5月小売売上高 | 4月(自動車・ガソリンを除く)は前月比0.3%増 | |
- | サッカーW杯ロシア大会開幕 | ||
6/15(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表 | |
米国 | 6月NY連銀製造業景気指数 | ||
米国 | 5月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米国 | 6月ミシガン大学消費者マインド指数 | 米国個人消費の先行きを占う |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】「高水準のNT倍率」が意味することは? |
「NT倍率」とは、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割った数値です。図4はその推移(過去1年)を日足チャートで示したものです。昨年9月には一時12.1倍弱の水準まで下げていましたが、現在は12.7倍弱の水準まで回復しています。チャートをみればご理解いただけるように、12.7倍はほぼ高値圏と言えます。
実は、より長期の足を見てもNT倍率の12.7倍は高値圏に近い水準です。2016年8月に12.8倍台まで上昇していますが、この倍率が13倍とか14倍とか水準まで上昇したことは、少なくともリーマンショック以降ではありません。したがって、NT倍率はもうこれ以上、上昇しない可能性が大きいのかもしれません。ちなみに、NT倍率は冒頭ご説明したように、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割った数値です。したがって、仮に、NT倍率がもうこれ以上、上昇しない可能性が大きいと考えるならば、日経平均株価は上がりにくいと考えてよいのでしょうか。
ここで重要なことは、日経平均株価もTOPIXも、日本の代表的な株価指数であり、通常は同じ方向を向いて動きやすいということです。ただ日経平均株価はファーストリテイリング、ソフトバンクG、ファナックなど値がさ株の採用銘柄の影響を受けやすく、TOPIXはトヨタ自動車や三菱UFJなど、時価総額の大きい銘柄(ただし浮動株比率も加味)の影響を受けやすいという点です。すなわち、NT倍率の動きをみて、物色傾向の変化を予測することは可能であるとみられます。
ちなみに、米国ではNYダウが本年1月の高値から7%程度安い水準にある(6/4現在)一方、ナスダックは過去最高値を更新しています。IT企業の株価が伝統的企業の株価よりも上昇し、指数間に格差が生じています。仮に米国でIT株優位の流れが継続した場合、ハイテク株高を通じ、NT倍率が上昇する可能性も残っていると考えられます。
図4:日経平均株価とNT倍率(日足)
- ※Bloombergデータを用いてSBI正面が作成。NT倍率は現物株ベース。
先物・オプションの関連コンテンツ
【サキモノのココがPOINT!】
日経平均は戻りを試す展開か