5月第4週(5/21〜5/25)の日経平均株価は週末終値が22,450円79銭となり、前週末比479円57銭(2.1%)安で終りました。週が明けても様子見気分が強く、株式市場は弱含みのように見受けられます。そうした中、6/1(金)には米雇用統計の発表があり、当面は慎重スタンスでのぞむ必要もありそうです。
ただ、日経平均株価は「意外な援軍」に支えられ、押し目では買いが入っているように思われます。テクニカル的にも、注意すべきタイミングを通過してきたように見受けられます。
<今週のココがPOINT!>
5/21(月)を境に下げに転じた日経平均株価 |
5月第4週(5/21〜5/25)の日経平均株価は週末終値が22,450円79銭となり、前週末比479円57銭(2.1%)安で終りました。
週明け5/21(月)の東京株式市場では、中国が米国からの輸入拡大を表明し、米中貿易摩擦への懸念が後退し、ドル・円相場も1ドル111円30銭台まで円安・ドル高が進む流れとなり、日経平均株価の終値は23,002円37銭(前週末比72円01銭高)となりました。これで2/2(金)以来の2万3千円台を回復したことになります。しかし、日経平均株価はここが当面の高値になってしまいました。
5/22(火)は、ペンス米副大統領が米朝会談取り止めの可能性を示唆したことが報じられ、日経平均株価は前日比42円03銭安と反落。5/23(水)にはトランプ米大統領が米朝会談中止を表明し、同株価は前日比270円60銭安と続落してしまいました。さらに5/24(木)には、トランプ大統領が米国への自動車輸入について関税(現行は2.5%)を最大25%まで引き上げる可能性を示唆したことから、日経平均株価は前日比252円73銭安と3営業日続落し、終値は10営業日ぶりに22,500円のラインを割り込んでしまいました。5/25(金)は小幅に反発(前日比13円78銭高)したものの、結局この週の日経平均株価は週間ベースとしては9週間ぶりの下落で終ることになりました。
一方、NYダウは(図2)5/3(木)の23,924ドル98セントをボトムに、5/21(月)終値は25,013ドル29セントと、終値ベースでは3/13(火)以来の25,000ドル台を回復していましたが、やはりここが当面の高値となりました。その後は同大台を再び割り込んでもみ合いとなっています。また、5/17(木)に3.11%まで上昇していた米10年国債利回りは低下に転じ、5/23(水)には再び3%台を割り込んでしまいました。さらに為替相場(図3)についても、5/21(月)にドルが円に対して当面のピークを付けた形になり、5/24(木)には一時、1ドル109円台を割り込む円高・ドル安となっています。
米朝協議については5/26(土)に、両国が首脳会議開催(6/12)を視野に交渉を「再開」し、それを好感する形で5/28(月)の日経平均株価は前週末比30円30銭高と小幅続伸となりました。しかし、この日の米国株式市場がメモリアルデーで休場だったこともあり、市場参加者は少なく、東証一部の売買代金は1兆8,143億円にとどまり、4/2(月)の1兆6,740億円以来の少なさとなりました。続く5/29(火)も様子見気分が強く、日経平均株価は前日比122円66銭安と続落してしまいました。
図1:5/21(月)を境に下げに転じた日経平均株価(日足)
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/5/29現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/5/28現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/5/29取引時間中
当面のタイムスケジュール〜6/1(金)発表の米雇用統計(5月)に注目 |
当面は6/1(金)に米労働省から発表される同国の雇用統計(5月)が最大の関心事になりそうです。
(1)非農業部門雇用者数(前月比増減)については4月の16万4千人増から、5月は19万人増になると市場では予想
(2)失業率については4月の3.9%に対し、5月も3.9%と横ばいを維持すると市場では予想
(3)平均時給についても、4月の2.6%増(前年同月比)に対し、5月も同2.6%増と横ばいを市場では予想
等がポイントで、市場予想に対し実際の数字がどう変化してくるか注目されることになります。
もっとも、米雇用統計の数字について、市場予想に対して上振れる項目が多くなれば、米国株高や円安・ドル高につながり、日本株の追い風になるとは限りません。市場が希望しているのは「ほどほどに強く、米国経済の強さを示す程度の数字」と考えられ、「強すぎてインフレ懸念を高める数字」までは望んでいないと考えられます。非農業部門雇用者数の前月比増加数について、3〜5月の月平均が15万人程度を維持し、平均時給が「前年同月比2.6%増」を大きく超えなければ、日本株にとって追い風になりやすいと考えられます。
とはいえ、米雇用統計の発表ではこれまでも、まるで市場参加者をあざ笑うかのように、市場予想から大きくかい離する数字となったケースも少なくありません。投資家が米雇用統計の結果を的中させることは「至難の業」と言えるでしょう。まして今回は、同じ日にISM製造業指数という重要経済指標の発表も重なっている珍しいパターンです。発表前には現金の比率を高めにしておくことも有効かもしれません。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜米雇用統計発表後も油断は禁物!?
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/29(火) | 米国 | 3月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | コンセンサス(20都市・前年同月比)は6.4%上昇 |
米国 | 5月CB消費者信頼感指数 | ||
5/30(水) | 米国 | 5月ADP雇用統計 | コンセンサスは前月比19万人増 |
米国 | ベージュブック | FOMCの重要判断材料 | |
5/31(木) | 中国 | 5月製造業PMI | コンセンサスは51.4 |
- | G7財務省・開発相・中銀総裁会合 | ||
米国 | 4月中古住宅販売仮契約 | コンセンサスは前月比0.5%増 | |
6/1(金) | 日本 | 1〜3月法人企業統計 | |
米国 | 5月雇用統計 | コンセンサスは非農業部門雇用者数で19.0万人増 | |
米国 | 5月ISM製造業景況指数 | 企業マインドに変化はあるのか | |
6/4(月) | 米国 | 4月製造業受注 | |
米国 | アップルで世界開発者会議 | ||
6/5(火) | 米国 | ISM非製造業景況指数 | |
6/6(水) | 米国 | 4月貿易収支 | |
6/7(木) | 日本 | 5月都心オフィス空室率 | 4月は2.65 |
米国 | ★決算発表 | ブロードコム | |
6/8(金) | 日本 | 1〜3月GDP改定値 | |
日本 | メジャーSQ | 株式相場の転換につながることも | |
中国 | 5月貿易収支 | 4月は輸出が前年同月比12.7% | |
- | G7首脳会議(〜6/9 カナダ) |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】日経平均株価を支える「意外な援軍」とは? |
図4が示すように、日経平均株価は100日移動平均線が意外に強力な下値支持ラインになっているようです。4月下旬には同移動平均線が強い上値抵抗ラインになっていましたが、そこをいったん上抜けた後は逆に下値支持ラインとなる「教科書的なパターン」になっています。
5/25(金)に日経平均株価は一時前日比118円安の22,318円水準まで下げましたが100日移動平均線(その日は22,317円)の手前で下げ止まった形で、結局終値は22,450円(前日比13円高)と上昇して終わりました。5/29(火)の相場でも売りが優勢となり、日経平均株価は一時、前日比240円安の水準まで下げましたが、終値は22,358円となり、100日移動平均線(5/29現在22,307円)を維持して終わりました。図4を見てもおわかり頂けるように、100日移動平均線が下値抵抗ラインになっています。
無論、100日移動平均線があらゆる移動平均線の中で「もっとも重要」といった考え方がある訳ではありませんが、現状ではうまく機能しているように思われます。仮に、ここを下回っても短期間で回復できれば再び下値支持ラインとして機能する可能性がありそうです。逆に目先的には25日移動平均線(5/29現在は22,548円)が上値抵抗ラインになりそうです。
ちなみに、5/29(火)は図5にもあるように、一目均衡表で2つの先行スパンが交錯する「要注意日」であったことがおわかり頂けます。波乱となっても不思議でない日を何とか通過したことで、株価は少し落ち着きを取り戻すかもしれません。ただ、日経平均株価がこれ以下の水準に下がってくると、上記の100日移動平均線を割り込こんでくることに加え、一目均衡表の遅行スパンが日々線の下に抜けることになりそうなので、「相場の波乱に注意」ということになりそうです。
図4:日経平均株価と25日・100日移動平均線
図5:日経平均株価(日足)・一目均衡表
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
先物・オプションの関連コンテンツ
【サキモノのココがPOINT!】
6月1日の雇用統計には要注意!