連休明け後の東京株式市場は堅調を持続しています。米国株の上昇や円安・ドル高、決算発表の進捗等が追い風になり、日経平均株価は2月の急落前水準を回復してきました。
こうした中、3月決算企業の決算発表がおおむね一巡しました。輸出企業を中心に上場企業の業績予想は保守的とみられ、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は緩やかに上昇基調を維持し、それを反映して株価も上昇する可能性が大きそうです。
<今週のココがPOINT!>
2月の急落前水準を回復した日経平均株価 |
大型連休明け後の東京株式市場は上昇基調となりました。日経平均株価の5/2(水)終値は22,472円78銭でしたが、5/14(月)には22,865円86銭まで上昇し、2/2(金)(終値は23,274円53銭)以来の高値水準を回復しました。株価は米長期金利の上昇を警戒して急落する前の水準を回復したことになります。
(1)同じ期間、米国株が上昇基調を維持したこと
(2)外為相場が企業の前提為替レートに対し円安・ドル基調が続いたこと
(3)決算発表が大きな波乱もなく進捗し、投資家の不安心理が後退したこと
等が日本株上昇のおもな要因であると考えられます。
米国では、NYダウが5/3(木)から5/14(月)まで8営業日続伸となるなど、上昇基調となりました。アップル株がバフェット氏による高評価や好決算等を背景に、4/30(月)から5/10(木)にかけて9営業日続伸し、市場のけん引役となりました。5/4(金)発表の米雇用統計(4月)で平均時給が予想を下回ったことや、5/10(木)発表の消費者物価指数(4月)が市場予想を下回るなど、インフレ圧力が高まらなかったことも追い風になりました。
こうした中、外為市場ではドル・円相場が5/2(水)に1ドル110円台を付けた後はおおむね同108円台後半から109円台後半での推移になりました。3月決算企業の業績見通しについては、前提為替レートを1ドル105円に置く企業が多く、現状の為替相場は市場関係者に安心感を与える水準であると考えられます。
日本企業の決算発表は、トヨタ(7203)やソフトバンク(9984)の発表があった5/9(水)が「質の面」では大きな峠となりました。その中で、トヨタは情報開示の側面から取引時間中の決算発表を実施し、2019年3月期について市場予想を上回る営業利益計画および自社株買いの実施を発表しました。この発表をもって、市場参加者のリスク許容度は大きく改善に向かった可能性があります。さらに、決算発表の「数の面」での峠となった5/11(金)も無事通過し、決算発表シーズンはおおむね波乱なく一巡し、さらなる投資家心理の改善に寄与したとみられます。
図1:日経平均株価は2/2(金)以来の高値水準を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/5/15現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/5/14現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/5/15取引時間中
当面のタイムスケジュール〜5/16(水)に4〜6月期GDPの発表を予定 |
上場企業の決算発表社数は5/11(金)の811社をピークに、5/14(月)は382社、5/15(火)は373社でした。3月決算企業の決算発表はこれでほぼ一巡しました。上場企業の決算発表については「遅くとも決算期末後45日以内に内容のとりまとめを行い、その開示を行うことが適当」とする「45日ルール」(東証)がありますので、3月決算企業で5/16(水)以降に決算発表を予定する企業は少なくなっています。
決算発表シーズン中は、業績予想が市場コンセンサスを上回った銘柄を中心に物色される傾向があります。しかし、決算発表が終わると、そうした買いも一巡しやすいため、注意が必要です。逆に、決算発表シーズン中には株価が下げた銘柄でも、中長期的な見通しが明るければ見直し買いが増える可能性があります。
5/16(水)には我が国の2018年1〜3月期GDP速報が発表されます。成長率(前期比・年率)のコンセンサスは-0.1%と、9四半期ぶりにのマイナスが予想されています。ただ、GDP速報はこのように、上場企業の決算発表シーズン直後に発表されることが多いため、株式市場へ影響を与えるケースは少ないと考えられます。同じ四半期のファンダメンタルズは企業業績の良し悪しという形でいったん株価に織り込まれているためです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜質的な面では5/9(水)が決算発表のピークに
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/15(火) | 中国 | 4月の主要経済指標 | 鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資など |
日本 | ★決算発表(この日でほぼ一巡) | ルクルートHD、日本郵政、住友化学他など380社 | |
米国 | 4月小売売上高 | 米個人消費の動向を占う | |
5/16(水) | 日本 | 1〜3月期GDP(前期比・年率) | コンセンサスは-0.1%。9四半期ぶりマイナス成長の観測 |
米国 | 4月住宅着工件数 | コンセンサスは前期比0.4%減 | |
米国 | 4月鉱工業生産 | コンセンサスは0.5%増 | |
米国 | ☆決算発表 | メーシーズ、シスコシステムズ | |
5/17(木) | 米国 | 5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | コンセンサスは21.2(前回は23.2) |
米国 | ☆決算発表 | アプライド・マテリアルズ、ウォルマート他 | |
5/18(金) | 日本 | 4月全国消費者物価指数 | 3月(生鮮食品を除く・前年同月比)は0.9%の上昇 |
5/20(日) | - | G20外相会議 | |
5/21(月) | 日本 | 4月貿易統計 | 輸出のコンセンサスは前年同月比2.1%増 |
日本 | 4月新規マンション発売 | 3月は前年同月比6.1%増 | |
5/22(火) | - | 米韓首脳会議 | |
5/23(水) | 米国 | 米4月新築住宅販売件数 | |
米国 | FOMC議事録 | 5/2結果発表の分について | |
米国 | ☆決算発表 | ティファニー、ターゲット他 | |
米国 | 3月FHFA住宅価格指数 | 3月は前月比0.6%の上昇 | |
米国 | 4月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比増減なし。 | |
独 | 5月Ifo景況感指数 | 約7千社の企業を対象にドイツの景況感をアンケート調査 | |
米国 | 4月耐久財受注 | 米国民間設備投資の先行指標 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】1年後の日経平均株価をどう考えるのか? |
前項でも触れたように、5/15(火)で3月決算の上場企業の決算発表がおおむね一巡しました。決算発表が一巡すると、日経平均株価の予想EPSもしばらくは動きにくくなると考えられます。そこで毎年3月決算企業の決算発表が終った直後のタイミングになる5月末の日経平均株価と予想EPSや予想PERの動きを過去10年間について調べてみました。
表3は毎年5月末の日経平均株価と予想EPS(一株利益)、予想PERの水準を表にしたものです。2018年は5/14(月)現在、日経平均株価が22,866円ですが、これは昨年5月末からは16.4%上昇した水準です。また、日経平均株価の予想EPSはやはり5/14(月)現在で1,670円ですが、これは昨年5月末の予想EPSから19.2%増加した水準です。株価は予想EPSの増加、すなわち企業業績の拡大を評価して上昇してきたと考えられます。
ちなみに、日経平均株価の予想PERはどのように推移してきたでしょうか。リーマンショック(2008年9月)時の混乱が企業業績に反映された2009年5月を除けば、2010年以降の毎年5月末の日経平均株価の予想PERは平均で14.7倍と計算されました。直近の過去200日の平均である14.1倍と極端に大きな差ではありませんでした。
途中経過はともかく、今から1年後すなわち、2019年5月末の日経平均株価は現在の予想EPSに増益分を掛け合わせ、さらに予想PER14.7倍前後の数字を掛け合わせた数字からそうは大きく離れないのではないでしょうか。
なお、今回の決算発表では輸出企業の多くが業績予想の前提となる為替レートを1ドル105円に設定しました。一部では同100円に設定した企業もありました。現在、実際の為替相場はそれよりも円安・ドル高方向で進んでいるようです。上場企業の業績予想は輸出企業を中心に保守的になっている公算が大きく、日経平均株価の予想EPSは今後も緩やかに上昇を続けると予想されます。日経平均株価もまた、それに応じて上昇する可能性が大きそうです。
表3:日経平均と予想EPS・長期推移
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。2018年は5/14(月)現在のデータ
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