東京株式市場では東証1部の売買代金が4月以来の低水準を記録した上、日経平均株価の日中値幅も100円を下回る日が続いています。それでも、日経平均株価自体は年初来高値近辺での攻防となっており、まさに「閑散に売りなし」の状態です。
ただし、7月第1週になると重要な経済指標の発表が続く予定です。3月末以降、米経済指標については事前予想を下回るものが明らかに増えており、注意を要するとみられます。
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閑散に売りなし?〜年初来高値前後で攻防 |
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日経平均株価は、6/2(金)に終値が20,177円28銭と2万円大台を回復した後、6/15(木)終値19,831円82銭を付けるまでは下落傾向が続きました。米FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表(日本時間では6/15未明)まで、外為市場(図2)で円高・ドル安傾向が続いたことが逆風となりました。しかし、FOMCを波乱なく通過した後、外為相場は円安・ドル高方向へと転換し、それを好感する形で日経平均株価も上昇しました。
その後、日経平均株価は6/20(火)に一時20,318円11銭まで上昇し、その日は終値も20,230円41銭となり、年初来高値を更新しました。しかし、この日以降は特に重要な経済指標の発表もなく、外為相場や海外株式相場もこう着状態になりました。日経平均株価の日中値幅(高値と安値の差)は6/20(火)から6/27(火)まで6営業日連続で100円を下回り、6/26(月)の東証1部売買代金は1.75兆円と4/17(月)の1.63兆円以来の低水準となりました。ただ、日経平均株価の水準自体は年初来高値前後の攻防となっており、まさに「閑散に売りなし」の状態となりました。
ちなみに、日経平均株価の予想EPSは6/26(月)に1,412円まで上昇し、過去最高水準を更新しました。予想PERは14.27倍に過ぎず、依然過去2年間の平均(14.9倍)を大きく下回っており、好調な企業業績から見れば割安感が強い状態が続いています。また、6月の世界の主要株価の値上がり率(6/26現在)は米NYダウが+1.9%、独DAX指数が+1.2%、中国の上海総合指数が+2.2%となっており、世界的な株高傾向も続いています。すなわち、世界的にリスク許容度が高めに推移する中で、日本株を割安と判断する投資家が買いを入れている可能性があり、日本株の上昇を支えていると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜年初来高値近辺で攻防

- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/6/27取引時間中
図2:ドル・円相場(日足)〜1ドル112円直前

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/6/27取引時間中
図3:NYダウ(日足)〜高値近辺を推移

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/6/26(現地時間)現在
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当面のタイムスケジュール〜7月第1週は重要日程が目白押し |
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6月相場もいよいよ最終週を迎えました。月末にかけては特に株式相場を大きく動かすような材料もなく、材料難が続く可能性が大きそうです。
ただし、月が替わり7月第1週は重要なタイムスケジュールが目白押しとなっています。7/3(月)には日銀短観(6月調査)が発表されますが、7月下旬から始まる3月決算銘柄の第1四半期決算発表を占う意味でも、その結果に注目が集まるとみられます。同じ日には米国でISM製造業景況指数の発表が予定されています。そして7/7(金)にはG20サミット(ドイツ)開催、米雇用統計(6月)発表と目が離せない予定が続いています。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜7月第1週は重要日程が目白押し
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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6/27(火) | 日本 | 6月配当・株主優待の権利付最終日 | |
米国 | 4月S&P500コアロジックCS住宅価格指数 | 20都市の価格(コンセンサス)は前年同月比+5.9% | |
米国 | 6月カンファレンスボード消費者信頼感指数 | ||
6/28(水) | 米国 | 5月中古住宅販売仮契約 | 4月は前月比0.3%減 |
6/29(木) | 日本 | 株主総会集中日 | |
米国 | 1〜3月GDP確定値 | 改定値は前期比(年率)+1.2% | |
6/30(金) | 日本 | 5月全国消費者物価指数 | 4月(生鮮食品・エネルギーを除く)は前年同月比+0.1% |
日本 | 5月失業率・有効求人倍率 | 4月は失業率2.8%、有効求人倍率1.48倍 | |
中国 | 6月製造業PMI | ||
7/2(日) | 日本 | 東京都議会選挙投開票 | |
7/3(月) | 日本 | 6月調査日銀短観 | |
米国 | ISM製造業景況指数 | 米企業のマインドは? | |
7/4(火) | 米国 | 米国市場は休場(独立記念日) | |
7/5(水) | 日本 | ★決算発表〜ローソン、良品計画 | |
米国 | 5月製造業受注 | ||
米国 | FOMC(6/14発表分)議事録 | 利上げを決めたFOMCで何が話し合われたのか? | |
7/6(木) | 米国 | 6月ADP雇用統計 | 雇用者数は前回の253千人増から今回は190千人増の見込み |
米国 | 6月ISM非製造業景況指数 | 雇用などの個別指標にも注目 | |
7/7(金) | ドイツ | G20サミット | 米トランプ大統領の発言に注目 |
米国 | 6月雇用統計 | 非農業部門雇用者数は173千人増の見込み |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
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【ココがPOINT!】7月第1週の波乱に注意? |
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日経平均の上昇が加速するか否か、そのカギを握っているのが外為相場の動きであると考えられます。図2で示したドル・円相場の動きからもご理解いただけるように、5/11(木)の1ドル114円台前半から、6/14(水)の同108円台後半まで円高・ドル安が進んだことが、日経平均株価の上値を抑えたことは確かであるとみられます。6/14以降、円安・ドル高方向に反転はしたものの、1ドル112円を超えた円安・ドル高の動きが本格化するかどうかは微妙な所です。
米国の経済指標でポジティブ・サプライズがネガティブ・サプライズをどの程度上回ったのかを示すECO・サプライズ・インデックス(Bloomberg集計)は3月下旬以降かなりの確度で下落しています。このことは、米経済指標で事前予想(コンセンサス)を下回る指標がいかに多かったかを示しています。過去3ヵ月間における米国10年国債利回りの推移を示したものが図4となっていますが、この間はおおむね低下傾向となっています。米10年国債利回りの低下は円高・ドル安要因とみられます。これをみる限りでは本格的な円安・ドル高は望みにくいとみられます。
図5は金利先物市場から見たFOMCで年内に再利上げが実施される確率を示しています。足元やや上昇しているようにみえますが、直前の急低下に対する反動と考えられ、トレンドとしては横ばいに見えます。イエレンFRB議長の任期を18年2月に控え、緩やかな利上げペースを確保し、資産縮小の入り口に立っていたいFRBですが、弱い経済指標がその邪魔をしている形であり、市場も迷っていることが見て取れると思います。
その意味で、米国における7月第1週の各種経済指標の強弱が良い意味でも、悪い意味でも波乱要因になる可能性があり、市場参加者としては要注意であるとみられます。ちなみに、上記で紹介したECO・サプライズ・インデックスには3ヵ月程度の周期があるとの見方もあり、その意味ではそろそろ反転しても不思議ではない局面に入ってきた可能性もあります。それを見極める意味でも、ここからの経済指標の発表には注意が必要と思われます。
図4:米10年国債利回り(%)の推移

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/6/26(現地時間)現在
図5:金利先物市場から見たFOMCで年内に再利上げが実施される確率の推移(%)

- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成
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