ゴールデンウィーク中の海外市場は重要日程が目白押しでしたが、総じて東京市場に追い風になる出来事が多かったように思われます。日経平均株価はそれを好感する形で5/8(月)に大幅高(450円高)を演じ、終値は19,895円70銭と、年初来高値を更新しました。
ここまで来れば、日経平均株価がいったんは2万円大台を回復する可能性は大きいと考えられます。問題はそこからです。日経平均株価は2万円大台回復後下落に転じるのでしょうか、それともさらに上昇を続けるのでしょうか。
日経平均株価が年初来高値を更新 |
東京市場がゴールデンウィークを明けました。休み中の海外市場は重要日程が目白押しでしたが、総じて東京市場に追い風になる出来事が多かったように思われます。日経平均株価はそれを好感する形で5/8(月)に大幅高(450円高)を演じ、終値は19,895円70銭と、年初来高値の更新となりました。
米国市場では、NYダウが5/1(月)の20,913ドルから5/5(金)には21,006ドルと上昇し、3/1(水)以来の高値水準を付けました。1~3月期における主要企業の純利益は前年同期比15%前後増大した模様で、総じて好調な決算が米株価を支えました。5/4(木)に米トランプ政権がオバマケア代替法案を下院で可決させたことも、同政権の政策実現能力への不安を後退させる材料になったと考えられます。
5/5(金)に米労働省から発表された雇用統計(4月)では非農業部門雇用者数が前月比21万1千人増と事前の市場予想(19万人増)を上回ったことに加え、失業率が9年11ヵ月ぶりの低水準となる4.4%まで低下しました。前月分の雇用者数が下方修正されたことや、賃金の伸び率が低下したこと等一部に弱い数字もありましたが、全体的には強い内容であったと考えられます。「FRBは年内にあと2回利上げする」という市場のメインシナリオに変化はないようです。
なお、5/7(日)に実施されたフランス大統領選挙(第2回)では中道でEU(欧州連合)重視を掲げるマクロン氏が当選しました。地政学的リスクの後退に続き、リスク回避の円買い需要につながっていた欧州の政治リスクが後退する形になりました。
図1:日経平均株価(日足)〜年初来高値を更新し、2015年12月3日以来の高値水準を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/5/9取引時間中
図2:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/9取引時間中
図3:ユーロ・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/9取引時間中
当面のタイムスケジュール〜決算発表が佳境に |
米雇用統計の発表やフランス大統領選挙といった重要日程が通過となり、当面はそれほど重要な日程が予定されていません。そのため、株式市場の目先の関心は国内の上場企業の決算発表に集まりそうです。
5/10(水)にはトヨタ自動車、ソフトバンクグループの決算発表が予定されています。ともに我が国を代表する企業の一社であり、質的な面ではここが決算発表シーズンの佳境と言えるかもしれません。数的な面では5/12(金)に1千社近い企業の決算発表が予定されており、ここが最大のヤマ場となっています。5/15(月)には日本郵政の他、第一生命、三菱UFJ等、大手金融株の決算発表があり、この日をもって決算発表はほぼ一巡する形になっています。
決算発表直前のアナリストによる企業取材が規制強化され、決算発表前に業績を予想して買う動きは鈍くなっているとみられます。逆に言えば、個々の企業について業績の株価への織り込みは決算発表後からが「本番」であると考えられます。5/12(金)に1千社近い企業の決算が終わった後は、動きやすくなる銘柄がその分増えるとみられ、5/15(月)以降はさらに、株価の変動が大きくなると予想されます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜決算発表が佳境に
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/9(火) | 韓国 | 大統領選挙 | 文在寅氏が支持率2位安哲秀氏以下を離してリード |
日本 | ★決算発表(246社) | 三菱重工、三菱商事、三井物産他 | |
米国 | ☆決算発表 | エヌビディア(日本時間10日早朝) | |
5/10(水) | 日本 | 日銀会合「おもな意見」 | |
日本 | ★決算発表(3279社) | 武田薬、JT、トヨタ、ソフトバンクG他 | |
中国 | 4月消費者物価 | 市場コンセンサスは前年同月比+1.1% | |
5/11(木) | 日本 | 4月都心オフィス空室率 | 3月は3.6% |
日本 | ★決算発表(393社) | ブリヂストン、日産、パナソニック他 | |
- | G7財務省・中銀総裁会議 | ||
5/12(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(990社) | 日立、ユニチャーム、三井不動産他 | |
米国 | 4月小売売上高 | 市場コンセンサスは前月比+0.4%(自動車・ガソリンを除く) | |
米国 | 4月ミシガン大学消費者信頼感指数 | 市場コンセサスは97 | |
5/15(月) | 中国 | 4月小売売上高 | 市場コンセンサスは前年同月比+10.9% |
中国 | 4月固定資産投資 | 市場コンセンサスは前年同月比+9.1% | |
中国 | 4月鉱工業生産 | 市場コンセンサスは前年同月比+7.0% | |
日本 | ★決算発表(382社) | 日本郵政、第一生命他。3月決算企業の決算発表がほぼ一巡 | |
米国 | 5月ニューヨーク連銀製造業景気指数 | ||
5/16(火) | ドイツ | 5月ZEW景況感指数 | 機関投資家、市場関係者など約350人を対象にアンケート |
米国 | 4月住宅着工件数 | 市場コンセンサスは前月比+2.9% | |
米国 | 4月鉱工業生産 | 市場コンセンサスは前月比+0.4% | |
5/17(水) | 日本 | 3月機械受注 | 2月は前月比+1.5% |
5/18(木) | 日本 | 2017年1〜3月期GDP | 市場コンセンサスは前期比・年率+1.8% |
日本 | 4月首都圏マンション発売 | 3月は前年同月比+26.6% | |
米国 | 5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】日経平均株価2万円は「目標」?「通過点」? |
日経平均株価はすでに2万円直前の水準を回復しており、ここまで来れば、いったんは同大台を回復する可能性は大きいと考えられます。問題はそこからです。日経平均株価は2万円大台回復後に下落に転じるのでしょうか、それともさらに上昇を続けるのでしょうか。
ちなみに5/8(月)現在、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は1,272円10銭と計算されています。2012年11月にスタートした「アベノミクス相場」では予想EPSのピークが2015/11/30の1,275円68銭でしたが、その水準に迫っている所です。2018年3月期の上場企業の利益は増益が予想されていますが、5/15(月)にかけてまだまだ多くの企業の決算発表が予定されおり、日経平均株価の予想EPSが最高を更新する可能性は大きそうです。仮に、予想EPSが最高を更新するのであれば、株価も「アベノミクス相場」の高値を更新しても不思議ではないと考えられます。「アベノミクス相場」の高値は2015/6/24の20,868円03銭であり、今回もその程度まで上昇する可能性はあると考えられます。
日経平均株価は為替相場と連動する傾向にあります。円安時には株価が上昇し、円高時には株価が下落する傾向が強くなります。図4は日経平均株価とドル・円相場の関係を示したものですが、FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的緩和縮小)を決定した後のしばらくの時期を除き、おおむねこのような傾向が表れています。
なお、米10年国債利回りの上昇時にドルの対円相場が上昇し、同国債利回りの下落時にドルの対円相場も下落する傾向があります(図5参照)。やはり、FRBがテーパリングを決定した後のしばらくの時期は例外的に連動していませんが、最近はこの傾向が復活しています。すなわち、米10年国債利回りが上昇し、円安・ドル高になる時に日経平均株価は上昇しやすいと考えられます。したがって、日経平均株価が2万円以上の水準に上昇するか否かを占うことは、ここからさらに米10年国債利回りが上昇し、円安・ドル高となるか否かを予想することと、ほぼ同じであると考えられます。
Bloombergが集計したエコノミストの予想(コンセンサス)では、2017年末までに米政策金利(上限)は現在の1.0%から1.5%に、それを反映して米10年国債利回りは現在の2.3%近辺から2.8%台に上昇すると予想されています。仮にその通りになるのであれば、外為市場で円安・ドル高が進む余地は大きく、日経平均株価が2万円を超えて上昇する可能性も大きそうです。
図4:日経平均株価(左・円)と米10年国債利回り(右・%)
図5:ドル・円(左)と米10年国債利回り(右・%)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。週終値ベース
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