5月相場は「セル・イン・メイ」(Sell in May:株は5月に売れ)という格言で知られるように、株式相場が転機を迎えることが多い月です。4月に好パフォーマンスとなるケースが多い反面、5月から9月までは冴えない時期が続きやすいためです。
今年も4月の日経平均株価は前月比1.5%上昇しましたが、間もなく株式市場は冴えない季節を迎えるため、投資家としてはいったん株式市場から離れた方が良いのでしょうか。それとも、踏みとどまるべきでしょうか。
![]() |
3月下旬の水準を回復した日経平均株価 |
---|
4月相場が終わりました。日経平均株価は3月末の18,909円26銭から、4/14(金)には18,335円63銭まで下げ、年初来安値を示現しましたが、その後は持ち直しました。結局4月末の終値は19,196円74銭となり、月間では1.5%の上昇となりました。
月の前半は、3月の米新車販売台数が下振れしたことや、FOMC議事録(4/6)で米国株を割高とする意見が目立ったこと、3月の米雇用統計(4/7発表)で非農業部門雇用者数が予想を下回ったこと等、米国経済に関する悪材料が目立ちました。さらに米中首脳会談(4/6〜4/7)の最中に米国がシリアを爆撃したこと、米国がアフガニスタンのIS(イスラム国)地下壕を攻撃(4/13)したこと、北朝鮮がミサイル実験を実施(4/16・結果は失敗)したこと等、地政学的なリスクの高まりも目立ちました。こうした中で4/14(金)に日経平均株価が上記の年初来安値を付け、4/17(月)には外為相場が1ドル108円11銭の円高・ドル安水準を示現(図3)。4/19(水)にはNYダウが2/10(金)以来の安値水準を付けました。
しかし、その後は米国株およびドルの対円相場が反発に転じる中、日経平均株価も戻り歩調となりました。発表が本格化し始めた米国の1〜3月期決算発表が市場予想を上回る傾向となったこと、トランプ政権の税制改革案に対する期待が回復したこと等に加え、4/23(日)のフランス大統領選挙(第1回)で中道のマクロン氏が勝ち残ったこと、4/25(火)の北朝鮮人民軍創建85周年を無事通過できたこと等、政治的なリスクも後退の方向となりました。
図1は日経平均株価の日足チャートですが、すでに日々線が25日移動平均線を上回っていることに加え、同移動平均線自体が上昇に転じています。また、図2は日経平均株価(日足)の一目均衡表です。ここにきて(1)遅行スパンが日々線を上抜け、(2)転換線が基準線を上抜け、(3)日々線がクモの上に上抜け、という3条件が揃い、「三役好転」となり、強気転換した形になっています。株式相場はテクニカル的には、見通しの明るさを感じさせる形になっていると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜3月下旬の水準を回復

- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/5/2取引時間中
図2:日経平均株価(日足)・一目均衡表〜「三役好転」

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/2(日本時間)取引時間中
図3:ドル・円相場(日足)

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/2取引時間中
![]() |
当面のタイムスケジュール〜GW中は海外で重要日程が目白押し |
---|
5/3(水)〜5/7(日)の東京株式市場が休場の間、アップルの決算、米ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数、FOMC結果発表、フェイスブックの決算、米雇用統計(4月)、フランス大統領選挙(第2回)等、重要日程が目白押しになっています。
このうち、米雇用統計では非農業部門雇用者数が3月の9.8万人増から19万人増に回復するとの見方が市場コンセンサスになっています。米経済は総じて好調を維持していると考えられます。2017年1〜3月は天候不順の影響もあり、一部の経済指標に弱さがみられますが、今後は改善が期待できそうです。ただ、米国経済はいわゆる「完全雇用」状態にありますので、これからもどんどん雇用が増えるという局面ではないのかもしれません。その点は注意が必要です。FOMC(米連邦公開市場委員会)は年内にあと2回、政策金利を引き上げるというのが市場コンセンサスになっています。6月のFOMCで利上げが実施される確率は70%ですが、5月は13%に過ぎません。すなわち、5/3(水)(日本時間の4日未明)に結果が発表されるFOMCで金融政策の変更はない可能性が大きそうです。
フランス大統領選挙では、中道派のマクロン氏が勝利する可能性が大きそうです。同氏の勝利が確定した後は欧州株やユーロへ追い風が強まる可能性が大きく、日本株への追い風となりそうです。ただ、昨年以降、英国民投票や米大統領選挙で事前の予想が覆されてきたことも確かです。選挙結果が出るのは5/8(月)になりそうですが、くれぐれも「油断は禁物」です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜GW中は海外で重要日程が目白押し
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/2(火) | 米国 | ☆決算発表 | アップル(日本時間3日早朝) |
5/3(水) | 日本 | ◎東京市場は休場(憲法記念日) | |
米国 | 4月ADP雇用統計 | コンセンサスは17.5万人増 | |
米国 | 4月ISM非製造業景況指数 | 雇用指数等にも注意 | |
米国 | FOMC結果発表(日本時間4日未明) | 「6月利上げ」の見方が多く今回は見送り? | |
米国 | ☆決算発表 | スプリント、テスラ(日本時間4日早朝)、フェイスブック(同) | |
5/4(木) | 日本 | ◎東京市場は休場(みどりの日) | |
5/5(金) | 日本 | ◎東京市場は休場(こどもの日) | |
米国 | 4月雇用統計 | 非農業部門雇用者数のコンセンサスは19万人増 | |
5/7(日) | フランス | 大統領選挙(第2回) | 事前の支持率はマクロン氏6割で優勢 |
5/8(月) | 中国 | 4月貿易収支 | |
5/9(火) | 韓国 | 大統領選挙 | 文在寅氏が支持率2位安哲秀氏以下を離してリード |
日本 | ★決算発表(243社) | 三菱重工、三菱商事、三井物産他 | |
米国 | ☆決算発表 | エヌビディア(日本時間10日早朝) | |
5/10(水) | 日本 | 日銀会合「おもな意見」 | |
日本 | ★決算発表(329社) | 武田薬、JT、トヨタ他 | |
中国 | 4月消費者物価 | ||
5/11(木) | 日本 | 4月都心オフィス空室率 | |
日本 | ★決算発表(389社) | ブリヂストン、日産、パナソニック他 | |
- | G7財務省・中銀総裁会議 | ||
5/12(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(1,000社) | 日立、ユニチャーム、三井不動産他 | |
米国 | 4月小売売上高 | ||
米国 | 4月ミシガン大学消費者信頼感指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/3(水)、6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
![]() |
【ココがPOINT!】本当に「セル・イン・メイ」でいいのか? |
---|
図4は、前回もご紹介したグラフで、日経平均株価のその時々の予想EPS(一株利益)に予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍を掛けた水準と日経平均株価・日足チャートを重ねたものです。過去2年間、日経平均株価は例外的な時期を除き、予想PER15倍±10%(13.5〜16.5倍)のレンジで推移してきました。そして市場参加者の心理が強い時は予想PER16.5倍近辺まで買われてきました。ちなみに、予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍相当ラインが上下に動いているのは、日経平均採用銘柄の予想EPSが動いているからです。
なお、赤線で囲んだ局面は3月決算・本決算発表の時期です。2015年、2016年ともに階段状に上昇しているのは、予想EPSの対象となる会計期が主力の3月決算企業に移るからです。そして2017年も予想EPS(一株利益)に予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍を掛けた水準が急上昇し始めました。日経平均株価の予想EPSが4/28(金)には1,203.56円でしたが、5/1(月)には一気に1,266.26円に上昇したためです。
日経平均株価に採用されている225銘柄のうち3月決算銘柄は190銘柄と全体の84%を占めています。また、このうち4/28(金)の決算発表第1のヤマ場に決算発表を実施した企業は39銘柄と全体の17%を占めています。この日は、ソニーや東京エレクトロン、富士通等の増益見通しが発表された日でした。また、日本郵船、川崎汽船等の海運株が前期赤字・今期黒字予想を発表しました。これらにより、日経平均株価の予想EPSは大きく上昇し、それが5/1(月)に反映されたと考えられます。
仮に今後も、株式市場の心理が弱い時、日経平均株価は予想PER13.5倍程度で、逆に強い時は16.5倍程度で評価されると仮定します。表3で示したように、日経平均株価の推定レンジは下限で17,095円、上限で20,893円と計算されます。日経平均株価が1万9千円台半ばで推移している5月相場は、株式市場から退出すべき局面とは言いきれないように思われます。
図4:日経平均株価と予想PER13.5倍、15倍、16.5倍相当ライン

- ※日経平均公表データをもとにSBI証券が作成
表3:予想EPSと予想PER13.5倍、15倍、16.5倍相当ライン
予想EPS | PER13.5倍相当 | PER15.0倍相当 | PER16.5倍相当 | |
---|---|---|---|---|
1,266.26 | (現在) | 17,095 | 18,994 | 20,893 |
先物・オプションの関連コンテンツ
【サキモノのココがPOINT!】
日経平均は業績相場に移行!目標は19,600円?